気が付けば初投稿から一年が経ちました。
それなのに未だ15話(少な!!)
話的にはだいぶ先まで考えてはいるのですが、なかなか更新できる時間と文章作成のが取れません。
また、更新できない日が続きますが、それでも楽しんでいただければ幸いです。
ロスヴァイセさんの勧誘・契約から数日後、“名無し”(颯)の生活はそれほど変化はしなかった。
いつものように、ギルドへ行き、依頼を受け、はぐれ悪魔や魔獣を狩り、その毎日であったが、唯一変わったと言えば、今まで行った依頼内容を月一で契約者、つまりロスヴァイセさんに報告する義務が増えたことだ。
~颯の自室~
「・・・というわけで、今月はAランクの依頼が2件、Bランクの依頼が8件、Cランクの依頼が13件を完遂したことを報告します」
『はい、受付けました。報告ありがとうございます』
颯は自室で、ロスヴァイセから別れ際にもらった羊皮紙に書かれた魔法陣でテレビ電話の要領でお互いの姿越しで通信しているところであった。
『でも、疑問に思うのですが、なぜ高ランクの依頼を受けないのですか?貴方ほどの実力なら、もっと高ランクを受けてもおかしくないのですが?』
ロスヴァイセは低ランク中心に依頼を受けている死神(颯)に対して疑問を投げかけた。
(ちなみに契約の際使われた契約者名は、嫌々ながらも死神でサインした)
「高ランクに関しては主に危険地帯での危険種の討伐でして、そんな場所に一般の人はめったに近づきませんので、特別な事情じゃない限り私は動きません。ですが低ランクの依頼に関しては、町の郊外や、一般の人が多く使う場所に討伐対象がいるので、私の信条としては、そちらを中心に依頼を受けています」
『なるほど、確かにそうですね。理解しました』
「では、私からは以上です」
『はい!・・・それより聞いてくださいよ!この間・・・』
報告を終えたら急に口調を変えて愚痴をこぼしだしたロスヴァイセさん。数回目から他人行儀な口調で話していたのだが、もう慣れたのか、一通りの報告が済んだら私的な会話をしたところ、これが定番となり、今では恒例になっている。
『いつも私の愚痴を聞いてくれてありがとうございます』
「いいんですよ、このくらい。それでロスヴァイセさんの気持ちが晴れるのであれば」
『あ、ありがとうございます///(こんな毎回私の愚痴を呆れたような顔をせずに聞いてくれるなんて、こちらがお礼を言いたいのに~~)』
ロスヴァイセさんは照れながらもお礼を言った。
『で、ではこれで今日は失礼します!!』
ロスヴァイセさんは急用が入った為か、慌てて通信を切った。
「さて、もう休みますか」
~数日後~
いつものごとく、依頼を終え、マスターに報告するためにギルドに帰還する。すると、マスターから差出人不明の真っ白な封筒が渡された。
「マスター、これは?」
「依頼の手紙だと言うことだが、中身はアンタにしか見せるなと言われている。ちなみに差出人は銀髪のメイドだった」
「は??」
依頼人の特徴を聞いたときに、颯は思わず情けない声を出した。
「まぁ、どんな依頼人でもお前さんなら大丈夫だろう。じゃあな」
そう言うと、マスターは店の奥へ行ってしまった。
颯はいつもの指定席へ行くと、差出人不明の封筒を開けた。するとそこには、改めて本当の依頼を伝えたいという内容と、場所の指定が記されていた。
「(まためんどくさい方法を。いや、誰にも聞かれたくないという事か。しかもこの招待状は・・・まぁいい。とにかく向かうとしますか)」
颯は踵を返し、指定された場所へと向かう。
~とある高級リゾートホテル~
封筒に入っていた手紙の書いてあった指定場所は、割と有名なリゾートホテルで、主に観光客などが多く利用する場所でもある。だというのに、仮面とローブを着ている颯が入店しても誰も怪しんだり、異を唱える者がいなかった。それどころか目の前を通り過ぎても見向きもしなかった。
「やはりこの招待状、認識疎外の術式が施されていますね。つまり、一人でこの場所に向かえということですか」
指定された場所は、リゾートホテルの最上階VIPルームだ。颯はエレベーターに乗り込み、最上階へと向かう。
エレベーターが着くと、目の前には扉が一つだけ。どうやら最上階すべてがこの一室のみの造りになっているらしい。そして扉の前には銀髪のメイド服を着た人物が立っていた。
「貴女がこの手紙を出した人ですか?」
「はい、その通りでございます。私はグレイフィアと申します。その手紙に書いてあった通り、主より直接依頼を聞いてもらいたいのです。主はこの奥にいます」
「わかりました。お願いします」
そう返事をすると、グレイフィアは扉を開け、颯を中へと招いた。
「っ!!??」
部屋に入った瞬間、颯は違和感を感じた。
「(この部屋、部屋の家具には防御結界、部屋の壁にも防御結界と防音結界、一体何のために?)」
颯はグレイフィアの後をついていきながら、警戒度を少し上げる。そして一番奥の街の景色が一望できるリビングルームへ通されると、テーブルに座っている男女と傍に羽織を着た男性が一人、しかも男女は、優雅に紅茶を飲んでいて、男性の方は赤髪で一際目立っていて、女性の方は黒髪でツインテールに髪を縛っていた。
「あ~、グレイフィアちゃん、おかえり~~」
「ただ今戻りました。サーゼクス様、こちらが例の方です」
「ご苦労グレイフィア」
グレイフィアは一礼すると、三人の傍へ行き、座っている男女の間に立つと、赤い髪の青年が颯に話しかけた。
「君が噂の“名無し”君だね」
「そうですが、貴方が依頼人ですか?」
「そうだが、話をするその前に、先に謝らせてほしい」
「・・・何にですか?」
「これにだ」パチンッ
赤髪の男性が指を鳴らすと同時に、傍らにいた羽織を着た男性が、素早く床を滑るように移動すると同時に、腰に差していた日本刀を抜刀し、居合切りをしてきた。
――ギィィィィィン!!
急な展開に颯は驚いたが、部屋全体に防御結界を張っている時点で警戒を強めていた為、男性が近づいてくる直前に右手に斬魄刀を顕現させ居合切りを防ぐ。
「っふ!!」
羽織の男性は一旦距離を置くと、刀を鞘に納め、再び居合いの体勢をとる。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
お互い動かず、相手の行動を待つ。その間、残りの三人は変わらずテーブルで紅茶を飲んでいる。
――カチャ
「ッシ!!」
誰かがカップを受け皿に置いた音を聴いた瞬間、羽織の男性は再度颯に突撃し、居合切りを繰り出す。が、目標となる人物は刃が当たる寸前に目の前から消えており、刀は空を切る。
「何!?」
男性は驚くが、次に感じたのは背中に掌が当たる感触だった。
「縛道の六十三・鎖条鎖縛(さじょうさばく)」
颯の背後から金色の光を放つ太い鎖が蛇のように巻きつき腕と体の自由を奪う。
「これは!?」
男性は急な拘束に驚き、動きを止めてしまうと同時に、床に倒れてしまう。
「その拘束術は、光っていますが、貴方達悪魔には効果はありませんので、消滅する心配はありませんよ」
「・・・さすがに、我々が悪魔だと気付いていましたか」
颯が発動した鬼道の説明をしている最中、後ろの方では、銀髪のメイドが気づかれないように魔力を練り始めていた。・・・が
「縛道の六十一・六杖光牢(りくじょうこうろう)」
颯が振り返り、人差し指と中指を伸ばしメイドに向かって鬼道を放つ。すると先程と同じく金色で六つの帯状の光が胴を囲うように突き刺さり動きを奪う。
「っ!?」
銀髪のメイドは自分にかけられた拘束する光に戸惑う。そして颯は、そのまま跳躍し、紅髪の男性に向かって刀を振り下ろす。
「「「!!??」」」
周りにいた三人は驚愕するが、刃は男性の眼前一〇㎝で止まった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
その後両者は、お互いを見つめたまま動かずにいたが、颯の方から目を伏せると、後方に跳び下がり、手元から斬魄刀を消すと、深くお辞儀した。
「依頼主に刃を向けたことに深くお詫び申し上げます」
「いや、先ほども言ったように先に謝らなければならないのはこちらの方だ。君の実力を見たかったのでな。許してほしい」
お互いが謝り、拘束されていた二人を開放すると、改めて依頼の話になった。
「まずは、自己紹介しよう。私が依頼人であるサーゼクスという。それでこちらがもう一人の依頼人のセラフォルー。後ろの二人は私たちの従者グレイフィアと護衛の騎士だ」
「改めまして、『名無し』です」
「じつは君にお願いしたいのは、ある悪魔達の護衛なんだ」
「なるほど、先ほどのは私が護衛に足る人物であるかの確認だったわけですね?」
「そうそう、その通り!君の実力は十分だったから、安心して任せられるよ☆」
「その護衛対象は御二方の関係者か身内ですか?」
「うん、そうだよ☆一人は私からで名前をソーナ・シトリー。お姉ちゃんの自慢の妹だよ☆」
「もう一人は私の妹で名をリアス・グレモリーだ」
「その二人の写真などはありますか?」
「ああ。この封筒の中に入っている。確認してくれ」
そう言うと、懐から茶封筒を取り出し、颯の目の前に魔術で飛ばし空中で止める。
「拝見させていただきます」
封筒を開け、中の写真に目を向けると、颯は若干眉を潜める。
「二人とも可愛いでしょ~☆」
「・・・そうですね」
「君には彼女らと一緒に同じ学び舎に通ってもらうからそのつもりで」
「こ、この二人と同じ学校にですか!?」
颯は驚き、つい敬語を忘れてしまった。
「そうだが、何か不服が?」
「ですが、これは・・・」
颯は依頼主の二人に写真を見せると、
〇長髪の紅髪で、同じく赤色で水玉模様のワンピースを着て、ビーチボールを持っており、満面な笑顔をしている女の子(推定年齢五歳前後)
〇黒髪のショートカットで、転んだのか膝が擦り剥いて赤くなっており、それでも必死に泣くまいと我慢しているが、目尻に涙を浮かべている女の子(推定年齢五歳前後)
「「うわああああああああ」」
紅髪の男性(サーゼクス)と、ツインテールの女性(セラフォルー)は声を上げながら椅子から立ち上がり、左右から颯に慌てて近づき、写真を奪っていった。
「ななな、なんで!?なんでこの写真があるの!?サーゼクスちゃんに預けてたのになんで!?」
「いや、確かに別の封筒に入れていたのだが・・・ああ!同じ色の封筒だ!」
二人のやり取りを仮面の下から見ていた颯は、二人のシスコンぶりに、心の中でため息をついた。
まだまだ続きます。皆様よいお年を。