「ふう・・・・・」
ステラは控室に戻り一つ息をつく。そして自身の中に巡る力を感じる。寧音と総司との合宿を終えて自身の基礎的な力はかなり上昇した。しかも新たな切り札もある・・・・・
「もう二度とあんな合宿は嫌だけど・・・・」
あの合宿のことを思い出すだけで鳥肌が収まらなくなる。限界まで追い込まれてなお、その先を見せてくる二人。そんな二人が今でも夢に出てうなされることがあるほどだ。でもそれと引き換えに手に入れた力はステラをさらなる強者に押しあげた。そしてそこまで来てステラは一つ理解したことがあった。
「ソージさんは強い。それもとてつもなく」
ステージが上がったことで改めて理解した総司の強さ。一輝とは違うベクトルで発揮される総司の邪道の力は圧倒的な力を持っている。互いに勝ち上がってくれば準決勝で当たるがそこが一番の壁になる・・・・・・
「気が重いわね」
ステラはポツリと零し控室をあとにした。
「次は一輝と雄大か・・・・・中々珍しい戦いになりそうだな」
総司が言うとそれに刀華も頷いた。その場にいるのは総司と刀華とカナタの三人。キリコはなにか用があるらしくどこかに行ってしまった。
「ええ。二人とも魔術ではなく体術に比重を置いた騎士ですから」
「ああ。それにどちらも搦め手で相手の裏をかくことで自身の土俵に引きづり込んで戦う騎士。かなり高い読み合いになるだろうよ」
「総司さんは黒鉄君と諸星さんどちらが勝つと考えているんですか?」
カナタが総司に尋ねる。
「そうだな。どっちも勝てる可能性がある。でももし比率にするなら7:3で雄大だな」
「その心は?」
「さっきも言ったがどちらも体術に比重を置いた騎士。体術だけなら一輝の方が明らかに上だけど雄大の得物は槍。刀を使う一輝にとっては不利な相手だ。あと雄大の
「そこまで諸星さんに勝てる要素があれば諸星さんが確実に勝つのではないんですか?」
カナタのそんな疑問に総司は「普通ならな」と言って続けた。
「たぶんそんなことは一輝も百を承知だろう。というか一輝とってはこんな状況は日常茶飯事。そこから試合をひっくり返すことが出来る力を持つ騎士こそ黒鉄一輝。相手が負け戦の百戦錬磨だからこそ雄大が勝つ可能性は7割くらい」
「なるほど」
「でもそうちゃん。去年の私みたいに
「あ・・・・そういえば雄大には
「?諸星さんにはさっき言ったこと以外に何かあるんですか?」
「ああ。ちょっとな・・・・そういえばそれで去年の刀華は封殺されたんだったな」
「ええ。一発目のそれを避けきれずに脇腹にもらって・・・・・・」
「まぁあれはいくら映像を見てもわからないものだもんな・・・・さすがは母さんの技だよ」
「恵さんの技ですか?」
カナタが尋ねる。それに総司はああと頷いて続けた。
「まぁこの頃は使わなくなったというか・・鍛錬をやめたせいで技の練度が納得がいかないから使わないんらしい技なんだけど。リトルの時同じ槍使いである雄大に一度指導をしたことがあったらしくてその時に教えたみたいなんだ」
「みたいですか?」
「ああ。この話は雄大から聞いたんだけど、後で母さんに聞いてみたら覚えてないって言われてよ。どうもそのころそう言った指導をすることがあまりにも多くあったらしくて誰に何を教えたのかまでは記憶してなかったらしい。でも雄大の槍捌きを見るとに母さんが結構しっかり教えたんだと思うんだけど・・・・・」
「そうなんですか?」
「性別が違うから完全とは言えないんだけどかなり似てるよ」
「へー・・・そういえばさっき言ってた技はどんな技なんですか?」
「『ほうき星』って雄大は呼んでるんだけど、手元のスナップと肘の角度を変えることで槍を突き出しながら軌道変える技でな。動画なんかでは確認できない技なんだ。これがやっかいで初見だと確実にヒットはする」
「そんな技が・・・・」
「ああ。種さえわかればある程度防ぐことも出来る技だからこの技に関して重要なのはいかに初見でヒットする場所を軽くするかだ。無理をしてしまえばその技の時点で試合が終わる可能性がある」
「そういえば去年の七星剣舞祭の時もですが・・・・総司さんはその技のこと会長に教えてなかったんですか?」
「いや刀華には教えてたよ。でもそれでも避けきれなかった」
「そうなんですか?」
カナタが目を見開いて刀華に尋ねると刀華は厳しい表情で答えた
「諸星君のプレッシャーに一つ一つの刺突の鋭さでそれを隠し使われました。当たってから自分がそれに絡めとられたと気付いたんですけどもう遅かったですね」
「さすがは『七星剣王』ということですか」
総司が頷く。その眼についに入ってきた雄大を捉える。会場は割れんばかりの大歓声。それに拳を突き上げて答える雄大は悪戯っぽい笑顔で笑っていた。
「調子良さそうだな」
総司が漏らす。
「そうですね・・・・・・黒鉄君も調子良さそうです」
「さてどう転ぶか・・・・」
総司がニヤリと笑ったと同時に試合が始まった。
「おかしい」
総司の目が鋭くなった。
「そうですね・・・黒鉄君なんだか・・・・」
「違う。そっちじゃない」
「え?」
刀華の言葉を即座に否定する総司。その理由がわからず刀華が首を傾げた。試合はファーストヒットを雄大が奪いそこからは大腿部にもダメージを与えるなど雄大が優勢のまま試合が進んでいる。そんな中、明らかに一輝の動きが可笑しい。いつものような鋭さや繊細がないのだ。しかし総司が目を付けたのはそっちではなかった。
「雄大のやつなんで決めにいかない・・・・」
「どういうことですか総司さん?」
「一輝の調子が悪いのは見ていてすぐわかる。いいタイミングで動きがフリーズしてなにか噛み合ってない。でもそれ以上におかしいのは雄大だ」
「諸星さんですか?」
「ああ。あいつはしっかりと相手をリスペクトする男。そんなやつがこんな風に相手をいたぶるようなことをするはずがねぇ。それがおれにはわからない」
総司が眼を細める。その眼は何か見えていないものを捉えようとしているように見えた。
「そうちゃんもしかして黒鉄君になにかあるの?」
「そんな風には見えないんだけどな。でも雄大はなにか感じてるのかもしれない」
「私には必死に逃げ回っているくらいにしか見えませんが・・・・・」
「おれにもそう見えてるよ」
総司が苦笑いを浮かべる。そんな時に雄大の声が響いた。
「行くぞぉぉぉ!!!黒鉄ぇぇぇッッ!!!」
ついに雄大が試合を終わらせるべく一輝に襲い掛かる。今までの最高の速度をもって突進しながら繰り出すのは高速の三連突き《三連星》。狙いは眉間、喉元、鳩尾を穿つ必殺の軌道。大腿部を穿たれた一輝にこれを避ける手段はない。しかもその槍は魔力を喰らう雄大の
「終わったな」
総司はそう思う。どう考えてもこの技を防ぐことは出来ない。雄大が勝った。総司がそう思った時だった。一輝が雄大を向かい打つべく切っ先を上げ・・・・・その切っ先が消えた。
「なっ!」
その一言の間にすれ違いざまに雄大の脇腹を深々と薙ぎ払った。
「あれは・・・・・」
「ええ・・・・」
総司と刀華。二人にはその動きに見覚えがあった。速すぎて消えるように振るわれる音すらも置き去りにした世界最強の剣士、エーデルワイスの剣。
「あいつ!!」
総司が思わず前のめりになる。総司がここ最近目標としていた領域。そこにあの鬼才は足を踏み入れた。
いかがだったでしょうか?
ついに一輝が覚醒しました。まぁ原作通りなんですけど・・・・・・・
さて次からはまた総司の戦いにシフトしていきたいますのでお楽しみに!!!
あと私事なんですけど今まで連載をやめていたもう一つの小説を動かしていこうと思っています。よろしければそちらも読んでいただけると嬉しいです!!
今回も感想、評価、批評を募集していますのでよろしければお願いします!!
ではまた次回会いましょう!!