『圧倒的!!!!!圧倒的です!!!!!破軍学園三年玖原総司選手!!大会記録を大きく上回る3.2秒での三回戦進出です』
総司がふうっと一つ息をつくとスタジアムから出ていく。すると会場の入り口のところに知り合いとすれ違った。
「王馬・・・・」
「総司・・・・」
すれ違い。お互いに感じる魔力にオーラ。この間破軍で戦った時とはそれが桁違いになっているのを互いに全身で感じていた。
「どうだ調子は?」
総司が尋ねる。それに王馬がふんと鼻を鳴らす。
「そんなものは関係はない」
「まぁそうだな」
「ああ」
王馬が獰猛な笑顔を浮かべる。その笑顔に総司も似たような笑顔で返す。
「その殺気は次まで取っておけよ」
そう言って総司は王馬から離れていった。
「玖原」
「黒乃さん。仕事はいいんですか?次はステラですよね?」
「お前と話しながらでも特に問題はないだろ?」
「さすがですね」
総司はそう言いながら黒乃の横に腰を下ろす。
「そういえばこの間恵さんから連絡が来たぞ。七星剣舞祭見に来るみたいだな」
「明日から来るみたいですね。珍しく親父も来るみたいですし」
総司がなんでもないと言ったような感じで言うがそんな態度に黒乃はフッと笑ってタバコを咥えた。
「なんですか?その意味深は笑みは」
「わかってるだろうが。相変わらずお前は素直じゃないな」
「どういうことですか?」
総司がムッとして黒乃を見る。その表情に黒乃はタバコに火を付けながら笑みをこぼした。
「少しは17.8の顔をするようになったな」
「なにが言いたいんですか?」
「ちょっとした生徒の成長を実感してるところだ」
「どうしたんですか急に」
怪訝そうにそう言いながら総司の視線はドームの中心に移る。そこには次の試合をする2人が入場し、向かい合っていた。
「玖原。次の試合どう見る?」
「別に特別なことはないでしょう」
黒乃の問いに総司はなんでもないと返す。
「ステラの圧勝でしょうね」
ステラの相手は暁学園の多々良幽衣。一筋縄ではいかない相手のはずだ。しかしそれは黒乃も同意見だった。
「確かに分が悪いな」
「ええ。しかもステラは修行中暁をかなり意識してましたし・・・容赦なくいきますよ」
「そういえば寧音のところに行ったんだったな。ヴァーミリオンも無茶をする」
「まぁそうですね。実力差を考えると・・・・「そうじゃない」・・・じゃあどういうことですか?」
「お前と寧音の修行に入ることを無茶と言ったんだ」
黒乃がハァとため息をつく。黒乃は総司と寧音が調整だの修行だのいいながら剣を交えていることを何度も見たことがあるがそれは軽い世紀末だ。それに実力も伴わず割って入ろうと自分からするなど黒乃からしたら無茶以外の何物でもない。しかもそれなりに手加減の出来るものたちならまだそれでもいいのかもしれないが寧音と総司という明らかに手を抜くことがない2人に対してそれをやるなど無茶を通り越えて無謀な領域だ。
「おれと寧音さんだって手加減しますよ」
「悪い冗談だな」
「そんなことないですって」
総司がジトッとした眼で黒乃を見るが黒乃はそれを気にせず煙を口から吐き出す。
「ただそれのおかげでヴァーミリオンは一皮むけたみたいだな」
「ええ。かなり強くなりましたよ」
「・・・・お前から見てヴァーミリオンはどう見える?」
黒乃がふいに総司にそう尋ねた。総司は少し考えてから答えた。
「恐ろしいですよ。世界最高魔力。それは圧倒的な力です。でも・・・・・」
総司の眼が鋭く光る。
「戦うことになったらぶち倒しますよ」
そこで試合終了の合図が響く。勝ったのはやはりステラ・ヴァーミリオンであった。総司は立ち上がる。
「黒鉄の試合は見ないのか?」
「見ますよ。ただまぁ結果は見えていますけどね」
「ほう・・・・・」
一輝の次の相手は雄大と同じ武曲学園の城ケ崎白夜。『天眼』の二つ名を持つ昨年度の七星剣舞祭準優勝者だ。
「一輝が勝ちますよ」
「それはなぜだ?」
黒乃が尋ねる。それに総司はフッと笑った。
「黒乃さんあなたにハンデ戦とはいえ勝ったあの騎士が・・・・自分が負ける未来を選ぶわけがないでしょう」
一輝の試合は速攻だった。開始の合図から『一刀修羅』を使い、白夜を叩き切った。それで試合終了。総司の作った最短試合記録を破ることになるほどの速攻だった。その日の夜。総司は次の試合に向けて調整を兼ねて武曲学園で諸星雄大と向かい合っていた。
「ハァァァァ!!!!」
気合いとともに繰り出される槍。それを総司は避け、横から殴り吹き飛ばす。そして切りかかる。
「っ!!!」
「そこまでです!!」
その声で切りかかられた小太刀は雄大の首の前で止まる。
「くそーまた勝てんやった」
雄大が槍を消しその場で座り込む。総司も小太刀を鞘にしまい消す。
「やっぱし槍には特に強いな総司は」
「そりゃ昔から母さんとよく戦っているんだ」
「恵さんにはやっぱりまだ勝てへんか」
雄大はハァとため息をついた。
「そうちゃんこれで今日の調整は終わり?」
総司と雄大の摸擬戦を見ていた刀華がそう尋ねる。
「ああ。これで終わりだ。あとは寝て明日に備えるだけだな」
「そういや総司明日の試合は・・・・・」
「ああ。王馬とだ」
総司がそういうと雄大がスッと眼を細める。その眼が言わんとしていることは総司にもわかる。だから総司は笑った。
「勝てるさ」
総司がそう断言する。その眼に宿る確かな自信。そしてその身に纏うなにかが変わる。
「おれは王馬に負けてない」
総司がフッと笑う。それは普段の獰猛で今にも襲い掛かりそうなものではなく、優しく誰もが見惚れてしまうのではないかという笑顔だった。
「総司のやつなにかあったな」
雄大が呟く。戦っているとき総司はとても楽しそうに笑顔を浮かべ雄大の槍を捌き、攻撃を繰り出してきたいた。しかしそれが雄大にとっては違和感でしかなかった。
「あいつはあそこまで戦うことを楽しむようなやつではなかった。でも今は心から楽しんどる」
その変化が良いことなのかどうかはわからない。でも・・・・・
「それがいい変化であることを祈るしかないんよな」
そこで浮かぶのは最後の淡い笑顔・・・雄大は唇をかんだ。
「あいつまさか
「寧音邪魔するぞ」
「ありゃ・・・くーちゃんどうしたの?珍しいねうちのところに来るなんて」
「お前なら知ってると思ってな」
「知ってる?なんのことだい?」
「玖原のことだ」
黒乃がそう言った瞬間。寧音の口先が持ち上がった。
「総司ちゃんのことね」
「その様子だと、知っているようだな」
「くーちゃんも気づいてるでしょ?」
「・・・・・・くそ」
黒乃が苦虫を潰した表情となり悪態をつく。それを聞きながら寧音は煙管から口を離し煙を噴出した。
「・・・・いつからだ?」
「一緒に修行をしてたときだよ。あとはきっかけと意志だけだね」
「そうか・・・・」
黒乃もスーツのポケットから取り出した煙草に火をつけた。
「まさかあの歳でな・・・・」
「総司ちゃんだからね・・・・仕方ないよ」
「あいつはどっちを選ぶのか・・・」
「それは決まってるでしょ。総司ちゃんはくーちゃんみたく臆病じゃないからね」
寧音が吐き捨てる。
「寧音・・・・・」
「うちはあの時の後悔をくーちゃんも持ってると思ってたのにね」
寧音の表情に浮かぶのは諦め。
「とりあえず明日の総司ちゃんと王馬ちゃんの試合。気を付けておいてね」
そういって寧音は煙管を灰皿にカーンと叩きつけた。
本当にすみません。リアルがマジで・・・・・とはもう聞き飽きましたね。
かなり投稿のペースが上げられると思います。これからもよろしくお願いします。
今回も感想、評価、批評募集しています。よろしければお願いします。
ではまた次回会いましょう!
P.Sそういえばですが、もう一つ小説をあげることになるかもしれません。今はまだプロットの段階なのでどうなるかはわかりませんが、もしあげることになればそちらもよろしくお願いします!!