では今回もたのしんでいただけると嬉しいです。
簾木 健
「よお……」
総司が軽く手を挙げて挨拶する。
「およ?あなたは誰ですか?」
「おれの名前は玖原総司。お前をスカウトしにきた」
「スカウトですか?というかよくここまでこれましたね」
「ああ。外の奴らなら大方片付けたよ」
「……そうでしょう。あなたからは凄まじいものを感じます」
そこは暗い暗い独房のような場所。そこには白い拘束着を着て素足に鉄球を付けた十代後半ほどの少女がいた。その少女に総司はさらに語り掛ける。
「この祖国の武が世界一であることを証明するという目標があると聞いたが?」
「あいや、そんなことまでご存じなんですね。その通りっす。だから時々ここを脱獄してるっす………そんなことより、総司殿は本当にお強そうですね」
好戦的な眼で少女は総司に笑いかける。どうやら一筋縄ではいかないようだ。
「おれの目的はお前のスカウトだ。ここで戦うつもりはないぞ《饕餮》」
「あいや、そうなんですか?てっきり戦うものと思っていたのですが……」
「ここでもしおれとお前が戦えば、どうなるかくらいは知ってるよ。それでどうだ一緒に来ないか?」
「そうですね。折角のお誘いですが、すみません。自分の夢は自分の力で叶えてこそっす。だから総司殿あなたの力は必要ないっす」
「そうか」
その答えに総司は納得したと頷き、自分の《
「気が変わった。ここで一度手合せを願おう」
それにシャオリ―に笑い返す。
「それでは改めてよろしくお願いしますっす!神龍寺四象拳法皆伝!《四仙》が一、《饕餮》フー・シャオリ―と申します!以後お見知りおきを!蒼天に吼えろ!—―――《蛮鬼》ッ!!」
「《
「ハハッ!!そういう自信家は自分は大好きですよ!!」
こうして《饕餮》と賊による戦いは幕を開けた。
「ここまでやべえやつとは思ってなかった」
「謝謝。自分もまさかここまでの人が世界にいるとは知りませんでした」
少女と賊はまだ倒れていない。しかし二人が立つ場所は荒野と化していた。さきほどの戦闘開始からわずか10分。その間に森は滅び、建物は瓦解し、残るは地面のみ。この光景が二人の戦闘の異常さをものがたっていた。
「《饕餮》……シャオリ―ますます惜しい。俺についてくる気はないのか?」
「総司殿からそう言っていただけることは本当に嬉しいことです。しかし自分はこの身一つで中国4000年の強さを証明すると決めているのです」
「そうか……」
総司は頷き、小太刀をしまう。それに合わせシャオリ―も自身の《
「今回はここまでにしておこう。また必ず」
そういうと賊はふわりと黒い羽を残して一瞬で去っていた。シャオリ―は相手がいなくなったことを確認して、その場にバタンと横になった。
「あれは埒外の化物ですね」
激しい修行によって磨いてきた自身の才能。しかしそれを圧倒的に押しつぶす総司のやり方はシャオリ―にとっては久しぶりの感覚だった。なにより……
「最後まで総司殿は自分を味方に引き入れるつもりだった。だからこそ……本気ではない」
ブルルと背筋に走る冷や汗にシャオリ―は笑った。
「世界は思ったよりも広かったっす」
「さて行くか」
総司のつぶやきに、横にいた刀華が頷く。
「はい。私はステラさんを相手でいいんですね?」
「ああ。ステラは完全に刀華に任すよ。それと……これ」
総司は刀華に向かってリングを見せる。黄色の宝石があしらわれたそのリングに刀華は目をぱちくりさせた。
「カナタには渡したんだが……一応婚約指輪だよ」
「もうちょっとシチュエーションとかないとね!?」
「いいだろ調度。これから戦争に行く前だしって……ちょっと死亡フラグっぽいな」
「そうやけどさ………むー」
そう言ってむくれる刀華に総司はフッと笑いかけて、その左手を取ってからゆっくりとその指輪を薬指にはめた。
「これからもずっと俺の隣にいてくれ。刀華」
「……はい」
そう言って頷いた刀華の顔は満面の笑み。それに総司もフッと笑う。
「じゃあとりあえず、行くか。ヴァ―ミリオンとク―デルラントをぶっ潰しに」
「はい……」
そう言って二人は跳んだ。
この戦いは後に戦役として語られるのだが、それはまだ先の話。そしてこの戦い以降《
落第騎士と生徒会長の幼なじみ 完
皆さんお久し振りです。
久しぶりに投稿したと思えば、最終話となって驚いた方も多いと思います。
本当に自分勝手に終わらせてしまったと思っています。
今回このような強引な形で終わらせてしまった理由としましては、そろそろ完全にぐだったと思ったからです。ステラ戦以降、グダグダとした展開が続いてしまい、もうそろそろ終わる頃だなと感じてこのようなことになりました。まぁこんな勝手を許していただければ幸いです。
さてでは最終話ということでこの作品を書く経緯を少し詳しくお話したいと思います。
この作品の元々のコンセプトは一輝側ではない側から描いた物語です。私がこの小説をあげた時、落第騎士の二次小説はほぼ一輝側の視点で描かれるものばかりだったので、それなら違う視点で書きたいなと思ったのがこの作品の出発点になっています。そういったこともあり、破軍生徒会に焦点を当てたお話になりました。
玖原総司についてはですが、玖原とは私の地元の地名から来ています。歴史にも少しは登場する地名でもあるので歴史詳しい人は知っているかもしれませんね。
総司という名前については感想でもいただきましてお答えした通り、沖田総司から取りました。私も歴史大好き人間なので、最強剣士と色々と考えたすえ、沖田総司から名前をいただきました。
能力についてはですが、これは基礎は私が初めて投稿した、カミカゼエクスプローラーという作品の主人公の能力です。能力をコピーする能力に魅力を感じたため、これしかないと即決でした。まぁついに原作にも登場しましたが、なんか自分のアイデアが採用されたうれしさを少し感じたのはいい思い出です。
さて長くなってしまいましたが、後はなにか質問していただければということにして締めさせていただきます。
この小説を書くにあたって、海空りく先生が生み出してくださったことにまず感謝を。
そして拙い文章であるのにも関わらず、叱咤激励をくださった読者の皆様。本当にありがとうございます。
これからもまだ連載している作品、これから書こうとしている作品の方でもよろしければご贔屓にしてください。
ではまたいつか私の作品を読んでいただけることを願っています。
簾木 健