落第騎士と生徒会長の幼なじみ   作:簾木健

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遅くなって本当に申し訳ありません!!!

もうちょっと定期的に投稿できるようにします!!

今回も楽しんでいただければ嬉しいです!!


簾木 健


正面

「ガァァァァァァァッッッ!!!!!!」

 

恋司の雄たけびと共に、その身体にこれまでにない変化が起こる。鋼鉄の塊と化した加我の肩から、新たに二本ずつ、左右合計四本の腕が生えてきたのだ。

 

『な、なんとォ!こ、これは!腕が増えたァァッ!?』

 

あまりに奇怪なその変化に驚きの声を上げる実況と観客達。その横で解説の牟呂渡がニヤリと笑う。

 

『なるほど・・・・。ただ硬化するだけでなく整形したわけですか。これにより当然手数が増え、攻撃力防御力共に三倍に跳ね上がる。考えましたね』

 

「がははっ!解説サンの言う通り!おれの霊装(デバイス)《雷電》の能力は肉体の鋼鉄化!そして鉄ならば自在に整形できるのが道理だべ。これがおらの取っておき!その名も《鉄塊・阿修羅像》!!」

 

『これは玖原選手は厳しくなりましたね。あの手からのラッシュを受ければさすがに無事ではすまないでしょう。しかも加我選手の身体は鋼鉄ですから傷つけるのも容易ではありません』

 

『確かに!!これは玖原選手絶対絶命です!』

 

しかしそんなこと言われている当の本人は楽しそうに笑っていた。そしてもう一本の小太刀を抜き放った。

 

『おっと玖原選手ついにもう一本の小太刀を抜き放った!!』

 

『かなり強い魔力を放っていますね。なにか策を思いついたのでしょうか』

 

リングに立つ総司を中心として魔力が渦巻いていく。それは段々と段々と大きくなっていく。

 

『待ってください・・・・これは・・・・・』

 

牟呂渡が驚きに目を見開く。この状況を見ていた伐刀者(ブレイザー)たちもこの異常さに気づいた。

 

「総司君とんでもないものを隠していたのね」

 

キリコがたらりと汗を流す。カナタと刀華はなにも言えず目を見開いて総司をじっと見つめていた。

 

「これは・・・・」

 

「とんでもないですね本当に・・・・」

 

一輝の呟きに珠雫が苦笑いを浮かべる。

 

「これが今のソウジさんよ」

 

ステラは総司の動きを一瞬たりとも見逃すまいと見つめていた。

 

「総司の野郎・・・・これはヤバイだろう・・・・・・」

 

雄大は好戦的な笑みを浮かべ楽しそうに笑った。

 

「さて・・・・行くか」

 

総司を中心に起こる魔力の渦。その渦に呑み込まれそうになる恋司。恋司はその魔力の密度にゾッとする。

 

「恋司・・・・しっかり構えろ」

 

そして総司の姿が恋司の目から掻き消えた。

 

『なっ!!速い!!』

 

そんな実況の声が届いた時にはもう総司は恋司の後ろに居て小太刀を振りきっていた。その小太刀は恋司の鋼鉄の肉体を切り裂き血を飛び散らせていた。

 

「がっ!!」

 

恋司が苦痛に顔を歪める。しかし恋司も一線級の騎士。顔を歪めながらも後ろを振り向くが、その時には総司はもう間合いをあけて恋司の腕が届かない位置に立っていた。その一瞬に起きたことを解説の牟呂渡はなんとか目で捉えていた。

 

『魔力に強化された脚力と重力を操作することによって速度を上げてからさきほど用いたのと同じ『縮地』を使って移動して、後ろから斬りつけたんですね。しかもその刃は魔力で研ぎ澄まされていましたね・・・・感嘆するほどの魔力制御ですね』

 

『凄まじい!!!!厳しいかと思われた玖原選手ですが圧倒的な魔力制御を用いて加我選手を斬りさきました!!そういえばさきほど牟呂渡プロなにか言い淀んでいませんでしたか?』

 

『ええ・・・・実はさきほど玖原選手が魔力を放出した時なんですが・・・・実はその魔力から様々な種類の魔力を感じたんです。それでなんとなくですが・・・・玖原選手の能力が見えてきました』

 

『本当ですか!?では玖原選手の能力とは?』

 

『まだ推測ですが、条件として様々な魔術を使うことができること。そうすれば考えられるのは二つ。一つは元々様々な魔術を使うことができるという伐刀絶技(ノーブルアーツ)。そしてもう一つは伐刀絶技(ノーブルアーツ)をコピーする伐刀絶技(ノーブルアーツ)ですね。ただどちらにしてもかなり強力な能力です。玖原選手のランクはCランクとなっていましたが、もし能力が予想通りならそれはAランクにも届きうる能力ですよ!!』

 

その解説に会場がどよめいていく。

 

「本当にそうやったら最強やないか」

「でも重力に雷・・・その両方を使っていたことも説明できる」

「ならほんまに・・・・」

 

「ガアアアアアア!!!!!」

 

会場のどよめきを消すかのように恋司が叫び声を上げる。その声に合わせ総司に斬られた部分が鉄に覆われ塞がれていく。

 

『これくらいでは終われない!!加我選手咆哮とともに玖原選手と向かい合う!!!!』

 

『しかしこれはわからなくなってきましたね・・・・加我選手には一撃を入れれば相手を圧倒できる力があります。しかし玖原選手にはその攻撃が当たらないほどの速度に圧倒的なまでの魔力制御と未知数の伐刀絶技(ノーブルアーツ)があります。どちらもたった一手でこの戦いを終わらせる力を持っています。この勝負は自らの土俵に相手を引き込んだほうがこの勝負を持っていきますよ!!』

 

その言葉と同時再び総司が恋司に向かって踏み込んだ。

 

『玖原選手が再びいったぁぁ!!!』

 

さっきと同じ理で踏み込んだ総司。その右手にはさっきまで握られていた小太刀はなく素手。そしてその右手で恋司の背中触れた。

 

「天陰流 霊亀・・・・・改」

 

「ッ!!!!!」

 

たったそれだけのことであの巨大な恋司の身体が吐血しがら前のめりに倒れていく。しかしなんとかふんばりダウンは回避したが恋司の表情は驚きで固まっているものもなんとか後方の総司に向かって拳を振るうがそれもあっさりと総司は回避し距離を取った。

 

『な、なんということでしょう!?玖原選手が背中に触れた瞬間加我選手が吐血しダウン寸前だぁ!!!!これは一体どういうことだ!?』

 

『・・・・あれは浸透頸のようなものですね』

 

『浸透頸?それは一体?』

 

『俗に発頸と言われる技です。しかし私が知っているものとは大きくことなっています』

 

『それはどういうことでしょうか?』

 

『理合いはほぼ同じです。相手の体内に振動を伝え身体を内側から破壊する技のこと。しかしそれを起こすためには相手の体内に振動を送り込むために強い振動を起こさないといけません。しかし玖原選手は加我選手に対し触れただけでした。あれでは振動を送り込むのは至難の技でしょう。しかも加我選手は全身が鋼鉄と化しています。あれではさらに振動を伝えるのは困難。しかしそれも玖原選手は魔術によってなんとかしたようです』

 

牟呂渡の解説は総司のやったことをほぼ適格に表していた。しかしそれでも完全ではない。この技が為したことの恐ろしさを完全に理解できたのは会場でたった一人。

 

「なんて技をやってくれるのかしら」

 

《白衣の騎士》と言われる医者であり人体のスペシャリストであるキリコだけだった。

 

「キリコさん今のは?」

 

カナタが尋ねる。刀華も真剣な顔でキリコを見つめていた。

 

「理合いは解説の人が行った通りよ。でもあれは振動を伝えたんじゃないわ。体内で振動起こしたのよ。加我君の血液なんかを使ってね」

 

「えっ!?」

 

「普通な外から振動を伝えて血液なんかを振動させて相手を体内から破壊する技なんでしょう?でも総司君は今回それを最初から加我君の体内で行ったのよ。そんなことをされてしまったらいくら皮膚を鋼鉄化したところで無意味。だってあれは体内からの攻撃。防ぐすべはないわ。でもそこまでのことをされたのになんとか踏み止まれたのはひとえに加我君の強靭な肉体のおかげね。もし普通の人間だったら大変なことになっていたわ」

 

「でもそれって・・・・」

 

刀華が目を見開き総司を見ながら尋ねる。

 

「そうちゃんはあの一瞬で加我さんの血液などを操ったってことですよね・・・・・」

 

「ええ。そうよ。全く・・・・ついに超えられちゃったかも」

 

キリコが自嘲気味に笑う。その言葉が総司が行った埒外の技がどんなに恐ろしいものか刀華とカナタに改めて理解させた。そこでさらに総司が突っ込む。恋司は六本の腕で相撲の突っ張りを繰り出し総司の小太刀を間合いに入らせまいとするが、総司はそれを避け、受け流しを繰り返しながら段々と侵入していく。

 

『素晴らしい!!!玖原選手が加我選手の繰り出す突っ張りに怯むことなく段々と間合いを詰めていく!!』

 

『本当に恐ろしいですね。一発でも当たればアウトなんですが・・・・・しかも玖原選手はそれによって同時に加我選手の危険な技一つ回避しています』

 

『危険な技ですか?』

 

『ええ。玖原選手にとって最も危険なのは加我選手のタックル・・・・相撲の立ち合いのように突っ込んでこられることです。それを加我選手のような巨体から繰り出されるとどうしても不利です。だから玖原選手は近づくことでこれを使わせないようにしているのではと私は思っています』

 

『し、しかし距離を詰められてもタックルは有効なのではないですか?むしろ距離が近い分当たりやすいと思いますが・・・・・』

 

『確かに距離が近い分当たりやすいです。しかし玖原選手にはさきほど見せた圧倒的なスピードがあります。もし加我選手がタックルに行こうと少しでも突っ張りを緩めればそのスピードを持って決定打を取り行くでしょう。ですから加我選手はここで手を緩めるわけにはいかないんです。しかし突っ張りでは玖原選手は倒せない』

 

『おっと!!ここでついに玖原選手が間合いに侵入し加我選手を斬りつける!!しかし加我選手倒れません!!血が激しく飛び散りますがそれでも突っ張りの手を緩めません!!!玖原選手もさすがに間合いから後退します』

 

『本当に驚くべき耐久ですね・・・・しかしもう加我選手には後退する玖原選手を追撃する余裕はないです・・・これは厳しくなりました』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでも倒れないのか」

 

そう思いながら総司は厳しい目をして恋司を見つめていた。総司自身はさっきの技、『天陰流 霊亀』でこの勝負を決めるつもりだった。霊亀は解説が言っていたよういに浸透頸と言われるもので相手を体内から破壊する技である。総司はそれを自身の能力で所有している水の魔術を応用することで体外から放つ振動を最初から体内で起こす技に進化させたのだ。ゆえに改。しかしそれを持ってしても恋司は倒れない。その後何度も斬りつけたがそれでも決定打にはならない。本当に異常なほどの耐久力である。

 

「耐久がすごいのは聞いてたけどここまでとは思ってなかった」

 

総司はふうと一つ息を吐きどうするか考えを巡らす。

 

「この耐久を貫くには一気に倒してしまうしかない・・・・・・・それなら切り札をここで一つきるか」

 

総司としてはここで一つ切り札を使ってしまうのは正直良いとは言えない。でも・・・・

 

「この男は折れない。何度でも立ち向かってくる。でもおれはそれに何度でも付き合ってやるほどお人よしでもないんだよ!!」

 

総司の手にあった一本の小太刀に強い魔力が集まり別の形をなしていく。

 

『これは・・・・槍?』

 

それは禍々しく魔力をまき散らす一本の黒い槍。恋司もそのヤバさにすぐに気づく。そんな恋司に対し総司はフッと笑った。

 

「これで終わりだ恋司・・・・・・」

 

総司はその槍を振りかぶる。

 

天之逆鉾(あまのさかほこ)!!!!!!」

 

総司がその槍を投げる。凄まじい速度で飛ぶ槍。それを真っ向から恋司は受け止めるためすべての手を前方に集める。鋼鉄の手と黒い槍が激しくぶつかる・・・・・・と会場にいた誰もが思っていた。しかし槍は鋼鉄の腕をあっさりと貫通したのだ。そしてその槍はその勢いそのままに恋司を貫いた後総司の手に戻ってきた。

 

『えっ・・・・・』

 

「かはっ・・・・・・」

 

会場の全員が唖然とする中、恋司の身体がゆっくりと沈みリングに倒れ込む。それを確認してから総司は槍の魔力を解き元の小太刀に戻す。そこで唖然としていた審判や実況が正気を取り戻す。

 

『な、な、なんと!!たった一投!!しかしその一投であの加我選手を穿ちました!!!!主審が走り寄ります。しかしこれは完全に決まったでしょう!!!』

 

『そうでしょうね』

 

牟呂渡は厳しい眼で総司を見つめる。その視線にあるのは感嘆と恐怖だった。

 

『玖原選手の完成度はもはや学生騎士のレベルではありません。これは確実に今大会をかき乱す筆頭ですよ』

 

『さぁここで主審が手をバツに掲げます。試合終了!!しかし加我選手は大丈夫でしょうか?』

 

『大丈夫でしょう。完全に貫通していましたがたぶん心臓には当たっていません。しかし他の臓器もあるので・・・・・・なっ!!』

 

牟呂渡が急に驚きの声を上げる。その声につられ全員がもう一度試合の終わったリングに目を向ける。するとそこには恋司の傷口に手をあてその傷をみるみる治している男。さきほどまでこの恋司と戦いこの傷をつけた本人がその傷を治していたのだ。

 

『なんと玖原選手が加我選手の傷を治しています!!しかもかなりのスピードですね。伐刀者(ブレイザー)ではあんなにも早く傷を治せるものなんですか?』

 

『いえ・・・そんなことはありません。というかあの速度で傷を治す伐刀者(ブレイザー)など数えるほどしかいません・・・・本当に驚愕の魔力制御ですよ』

 

そんな実況の驚きの声が届く頃には総司は恋司の治療を終え、恋司が連れられていくのと逆のコーナーに向かって歩き出していた。

 

『その実力は前評判を上回るものでした!!!勝者は破軍学園玖原総司選手!!!これからの活躍が楽しみです!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ・・・・」

 

総司は控室に戻り一つ息を吐いた。総司のこの一回戦で自身のオリジナルである伐刀絶技(ノーブルアーツ)を使うつもりはなかった。しかしこの場で使うことになってしまったのは恋司が強かったからだ。しかしそれでも総司は使うつもりなかった。それは恋司をなめているとかではない。

 

「王馬・・・・・」

 

総司の好敵手であり総司たちの世代唯一のAランク。その王馬がこの試合を見ていた。王馬は敵の試合を見ることなどほとんどない。なぜならそれは王馬には必要ないからだ。王馬クラスになればどんな相手であっても叩き潰すことができる。ゆえに相手の試合を見て観察することなど不要。目の前に立ってただ叩き潰せばいい。しかし今回この総司の試合を王馬は見ていた。総司が気付いたのは入場の時。その時は恋司に集中するため無視していたが試合が終わり、恋司の治療をしている際、感じたことがある強い視線を感じたのである。

 

「あいつどこかで見てた・・・・・これで一つ切り札を失ったな」

 

もうさっき使った伐刀絶技(ノーブルアーツ)は通じない。

 

「それにさっき感じた剣気は前とは比べものにならなかった・・・・・・・・・楽しみだ」

 

総司はフッと微笑み控室をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒鉄王馬は会場から出ていく。その顔には獰猛な笑顔を浮かべている。圧倒的な勝利をおさめた総司ではあるがそんな総司の姿を見るたび湧き上がる高揚感。早くこの高揚感のままに斬りかかりたい。そして今度こそ証明するのだ。黒鉄王馬は玖原総司よりも強いということを・・・・・・・




いかがだったでしょうか?

更新が遅くなってしまって本当にすみません!!ちょっとリアルがバタバタとしてしまい書くことができませんでした。

また今回の投稿時でUAが20万を越えていました!!!これもいつも読んでいただいて応援していただける皆さまのお陰です。本当にありがとうございます。


さて今回は恋司との決着だったのですが・・・・ちょっとあっさりしすぎですね・・・もっと戦闘描写を入れたかったのですが・・・なんかこうなってしまいました。

まぁでも今後も戦闘描写が主になっていきますので今回はこれで許してくださいw

さて次回はどうしようか迷っています。でもなるべく早く皆さまに読んでいただけるように頑張りますのでお待ちください。

今回も感想、批評、評価お待ちしていますのでよろしければお願いします!!

ではまた次回お会いしましょう!!!

簾木 健

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