落第騎士と生徒会長の幼なじみ   作:簾木健

20 / 52
ついに20話目ですね。まさかここまで来るなんて・・・・話も少しづつ進み始めたのですが・・・・相変わらずの脱線。前の話でしたいって言っていたことがほとんど出来てないwwすみませんが次回までお待ちください。


あと気づけばUAが10万を超えそうです。本当に読んでくださるみなさんには感謝してもしきれません。これからもがんばっていきますのでよろしくお願いします。

では今回も楽しんでいただければ嬉しいです。

簾木 健


思慕

全員にお茶菓子を出し、それを縁側で食べていたとき総司はあっと思いついたように聞いた。

 

「で?全員は今からなにするんだ?」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

総司の言葉に刀華以外は全員驚き叫ぶ。その様子に総司はキョトンとしてしまう。刀華のそんな総司に頭を抱えた。

 

「いやここにいてもやることはもうないぞ。今用があるのは一輝とそこの男女だけだ」

 

「えっ!!でも、この辺ってなにかあるの!?」

 

「うーん・・・・ショッピングモールとかなら山から下りていけばあるし、その辺なら遊べるようなところも・・・・」

 

「・・・・それってもう一度この山を登ることになりますよね?」

 

珠雫がゲソッとした顔になる。しかしそれに対して総司は首を振った。

 

「裏道から登ってきていいから、あんな風に罠はない。たぶん頼めば美奈がお供についてもらえるだろうから完全に安全は保障する」

 

「そうなんですか?そこまでしてもらえるのなら・・・・」

 

珠雫はスッと視線を総司からはずし凪を見る。珠雫はかなりの人見知りだ。さすがにいきなり知らない土地で一人で行くのは不安を感じていた。その不安を一輝ではなく友人である凪に向けてしまった。それに凪はフッと微笑んだ。

 

「珠雫に私もついていくわ。総司先輩、私の用事今から済ませてもらってもいいかしら?」

 

「・・・・・すぐに済むのか?」

 

総司の目がスッと細められる。それに凪はええと頷いた。

 

「わかった。じゃあこっちに来てくれ」

 

「ええ。じゃあ珠雫少し行ってくるわね」

 

二人は立ち上がり縁側から部屋の中に入っていった。

 

「・・・・総司先輩はアリスになにを感じたんでしょうか?」

 

一輝が刀華に尋ねると刀華は首を傾げる。

 

「詳しくは私にもわかりません。でも・・・・そうちゃんがあんな目をするときは大体私たちの為のときなんですよね・・・・」

 

刀華は嬉しそうにでも少し不安げに言う。

 

「そうちゃんはあんな顔して一人でなんでも背負い込んで・・・・ふふ・・・すみません。なんか私の愚痴みたいになっちゃいましたね」

 

「・・・トーカさんってソージさんのこと「それを聞くのは野暮ですよステラさん」・・・珠雫」

 

珠雫はスッとお茶を飲み続ける。

 

「東堂さん。その気持ちよくわかります。もっと頼ってほしいところですよね・・・・でもそれを求めるのは無理ですよ」

 

「ええ。わかってます・・・・ふふ。珠雫さんの大切な人もそんな人なんですね」

 

「ええ。無鉄砲でこっちの心配も考えず突っ込んでいって怪我をして帰ってくるような人です」

 

ジト目で一輝のことを睨む珠雫。その視線にどうしようもなくなり苦笑いをしながら視線を泳がせる。

 

「でも気づいたんです。そんな人にそれをやめるように言って無駄なんですよ。しかも私たちはそんな人を大切に思ってしまったんですから・・・・諦めるしかないんですよ」

 

珠雫の悟ったような言葉に刀華は感銘を受けた。しかし

 

「ここにいたくない」

 

一輝は冷い汗が背中を流れるのを感じる。自分のことをしかも、そんな風に悟ったことを言われるなんて・・・・もう一輝としては黙って顔を落とすしかない事態だった。

 

「・・・・でも、私はそんな彼の隣に立ちたいんです。もっと強くなってその人の隣に立って戦いたいんです」

 

「・・・・ふふっ」

 

刀華の一生懸命な言葉。珠雫はそんな刀華に微笑みを浮かべる。

 

「東堂さんと私はよく似てるんですね・・・・わかりますよ。その気持ち。もうそれは努力するしかないですよね」

 

「はい!!一緒に頑張っていきましょう!!」

 

「はい」

 

刀華と珠雫がギュッと強い握手を交わす。それをステラはよく訳がわかってない様子で見ていた。

 

「で?結局トーカさんはソージさんのことをどう思ってるの?」

 

「・・・・本当に脳筋ですね」

 

珠雫はハァとため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてこの部屋でいいか。まぁ聞こえないだろうし・・・・・ああ。誰もいないな」

 

総司はスッと目を細め凪を見る。

 

「ふふ・・・で?聞きたいことっていうのは私の過去のことね」

 

「さすがにわかってたか・・・・・ああ。その手。()()()()()()()?」

 

「・・・総司先輩。あなたこそどんな人生を生きてきたの?」

 

それに総司は鼻を鳴らし少し目を伏せる。

 

「ふつうの人生だよ・・・・お前と()()()

 

「そうなのね・・・・」

 

凪は総司の言葉に薄く笑いを浮かべる。凪と一緒。それが普通の人生であるはずがない。あんな風にためらないもなく人を殺して生きることが普通であってはならないのだ。

 

「で?お前の目的はなんだよ?」

 

「目的?」

 

「ああ・・・・お前みたいな生粋の暗殺者を破軍に派遣した組織のこと。そこがなにをしようとしているのか教えてもらってもいいか?」

 

その言葉に凪は困ったように笑った。

 

「まさか、そんなところまでばれているなんて・・・・私暗殺者失格かもね」

 

「お前は悪くないよ。おれがそういうのを見破るのに長けてるだけだ。それにお前クラスの暗殺者を派遣してまで成したいことがあるってことはデカいこととしか思えないからな」

 

「あら、私結構認められているのね」

 

それに今度は総司が薄く笑う。

 

「ここに来るまでの道のりと母さんとの戦い。一切と言っていいほど隙がない。母さんに突かれたのもわざとだろ?そんな人間が普通の暗殺者な訳ないだろうが。普通は珠雫やヴァーミリオンみたいになる。今後はそういうところではちょっと演技するべきだな」

 

「今日はバレテると思ってたから隠してなかっただけよ。でも今後の参考にさせてもらうわ」

 

「で?さっさと話せ。あんまり時間がかかるなら拷問にかけることになるぞ。もちろん珠雫とのお出かけもなしだ」

 

「拷問はともかく珠雫とのお出かけの約束は破れないわね」

 

「じゃあ・・・・」

 

「話すわよ」

 

凪は両手を挙げて降参とジェスチャーをしながら続ける。

 

「私は元々解放軍(リベリオン)からやってきたのよ。暗殺者としての技は全部そこで教え込まれた」

 

「なるほどね。《軍》か・・・・で?なにをするつもりなんだ?」

 

「詳しくはなにも・・・・でも七星剣舞祭を叩き潰すみたいよ」

 

凪の言葉に総司は面倒くさそうに頭を掻く。

 

「・・・・もしかして黒鉄王馬も関係してるのか?」

 

「ええ。私は彼ともう一人、連絡係り以外は知らないわ。でもたぶんすぐにわかると思う」

 

「まぁなんだかんだで全国の実力者は大体名が知れてるからな・・・・無名の奴は()()()()()()()

 

「そうね。そうなるわね」

 

「・・・・まぁわかった。で?お前はどう動くんだよ?」

 

総司はそこでついに本題を切り出した。

 

「・・・・最初は命令通り動くつもりだったわ」

 

凪の表情に変化はない。普段通り、なにを考えているのかわからない表情。ただその表情に総司は凪の憂いを感じ取った。

 

「でもね、私は出会ってしまった。自分のすべてを曝け出せるような少女に、自らを傷つけるだけ傷つけて自分の大切な人のために尽くす少女に」

 

総司はその言葉を黙って聞いている。その表情は完全に無表情であり、話している凪には総司の考えや気持ちはわからない。凪は壁と話している印象すら持ってしまった。しかし話はやめずに続ける。

 

「で、その子を傷つけることはできない。だから私は・・・・」

 

そのあとの言葉はいらない。総司はハァとため息をついた。

 

「・・・・アリスお前はこれまで通り動いて情報をおれに渡してくれ」

 

「わかったわ。で?それでどうするの?」

 

「・・・・とりあえずはなにもしない」

 

「・・・・・わかったわ」

 

凪がフッと笑った。

 

「・・・・ただアリスこれだけは覚えといてくれ」

 

「なに?・・・・っ!!」

 

総司は自らの身体から殺気を迸らせる。それに凪は完全に飲み込まれてしまう。つねに刃を首に突き付けられているような殺気に凪は鳥肌が全身に逆立つ。暗殺者として生き、様々な実力者と出会った。でもこれほどの殺気を持っているような実力者は数えるほどしか凪も知らなかった。

 

「先生でもここまでなかった。この殺気の鋭さはまるで・・・・・・」

 

凪が思い出すのはいままで出会った()()()()()。それクラスではないと比較できない。

 

「もし裏切って・・・・いや裏切るのはいい。でもそれによっておれの大切な仲間を傷つけたときは・・・・アリスお前を殺す」

 

「・・・・ええ。わかったわ」

 

凪は絞りだすようにそう頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さって終わったぞ。じゃあ珠雫とアリスは山を下りるんだな」

 

「はい。そうさせていきます」

 

総司と凪が戻るとステラと珠雫が言い争いをしていてそれを刀華が宥めているという状況になっていた。三人とも打ち解けたもんだななど総司は思いつつ、刀華を少し手伝ってそれを止めてから話を切り出した。

 

「わかった。とりあえず美奈に頼んでみるか。まぁ刀華も下りるからたぶん大丈夫だけど・・・・」

 

「えっ?東堂さんも下りるんですか?」

 

珠雫が刀華に尋ねると刀華は「うん」と頷いた。

 

「私も『若葉の家』に顔を出しに行くよ。今日はそっちに泊まるから戻ってくるのは明日だけどね」

 

「そうなんですか・・・・じゃあ、玖原先輩護衛はいいです。東堂さんがいるのなら・・・」

 

「でも戻ってくるときが・・・・」

 

「それは戻り方だけ説明してくれれば私がなんとかするわ」

 

凪がニコリを笑っていう。

 

「そうか。なら陣さん!!」

 

「はい!!およびでしょうか坊ちゃん!!!」

 

総司が叫ぶとどこから出てきたのかわからないほどの速度で陣助が現れる。刀華はハハッと苦笑いをしているが、全員はその速度に驚いて固まってしまう。総司はそれを気にして様子もなく陣助に要件を告げる。

 

「アリスと珠雫に裏からの山の下り方と登り方を教えてくれ。で出口まで送ってやってくれ。おれは残ったこの二人を連れて師匠のところにいかないといけないから・・・・・」

 

中途半端に総司が言葉を切る。陣助はそれを一瞬不思議に思うもすぐに気づく。今ここに近づいてくる人がいるということ。そしてそれが誰かということを・・・・・

 

「なにかうるさいと思ってきてみれば、まだ生きておったのか愚孫よ」

 

「ああ。生きてたよ。糞じじい」

 

現れたのは見るからに歳を取った男性。背は曲がり顔の皺も多い。でもその人が身に纏う雰囲気にはゾッとするほどの鋭さがあった。そしてその雰囲気は総司と宗吾二人と似ていた。

 

「なにをしに来た。鳶人」

 

陣助の押し殺したような声。その声には確かな殺気が乗っており、今まで陣助の雰囲気とはまるで違っていた。

 

「ふん。分家ごときが儂になにか言うなど恐れ多いぞ・・・・相変わらず下僕の躾がなってないぞ。総司」

 

「・・・・いやなってるはずだ。そうだろ?主人の敵に対して敵意を向けるのは当たり前だ」

 

総司がフッと笑う。それに対して鳶人はふんと鼻を鳴らした。

 

「敵か。その通りじゃな。で?そこにおるのが黒鉄の落ちこぼれか。なんともお似合いな組み合わせだの」

 

「・・・・あなたは何者なんですか?」

 

珠雫が不快感をあらわにし鳶人を睨む。そしてそこで珠雫は気づいた。自分がこの人と会ったことがあるということに。

 

「そこの黒鉄のお嬢様には何度か会ったことがあるのじゃが・・・・・儂は玖原鳶人。そこにおる玖原総司の祖父にあたる」

 

「よく今でも祖父などと言えたものだな。この玖原の面汚しが」

 

陣助がぺっと吐き出すように言う。それで一輝は気づいてた・・・・・というよりは察した。

 

「まさかこの人が・・・・」

 

鳶人は陣助の悪態にも動ずることなく・・・・というか陣助の言葉など耳に入ってないように続ける。

 

「もう帰ってくるなと総司には言ったと思うが・・・・なぜこの家にいる?」

 

「師匠と父さんに一輝と一緒に帰ってくるように言われてね。あんたの大好きなおれの弟も後で帰ってくるはずだ」

 

「そうかそれは楽しみじゃの。次期当主が帰ってくるのなら盛大な準備が必要じゃな。では儂はこれで失礼する」

 

「なっ!?この野郎・・・「陣さんいいから」坊ちゃん・・・・」

 

まだ嚙みつこうとしていた陣助を総司は止めて話を進める。

 

「じゃあ陣さんは三人を頼むね。おれは残りを連れて師匠のところに行ってくるから」

 

「・・・わかりました。ではお三方ついてきてください」

 

陣助はなにか言いたげだったが総司の命に従い、三人を連れて行ってしまう。陣助が見えなくなったとこで総司はハァとため息をついた。

 

「たく・・・・・・悪いな。身内の恥をさらしちまった」

 

「いえ・・・・それより総司先輩()()()()()()()()()()()

 

その質問に総司は少し黙ってから答えた。

 

「おれは昔あの人に殺されかけたんだよ・・・まぁそれは別にそこまで気にしてないんだが・・・・」

 

そこで総司はスッと目を細める。その目の鋭さはまさに剣のようだった。

 

「あいつは刀華とカナタにも手をあげたんだよ」

 

「えっ!?」

 

ステラが驚きの声を上げる。一騎はそこで完全に納得する。

 

「あとおれが玖原家で仕事を色々やらされてたのもあいつのせいだな」

 

「じゃあ・・・・あの人のせいで総司先輩が東堂さんと同じ児童養護施設に入ることになったんですね」

 

「うん?あれ?おれ一騎にそんな話ししたっけ?」

 

「いえ、この間奥多摩で御禊先輩から聞きました」

 

「なるほどな。まぁそれだ。その時当時玖原の内部抗争が起きてな。結構大変だったんだ」

 

総司が少し遠い目をする。本当に色々あったみたいだなと一騎は思う。

 

「それは大変だったわね」

 

「ああ。その時あいつらの側が抗争には敗れたんだ。だから、おれがそのまま玖原家を継ぐことにしてもよかったんだがさすがにそれをすると、もう一度抗争が起きそうだったんだ。それでおれはそれを弟に譲ることにしたからおれは玖原を継がないことになったんだ」

 

総司はそう説明をし終わるとフッと何かに気づいたように顔をあげ二ヤリと笑った。

 

「噂をすれば影っていうのはこのことだな」

 

「「えっ?」」

 

そこで廊下をドタバタ走しってくる音が近づいてくることに一騎とステラも気づく。

 

「帰ってきやがったか」

 

「兄さん!!!」

 

そう響く声。そして現れたのは総司によく似た顔をしているが総司が絶対に浮かべないような満面の笑みを浮かべた少年だった。




いかがだったでしょうか?

今回は総司の仇敵が登場しました。なぜそういうことになってしまったのかというのは今後書いていければと思っています。それに一騎を絡めて三巻であった一騎の成長につなげていければと思っています。

今回も感想、批評、評価どんどん募集していますのでよろしければお願いします。

そういえばUAの話をしましたが、なにか記念回書いたほうがいいですかね?よろしければそのアイディアもいただけるとうれしいです。

ではまた次回会いましょう

簾木 健


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。