落第騎士と生徒会長の幼なじみ   作:簾木健

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今回はちょっと短めですけど許してください。

では今回も楽しんでいただけると嬉しいです!

簾木 健


喧嘩

「行かないでいいぞ一輝」

 

総司は固有霊装(デバイス)である《白和》を鞘から抜く。全員が唖然とする中、一瞬赤座の気持ち悪いほどの笑顔が崩れる。しかしすぐに戻る。

 

「おや・・・話を聞いてなかったのですか?これは・・・「倫理委員会からの正式な召集ってか?」・・・そうですよ。それを無下にするなど・・・・」

 

信じられないと赤座は言いたいのだろう。この場にいる全員は総司の行動の意図が読めなかった。しかも相手は『倫理委員会』。勝ち目などない。しかし総司はニヤリと笑った。

 

「いいぜ。喧嘩しよう」

 

「「「「「なっ!?」」」」」

 

「んっふっふ。君は本当に命知らずですねぇ。そんな()()()を叩きのめすのも大人の仕事ですからねぇ」

 

ニヤニヤを崩さない赤座。ただ総司もうっすらと笑みを浮かべたままだ。

 

「御託はいい。どうする?あんたとおれでタイマンでもするか?」

 

「いえいえ。これは《倫理委員会》への宣戦布告と受け取りましたぁ。ですから《倫理委員会》の総力をあげて受けてたちますぅ。んっふっふ」

 

「そうか。じゃおれも家を巻き込むことにする」

 

「お家ですか?そういえば名前を聞いていませんでしたねぇ。んっふっふ。名乗ってもらっていいですか?」

 

ただ赤座は次の瞬間凍りついた。

 

「おれの名前は玖原総司。《天陰》玖原鷹丸の弟子にして、現玖原家当主玖原宗吾の長男だ」

 

「えっ・・・・」

 

赤座が今まで浮かべていた笑みが完全に消えた。

 

「どうした?喧嘩するんだろ?」

 

総司がニヤリと笑う。ただその鋭い眼の奥は全く笑っていない。その表情に赤座は一輝の肩から手を離し後ずさる。

 

「い、いや・・・・そ、それは・・・・ひっ!!!!」

 

一輝の手を離し少し距離が開いたところで総司は抜き足を使い赤座に近づきその首に《白和》の刃を当てた。

 

「どうしたんだよ?()()()を叩きのめすのは大人の仕事なんだろ?」

 

玖原家。その名前が有名になったのは戦時、《天陰》の活躍があったためだ。しかしその家の名は政府の重役の間ではもっと古くから知られている。なぜならその家は昔から政府を裏側から支え、暗殺、拷問、偵察など裏の仕事なら何でもこなす忍の一族の名前だからだ。しかも戦争が終わり多くの一族が真に命をかけた闘いから身を引き弱体化した中、玖原の一族はそうならず今でも裏で()()()()()()()をこなし命をかけた闘いに身を置いている唯一といえる一族なのだ。日本の伐刀者(ブレイザー)の表である黒鉄家、そしてその裏を支える玖原家。この二つの家が闘うことになると言うことは日本社会の根幹に揺るがす問題だ。総司もそれはわかっている。だから総司はここであえて引く。

 

「喧嘩が出来ないってんなら、さっさと帰ってあんたの上司に伝えろ。一輝はおれが・・・玖原家が預かる。交渉にもこっちにきな。そしてもし無理やりでも一輝をさらいに来たら・・・『わかってるな』ってよ」

 

「うわぁーーー!!」

 

総司から放たれた殺気。そのあまりの鋭さに赤座はカクカクと頷き、叫びながら逃げ帰っていく。総司を除くメンバーその姿を黙って見送る。総司は赤座が見えなくなったところで生徒手帳を開き電話をかける。

 

「もしもし」

 

『総司か。久しぶりだな』

 

総司の電話の相手、それは父親である玖原宗吾であった。

 

「久しぶり。師匠から連絡は来た?黒鉄の家の件なんだけど」

 

『ああ。というか調べて師匠に伝えたのはおれだ』

 

「そうなの?それなら話は早い。一輝の件ふっかけてきたよ」

 

『・・・さっき夕刊が届いた。これ本当か?』

 

「付き合ってるの事実。でも一輝の性格とか札付きとか女遊びの件は嘘だ」

 

『そうか。ならいい・・・・どうせ喧嘩売ったんだろ?」

 

「・・・・悪い。迷惑かける」

 

『構わん。たまには迷惑かけろ。親は子どもに多少の迷惑をかけられるくらいが嬉しいものなんだからな』

 

「・・・・・ありがとう」

 

『ああ。じゃあこっちは動きだすぞ。たまには実家にも帰って来い』

 

「わかった。今度帰るよ。じゃあまた」

 

『ああ。またな』

 

電話を切る。そこで一輝が総司に話しかける。

 

「玖原先輩・・・・」

 

「とりあえず病院行くか」

 

そう言って総司はニコリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、生徒会メンバーと総司と一輝とステラはステラを病院に連れて行き薬をもらった後、全員で食べ放題の焼肉屋に来ていた。総司と刀華とステラと一輝で一つのテーブルに座り、もう一つのテーブルに残りのメンバーが座って焼肉を堪能していた。ここに来るまで一輝は何度か総司に今日の件を聞こうとしたがはぐらかされていた。

 

「玖原先輩。そろそろ教えてください」

 

一輝が真剣に総司に問う。総司は刀華が焼いてくれた肉を口に運びながら首を傾げる。さっきからこんな調子で総司は一輝からの質問攻めから逃げていた。しかし一輝も逃すつもりはないのかさらに問いかける。

 

「どうして僕を助けてくれたんですか?しかも『倫理委員会』に喧嘩を売ってまで・・・・」

 

一輝表情真剣そのものただ総司は微笑を浮かべながら次の肉を取ろうしたところで横に座っていた刀華にトングで箸を止められてしまった。

 

「そうちゃん、答えてあげて。それに私もどうしてここでそうちゃんが動いたのか知りたい」

 

刀華からの言葉総司は刀華の顔を少しの間見て、諦めたようにため息をついた。刀華の表情に逃げることは許されないと悟ったからだ。

 

「頼まれたんだよ。玖原家から・・・・正確には玖原鷹丸からな。一輝が黒鉄の家からなにかちょっかいかけられたら助けてやってほしいって」

 

「「「えっ・・・」」」

 

総司の言葉に三人が驚く。ここにきて総司の口から出た英雄の名前。ただ本人である一輝は最もこの事態を飲み込めていなかった。

 

「僕は鷹丸さんとはあったこともありません。なのにどうして僕にそこまで・・・・」

 

一輝のその問いに総司は自嘲気味に笑った。

 

「それが()()だからだ。玖原の人間は自分の信用を置いた人間との約束は死んでも破らない。そして一輝お前を助けてほしいと言ったのは竜馬さんだ」

 

その言葉に刀華、ステラ、一輝が息を飲んだ。それに一切気にすることなく総司は続ける。

 

「生前に竜馬さんが師匠に頼んだみたいなんだ。それで今回は動いた」

 

「そうなんですか?」

 

「みたいだな。だから今回おれは動いた。報道についても玖原が動いてるからすぐに沈静化すると思うが・・・・ヴァーミリオンお前どうするつもりだ?」

 

そこで総司はステラを見る。その質問の意図にステラ自身はすぐに気づきハァとため息をついた。

 

「アタシはいいし、たぶんお母様も大丈夫だと思うんだけど・・・・お父様はね・・・・」

 

それに一輝が少し苦笑いを浮かべる。総司もハァとため息をついた。

 

「今日の報道についても耳に届いてるはずだ。一応連絡を入れておいてくれ。さすがに国際問題になればおれの家も介入することが厳しくなるからな」

 

「わかったわ」

 

総司の言葉にステラが頷く。それに総司は頷き返しまた肉を焼こうとするがトングは刀華が持っているため焼けない。

 

「刀華トング・・・・「そうちゃん」・・・なんだ?」

 

刀華の声が真剣だったためか総司の表情も少し真剣なものになる。

 

「またそういう仕事するの?」

 

「・・・・そうなるかもしれない」

 

総司は真剣な表情でしかしどこか諦めたようにそう言った。

 

「おれは玖原だ。どこまでいってもそれは変わることがない」

 

「そっか・・・・」

 

刀華は少し残念そうにでもどこか誇らしげにそう呟く。そんな刀華の頭を総司はポンポンと優しく叩いた。

 

「でも安心して待ってろ。必ず帰ってくる」

 

総司の頭ポンポンと言葉に刀華は顔を赤らめて頷いた・・・ただこんな二人のやり取りを目の前で見ていた二人は完全に同じ疑問を浮かべていた。

 

「「この二人付き合ってるの?」」

 

「うん?どうした二人ともポカンとして」

 

そんな二人の様子に総司が尋ねる。そこでステラは思い切って尋ねて返した。

 

「ねぇトーカさんとソージさんって付き合っているの?」

 

その言葉に二人は少しフリーズしてしまった。そして動き出したかと思うと二人揃って顔を真っ赤に染める。

 

「い、い、い、いや付き合ってないけど」

 

「え、え、え、ええ。そうちゃんの言う通りです。ただの幼馴染ですよ!」

 

「ふーん・・・そうなのね。なんかさっきの二人の雰囲気があまりにも恋人のものだったからそうなのかと思っちゃったわ。ねぇイッキ」

 

「うん。そうだったんですね。僕も付き合ってると思ってました」

 

「ははは。よく言われるんだが違うんだよ」

 

「ええ。本当によく言われますけど違うんですよ」

 

総司と刀華は必死に否定する。しかし、相手は一輝とステラ。恋人がいる二人にとって総司と刀華の行動は完全に見抜かれていた。

 

((付き合ってないとしてもこれなら時間の問題だな))

 

そんな二人の心の声に焦りすぎて完全に気づかない総司と刀華であった。

 




いかがだったでしょうか?

今回からオリジナル展開ですが、今回はまだオリジナルの本筋までいけませんでしたがキリがいいのでここで投稿しました。次回から本筋に入っていきます。

ヒロイン本当に迷ってます。どっちにしよう・・・どっちも魅力的で本当に困ります。

今回も感想、批評、評価のほう募集していますのでよろしければお願いします!

ではまた次回会いましょう

簾木 健

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