落第騎士と生徒会長の幼なじみ   作:簾木健

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みなさん12巻は読みましたか?

まさかの展開に開いた口が塞がりません。

饕餮ってなんなんですか総司と被ってるじゃないですか!と思いながらもどう総司たちと絡ませようかとワクワクしています!!

では今回も楽しんでいただけると嬉しいです!!

簾木 健


覚醒

『な、なにが起きたのでしょう!?』

 

『・・・ありえない』

 

会場は騒然としていた。

 

『魔力が上昇しています。しかも玖原選手、王馬選手両方ともです。こんなことありえません!!』

 

解説の八乙女プロが叫ぶ。しかし、それは現実。その現実を闘っている二人は真正面から受け入れていた。

 

「王馬何分もつ?」

 

「三分」

 

「そうか・・・なら三分だ。もし三分でおれがお前を倒せないのなら、おれの負けでいい」

 

「そんなことはありえん。三分以内におれがお前を斬る」

 

「・・・・たく」

 

総司が構える。ダラリと両手を下げたその構えは見るからに隙だらけだ。しかし飛び込んだらただでは済まないだろうことは誰もが感じ取れる。それに応じるように王馬が構える。上段に振り上げなれた野太刀と迫力は会場を飲み込んでいく。そして次の瞬間・・・二人が消え鋼がぶつかる高い音が響いた。遅れて激しい振動と暴風が巻き上がる。

 

『なんという音と振動でしょうか!!ここまでのものは私の記憶にはございません!!!』

 

『これはもう明らかに学生騎士のレベルを超えています。というかこんな激しいものはAリーグでもほとんど見られませんよ!!!!』

 

この闘いに中。総司は笑っていた。

 

「なんだこれ・・・今ならなにもかもできそうだ」

 

魔力がみなぎり、それを完全に掌握し、爪の先までコントロールできる。

 

「しかも今まで《魔術複製(マジック・レシピ)》でコピーしたものが()()使()()()。しかも魔力が上がったおかげで一つ一つの威力が単純に上がってる」

 

負ける気がしない。王馬は激しい剣戟を繰り出す。それは一刀一刀が重く鋭い。しかし・・

 

「今はそんなもの気にならないくらいだ」

 

魔力が身体中迸らせる。雷系統の伐刀者が用いる。身体強化を施しさらに、アクセルを踏み込む。両手に持たれた小太刀の振り出す速度がさらに加速し、王馬のそれを軽々と凌駕していく。王馬が一刀を振る間に総司は三度王馬に斬りかかる。一度で王馬の野太刀をいなし、二度王馬を切りつける。さすがの王馬もこの距離では分が悪いと風を圧縮しそれを爆発させ距離を空けた。しかしそんなことではもう総司は止まらない。

 

「甘ぇ!!」

 

一瞬のうちに王馬の背後に総司が表れ斬りかかる。速すぎる動きに対応が一瞬遅れたが王馬がそれをなんとか防ぐ。しかし王馬の本来の目的である距離を空けるこが出来なかった。

 

『今のは・・』

 

『瞬間移動ですね。彼の母、玖原恵さんの能力ではないでしょうか』

 

『ということはやはり・・』

 

『ええ。玖原選手の能力は他の魔術をコピーするものでしょうね』

 

『本当に凄まじい能力ですね・・』

 

『しかもそれも自由に使いこなしていますね。ここまで使いこなしているのは恐ろしいですよ』

 

ただそんな解説とは裏腹に総司はまだ少し不満を感じていた。

 

「魔力の走りはいい。でも能力の繋がりや複合がまだ少し遅い・・が」

 

準備運動は終わった。

 

「王馬行くぞ」

 

総司が踏み込み、総司は止まることなく動き続ける。するとドンドンと総司が加速していく。

 

「あ、あれはウチの能力!!」

 

恋々が声を上げる。さらに総司は右手の小太刀をクルリクルリとまわす。

 

「あれはまさかわしの能力では」

 

雷が次に声を上げる。そこで総司の速度がマックスになる。マッハ4にもなった速度で王馬の背後に突っ込み、雷の能力で重量の増した小太刀を思いっきり振り切った。その攻撃にも王馬はなんとか反応し防ぐことに成功する。激しい音と共にリングにひびが入る。しかしそれすら王馬は防ぎきり、それに歓声が上がる。しかしそれで総司の攻撃は終わりではなかった。防がれた小太刀がバラバラに砕けちる。

 

「あれは私のですね」

 

カナタがフッと笑う。なにか自分の能力をここで用いてくてたことが嬉しそうであった。しかし王馬はそれすらも自分を中心にして激しい風を巻き起こすことで砕け散った剣の破片を吸い込まないように対処する。リミッターを外したことで行うことができた超人的な反応速度による適切な対処。しかもその風を用いることで切迫した総司との距離を空けることも同時に狙う。しただその風を持ってしても総司は距離を空けない。砕け散っていない方の小太刀が鞘に収まりバチバチと激しい音を立てている。その小太刀を総司は引き抜く。

 

「雷切」

 

怒号と爆風が巻き起こり目を眩むほどの光が会場を包んだ。その中で総司スッと距離を取り王馬の立っていたところを見つめる。フッと総司は笑った。

 

「さすがは王馬だな」

 

『な、なんと王馬選手!!立っています!!!体に傷を負いながらもその2本の足でしっかりと立っています!!』

 

『っ・・』

 

実況の言葉とは裏腹に解説の八乙女は息を吞んでいた。その視線の先にいるのはあの攻撃を耐えきった王馬ではない。あの攻撃を行った総司だ。

 

『何度も言いますがこれはもう学生騎士というレベルではありません』

 

『そうですね。二人とも『違いますよ』え?』

 

実況の声を遮り八乙女が衝撃の事実を告げた。

 

『玖原選手です。この攻撃に関しては玖原選手に注目すべきです。そしてこの攻撃によってわかりました。もう王馬選手に勝ちはないでしょう』

 

『えっ!?し、しかし王馬選手はすべての攻撃に耐えきっていますよ!?』

 

『確かに耐えきってはいます。しかしそれはあくまで耐えきっただけです。玖原選手の圧倒的な攻撃に対してすべて適切に対処をしていたと思います。しかし対処はできていても()()()()()()()()()()。逆にこの攻撃の間何度か王馬選手は反撃しようと試みています。でもそれはすべて玖原選手に止めれてしまっています。これでは耐えるしかできない。いずれ王馬選手は削り切られてしまいます。しかも・・』

 

八乙女の背中には嫌なものが流れる。それはもう認めるしかない事実。

 

『玖原選手はまだ本気ではありません。いまギアを完全にあげ切ったところ。これからさらに加速するでしょう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とんでもないな」

 

「ああ。こりゃウチやくーちゃんでも完全に手に余る」

 

日本歴代最高順位を持っていた二人がそう零してしまうほどに圧倒的な存在が今目の前にはいた。

 

「《覚醒(ブルートソウル)》に至ったことで今まで以上に能力を引き出せている。こりゃうちが()()()相手をしても負けるかもしれないねぇ」

 

「すでにそこまで魔人(デスペラード)なのか玖原は!?」

 

「ああ。こりゃちょっとやばい領域だ。《魔人(デスペラード)》になってすぐでこの雰囲気。これはもう洒落にはならないよ。しかもそれが《玖原》にいるってことは少し厄介かもね」

 

寧音が総司から視線を動かし、その母である恵を見る。恵はニコニコと笑って総司を見ていた。

 

「寧音。特には《玖原》としては何もないわよ」

 

「そうだといいんですけどね・・・じゃあ一つ質問なんですけど」

 

「あら寧音から質問なんて珍しいわね。なにかしら?」

 

「・・脚どうして治してるんですか?」

 

「え!?」

 

黒乃が驚き恵を見る。その二人の視線を受けても恵はフフッと微笑んだままだ。

 

「寧音あまり勘がいいのも考えものね」

 

「恵さん。それは答えてもらえないのはちょっと困るんですけどね」

 

寧音から鋭い気配が迸る。それを受けて恵はフッと真顔になり告げた。

 

「寧音さっきも言ったけど現世界三位って・・そんなに命知らずなのね」

 

寧音が思わず後ずさる。黒乃もピシッと固まってしまった。

 

「寧音。もし『玖原』に喧嘩を売ろうっていうのなら買ってあげるけど・・私も総司も本気であなたを潰すわ」

 

そうだと、そこで寧音と黒乃は気付く。この目の前にいる騎士は普通の騎士ではないということに。

 

「恵よ。それくらいにしとかんか」

 

その場の空気がその声で霧散する。

 

「鷹丸さん」

 

「黒乃ちゃんに寧音ちゃんも久しぶりじゃの」

 

そこにやってきたのは玖原鷹丸。ピシッと背筋を伸ばし、紋付袴を着ているこの老人が年相応の老人に見えるはずがないだろう。しかも三人とも並の伐刀者(ブレイザー)ではない。超一流の伐刀者(ブレイザー)であり武人である三人からしてみたらこの老人の立ち振る舞いは恐ろしさを感じさせるほどだった。

 

「恵よ。寧音ちゃんに喧嘩を売るのはちょっとばかしそうかと思うぞ」

 

「すみません」

 

「・・・まぁ良い。寧音ちゃんも黒乃ちゃんも悪いことをしてしまったの」

 

「いえ・・そんなことは」

 

「ふぉふぉ。総司のやつ至ったようじゃの」

 

鷹丸の目が鋭く光る。

 

「見たいですね。現日本五人目の魔人(デスペラード)

 

「まぁ総司はいずれこうなるとは思っとったが、思っとるより早かったの」

 

「これも《玖原》の血ということかい?鷹丸さん」

 

「さぁの。ただ・・・わしもまだ計り兼ねる」

 

鷹丸は慈しみ深く少し憂いをおびた表情で言った。

 

「総司の運命の大きさはまだ図り切れん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時間がないな。王馬。決めさせてもらう」

 

総司が小太刀を掲げる。それに激しい風集まり圧縮され巨大な剣を作りだす。

 

月輪割り断つ天龍の大爪(クサナギ)

 

50メートルを超える巨大な風の剣。しかし総司はそれをさらに圧縮していく。刃はどんどん鋭くなり、それをリングにスッと振るうとナパーム弾すら傷のつかないはずのリングがあっさりと斬れる。これで斬り裂かれてしまったのなら普通の人はただじゃすまないだろう。

 

『あり得ない。あれほどの風の剣をさらに圧縮して刃としてしまうなんて・・・普通の伐刀者(ブレイザー)だったら弾けて霧散してしまいます。それもあんなにも軽々と圧縮してしまうなんて』

 

「さぁ王馬これで倒れなければお前の勝ちだ」

 

「総司おれは言ったはずだ」

 

総司の言葉に王馬がゆっくりと霊装(デバイス)である龍爪(リュウヅメ)を掲げる。王馬圧倒的な総司の力を理解し、それを受け入れた。ただ総司自身も今回この戦いに強く入れ込んでいる。もしこの化物に勝つ隙があるのであれば、ここしかないと王馬は覚悟を決めた。

 

「この一刀で斬り捨ててやる」

 

「やれるもんならやってみろ!!!!!」

 

総司は圧縮した月輪割り断つ天龍の大爪(クサナギ)を右手で逆手に持ち左手の小太刀を腰に差した鞘にしまった。二人から放たれる剣気が凄みをまし会場を包む。もはや実況も解説もなにも声を出せずにいた。そんな中観客席で見ていたステラが横にいた一輝に言った。

 

「すごい集中力ね。もうこれだけで人を斬れるとさえ思えるわ」

 

それに一輝も頷く。

 

「そうだね。いくら王馬兄さんでもリミッターを解除した状態には制限時間があるだろうし、それに総司さん相手に持久戦を望めば勝ちはないこともわかってる。だから王馬兄さんはここで勝負をつけるつもりだ」

 

「王馬が次に出す技を一輝は知ってるのね」

 

「うん。王馬兄さんが使うのは侍局のころから黒鉄家に伝わる剣技《旭日一心流(きょくじついっしんりゅう)》の迅の極《天照》。流派最速の技で総司先輩を斬るつもりだろうね」

 

「でもあんなに剣を振り上げて待っているような態勢の人にソージさんは突っ込むかしら?」

 

ステラの疑問は正論であり、もしここで突っ込まず魔術戦に持ち込めば総司は確実に勝つだろう。しかし総司はそんなことはしない。刀華が一輝の挑戦を受け入れたように総司もここは王馬の技を真っ向から叩き潰すだろう。

 

「総司先輩は絶対に逃げない。そして興味があるよ。総司先輩がいかにして王馬兄さんの《天照》を突破するのか」

 

そう一輝が言ったと同時に総司は王馬に向かい突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筋肉を限界まで絞り、撓め、背骨の関節にすら捻りを加えて、相手に背を向けるほど身体を捻る。これにより全身全筋力はもちろん、捻じれた体勢から元に戻ろうとする骨や関節の反発すら加速に利用する。まさしく全身全霊にて放つ一太刀。一撃放った後の備えも反撃の構えも何もない。ただ速さのみが旨。斬ることのみが理。それこそが一輝の言った黒鉄家に伝わる《旭日一心流(きょくじついっしんりゅう)》の極の一つ。迅の極《天照》。

 

「っ・・・・」

 

限界まで身体を捻った姿勢から振り抜かれる白刃は()()()()()()()()()()()総司に振り落ちる。しかしその白刃すら総司の目は捉えていた。そしてその刃に対して自身が逆手で持った風で研ぎ澄まされた刃を当てる。そして剣同士がぶつかる。次の瞬間ぶつかった剣の方向との反対方向に総司が回転したのだ。そしてその回転のまま腰に差した小太刀を左手で抜き打ち王馬の上半身と下半身がわかれた。

 

「天陰流 六条」

 

この理合いを一輝とステラの目は見抜いていた。

 

「今のは王馬兄さんの《天照》を吸収してそれを使って斬った」

 

「ええ。あの速度の剣をきちんと受けてしまうなんて・・・アタシなんて全く見えなったわ」

 

「王馬兄さんの《天照》は《比剣》の剣速に遜色ないくらいの速度だったよ。でもその一刀すら今の総司先輩には届かない」

 

この七星剣舞祭において最も自分たちの目標を達成するための関門となる存在が総司であることを二人は改めて悟った。




いかがだったでしょうか?

実はもうすぐ七星剣舞祭編のラストです。そこからはオリジナルな展開でいこうとプロットを書いていたのですが・・・なんか原作に似てきそうですね。まぁなんかいい感じに原作も入れつつオリジナルをやっていければと思っています!これからも応援等よろしければお願いします!

今回も感想、批評、評価募集しております!よろしければお願いします!

ではまた次回会いましょう!!

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