第1話
日本のある山奥、人里から離れたある集落。そこはただの田舎ではなかった。
その場所は、世界の異変から人々を守るための育成場所なのだ。
しかし、それは政府の管轄ではなく、独自の、つまりは自分たちの意思で人々を守るために自分たちを鍛えるためにできた場所なのだ。そして、そこには血のつながっているものは極わずかであった。
なぜなら、その場所には、人が持つには過ぎ足る力を持った者たちが集まっているのだ。
親に見捨てられたり、世間の目から逃れたりする者たちがこの場合に集まってきている。
そこに集まった人たちは最初のころは自分たちを蔑んだ者たちに復讐しようとした。だが、それでは自分たちのような不幸な人たちが増えてしまうと考えに至り、そんな人たちを増やさないためにも、この特殊な力で人々を守るために使うことにした。
そこで、そんな人たちを集めるために、日本中を駆け巡り、同志を探しまわった。
そこでは、大人子供関係なく、特殊能力を使えば、一人一人が武装した軍隊の一個大隊並の実力を兼ね備えていた。
ちなみに、場所に関しては、絶対に見つかることはない。そこは仲間と認めたものしか入れない結界をはれる能力者たちがその場所を囲っているからである。
そして、そんな集落を作ってから、200年がだった。
ある年、そんな集落に1人の少年がいた。その少年は、白髪で色白の肌をしており、とてもよわよわしい体型をしていた。だが、その少年の実力は集落の中でも高い実力者で、体術に至っては、能力を使った大人5~6人が一斉に挑んでも、キズこそ追うものの、負けたりはしなかった。見た目で人を判断してはいけない、という言葉がぴったりな強者である。
この少年には体術だけではなく、もうひとつの能力がある。それは、ある武器を使えることができる。
その名は「斬魄刀」
見た目は、日本刀ではあるが、この集落の強者にしか扱えず、所有者を変えながら、代々受け継がれてきたものである。刀の名を唱えることにより、形状が変化する「始解」をし、様々な能力が使える。それというのも、刀の名は1つではない。斬魄刀にはその歴代の所有者の魂が込められており、その当時の呼び名を唱えることにより、その能力が使用できる。それ故に、斬魄刀の所有者は、代を重ねるごとに強さを増しているのだ。
ではなぜこの少年が選ばれたのか?
じつは、「斬魄刀」がこの少年を選んだのだ。
本来であれば、集落の中でも「武」に秀でたものが所有者になるのだが、この少年が生を得た瞬間、宝物庫に保管されてあった斬魄刀が突然浮き上がり、宝物庫を突き破り、生まれたばかりの赤ん坊に吸い込まれるように入っていった。
このようなことは前代未聞であり、集落中が驚いた。だが、斬魄刀は持ち主が死ぬまで代を変えることはない。致し方なく、大人たちは赤ん坊を斬魄刀の所有者と認めた。
それほどの危険性はないと感じたからである。
しかし、その後は周りを驚愕させた。生まれてから3日で歩きだし、1週間で喋りだした。10日で周りの山々を走破し、1ヵ月で斬魄刀を継承したことにより習得することができる、極めれば目にも止まらないほどの高速移動術である「瞬歩」や、高尚な呪術で手先に力を込めて撃つ「縛道」(相手の動きを封じたりする補助的な技)と「破道」(直接攻撃的な技)といった「鬼道」を使いこなせるようになっていた。
では、なぜこんなにも早く習得できたのか?
じつは、少年の精神世界で鍛練が行われていたのだ。先にも説明があったが、斬魄刀には過去の所有者の魂が込められており、その魂たちが実体化し、各々が少年を鍛えていたのだ。
刀の使い方や、各斬魄刀の能力、瞬歩・鬼道の使い方、はては、勉学まで面倒を見ていたのだ。
ある日のこと、少年は、集落の外に出て、斬魄刀の稽古に出かけた。近場だと迷惑がかかると思ったのか、遠く離れた場所で斬魄刀の修行をしようと思い、ある場所に移動すると斬魄刀を鞘から抜き、始解を繰り出し始めた。
意見・質問・要望はあっても受け付けないかもしれません。ご了承ください。