落第騎士と生徒会長の幼なじみ   作:簾木健

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さて今回で七星剣舞祭編は最後となります。

今回も楽しんでいただければ嬉しいです

簾木 健


後日

「そうちゃんよかったの?」

 

亜麻色の髪をたなびかせながら少女が尋ねる。

 

「ああ。いいんだよ。一輝とはちょっと戦ってみたかったけどそれは次があるだろうしな」

 

「そうちゃんはそういうとこは本当にドライだね」

 

アハハと銀髪の男の子が笑いながらそう言うとそのタイミングで金髪で白いドレスに白い傘を差した女性が3人に近づいてきた。

 

「今美奈さんが荷物の確認をしていますがそれ以外は準備ができましたよ」

 

「おっそうか。じゃあそろそろ乗るかね・・・そんなことより」

 

そこで黒髪長身の男が3人を見ていう。

 

「みんなこそよかったのか?おれについてくるってことの意味わかってる?」

 

男のその言葉に一瞬3人はポカンとして一斉に笑い出した。

 

「な、なんで笑ってんだよ?」

 

「ふふふ。そうちゃんは優しいですね」

 

「ええ。やっぱりそこが総司さんの良いところですね」

 

「そうだけどここまで来て今更野暮だよ。僕にしても、刀華にしても、カナタにしてもきちんとわかってるよ。それでもそうちゃんについて行こうとしてるんだから・・大丈夫だよ」

 

「たくっ本当によかったのかね」

 

「さすがはぼっちゃん!!良いお仲間をお持ちで!!」

 

そこにさらに一人の男がやってくる。相変わらずの騒がしさだがそれもいい。

 

「陣さん安全に頼むよ」

 

「ええ。わかってます!なにより今回は奥様も乗るのでちょっとでもミスが起きると・・」

 

「あら陣助私はなんにもしないわよ」

 

「絶対それは嘘ですよ!!!前もちょっと揺れただけで操縦席に乗り込んできて強引に操縦したこともありましたよ!!!??」

 

「・・あの時は若かったのよ」

 

「ついに2、3か月前ですよ・・」

 

「総司兄荷物の積み込みも終わったよ」

 

「おっそうか。じゃあみんな乗るぞ」

 

そうして全員が飛行機に乗り込んでいく。総司は最後まで残っており、そして一人の老人に話しかけた。

 

「師匠行ってきます」

 

「ふぉふぉ行って来い。総司、お前はもう一人前じゃ自分で考え好きに生きると良い」

 

「・・ありがとうございます」

 

「宗吾からは走り回ってるから伝言を預かっとるぞ。『玖原は心配するな。なんとでもしてやる』だとよ」

 

「そこは心配してないので大丈夫ですよ。ではそろそろ行きます。またいつか」

 

「ああ。またの」

 

そうして男は旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「納得できない!!!!!!!!!!」

 

ステラは叫んでいた。その目の前には巨大はテーブルとそこに大量の食事が置かれている。その食事を次々と胃の中にぶち込んでいく。

 

「そうは言っても一応勝ったんだからいいじゃねえの?」

 

寧音はテーブルの対面に座りそんな風に言うとキッとステラは寧音を睨んだ。

 

「ネネ先生わかってるでしょ?私が斬られたことも・・ソージさんとアタシには圧倒的な差があることも」

 

「まぁね。解説席からしっかり見てたよ。ステラちゃんが総司ちゃんの黄金の剣に斬られた瞬間」

 

ニヤリと寧音は笑う。それにステラはキ―ッと言いながらチキンにかぶりつく。

 

「ただね・・・ルール上総司ちゃんはやってはいけないことをしたしね」

 

あの黄金の剣でステラを斬った時、それと同時に総司は審判と会場もろとも斬ったらしい。会場の4分の3を破壊され、審判もキリコのおかげで一命はとりとめたがかなり危険な状態だった。会場に見に来ていた人たちは係の伐刀者(ブレイザー)によってなんとかけが人を出さずにすんだが、その行為はあまりにも危険であったとされ、反則負けとなった。しかしそれにステラにしても一輝にしても総司と剣を交えた人間は誰も納得していなかった。というかわかっていた。

 

「ソージさん確実にわざとよね」

 

「・・たぶんな」

 

総司はそんなことをしないことを特にこの2人はよくわかっていた。そんな自らの力をコントロールできない伐刀者(ブレイザー)などとは次元が違うと。

 

「本当に強かったわ」

 

ステラ零す。それに寧音はふんと鼻を鳴らした。

 

「その辺は総司ちゃんが戻ってきたら聞くといいよ。今は玖原が連れていってるらしいから・・ありゃ電話?」

 

電話を告げるアラーム。電話の相手は黒乃だ。なんだろうと思い電話に出る。

 

「もしもしくーちゃんどうしたの?」

 

「寧音!!玖原たちやりやがったぞ!!!」

 

「うん?やりやがった?ちょっと待ってね」

 

寧音はステラから離れる。黒乃のトーンから考えてステラに聞かせるにはマズイだろう。

 

「で?なにをしたの?」

 

ステラから距離を取り、近くに誰もいないことを寧音が切り出す。

 

「今日玖原のところから使いが来てな。玖原、東堂、御禊、貴徳原の退学届を持ってきやがった」

 

「なっ!?」

 

「しかもあいつら玖原に連れていかれて姿を消してからの動向を調べたんだが・・・もう日本にはいないらしい。しかも恵さんまでも一緒にな」

 

「ちょっと待て!!くーちゃんまさか・・」

 

「ああ。日本は魔人(デスペラード)を二人も国外に逃亡させてしまった可能性がある」

 

今世界は動き出そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつあないな使い方するなんて・・わいですら思ったこともなかったわ」

 

「あら、そうなの?確かにあなたは魔力制御が苦手だしね」

 

「うっ!まぁでも今回のおかげでわいが目指すべき道の一本は見えたなってことでよかったとしとくわ」

 

「そうね・・」

 

キリコはまた雄大の実家である『一番星』にきていた。注文したお好み焼きは完食し、お客さんも少なくなっていることもありゆっくり雄大と談笑していた。

 

「で?やっぱり総司のやつどっか行ったのか?」

 

「ええ。でもキチンと私のことは誘ってくれにきたわよ。病院のこともあるし、総司君からお願いされたこともあったから断っちゃったけどね」

 

「そうか。ならええわ」

 

雄大はヒヒッと笑う。

 

「先生は総司のことが大好きやからな。誘われんかったら相当機嫌も悪くなって残ったおれがとばっちりを食うところやったからな」

 

「あら?そんなこと言っていいと思ってるわけ?」

 

笑顔だ。キリコは笑顔だがなんというか笑っていなかった。雄大もマズイと思い話しを変える。

 

「そ、そういや先生。わいの身体はもう大丈夫なんやな」

 

「ええ。大丈夫よ・・でも本当に行くの?」

 

「ああ。強くなるには実践が一番や。あそこなら、《闘神リーグ》ならぴったりやで」

 

《闘神リーグ》それは連盟加盟国ではない中華連邦の《神龍寺》行われるリーグであり、武の頂点とも言われるほどのリーグである。日本では唯一東堂刀華の師匠南郷寅次郎がそのリーグを制し《闘神》の二つ名を得た。ただそこは常時戦場の地獄。ルールもなにもない。毒、罠、共闘、裏切りすべての戦闘手段が許される場所だ。

 

「わいは今回の七星剣舞祭で自分の未熟さを知った。しかも同年代にあんな化物がおるんや。あれに追いつくには普通の努力じゃ足らん。より地獄により強くなるためにやれることをやらないかん。やから、わいはいくで」

 

「そう。もうそこまで覚悟してるんなら止めて無駄でしょうね」

 

キリコは席にお代のお金を置いて立ち上がる。

 

「じゃあ私は病院に帰るわ。もし身体になにか異変があったらいつでも来ていいわよ」

 

「ああ。なんかあったら世話になるわ。あと総司におうたら先生のところに行くように言っとくわ」

 

「それはいいわ」

 

キリコは笑って雄大の提案を断る。そしてその理由を言った。

 

「総司君はキチンと私のところに会いに来てくれるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてここか」

 

総司は今ヨーロッパ中央部を東西に横切る世界有数の天険。アルプス山脈。その天の衝く山々の迷宮。その岩と雪だけの世界に総司はいた。

 

「まぁまさかこんなところにあるとはな解放軍(リベリオン)の本拠地」

 

「そうね。でも流石は解放軍(リベリオン)の本拠地。ここまで完璧な自然の要塞はうち以外知らないわよ」

 

「というかなんで母さんもついて来たんだ?刀華や陣さんたちと待っててよかったのに」

 

「こっちの方が()()()()()がしたからよ」

 

フッと恵が笑う。その笑顔は総司に似て獰猛な獣だった

 

「まぁいいんだけどさ・・っとここか」

 

高さ20メートルの重厚の鉄扉。その鉄扉を開けるとなると普通の人間には不可能だろう。しかしここに来た二人は普通の人間じゃなかった。

 

「母さん行ける?」

 

「当たり前でしょ。まだちょっとストレス溜まってるから邪魔するやつは刺すわよ」

 

総司が小太刀を一本抜く。そしてスッと一振り。一瞬の間の後。キンという音と共にその鉄扉は斬り裂かれた。そして激しい音と共に鉄扉は天険に落ちて消えた。

 

「ちょっと音デカかったな」

 

「いいでしょ。暗殺に来たわけじゃないんだし」

 

「・・今度はもっと頑丈な扉にしないといけないな」

 

そんな会話をしている二人の後ろには大量の人間が倒れている。この門を守っていた解放軍(リベリオン)の兵士たちだ。この兵士たちはここに生身で登ってきた人間を機関銃などの武装で迎撃を試みた。しかしそれは一切通用しなかった。すべての武装はこの二人の前に無効化され見事制圧されてしまったのだ。

 

「さてとやっぱり中にはもっといるか」

 

ドアの向こうにはさらに多くの兵士たちがいた。それ兵士たちはここまで登ってきたこの二人の異常性をしっかりと理解しその上で・・

 

「撃て!!!!!!」

 

さっきよりも大量の機関銃や戦車を用意した。しかし……そんなものはこの二人の障害になどなりはしない。

 

「風神結界」

 

総司を中心に風が巻き起こる。それによりいま砲撃されたすべての砲撃をあっさりと弾き飛ばした。

 

「いくらやっても無駄だ。こちらの要件を聞け。風祭晄三を出せ。話しがあるのはその人だ」

 

「そんな要求こちらがのむとでも?」

 

兵士の隊長であろう男が尋ねる。それにフッと総司は笑った。

 

「のむかのまないかの選択肢はお前らにないよ。それに・・もう制圧した」

 

「え・・」

 

そこで兵士全員が自分の身体が一切動かないことに気付いた。そしてこの男に自分たちはどんなに足掻いても勝つことは出来ないという事実悟り沈黙するしかなかった。

 

「さて風祭晄三はあの建物の中だな」

 

総司たちは兵士たちを縫って進み解放軍(リベリオン)本部の建物に向かう。すると建物入り口の前には一人の隻腕の男が立っていた。

 

「貴様たちは!!!」

 

その男は立っていた男女に驚いてしまう。それもそのはずだろう。日本の国籍を持つ伐刀者(ブレイザー)しかも魔人(デスペラード)が二人も立っている光景に驚かないものなどいないだろう。

 

「やっとちょっとは話が出来そうな人がいた」

 

総司はやれやれと言った表情で要件を告げた。

 

「風祭晄三に用がある。悪いが案内を頼めないか?」

 

「・・どういう要件だ?」

 

「ねえ総司この人ってもしかして」

 

「ああ。《隻腕の剣帝》サー・ヴァレシュタインだな。前はうちの後輩がお世話になったな」

 

「ふん。それで要件はなんだ?」

 

「そういえば言ってなかったな。えっと言葉を選ばずにはっきりいうぞ」

 

総司は衝撃の言葉を口にした。

 

「おれが《暴君》から解放軍(リベリオン)を継いでやるよ」




いかがだったでしょうか?

次回からはオリジナルストーリーとなります。衝撃の一言で幕を閉じた七星剣舞祭編ですが、これから物語をより加速していけるように頑張っていきますのでこれからも応援のほどよろしくおねがします。

今回も感想、評価、批評募集しております。よろしければお願いします。

ではまた次回会いましょう!!

簾木 健

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