ただ今回も楽しんでいただければ幸いです。
「かはっ!」
総司が吐血する。斬られた傷からは明らかに出てはいけない量の血が溢れ出ていた。
「これはやばい」
総司が思う。しかし限界を超えた魔力を酷使したためか脳がうまく働からかず肉体の回復が遅い。
「ち・・・・・く・・・・しょう!!」
「ちくしょうですか・・・・・本当にメグミによく似てますね」
「ど・・・・う・・・・いう・・・・・こと・・・・だ・・・・」
なんとか傷を塞ぎ総司は立ち上がる。しかし脳が揺れて視線すら安定しないし耳鳴りも酷い。魔力も最低限しか扱うことはできなかった。
「まぁその辺はメグミに聞いてください・・・・それとどうやらここまでみたいですね」
エーデルワイスが校舎の森に面している部分を見つめる。総司もそれにつられてその視線の先を追う。するとそこにはスーツを身にまとった男が少し苦笑いを浮かべて立っていた。
「はは。君にはかなわないなエーデ」
「いえそれでどうしたんですか?」
「なっ!?」
黒乃が二人の視線の先にいた男に驚愕する。総司も絶句しその男を目を見開いてみていた。
「そこにいる総司君のせいで『暁学園』が壊滅した。撤退だ。七星剣舞祭までに体制の立て直しをはかる必要がある」
「なるほど。では私は先に行かせてもらいます・・・・・ソウジまたどこかで」
スッとエーデルワイスが消える。総司はチッと舌打ちを一つし男を睨みつけた。すると男はまた苦笑いを浮かべる。
「そんな目で見られてもね。ここで助かったことを感謝されてもいいくらいのはずだが?」
そんな男に黒乃が話しかける。
「どうして・・・・・あなたがどうしてここにおられるんですか――――月影先生」
「滝沢くん、それは愚問ではないかね?・・・・いや今は新宮司くんだったね」
「あなたが・・・・・黒幕ってことですか?」
総司は頭を押さえながら立ち上がり尋ねる。男・・・・現日本総理大臣月影獏牙は眼を見開いた。
「もう回復したのかい?凄まじい生命力だね」
「世辞はいいです。それにしても本当にあなたが黒幕なんですか?月影総理」
「総司君久しぶりだね。さっきも言ったがそれは愚問というものだよ」
「そうですか・・・・・」
総司は頷きながら霊装をしまう。
「私を捕えないのかね?」
「この場でそれを判断するのはおれではありません」
総司はスッと視線を黒乃に移す。すると黒乃は首を横に振った。
「そうか・・・・では
獏牙はそういうと森の中にゆっくりと消えていった。総司は獏牙が見えなくなるまで見つめてから一つ息を吐きいた。
「黒乃さん。すみません・・・・もう無理です」
そう総司は零し自身も意識を手放した。
「・・・・・寮の部屋か」
総司はゆっくりと身体を起こす。どうやら黒乃がここまで送ってくれたらしい。
「・・・・負けたな」
総司はあの瞬間を思い出す。天陰流奥義《陰切》が見切られ、エーデルワイスは総司の剣を捕えていた。ただ総司はその結果に納得がいっていなかった。
「完全に《陰切》は発動していた。エーデルワイスの無意識に刃は入ったはず・・・・・・いややめよう」
総司はそこでこの思考を排除する。
「おれからしたらあのクラスの剣術を今理解できる訳がない。あのクラスは奥義すらも二度目で見切られるということをしれたのはよかったと思っておくか」
総司はベットから立ち上がり自身の身体の状態を確認する。
「身体の傷は大丈夫だな。ただまだ少しフラフラする・・・・・・外はもう暗いな」
確認後総司は刀華のベットを除くするとそこには刀華の姿はなかった。しかしベットの感じからさっきまでここにいたことがわかる。総司はハァとため息をつき、ゆっくりとした足取りで部屋を出た。
総司が部屋を出て向かったのは学園内にある公園になっている場所だった。ここは普段刀華と総司が鍛錬をするのに使っている場所なのだ。そして総司の予想通り刀華はそこにいた。ただなにもせずに立って空を見ていた。
「よう刀華」
「そうちゃん・・・・」
総司が声をかけると刀華は空から視線を総司に移す。その眼には少しの安堵と強い悔しさが滲んでいた。
「・・・・・負けたな」
総司が刀華の隣に行き腰を芝生におろす。この場所は開けておりよく星が見える。
「うん・・・・・正直なにもできなかった」
「見てなかったからなにも言えないけど・・・・・そこまでか?」
「うん。私はすぐに切られちゃったよ。しかも幻想形態で」
「・・・そうか」
「そうちゃんはどうだったの?」
「おれか・・・・・」
総司はふうと一つ息をついた。
「奥義を見切られた」
「え!?」
「完全に見切られたよ。もう通用しないな」
「奥義って天陰の?」
「ああ。しかも
「・・・・そっか」
刀華も総司の横に腰を下ろす。
「・・・・この間母さんと戦った時も遠いとは思ったけどここまでの距離を感じなかった。でも・・・・やっぱり遠かったよ」
「うん・・・そうだね」
「刀華・・・・そんなおれについてくるのか?」
「・・・・・・」
二人の視線は空を向いていた。お互いに視線を交わさない会話だがその会話には確かな絆なあった。
「刀華・・・おれじゃ・・・「そうちゃん」・・」
刀華が総司の言葉をさえぎる。そして空に向けていた視線をスッと総司に移した。総司もそれに気づき視線を刀華に向け二人の眼が合う。すると刀華はフッと笑みを浮かべた。
「もっと強くなろう。あのレベルでも戦えるように」
「・・・・・ああ」
刀華の笑み。それに総司は諦めたように頷いた。そしてスッと立ち上がる。
「さて・・・・明日からまた鍛え直しだな」
「うん。でもそうちゃん。もうすぐ七星剣舞祭だよ?」
「・・・・あっ」
「・・・・忘れてたんだね」
「・・・・・・まぁそれも成長の場だ。さて誰と当たるのやら」
「ハァ・・・・そうちゃんらしいね」
刀華が頭を抱える。それに総司は苦笑いで返した。
「明日からおれは寧音さんのところに行こうと思う」
「うん。鍛えておいでよ。七星剣舞祭の前夜祭はどうするつもり?」
「正直面倒だな・・・・でもその日には大阪入りするようにする」
「じゃあ私もその日までに大阪入りするよ」
「わかった・・・・・刀華」
「うん?なに?」
「・・・・ありがとうな」
「・・・・ふふ」
刀華が微笑をこぼす。その顔にはもうさっきまでの悔しさは消え去り、きちんと前を向くことができていた。
「うん。そうちゃん頑張ってね!」
「・・・・・ああ」
「それでうちのところに来たってことか」
寧音がケラケラと笑う。
「まぁでも総司ちゃんもわかってるでしょ?」
寧音の目をスッと細める。
「あの次元に今すぐ行くことはできないってこと」
「・・・・・・」
沈黙。そしてスッと下を向く総司。それにハァと寧音はため息をついた。
「わかってる。でもそれを認める訳にはいかないってことね・・・・総司ちゃんらしいね」
「寧音さん・・・・一つ聞いてもいい?」
それまで沈黙していた総司が口を言った。
「おれは
その問いに寧音は神妙な声で答えた。
「そうちゃん・・・・・それは君しだいだね」
「そっか・・・・・じゃあやるしかないですね」
総司の腰に二振りの小太刀が現れる。それを見て寧音も自身の
「総司ちゃんのことは頼まれてるし付き合うよ。調整とかいいから全力できな・・・・・七星剣舞祭まで死ぬほど追い込んでやるよ」
「・・・・・寧音さんいいんですね」
総司が一つ確認する。
「おれは全力を出しますよ。以前寧音さんと全力で戦った時は黒乃さんと母さんがおれを止めた。でも今日は止める人はいない・・・・・・・おれは止まりませんよ」
「・・・・・・いいよ」
寧音は静かに頷き、そして獰猛に笑った。
「アタシも・・・・・・今回は引けないからね」
「っ・・・・・」
放たれた殺気。総司はその殺気に覚えがあった。正確にはそれに類似した殺気をこの間感じたばかりだった。
「この殺気。あの《比翼》に似てる」
一気に総司の思考は戦闘モードになる。ただ急に総司の頭に疑問が浮かんだ。
「・・・・・寧音さん。始める前にもう一ついいですか?」
「なんだい総司ちゃん。ここまで来てもう一つ聞きたい事ってのは?」
「・・・・寧音さん。あなたは・・・・・
「総司ちゃん・・・・相変わらず鋭いね。そういうところはお父さん似だ」
寧音がハッと笑った。それに総司は顔を歪める。でも寧音はそれを気にすることなく言った。
「もし
「・・・・わかりました」
総司は鞘からゆっくりと小太刀を抜いた。そして魔力が溢れる。その溢れた魔力に寧音は笑った。
「強くなったね・・・・・」
前に総司が寧音の前で全力を出した時とは訳が違う。そして七星剣舞祭の学園内予選の時感じた魔力ともまた違う。
「《比翼》との闘いでまた強くなったみたいだね・・・・・それに躊躇いが消えた」
寧音は楽しそうに笑う。
「こりゃ・・・・半分はもう
いかがだったでしょうか?
本当にまとまってないですね・・・・・ただ刀華と総司の関係と現在の総司の強さを今回で表わせればいいと思って書きました。
次回はついに七星剣舞祭本戦に突入していきます。さてさてどうなっていくのやら・・正直まだ簡単にしか決まってないんですが頑張って書いていきたいです。
今回も感想、批評、評価募集していますのでよろしければお願いします。
さてまた次回会いましょう!!!