落第騎士と生徒会長の幼なじみ   作:簾木健

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本当に読んでいただいてありがとうございます!!!

これからも頑張って投稿していきますのでよろしくお願いします。

では今回も楽しんでいただけると嬉しいです!!

簾木 健


才能

「兄さん!!久しぶり!!」

 

「ああ。久しぶりだな浩司」

 

「うん。やっぱり僕も兄さんのいる破軍行くべきだったよ」

 

「なんだ?武曲じゃもの足りないのか?」

 

「それはないよ。雄大さんみたいに強い人がいるしそれはいいんだけど・・・・やっぱり流派のことはね・・・・で、そこの人たちは?」

 

「そういえばまだ紹介してなかったな。こっちの黒髪のほうが黒鉄一輝。あの『黒鉄』だ。でこっちの赤髪のほうがステラ・ヴァーミリオン。ヴァーミリオン皇国の王女様だ。こいつは玖原浩司。おれの弟で玖原家の第一当主候補だ」

 

「初めまして。玖原浩司と言います。いつも兄さんがお世話になっています」

 

浩司は笑顔で総司とステラに挨拶をする。こういうところを見ると少し・・・かなり無愛想な総司とは似てないと二人は思ったが二人は挨拶を返す。

 

「初めまして。黒鉄一輝です」

 

「初めまして。ステラ・ヴァーミリオンよ。よろしくね」

 

「はい。よろしくお願いします。そういえば兄さん。今からなにかするつもりだったんじゃないの?」

 

「ああ。今から師匠のことに行くんだ。お前は爺のところだろ?」

 

「うん。呼ばれているから」

 

「じゃあ。また後でな」

 

「うん。またね」

 

そう言って浩司は一輝とステラに一礼してからどこからに行ってしまった。

 

「あれがさっき言っていた次期玖原当主ね」

 

「ああ。どう思った一輝?」

 

総司がニヤッと笑って一輝を見る。一輝はうーんと少し考えてから答える。

 

「正直総司先輩や美奈さんや恵さんを知っているとかなり強いとは言えないですけど・・・・それでも強いですね。たぶん七星剣舞祭レベルくらいには強いですね」

 

「そうなの?それならかなり学生騎士としてはかなり強いじゃない」

 

ステラが驚きの声をあげる。ただそれに総司は少し苦笑いを浮かべた。

 

「まぁあいつのことは後でいいだろ。さてじゃあ行くぞ」

 

総司は二人を伴って鷹丸のところに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、じゃ開けるぞ」

 

総司が二人を伴ってやってきたのは玖原家の道場だった。総司は二人にことわってから道場の扉を開けた。そこにはニヤリと総司に似た笑みを浮かべた老人には見えない白髪の男が正座で座ってこっちを見ていた。

 

「来たな」

 

その男はゆっくりと立ち上がった。スッとした真っすぐな背筋。その背と身に纏っているオーラに一輝は確信した。

 

「この人は間違いなく本物の達人だ」

 

「・・・・ほう」

 

一輝のほうを見て鷹丸はふっと笑った。

 

「流石はりゅうの奴の忘れ形見じゃの。その若さで多くの修羅場を潜ってきたようじゃ」

 

「・・・・っ!!」

 

鷹丸と目があった瞬間。一輝の背に冷たい汗が流れた。それに対して総司がハァとため息をついた。

 

「師匠。あんまり一輝をいじめないでください」

 

「ふぉふぉ。すまん。ただかなり強いの。そっちのお嬢さんもかなり強い。総司。なかなかいい環境におるようじゃの」

 

「ああ。で?一輝たちをなんで呼んだんだ?」

 

「ふぉふぉ。一目見たかったのじゃ。あのりゅうの忘れ形見。そして世界最高の魔力量をほこる皇女様もな」

 

「ヴァーミリオンのこと知ってたのか?」

 

総司が少し驚いて尋ねる。すると鷹丸はまたふぉふぉと笑う。

 

「あたりまえじゃ。いくら引退したからとて情報収集を怠るようなことはせんわい。総司・・ちょっと儂をなめとるじゃろ?」

 

「いや。そんなことはないよ。で?一輝たちはなにか聞きたいことないか?」

 

総司の言葉が砕ける。普段の二人はこんな感じなのである。

 

「えっと・・・アタシ一つ聞きたいことがあるんだけど・・・・」

 

ステラがおずおずと手を挙げる。

 

「なにが聞きたいんだヴァーミリオン?」

 

「えっと・・・そういえばソージさん。いまさらなんだけどアタシあんまりヴァーミリオンって呼ばれるのは好きじゃないのよ。だからできれば・・・・」

 

「わかった。今度からステラと呼ぶことにするよ。で?」

 

「ええ。ありがとう。実はなんだけど『天陰流』のことって聞いても大丈夫?」

 

武術を収めているステラからすると流派のことを聞くことが躊躇われたのか、ステラが少し申し訳なさそうに尋ねる。総司と鷹丸はそれにフッと笑った。

 

「別に構わないよね?」

 

「そうじゃの。で?姫様はなにが聞きたいのじゃ?」

 

「えっと・・・・本当にいいの?」

 

「ああ。まぁ奥義のこととかは話せないが、それ以外ならいいぞ」

 

「えっと・・・じゃあ・・・前にトーカさんが『天陰流』は敵を一撃で倒すことができることが技になる条件って言ってたんだけど・・・・本当なの?」

 

「ああ。その通りだ。ただそれ以外にも条件はある」

 

「ほかの条件ですか?」

 

そこで一輝も会話に加わる。そしてそれには鷹丸がうなずいた。

 

「そうじゃの。天陰流の技として認められるにはそれに加え、天陰流の初伝にある体技を用いていることが必要になるの」

 

「『天陰流』の体技って『抜き足』とかもそうなのよね?」

 

「お?それは知っていたのか。まぁそうだな。『天陰流』は初伝がその体技を収めることで皆伝になる」

 

「そうなのね・・・・そういえば他にはどんな体技があるの?」

 

「・・・・それは口で言うより見たほうがよいじゃろうな」

 

フッと笑い総司を見る鷹丸。それに総司はハァとため息をついた。

 

「じゃあ見せてやるから・・・・ステラちょっとそっちに立ってくれ」

 

総司は少しステラを離れた位置に立たせる。そして総司はそのステラの正面に立った。

 

「さて、じゃあ行くぞ」

 

総司がそう言うと一瞬の間にステラの目の前まで移動した。ステラはそれに驚愕の表情を浮かべる。一輝はそれを見て言った。

 

「気配もなく移動する体技ですね」

 

「ああ。『縮地』っていう体技だ。移動系の体技は主にこの二つだな。あとは受けの体技になっているが・・・・これは見せれない」

 

「うむ。受けの体技は『天陰流』の裏の神髄にあたるからの。それはさすがに見せることはできんが・・・黒鉄はもうわかっているようじゃから気になるのなら後で聞いておくとよい」

 

鷹丸の鋭い目は正確に一輝の実力を見抜いていた。そんな一輝も一つ質問する。

 

「前に『天陰流』の技を使おうとしたんですけど、どうしても劣化にしかならなかったんです。それはどうしてなんですか?」

 

その一輝の質問に総司は苦笑する。

 

「しようとしたんだな・・まぁそうだな・・」

 

総司は少し言葉を切り鷹丸のほうをチラッと見るとフッと鷹丸は笑って頷いた。それを確認してから総司は話始める。

 

「おれたち玖原家は元々特異体質なんだ。二人とも白筋と赤筋は知っているよな?」

 

「はい。瞬発力の白筋。持久力の赤筋ですよね」

 

「ああ。その通りだ。あとその両方の性質を持つピンク筋って言うのがあるのも知っているか?」

 

「ええ。僕自身もその筋肉を増やそうとトレーニングをしています」

 

「でだけどな・・・・おれたち玖原家の人間はそのピンク筋以上の筋肉を持っているんだ」

 

「ということは・・・・・」

 

一輝はその言葉に戦慄する。その筋肉質の差がどれくらい戦いに影響をもたらすかを痛いほど理解している。

 

「そういうことだ。まぁそのために『天陰』の技は玖原の人間しか使うことが出来ないんだ」

 

「・・・・・なるほど」

 

一輝は納得したように頷く。ただそんな一輝にふぉふぉと鷹丸は笑いかけた。

 

「身体や魔力といった才能以上に大切なものもある。それを一番信じることが大切なことじゃ」

 

「・・・・ありがとうございます」

 

一輝がペコリと頭を下げると鷹丸はまたふぉふぉと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後総司たちは外に出ていた珠雫たちが帰ってきてから全員でご飯を食べた。その夜・・・一輝はひとりで縁側に座っていた。

 

「はぁ・・・・」

 

ため息を一つ付く。

 

「よう一輝眠れないのか?」

 

「っ!!!」

 

そんなところにフッと寝間着なのか甚平を来た総司が現れた。

 

「総司先輩・・・・」

 

「隣いいか?」

 

「あ・・・はい」

 

「おう・・・ほら」

 

総司は隣に座りながら一輝に向かってペットボトルのお茶を差し出す。

 

「あっありがとうございます」

 

「ああ・・・・で、眠れないのは昼間の話のせいか?」

 

「えっ!?」

 

一輝が驚いて目を見開く。そんな一輝に総司はフッと笑った。

 

「さすがに師匠にあんなことを言われれば気づく。で?どう思ったんだ?」

 

総司の言葉に一輝はまたため息をついた。

 

「さすがに少し考えてしまいました・・・・総司先輩少し聞いてもいいですか?」

 

「ああ。なんだ?」

 

「総司先輩は自分の才能についてどう思ってるんですか?」

 

「・・・・才能ね」

 

総司はふっと笑う。

 

「一輝もまだそんなことで悩むんだな」

 

「・・・・総司先輩は僕のことをどう思ってるんですか?」

 

「はは。まぁそうだな。おれにとっての才能は自分のやりたいことをなすための手段だな・・一般的に言われる魔力は運命を捻じ曲げる力っていうことだな」

 

「そうですか・・・・「でもな・・・」・・」

 

総司の表情が真剣なものになる。

 

「おれは才能なんていうのはその人物の一部であって、価値は決まらないとは思う・・・・・一輝」

 

「はい」

 

「お前が実家でどんな扱いを受けていたかは大体知っている・・・・前にも言ったがおれも昔あの爺に狙われたことがある・・・・理由はまだだったよな?」

 

「はい。そういえば理由はなんだったんですか?」

 

ここまで強くて才能に溢れる総司をなぜ狙うことになったのか・・・・一輝には考えてもわからなかった。

 

「・・・・一輝はもうおれの能力については気づいているか?」

 

それに一輝は頷く。

 

「・・・・たぶん雷系の能力ではないとは思っています」

 

「まぁそこまで分かっていればいいだろう・・おれは実は能力がきちんと発現するのが遅かったんだ」

 

「・・・・なるほど・・・それで・・・」

 

「ああ。それでおれは狙われたってことだな」

 

総司は当時のことを思い出しているのか少し遠い目をしていた。

 

「その時まではおれは慢心してたところもあったし・・そこは感謝してるんだけどよ・・ただ一輝には巌さんがいたし命の危険までは・・・「ちょっと待ってください!!!」・・・どうした?」

 

一輝はその総司の言葉に驚きの声を上げる。

 

「父さんがいたからってどういうことですか!?」

 

一輝の見開いた表情に少し驚きながら総司は答える。

 

「巌さんが色々と一輝のために動いてくれてたんだ。それで一輝は色んな嫌がらせを受けたが実家にいる間は命までは奪われるようなことはされなかったと聞いている・・・・・それに前におれは巌さんに会ったことがあってそのときに一輝の話を聞いたこともあるからな」

 

「そんな・・・・知りませんでした」

 

一輝は驚愕の表情で固まってしまった。そんな一輝に総司はフッと笑いかけた。

 

「・・・・そこまで信じられないのなら確かめに行ってみるか?」

 




さて今回で次で九州編はラストになりますね。

なんとか書きたいことは全部書けました。よかったです。さて舞台は選抜戦編に戻っていきます。ついにあの激戦が・・・・・・・うまく描けるように頑張ります。

あとは一輝の成長と巌さんの思いもしっかりと描いていきたいですね。

これからも楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いします。

ではまた次回よろしくお願いします。

簾木 健

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