落第騎士と生徒会長の幼なじみ   作:簾木健

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新シリーズですがこっちの方は亀更新になるかも・・・・

なるべく頑張って書いていこうと思うのでこれからよろしくお願いします。

簾木 健


英雄の弟子

「これで奥義皆伝じゃ・・・・いやーわしもやっと引退できるのぉ」

 

齢80を超える男がけたけたと笑う。その前には膝を着き、荒い息を吐く一人の子どもがいた。この道場の中にはその2人しかいないのにも関わらずとてもつもない熱気が漂っていた。

 

「さすが我が曾孫じゃの・・・素晴らしき才じゃ。よもや11でここにも至るとは」

 

「はぁはぁ・・・いえ・・・指導のお陰ですよ」

 

「ふぉふぉ、謙遜するでない。お前の祖父も父にも同じように才はあった。だが、ここまで至ることはなかった。ゆえにお前には天賦の才があったということじゃろう。それは誇ってよい」

 

「・・・・はい」

 

息を整えその少年はしっかりと立ってから返事をする。それを見て、老人はさらに嬉しそうに頷いた。

 

「ただ慢心を知らんのは良いことじゃ。これからもその心を持ち精進せよ」

 

「はいっ!!」

 

「うむ。いつかトラやリュウの弟子と本気で戦うことになればおもしろいのぉ。ふぉふぉふぉ」

 

「あの人たちの弟子とやるのはなるべく勘弁してほしいのですが・・・・」

 

少年ははぁとため息をつく。ただそれを聞いた老人の目がスッと鋭くなった。

 

「お前には才がある。しかもそれはわしにも測りきれぬ才じゃ。並みのものではない。それを持つ人間が何にも巻き込まれぬ人生など歩むことは出来ん・・・・ふぉふぉ、ますます長生きをするものじゃの。お前の人生を見届けることが出来ればさぞ楽しそうじゃ」

 

鋭い眼光に少年は怯む。目の前にいるのはただ老人ではない。この歳でもまだ現役魔導騎士・・・しかも伝説とされる魔導騎士なのだ。

 

「そういえばお前、東堂の嬢ちゃんのところに行くのではなかったか?そろそろ時間じゃろ?」

 

「っ!!そうだった。教えてくれてありがとう。大祖父ちゃん」

 

少年の口調がくだける。

 

「よいよい・・・・それよりしっかりと東堂の嬢ちゃんには唾を付けておくのじゃよ」

 

ニヤニヤと老人が笑う。

 

「唾を付ける?唾なんかつけたら汚くない?」

 

「そういうことではない。あの嬢ちゃんはこれから絶対に美人になる。だからしっかりとキープしておけといっとるのじゃ」

 

「なっ!?」

 

少年が顔を赤くして止まる。それを見て老人はさらにニヤニヤと笑った。

 

「元服はまだじゃが、天陰流(てんいんりゅう)の奥義皆伝したのじゃ。婚約くらいしてきても「なんでそんな話になっとよ・・・」継承者を作るのも皆伝者の勤めじゃからの」

 

「大祖父ちゃんは気が早いんよ・・・・遅れたら刀華が怖いからそろそろ行くね」

 

少年はしっかりと礼をして着ていた道着を脱ぎなが道場から出ていった。それを老人は微笑ましそうに見つめていてその後ハッとしてから手を打った。

 

「そうじゃ!東堂の嬢ちゃんをトラに預けるのはいいかもしれんの」

 

前に見たその少女の固有霊装を思い出す。

 

「ヤツの『音切り』相性も良さそうな能力じゃったし・・・シニアに上がったら相談してみるかの・・・」

 

この老人の名は玖原鷹丸(くばらたかまる)。第二次世界大戦を生き抜いた騎士・・・侍であり、あの黒鉄やあの南郷の好敵手とされた歴戦の猛者である。そしてさきほどの少年はその曾孫である玖原総司(くばらそうじ)。『天陰』という2つ名を持つ鷹丸の弟子でありその血を最も濃くついだ人物。のちに『魔帝』と呼ばれる少年である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!起きろ刀華!!!このドジッ子眼鏡!!!」

 

青年は2段ベッドの上で眠る少女を起こそうと奮闘していた。

 

「今日は入学式なんだろ?さっさと起きて準備しないと間に合わないぞ!!」

 

「・・・・・あと5分」

 

少女がポツリと零す。しかし青年に容赦はない。なぜならさっきから同じ言葉をこの少女は繰り返すだけでいっこうに起きる気配がないのである。

 

「・・・・たたっ切るぞ」

 

「っ!!!!」

 

青年から放たれた殺気に眠っていた少女は飛び起きる。そして見事に天井に頭をぶつけた。

 

「・・・・い、痛い」

 

「自業自得だな。ほれ悶えてないでさっさと着替えて朝ごはん食べろ。もうすぐカナタと泡沫が迎え来るぞ」

 

「あい・・・・」

 

そして刀華が洗面所に行き着替えている間に朝食を用意する。刀華は素早く準備をすませ机の上に置いてある朝食の前に座った。東堂刀華こと、破軍学園3年《雷切》東堂刀華が。玖原総司はその向かいある朝食前に座る。

 

「じゃいただきます」

 

「どうぞ」

 

刀華が手を合わせてから朝食に手を付け始める。普段は食堂で済ませる朝食だが今日は朝がはやいため開いていないのだ。そのため今日は総司が作ったのある。

 

「そうちゃん・・・今日1年生に1人Aランクが入ってくるんだって」

 

「ああ。聞いてるよ。てか、そんなことじゃなくて刀華が言いたいのはこの間の模擬戦の話だろ?」

 

ステラ・ヴァ―ミリオン。ヴァ―ミリオン皇国の王女でありAランクの魔導騎士だ。それが今年この破軍学園に新入生として入学してくるというのはとても有名な話だ。Aランクとた伐刀者(ブレイザー)の中で国際機関の認可を受けた伐刀者(ブレイザー)の専門学校を卒業したものが与えられる称号である。そしてこの破軍学園こそ国際機関の認可を受けた日本には7つしかない専門学校一つなのだ。そして伐刀者(ブレイザー)にはその魔力量に応じてランクというものが付けられる。その最高位がAランクであり、このAランクの伐刀者(ブレイザー)は一人の例外もなく歴史に名を刻むのである。そして最低位がFランクでありこの伐刀者(ブレイザー)はほぼ存在しない。というよりFランクで魔導騎士になった人は未だ嘗て一人も存在しない。そしてこのランクは伐刀者(ブレイザー)としての大まかな強さを表す指標でもある。よってFランクがAランクに勝つなど天地がひっくり返ってもあり得ないことなのだ。でもそれがこの間の模擬戦で行われてしまったのである。

 

「黒鉄一輝君・・・すごく気になります」

 

刀華の目が輝いている。黒鉄一輝はロックオンされたみたいだ。

 

「一輝のやつも戦ってみたいと思ってるだろうよ。なんせ破軍学園生徒会長・・・・序列1位なんだからな」

 

「・・・・・でも気になるのはそうちゃんもよ」

 

「俺?俺のことは別に気にならないだろ?刀華なんでも知ってるじゃん」

 

「違う。能力とかのことじゃなくて・・・・・公式戦にはやっぱり出らんと?」

 

破軍学園の序列というのは公式戦などの戦績が大きく関わっている。刀華はあの《七星剣舞祭》で去年ベスト4に入ったほどの猛者であり、学生騎士の中ではトップクラスの実力者という証明がされている。でも、総司はというと入学してから一度も公式戦には出場してないのである。だから序列も何位という明確な順位はついていないにも関わらず、この男は刀華と同じ部屋にいる。今年から学園長が変わり実力によって寮の部屋分けが行われることになった。なるべく実力の近いもの同士切磋琢磨させることが目的らしい。ただその中で刀華と総司は同じ部屋にされている。ということは・・・・・

 

「そうちゃん本当なら私よりもつよかくせに・・・・」

 

「まぁ黒乃さんにはそれがバレてるしな・・・・・こんな役職も押し付けられたし」

 

総司は『風紀』と書かれた腕章を振る。それを見て刀華はふふっと笑った。

 

「『お前が強さを見せる気がないのはわかった。が、これは学園長命令だ。お前を風紀委員長に任命する』って言われたんよね?」

 

「ああ。面倒なことこの上ない。しかも委員の奴らはみんなおれが任命されたことに不信感丸出しだったし・・・」

 

総司が頭を抱える。学園長に命令された以上やるしかなくとりあえず風紀委員室にいった総司だったが、その部屋の居心地の悪さに三分で自室に帰ってきたのだ。

 

「まぁ委員長にしたのが学園長ということもあって定期的に連絡だけはくれてるから、なんとかやっていくよ」

 

「うん。そうちゃんがんばってね」

 

―――コンコン

 

「会長~そろそろいくよ~」

 

「うたくんですね・・・はーい。ではそうちゃん行ってきます」

 

「ああ。行ってらっしゃい」

 

刀華はカバンを持って部屋を出ていく。

 

「さて・・・朝飯の片づけしたらおれも行きますかね」

 

おれは腕章を腕につけて朝飯の片づけを始めた。

 




いかがだったでしょうか?

感想・批評・評価ございましたらじゃんじゃんよろしくお願いします。



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