~とある神社~
「はぁ・・・はぁ・・・」
「母様、この人たちは誰なの?」
親子二人が境内の敷地内で男たち5~6人ほどに追いかけられていた。その手には刀や槍などといった武器が握られていた。
その中の一人が大声をあげた。
「その娘をわたせ。こちらで始末をつける。堕天使から生まれた異形なものなど生かしておくものではない!!」
この問いに母親は声を荒げて反論した。
「この子は、朱乃は私とあの人の娘です。決して異形なものなどではありません!!」
「だまれ!!!やはり貴様は堕天使に操られているのだな。そのような者は我が『姫島』にはおらん。ここでその娘ともども一緒に始末してくれる。」
男たちは武器を構え、親子に飛び掛かろうとしていた。
母親は自分の身を盾にするようにして娘を強く抱き締めた。
娘は母親を離さんと服を強く握りしめた。
そのときである。
「月牙・・天衝!!!」
青白い斬撃が親子と男たちの間に割って入った。
「うおおおおおお!!!」
「きゃあああああ!!!」
男たちはのけ反り、母親は悲鳴を上げながらも娘を守るように抱きしめる。
「・・・きれい・・・」
だが、その娘はそんなこととはお構いなしに青白い斬撃の色に目を奪われていた。
「大の男たちが、大勢で親子を追いかけているこの状況はいったいなんなんだ?」
斬撃の余波が収まった後、皆が目を見開くと、地面はきれいに切断されており、その切断面を辿っていくと、少年が巨大な刀を肩に担いでいる姿があった。
その子供の姿にその場にいた全員が驚いた。
なんと、狐の面を被っていたからである。
~時は少し遡る~
殺気を感じた場所に着いてみるとそこは神社であった。
「なんでこんな神聖な場所で殺気を感じたんだ?」
少年は呆れるような声をだして意見を口にした。今は、誰にも見つからないように生い茂った木々の間から神社を見下ろしていた。
『ここで感じたのは間違いない。動きがあるまでここで見張っていよう』
「そうだなぁ・・・・・ん?」
その時、境内の中の建物から母親と、その娘であろうか、二人が慌てて飛び出してきた。そのあとで武器を持った男たちが親子を追いかけて同じように建物から出てきた。
「なんだ?この状況は?」
少年が疑問を口にすると〈斬月〉が語りだした。
『よく見てみろ。追いかけられているのはあの子供のほうだな。この感じは母親の方は人間だが、あの娘は人間ではない気配を感じる。おそらく人間とは違う種族との間に生まれた混血児のようだな』
「だからといって、なんで殺されそうな雰囲気なんだ?」
『人間にとって自分以外の種族は相容れぬ存在なのだ。それが身内から現れたのならなおのことだ。その子供であろうとも処断してしまおうという考えが生じたのだろう。それが人の業なのだ。特に、神事に関わっている一族ならいっそのこと自分たちで物事を納めたいのだろう』
「まるで、自分たちのようだな。力を持たない人間にとって、力を持っている人間が忌み嫌われる。そして行き場をなくしてしまったものの末路は悲惨なものだ。力に溺れ自暴自棄になるか、より強い力を持つものによって粛清されるか、人知れずに自ら最後を迎えるかだからな」
自分に言い聞かせるような意見を口にしていると、男たちがついに親子を追い詰めている状況になっていた。
『それで、どうするのだ?このまま黙って見ているだけなのか?』
〈斬月〉の問いかけに少年は首を横に振った。
「いくらなんでも、この状況であの親子を見捨てることはできない。助けにいくさ。だからといって襲っている男たちの方を殺すなんてことはできない。なんとかどちらにも害をださずに帰ってもらおう」
『だが、出ていけば顔を見られてしまうぞ』
「ここは神社だ。面のひとつでもあるだろうから、それを借りよう」
『わかった。おまえがそう決めたのなら私も力を貸そう。存分に使うがいい』
「よし、では行こう」
そういうと、少年は瞬歩で木を飛び移り、建物の中に入り、近くにあった狐の面を取り、急いで外に出ると、追い詰められていた親子に男たちが襲い掛かっていた。
少年は飛び出し、背中に担いでいた斬月の晒を解くと、上段に構え、そして・・・
「月牙・・・天衝!!!」
~現在~
「大の男たちが、大勢で親子を追いかけているこの状況はいったいなんなんだ?」
斬月を肩に掛けながら全員に問いかけるような質問を投げかけた。
「な・・・何者だ貴様は!!名を名乗れ!!」
男たちのリーダー格が信じられないような光景を目にしながらも、少年に向かって刀を突き出しながら叫んだ。
「何者と言われてもなぁ~、ん~~~こんな能面しているから神社の化身ということで」
狐の面をしているせいか声がくぐもっているせいか、声の質感はわからないが、身体的特徴からして十歳未満ということはこの場にいる全員が理解できたが、その返答は、言い方はどうあれ軽いものだった。
「ふ・・・ふ・・・ふざけるな!!!どこの小僧か知らんが、われらの邪魔をするとゆるさんぞ!」
「・・・聞かせてほしいんですが、どうしてその親子を襲っていたんですか?」
リーダー格の男が罵声をあびせるが、そんなことはお構いなしといった態度で少年は質問した。
「このっ・・・・いいだろう、教えてやろう」
リーダー格の男は視線を少年から親子に移し質問に答えた。・・・・・・少年への警戒は緩めずに・・・・
「そこにいる女はわが一族の身内に当たる者だ。この女はこともあろうに傷ついた堕天使を助け、あまつさえ共に暮らし始めた。そして、その隣にいるのがその際に生まれた堕天使の娘だ、理由はどうあれ、わが一族に不浄である堕天使の血が混じったものを認める訳にはいかんのでな、我らがその娘を始末することになったのだ」
その台詞の後に母に抱かれて怯えている女の子をにらみつけると、女の子は「ひっ・・」っと軽く悲鳴をあげた。
「そうか、そんな理由か」(ボソッ)
少年の口から出た言葉は誰にも聞き取れなかった。
質問に答えた男は視線を少年に戻した。
「さて、小僧。このような場所でこんなものを見られたからには貴様にもここで消えてもらうぞ」
「待ってください!この子は関係ありません!見逃してください!」
「だまれ!!見られたからには生かして返すわけにはいかんのだ!小僧、恨むなら自分の不幸とあの親子を恨むのだな」
リーダー格の男の、親子ともども少年を始末するという発言に母親は抗議したが、聞く耳持たず、少年に向かって武器を構えた。
「・・・できるならな」
少年がそう言うと、瞬歩を使って親子の近くに移動した。
「あ・・・あなたはいったい・・・」
母親が少年に問いかけるが、少年は答えずに代わりに母親に告げた。
「少し、その子と一緒に目を閉じていてください。合図があるまで決してこの刀を見ないでください」
親子に振り向かずにそう言うと、少年は斬月を一振りすると通常の斬魄刀に戻した。
そして、逆手でもち、その刀を男たちに向けた。その時に後ろにいる親子も身を丸くして目を閉じた。
「何をするか知らんが、ここで共々切り捨ててくれる」
男たちは少年に向かって飛び掛かろうとした。ーーーだが、
「砕けろ・鏡花水月」
斬魄刀の解号を行った。
少年の名前はまだ出ません。
後、二話くらいしたらだします。
こうご期待ください。
よいお年をお過ごしください。