もりもりと盛り込んじゃったのでまとまってないですねwwすみません。自覚はしております。
今回も楽しんでいただければ幸いです!!
簾木 健
総司は一輝に悪だくみの相談をしたあと、その足で実家の裏山を登っていた。少し登ったところで木々に囲まれた広場に出た。そしてそこには車いすに座った女性とその車いすを押す女の子がいた。
「ふふ。やっぱり来たわね総司」
「やっぱり総司兄は戦闘狂だね」
「はは。まぁ母さんと戦えるのならそう呼ばれてもいいけどな。美奈も悪いな。母さんをここまで連れてきてくれて」
「いいよ。総司兄と恵さんの戦いが見れるんだから。ここまで来たかいもあるよ」
淡々と答える美奈だが、その声には歓喜が滲んでいる。
「さて母さん。夜も更けてしまう前にやろうか」
「ええ。さて美奈薬頂戴」
「はいはい。この水も飲んでください」
「うん。ありがとう美奈ちゃん。んくっんくっ」
恵が薬を水で流し込んでいる中、総司はいつもと違い『白和』だけでなく『黒光』も左腰に鞘に入った状態で現れる。そして軽く準備運動をする。
「母さんルールはいつも通りでいい?」
「ええ。さて行きますかね」
スッと恵は立ち上がり自分の
「じゃあ、開始の合図は私がかけさせてもらいますね」
美奈が車いすの安全を確保してから恵と総司の間に立つ。
「美奈頼むな」
「美奈ちゃんよろしくね」
「じゃあ行きます」
スッと美奈が手を挙げる。そしてさっと手刀を振り下ろした。
「はじめ!!!」
その美奈の言葉で総司は好戦的な笑みを浮かべながら突っ込む。それにスッと槍を構えて同じく好戦的な笑みを浮かべて恵は迎え撃つ。その槍が瞬間で5発、総司を穿とうと迫る。しかし総司は減速することなくその槍を右手に持った《白和》で最小限に捌きながら間合いに強引に入っていく。そして間合いに入った瞬間、左腰に下げた二つの鞘。その一つ。まだ鞘に入った《黒光》の柄を逆手で掴み抜き打つ。その抜き打ちは雷を纏った抜刀術。状態が十分ではないため威力、速度は劣るが刀華の代名詞である《雷切》と同じ理によって抜き打たれた刃。それは敵を一瞬で切り倒すには十分すぎる一撃。しかしその刃が抜き打たれる前にはもう総司が切って落とそうとした相手の姿はない。
「っ!!」
その相手は総司の後ろ側。完全に背を向けた総司向かって刺突を繰り出す。しかしそこでただで突かれてやるような総司ではない。小太刀を振りぬく瞬間、総司は足に力を込め、そして振りぬくと同時に上にジャンプした。そして空中で身体を素早くひねり、右手で持った小太刀を振るって雷撃を飛ばす。
「っ!!これで攻めきれないのね」
その雷撃を恵は躱しフッと微笑む。そんな恵に総司も微笑み返す。
「一撃で決めるつもりだったはずなんだけどな・・・・・さすがは母さんってとこだな」
「ふふ。ありがとう・・・・・それにしても最初の受け。さすが『天陰流』の受けね」
「『空蝉』。戦闘を一発で終わらせるために受けから攻めに繋げる体技。戦闘を暗殺に戻すという技なんだが・・・母さん人間やめてるな」
「ふふ・・・・私が人間やめてなかったら、黒乃も寧音も今生きてないわよ」
少し目を伏せ笑う恵。でもすぐにその目線をあげる。
「そんな話は今はいいわ。今はこの限られた時間を楽しみましょう」
「ああ。そうだな」
そうして二人はまたぶつかりあう。そんな親子を美奈とその隣に立つ男は見ていた。
「二人とも変わらないな」
「それは宗吾さんもですよ。やっぱり見にきたんですね」
美奈の隣に立っていたのは総司の父であり、恵の夫である宗吾であった。宗吾はハァとため息をついた。
「今時
「・・・・相変わらずですね」
そんな宗吾に美奈はフッと笑う。二人の
「心配であると同時にそんな二人の関係に憧れているんだろうな」
二人が言い合っている姿は玖原家の人間はよく見ている。そんな二人ではあるがお互い仲が悪い訳ではない。ただ二人とも不器用で口下手なだけ。そんな息子に対し戦いを通じて通じ合う妻に、ただ同じことができない宗吾は歪な二人の関係であるが憧れてしまう関係だろう。
「宗吾さんももう少し歩みよればいいじゃないですか?」
「まぁ少しは考えてみる」
「・・・・・ハァ。そうしてください」
美奈はため息をついて視線を宗吾から戦いに移す。そこは激戦と呼ばれる戦いが繰り広げられていた。総司が雷を落としまくりそれを恵が避けまける。そして恵が槍で穿つと地面や土や木を抉っていく。そして総司の斬撃は木や土を切り裂いていく。
「軽い世紀末ですね」
「少しは考慮してほしいがな」
総司は歓喜していた。
「こんなに楽しい戦い、いつぶりだ」
どんなところから切りかかってもどんな魔術を使っても勝てない。それどころか・・・・
「っ!!!」
頬を浅く切られる。むしろ押されている。
「本物の化け物だこの人。強すぎる!!」
「ふふっ・・・・総司本当に強くなったわね」
まだまだ余裕があるのか微笑みながらそんなことを言う恵。総司はチッと舌打ちをする。
「母さん余裕だな」
「まだまだ息子には負けられないわよ。でも・・・・・さすがに総司の
「・・・・・それは今は関係ない」
「ふふっ、男らしいわね。そして宗吾さんによく似てる。さてそろそろ終わらせましょうか・・・・総司、見せてあげる――――世界の頂点の片鱗を」
瞬間、総司は突っ込む。恵はそれに応戦する。
「「ハァァァァァァ」」
総司が用いるのは『天陰』の技の中で最も得意とする技であり今日美奈に見せた技。『天陰流 麒麟』。
それに応じる恵の技は恵が自らの技の中で唯一名前を付けた技『流星群』。その技の動作は単純な突き。しかしその速さとその突きの数がさながら降り注ぐ星のようと言われることからそう名付けられた技。
総司は恵が放った突きに違和感を感じる。
「なんだこの突き。確かに突きが来ているのに・・・・・・音がない。速すぎるっ!!」
総司は最初のほうはなんとか捌くがそれは追いつかないようになっていく。そしてついに・・・・
「っ!!!」
総司の首に恵の槍の切っ先が突き付けられた。
「ふふ・・・・総司これが世界最強の片鱗よ」
「・・・・・今のはなんだ」
「音のない攻撃・・・・・・これが世界最強の剣士がいる領域よ」
「・・・・世界最強」
総司はその言葉に戦慄する。そして理解した。
「遠い。今のおれではこの領域では戦えない」
ただそれを理解し総司はフッと笑みをこぼす。それを見て恵もフッと微笑んだ。
「世界は広いわよ総司」
「ああ。こんなにもヤバい領域が世界にはある・・・・楽しくてたまらない」
恵は槍を引く。
「総司、もっと世界を知りなさい。そして――越えなさい」
「ああ。おれはまだまだ強くなれる・・・・・そしてみんなを守ることができる」
「ええ。期待してるわよ」
そこで恵は槍を消し、美奈を呼んで車いすに座った。そして横にきた宗吾に話しかける。
「あら宗吾さん見てたんですか?」
「ああ。身体は大丈夫か?」
「ええ。いきなりあの体技を使ったので筋肉痛になりそうですけどね」
「そうか。まぁ大事に至らないならいい」
「はい。ありがとうございます。そういえば総司はどうでしたか?」
「・・・・・今こいつの相手を出来るのはお前と先生くらいだろうな」
「ふふ。そうですね」
そこでなにか考えるように目を伏せ黙っていた総司が口を開いた。
「父さん、母さん。二人に相談がある・・・・おれ今回の七星剣舞祭
その言葉に宗吾は少し驚いた表情になったが恵はフッと微笑むだけだった。
「・・・・今まで通り
宗吾が尋ねると総司は頷く。その目には明確な意思が宿っていた。
「ああ。なによりおれが納得できない」
「・・・・・・ハァ」
宗吾はため息をつき、頷く。
「わかった。制約はこちらでなんとかしよう。どうやらちょっと玖原家にもネズミがいるみたいだし牽制にもなるだろう」
「ネズミ?」
「ああ。どうやら裏でなにかをしているらしい。情報が入ったらそっちにも回すようにしておく」
「わかった・・・・ありがとな」
総司には珍しい消え入りそうな声。本当にいじっぱりな親子であった。
「さてじゃあ戻りましょうか。美奈よろしくできる?」
「はい。普段通り舗装されている方で行きますね」
「ええ。お願い」
その言葉で四人は山を下りていった。
次の日の朝。総司は残っていた全員と朝食を済ませ、山を下りて刀華を迎えに行っていた。『若葉の家』。昔総司も暮らした場所である。入り口から入っていくとグラウンドで遊んでいた子どもたちが気付いて近づいてくる。
「総司君!!久しぶり!!!」
「おう。久しぶりだな。刀華来てるだろ?」
「うん。刀華ちゃん来てるよ!」
「じゃあ刀華のところに案内してくれるか?」
「わかった。ついて来て!!!」
そう言って子どもたちが先に走って案内してくれる。それに総司は微笑みながらついていくと女の子たちに囲まれている刀華がいた。
「刀華ちゃん!!総司君来たよ!」
「えっ?あっそうちゃん」
「迎えにきたぞ。大丈夫か?」
「うん!!ちょっと準備してくるから待ってて」
「おう」
おれがそう返事すると刀華は走っていく。
「あら?総司じゃない」
刀華を待っていると後ろから声をかけられる。その声は総司とってすごく懐かしい声だった。
「久しぶり」
「ええ。久しぶりね。元気にしてた?」
「それは去年のおれが聞くべきだったんじゃないか?大丈夫だったのか?」
「ふふっ。私はまだ死ねないわ。あんたたちが立派になるのもみたいしね」
「そっか・・・・まぁ身体には気を付けてくれよ」
「ええ。わかったわ」
この人は『若葉の家』の保母であり、ここにいる子どもの母である。去年この人は心臓を悪くして倒れてしまって、刀華はもちろんのことあの飄々としている泡沫ですら青い顔をしていた。総司も心配だったが陣助に頼んで看病や子どもの世話も頼んだこともあり、報告も逐一受けていたため、二人よりは安心することができていた。
「そういえば総司。今年は七星剣舞祭に出るの?」
「え?ああ。まぁ選抜戦に勝ったらな」
「負けることなんて考えてないんでしょ?」
「はは」
「はぁ・・・・あんた本当に・・・・」
頭を抱える保母。そこで準備が出来た刀華がやってくる。
「じゃあお母さん行ってきます」
「ええ。行ってきなさい。総司か刀華のどちらかが七星剣舞祭に出れたら会場に行くわね」
「わかった。じゃあまた!」
「またな」
「ええ。また」
保母と子どもたちに見送られながら総司と刀華は『若葉の家』を出た。
「みんなね、横断幕を作ってくれたりしてたよ」
二人で玖原家の実家に向かって歩く間、『若葉の家』であったとこを刀華が話していた。
「そうなのか?・・・・・気が早くないか?」
「ふふ。そうだよね・・・・でも頑張らないといけないなってなったよ」
「ああ。そうだな」
そこで総司は少し顔を伏せそしてスッと顔をあげた。
「刀華・・・・」
「なに?」
「おれ・・・・負けねぇから」
「・・・・そんなこと言うなんて珍しいね」
そんな総司をスッと目を刀華が言う。
「ちょっと負けられない理由が出来たからよ」
「負けられない理由?」
「ああ」
総司はそこで足をとめしっかりと刀華を見てから言った。
「おれ、七星剣舞祭が終わったら世界中を放浪しようと思う」
「・・・・・どうしてそう思ったの?」
刀華が尋ねる。
「昨日の夜。母さんと戦ったんだが・・・まぁ結果は見事に負けたんだけど・・・・そこで母さんが世界を少し見せてくれたんだ」
総司の脳裏には恵の放った技が焼き付いていた。あの領域に辿り着くには今の環境では難しい。
「おれは強くなりたい。今も昔もそれは変わらない。強くなって刀華やカナタ、泡沫みたいなおれにとって大切な人をどんなことがあっても守れるようになりたい――――――だから世界へ出る」
「・・・・・・・・」
刀華から見た総司の目はもう遥か彼方が映ってるように見えた。
「そうちゃんが遠い」
この間、総司が美奈に技を見せていたときフラッシュバックした過去の映像。
「今わかった。おれは
それを聞いた時、それまでは幼なじみでいつも隣で笑っていた総司がずっと隣になんていなかったんだと刀華は感じた。
「でも、頑張って追いつくことにしたんだ」
刀華は悩んだ。総司の抱えているものは私には重すぎて持てない。でも私はずっと総司の横にいたい。だから―――強くなろうと。そしてその決意は今この場でも揺らぐことはなかった。
「・・・・・じゃあ私もそうちゃんについていくよ」
「えっ!?」
刀華の言葉に総司は驚いて目を見開く。
「私も強くなりたい。そしてそうちゃんの横に立って戦える騎士になる・・・・・破軍に入るときも言ったよね?」
「・・・・・ああ」
破軍入学時、刀華が総司に誓ったこと――――――あなたに並び立つ騎士になる。
「だから私も行くよ・・・・・そうちゃん」
刀華は確固たる決意をその目に滲ませていた。総司はその目を見てハァとため息をついた。
「刀華・・・・・それは・・・・・・」
「無理とは言わせないよ」
「・・・・・・・危険だぞ?」
刀華はそこで『鳴神』を取り出し総司に突きつけた。
「切るよ?」
「・・・・本気?」
「うん。たぶんカナちゃんもそう言うと思うけど?」
「・・・・・ハァ」
「そこでため息をつくのはちょっと失礼じゃない?」
「刀華・・・・・」
「私は本気だよ。私は・・・・・」
「・・・・・・・」
刀華が顔を赤くして俯く。刀華が言わなかった言葉を総司は理解していた。
「刀華・・・・・もうちょっとだけ待ってくれないか?」
「え?」
「少し考えたいんだ。答えはそうだな・・・・七星剣舞祭の後までには絶対出すから」
「・・・・・わかった」
刀華は『鳴神』を消して頷く。
「カナちゃんにも言っておいてね」
「わかってるよ・・・・・・・ありがとうな」
そこでポンポンと刀華の頭を総司は優しく触る。
「あとごめんな。優柔不断で・・・・・」
「いいよ。そんなそうちゃんにいつも助けられてるから」
少し顔を赤くしながらニコリと笑う刀華にドキっとして総司は顔が赤くなるのを感じる。
「?そうちゃん?」
「いや・・・・あ・・・・」
総司がパッと手を頭から離す。その手を刀華は少し残念そうに見つめる。
「・・・・・もっとしてくれてもいいのに」
「・・・・・っ!!い、行くぞ!!」
「あっ待ってよ!そうちゃん!!!」
早歩きで行く総司。そんな総司を刀華は小走りで追いかけた。
舞台は東京に戻る。
深夜の倫理委員会。
「さて行くか」
静まり返ったその場を見つめる二人の男。一人は腰に黒塗りの鞘と白塗りの鞘を差し、白塗りの鞘に収まっていた小太刀はその男の右手にある。もう一人は漆黒の刀を持ち少し不安気な表情だった。
「いいんでしょうか?」
「大丈夫だろ。ここにいることも確認済みだし、後のことはこっちでやるからよ」
不安気な表情の男にもう一人の男が笑いかける。不安気な男はため息をついた後、スッと倫理員会の建物を見る。その表情は不安気だがその中になにか覚悟を決めたような面持だった。それを見てもうひとりの男は頷く。そしてフッと笑った。
「じゃあ闇討ち行くか」
これで九州編は終わりになりますね!!
これから七星剣舞祭選抜戦の終盤に突入していきます!!
ちょっと恵強くしすぎた気がしますが・・・・まぁ仕方ないですね。
では今回はこれから少し九州編のコンセプトなどを説明したいと思います。
この九州編では総司の家族。過去。そしてこれから。この三つを描きたくて書いてきました。総司がこれまでどんな環境にあってどんな家族に囲まれてこれからどう生きていくのか。それが描けていると読んでくれるみなさんに伝わっていれば幸いです。
そして最後に描きましたが総司と刀華、カナタの関係についても進展を入れることが出来ればと思ってました。最後で刀華が少しキャラ崩壊した感がありますがww
ただこれが私の思う刀華です。まっすぐで誇り高い騎士である反面、恥ずかしがり屋で少し甘えん坊。この二極を持っているのが刀華だと思っていますしそうであってほしいと思っていますwwそんな刀華を出すことが出来ていれば嬉しいです。
九州編では今まで出してきた伏線の多くを回収することができました。説明不足な点も多々ありますがそれはおいおい回収していければ思っていますので楽しみにしていてください。
さてこれから一気に選抜戦を駆け抜けていきたいと思っています・・・・・・たぶん後二、三話くらいで終わらせる予定ですのでよろしくお願いします。
本当にいつも読んでいただいてありがとうございます。拙い文章でありますが今後も読んでいただけると嬉しいです。
今回も感想、批評、評価の方募集していますので、よろしければお願いします。
ではまた次回会いましょう!!
簾木 健