落第騎士と生徒会長の幼なじみ   作:簾木健

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少し遅くなってしまいました。

この頃本当に忙しい・・・・でも投稿は頑張っていきます。

では今回も楽しんでいただけると嬉しいです。

簾木 健


暗躍

総司は夜フラリと出かけていた。理由は人に会うため・・・・・その人と言うのが・・・・

 

「待ってたわ」

 

「悪い。少し遅れたか?」

 

「大丈夫よ」

 

総司が会いきたのは凪だ。

 

「で?連絡ってなんだ?」

 

「・・・・来たわよ」

 

「・・・・そうか」

 

ハァっとため息をつく総司。凪はそんな総司を真剣な眼差しで見つめる。

 

「で?どうするのよ?」

 

「・・・どうするか」

 

総司は少し考えた表情になる。ただその表情は浮かない。

 

「・・・・動かないの?」

 

「ただ単純に動いたところでなんとかなる相手なのか?」

 

「それは・・・・・」

 

凪が言い淀む。その様子に総司は相手の強さを測る。

 

「王馬クラスはどれくらいいるんだ?」

 

「その人クラスってどれくらいなの?」

 

「・・・・・・刀華を瞬殺出来るくらい」

 

「えっ・・・・」

 

凪が言葉を失う。総司はそんな凪をスッと見据える。

 

「この間王馬に会ったんだが、おれの目測が正しければそれくらいの雰囲気はあった・・・・で?そのクラスはいるのか?」

 

「・・・・わからないわ。でもその強さの人間はそうはいないんじゃない?」

 

「そうか・・・・・戦力がはっきりしないのは痛いな」

 

そこで凪は気づく。総司の表情が変化したことに・・・・・しかし凪はそこには突っ込むことなく続ける。

 

「ええ・・・・で?どうするの?」

 

「・・・・・・アリスなにか考えはあるか?」

 

「そうね・・・・・私の能力で奇襲をかけるのはどう?」

 

「影を操る能力か・・・・いけるのか?」

 

「ええ。自信はあるわ」

 

凪の眼には確かな自信が宿っている。総司は納得する。凪がいままで歩いてきた道。その手に染みついた血の匂いが、凪がどんな道を歩いてきたかを理解させるには充分だった。その凪が自信を持って言うのなら間違いないだろう。

 

「じゃあアリスに任せる。おれはどう動いたらいい?」

 

「・・・・・・総司さんは最後まで動かないでいてもらえる?」

 

「・・・・わかった。でも()()()()?」

 

「ええ・・・・できれば私の作戦が失敗した時に備えていて」

 

「・・・・・わかった。任された」

 

「ええ。お願いね・・・・あとこのことは・・・・・」

 

「そこはわかってる。他言しねえよ」

 

「ええ。じゃあまたね」

 

「またな」

 

総司はそう言って去っていく。その背中に凪はハァとため息をつく。

 

「まさか・・・・そんなに嬉しそうな顔するなんて思わなかったわよ」

 

敵の戦力がわからないと言った時の表情。好戦的な笑顔。なんどか見たことがある。でも今日のはまた一段とすごかった。

 

「殺気の漏れ方も凄かったわね・・・・・」

 

そこで自身の背中がベットリと濡れてシャツが張り付いているのに気づいた。

 

「これはすごいことになるかもしれない・・・・・」

 

凪はハァとため息をついて空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨門と破軍の合同強化合宿も明日で終わりとなった日の深夜。天気の生憎の雨だった。嵐というほどではないが、大粒の勢いのある雨が、パタパタと窓を叩く。そのどこか小気味よい音に耳を傾けながら、破軍新聞部・日下部加々美は施設側が各校の新聞部に親切で貸している宿泊施設の一室で、この合宿期間の間に集めた資料の整理を行っていた。小さなデスクスタンドの光の下に並ぶ書類の数々は、この合宿で取材した内容と、各校の新聞部とトレードした選手の情報。そしてデスクの上のノートパソコンに表示されているのは、他の新聞部員たちが集めてきた他校の合宿の情報だ。それらすべての情報を照らし合わせ、この合宿期間の七校の動向や、七校それぞれ戦力分析を俯瞰的な視点からまとめ直す。七星剣舞祭前の特集号のために。それはそういった作業の過程での発見だった。切っ掛けは、紫乃宮天音のことを気にかける一輝からの電話。紫乃宮天音は巨門学園の一年生で今日ランニングに出た一輝と会ったらしいのだが正直一輝からの電話があるまでは加々美は対して興味を持ってなかった。確かに謎の多い選手ではある。どんな能力を有しているのかはっきりしていない。だがそもそも伐刀者(ブレイザー)の能力を口外する学校などないのだ。選手の情報を漏らすことは、学校にとってなに一つ利することがない。それに今年の七星剣舞祭にはそういったいままで無名だった人間が何人もいる。だから加々美はそれらの人物たちを多く調べようという気持ちにならなかった。Aランクである《風の剣帝》黒鉄王馬や《紅蓮の皇女》ステラ・ヴァ―ミリオン。現《七星剣王》諸星雄大。あの《雷切》と《紅蓮の皇女》を破った《無冠の剣王》黒鉄一輝。そして《風の剣帝》、《七星剣王》の二人が警戒し破軍選抜戦においてたった一つの傷も負うことなく代表を掴んだ《閃光》玖原総司。これだけ注目すべき選手は他に大勢いるのだから。しかし、一輝からの電話は彼女の頭の片鱗に、天音に対する興味を芽生えさせた。だから加々美は七校の情報をまとめ直す段階で、軽い気持ちでその興味に触れてみたのだ。結果・・・・加々美は愕然とした。

 

「なに・・・・・これ・・・・・・」

 

東北の山奥は夏でも涼しいというのに、背中に冷たい汗がびっしりと噴き出してくる。加々美が目を落とすのは、苦労して手に入れた紫乃宮天音の一学期の成績表。そこに記されていた授業で行われた模擬戦の戦績だ。

 

六戦六勝―――――――――うち()()()()()

 

「なんなの、この人・・・・・」

 

新聞部としてたくさんの選手の戦績データを収集してきた加々美だが、こんな薄気味悪い戦績は見たことない。

 

「いやでも、見たことがないと言ったら・・・・・」

 

天音のあまりにも不気味な戦績を見たからだろうか。今までそこまで気にとめていなかったことに、加々美は不自然さを覚える。

 

「・・・・・こんなに『無名の一年』がエントリーされている七星剣舞祭自体、過去に無い」

 

ただの豊作。今まではそう考えていたが、果たしてあり得るのだろうか?力のある人間は本人が望まずとも目に止まるのがこの世界。そんな世界で、これほど多くの一年で代表に選ばれる程の『実力者』が、――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。まるで今まで日の当たらない世界にいた者たちが、示し合わせたかのよう・・・・・

 

「・・・・・っ!」

 

ふと、加々美は感じた。自分が何か、とんでもないことに気付きつつあることを。そして、その気づきは自分のようないち学生にはどうしようもないほど、途方もないものだとも。

 

「だけど、だからって放ってはおけない」

 

違和感を覚えたからには、追及しなくては。それが記者というものだ。だから加々美はすべての資料をひっくり返して自らの内に生まれた違和感を追及する。七校すべての代表生の情報。理事長や七星剣舞祭運営委員会の顔ぶれ。さらには運営に協力するスポンサーのリストまで。それら七星剣舞祭を構成すべての要素を俯瞰的に観測し・・・・そして数時間が経ち、草木も眠る丑三つ時。日下部加々美は、行き着いてしまう。彼女が日々磨き続けてきた記者としての極めて高い能力が、彼女を気づくべきでなかった真実にたどり着かせてしまう。

 

「間違いない・・・・・・この七校の中に・・・・・・もう一校、いる」

 

その瞬間だった。焼けるような熱が、加々美を背中から貫いた。

 

「―――――ぇ」

 

加々美は資料を見下ろしていた視界に、自分の胸から鈍色の刃が生えた瞬間を見る。スタンドの光を受けて鈍く光るその刃の形を、加々美は知っていた。加々美を背中から突き刺したのはダガーナイフ型の固有霊装(デバイス)黒き隠者(ダークネスハ―ミット)》の刃。そしてその霊装の持ち主は・・・・・

 

「ア、リス・・・・ちゃん・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

最後の力を振り絞り、背後に目を向ける加々美。そこには()()の姿があった。ただ顔が見えたのは一人。見知った学友の見たことないほどに冷たい表情があった。学友―――――有栖院凪は冷たい表情のまま、唇を開く。

 

「貴方、少し賢すぎだわ」

 

直後刃を引き抜かれ同時に加々美の身体が膝から崩れ、資料の山の上に落ちる。《幻想形態》による致命傷特有の強制的なブラックアウトが容赦なく加々美の意識を奪う。

 

「先輩・・・・。ステラちゃん・・・・。気をつけて・・・・・今年の七星剣舞祭には・・・・、魔物が潜んでる・・・・・・っ!」

 

そうして、日下部加々美は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凪は膝をかがめ、倒れた加々美の様子を観察する。彼女は完全に気を失っていた。この様子ならば、丸一日は意識を取り戻さないだろう。

 

「残念よ。・・・・・かがみんがもう少し鈍かったら、あと数時間は友達でいられたのに」

 

「本当に賢いな・・・・・ここまで辿りつくなんて・・・・こりゃ破軍新聞部の未来も安泰だな」

 

資料を見ながらそうつぶやいたのは・・・・・・玖原総司だった。

 

「ええ。本当に自慢の友達()()()わ」

 

「そうか。まぁ今回の計画では邪魔だ」

 

「・・・・・ちょっと連絡するわね」

 

凪はそう言ってある人物に電話をかける。そんな凪から視線を切り総司は加々美の調べた資料を見る。

 

「それにしても・・・・・・本当にここまでよく調べたな」

 

その資料には七校の名。そしてその下には名前が書いてあった。貪狼学園、多々良幽衣。巨門学園、紫乃宮天音。禄存学園、サラ・ブラッドリリー。文曲学園、平賀玲泉。廉貞学園、風祭凛奈。武曲学園、黒鉄王馬。破軍学園、有栖院凪、玖原総司。

 

「これが『暁学園』か・・・・」

 

総司は目を細める。『暁学園』、それは()()()()()()()が『七星剣舞祭を崩壊させる』という目的のためだけに新設した学校だ。そのほぼ全員が『暁学園』を創設したある巨大な組織(スポンサー)が、テログループである《解放軍(リベリオン)》に金を払い雇い入れた闇の世界の精鋭たちだ。

 

「まぁおれは違うんだけど・・・・・・さてこれどうするかね・・・・」

 

総司は資料をどうするか考える。そこに電話を終えた凪がやってくる。

 

「ちょっと面倒なことになったけど・・・・・」

 

「面倒?どうした?」

 

総司が厳しい顔つきになる。それに凪が真剣な表情で告げた。

 

「アタシの先生。《軍》の《十二使徒(ナンバーズ)》である《隻腕の剣聖》サー・ヴァレンシュタインが来日しているみたい」

 

「《十二使徒(ナンバーズ)》・・・・・《軍》の幹部か・・・・・それは面倒だな。まぁそこはなんとかするしかない。あとで能力を教えてくれ。で?この子は?」

 

「この子は殺さずに監禁してればいいみたいだからアタシが資料と一緒になんとかしとくわ」

 

そう言いながら凪は加々美と資料を影の中にずぶずぶと沈めた。

 

「さて・・・・・じゃあアリス計画通りに行くぞ」

 

「ええ。あなたの力、存分に頼らせてもらうわ」

 

 




どうだったでしょうか?

ついに暗躍する組織の名前が出ましたね。というか半分くらいは原作通りになってしまいました・・・・・

さてそろそろ総司を本気で暴れさせますかねww

次回か次々回には必ずバトルシーンを入れますのでお楽しみに!!!!

今回も感想、批評、評価募集していますのでよろしくお願いします!!!!

ではまた次回会いましょう!!!!

簾木 健

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