魔法聖闘士セイント☆マギカ   作:天秤座の暗黒聖闘士

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  プロローグ3なのですが、バックアップが消えていたためまた一から書き直す羽目に・・・orz。

 まあそれはともかくとして、ようやくまどかが登場、そしてここから物語のスタートとなります。
 



プロローグ3 運命の少女は黄金の射手座と出会い、始まる物語

 

 

 「いってきまーす!!」

 

 「いってらっしゃい、まどか」

 

 「いってらっしゃーい!おねーちゃーん!!」

 

 朝、鹿目まどかは父と弟に見送られて玄関から駆け出した。

 今日の朝は何故か寝覚めが悪く、ようやく起きれたのは母と同じ時刻だったのだ。

 もはや朝食を食べる時間も惜しく、着替え終えて支度を済ませるとトーストを咥えて親友二人との待ち合わせ場所に急いだ。

 

 「あーもー!何でこんな寝坊しちゃうんだろ!!ママと同じ時間って、あり得ないよ~!!ああ~早くしないとさやかちゃんと仁美ちゃんに置いていかれちゃう~!!」

 

 まどかは早く起きれなかったことを嘆きながらパンを口にねじ込んで走る。

 元々運動はあまり得意ではないまどかだが、今日は火事場の馬鹿力といわんばかりに全力疾走をする。今なら世界記録を狙えるんじゃないかと言わんばかりの速さである。

 

 「う~…、早く待ち合わせ場所に行かないと…、きゃっ!?」

 

 曲がり角に差し掛かった時、急いでいたせいで周りが見えなかった為か、曲り角から出てきた人影にぶつかり、まどかは尻もちをついてしまった。

 

 「あいたたたたた…」

 

 「大丈夫かい?」

 

 「え、あ、はい!大丈夫…で、す…」

 

 地面に座り込んだまどかの頭上から、誰かの声が聞こえる。まどかは自分は大丈夫だと告げようと顔を上げた瞬間、目の前の人物を見て言葉が止まった。

 まどかの目の前には、こちらに向かって手を伸ばした茶色いコートを纏った男性が立っていた。

 彼の顔立ちはまるでギリシャの彫刻のように端正で、髪の毛は大地のような黄土色をしており、額には紅い環をつけている。

 その表情は凛々しくも優しげであり、まどかは思わず彼の顔に見とれて言葉が出なかった。

 

 「?どうかしたのかい?」

 

 「!?い、いえ!!何でもありません!!何でも!!」

 

 男性が心配そうに声をかけるとまどかは顔を真っ赤にして地面から飛び上がるように立ち上がった。その姿に男性は不思議そうな顔をしていたが、それ以上の追及はしなかった。

 

 「そうか、すまなかったね。俺の注意が足りなかった。このとおりだ」

 

 男性はそう言ってまどかに向かってすまなさそうな表情で頭を下げる。それを見たまどかは焦った表情で男性を押しとどめる。

 

 「そ、そんな!よそ見していた私が悪いんです!!謝るなら私の方ですよ!!」

 

 まどかの必死な表情に、男性はようやく頭を上げる。

 

 「そうか、しかし君は急いでいたようだったが、どうしたんだ?」

 

 「え、あ!その、友達と待ち合わせをしていて、寝坊しちゃったんで早く行こうって思って…」

 

 男性の質問にまどかは思い出したようにそう答える。まどかの返答を聞いた男性は納得したように頷いた。

 

 「そうか、なら引き止めてしまって悪かったね。気をつけて行くんだよ」

 

 「は、はいっ!!あ、ありがとうございます!!」

 

 男性のにこやかな笑顔にまどかは頬を赤くしながらもニコリと笑顔でお辞儀をして、そのまま通学路を駆け出した。

 まどかは息を切らして走りながらも先程ぶつかった男性の事を考えていた。

 

 (あの人かっこよかったなー…。それにとても優しそうだったし…。あ、あわわ、また顔が熱くなってきた~…)

 

 まどかは顔を真っ赤にして恥ずかしがりながら待ち合わせ場所まで走る。

 

 その後、待ち合わせ場所で待っていた親友の美樹さやかと志筑仁美の二人に、真っ赤になった顔について色々とからかわれることになるのだが、それは別の話。

 

 

 シジフォスSIDE

 

 住宅街のとあるマンションの屋上にて、まどかとぶつかった男性は携帯電話を片手に、誰かと連絡を取っていた。

 

 「シジフォスだ。鹿目まどかと接触した。これからどうすればいい?」

 

 『いずれ彼女は魔女と遭遇します。その時に彼女を救出してあげてくれませんか?』

 

 携帯電話から聞こえる声に、男、シジフォスは軽くうなずいた。

 

 「なるほど、了解した。遭遇地点は、あそこでいいんだな?」

 

 『はい。既にマニゴルドさんとアルデバランさんはそれぞれのターゲットと接触、行動を共にしていますから少しずれが生じる可能性がありますが、ほぼ間違いないと思います』

 

 「分かった、任せてくれ」

 

 『そして、まどかがキュゥべぇに勧誘されても、彼女を思いとどまらせるだけにしておいて、キュゥべぇへの攻撃は出来る限りしないようにしてください。…もっともマニゴルドさんは関係無しにやってるみたいですが、思いっきり…』

 

 「…いいのか?もし奴を放っておいたら…」

 

 シジフォスはいかにも不満げに携帯電話の声の主に問い返す。キュゥべぇの目的は分かっている。彼の任務はまどかと奴との契約を妨害し、まどかを魔法少女にさせないことである。確かに魔法少女になっても魔女にさせない方法、あるいは魔女から人間にもどす方法は無いわけではないが、実験例が少なく、リスクも成功率も分からない以上、あまり頼るわけにはいかない。ならば、出来る限りキュゥべぇとまどかを接触させない…最悪の場合キュゥべぇを出会い頭に始末していくことも視野に入れねばならない。

 シジフォス自身は、まだ幼く、未来のある少女達を犠牲にするキュゥべぇのやり方を気に食わないと感じており、奴らを叩きつぶすことにも躊躇は全く無い。だが、それを知っているにもかかわらず待ったをかけられ、若干不満に感じているのだ。

 

 『分かっています。でもいきなりキュゥべぇに攻撃を仕掛けた場合には彼女達から信頼を得られなくなる可能性があります。それに、キュゥべぇに下手に警戒をされるとまずい』

 

 「成程、承知した。安心してくれ、鹿目まどかは俺が何としても守り抜いて見せる」

 

 シジフォスの言葉を聞いた携帯電話の声の主は、しばらく沈黙をした後、申し訳なさそうな声で再び話し始めた。

 

 『すみません、本当は俺がやるべきことなんでしょうけど、貴方達に任せてしまって…』

 

 「気にするな、君には俺達に新しい命をくれた借りがある。これくらいはどうってことはないさ」

 

 『…はい、ありがとうございます、シジフォスさん』

 

 「ではこれで電話を切る。何かあったらすぐに連絡するよ、一刀」

 

 『はい、残る二人の方も直ぐにそちらに向かいますので、それまでよろしくお願いします』

 

 電話を切ったシジフォスは、屋上の上から見滝原を見降ろした。

 

 目の前に広がる街並み、その中でどれだけの人々の営みがあることだろう。

 

 そして、その営みを崩すであろう魔女が、その魔女と戦う宿命を義務付けられた魔法少女が、どれだけいるのだろう…。

 

 「だが、その戦いも、それによって生まれる絶望の連鎖も、俺達が断ち切る。その為の女神の聖闘士なのだから…」

 

 シジフォスは自身に言い聞かせるようにそう呟き、目の前の風景を見つめ続けた。

 

 

 

 暁美ほむらSIDE

 

 「…本当にいいのかよ」

 

 「ええ、貴方なら出来るんでしょ?」

 

 「そりゃそうだがよ、なんせ俺も全く実践例がねえんだぜ?」

 

 目の前の少女、暁美ほむらに対し、蟹座の黄金聖闘士、マニゴルドは気が乗らなさそうに答える。しかし、その程度ではほむらの決意を揺るがすことは出来なかった。

 

 「それによ、成功したとしてもリスクが無いわけじゃねぇ。魔法少女だった時の利点、まあ単純にいやあ不死身な能力はまず消えるし、へたすりゃ魔法の使用にも支障が出るかもしれねえ。んでもいいのか?」

 

 「構わないわ。たとえどんな重荷を背負っても私はまどかを救う。その為にも私は魔女になるわけにはいかない!」

 

 ほむらは固い決意を秘めた視線で、マニゴルドを見つめる。そして彼女の返事を聞いたマニゴルドは、しばらく沈黙していたが、やがてニヤリと笑みを浮かべた。

 

 「へっ、いいね、その強気な態度、悪くねえな。いいだろう、やってやるよ。ま、俺もどうせ付き合うならゾンビみてえな女じゃなくて生身の粋の良い女が良いんでな。…まあ性格が合格点でも、その胸じゃあ、なあ…」

 

 「…早くしなさい」

 

 マニゴルドの言葉にほむらは機嫌が悪くなったのかじと目でマニゴルドを睨み、右手にソウルジェムを乗せて彼をせかす。マニゴルドははいはいせっかちなお嬢さんだねぇと言いながら床から立ち上がり、右手の人差し指をほむらのソウルジェムに突き付ける。

 

 「…いっとくが、失敗して黄泉比良坂に飛ばされても恨むんじゃねえぞ?まあこの世界に黄泉比良坂あるかどうかわかんねえけど・・・」

 

 「その時は幽霊になって貴方を呪い殺してあげるわ」

 

 おお、こええ~、とマニゴルドはおどけたものの、直ぐに真面目な表情になると、人差し指に小宇宙を集中する。

 

 「じゃあ、いくぜ?…積尸気冥界波!!!」

 

 マニゴルドの言葉と共に右指から放たれた閃光が、ほむらのソウルジェムを包み込んだ。

 

 

 佐倉杏子SIDE

 

 「おい、杏子。もう七時だ。起きろ」

 

 「んむ~…いいじゃねえか…あと30分…」

 

 「なにバカな事を言っている!!さっさと起きろ!!」

 

 「うわあああああ!!!布団はがすな寒い~!!」

 

 アルデバランに布団をはぎとられた杏子は体中に襲いかかってきた冷気に身体を丸めた。

 それを見てアルデバランは笑い声を上げた。

 

 「ハッハッハッハッハ!!着替えが終わったらさっさと下に降りてこい。朝食の準備は出来ているぞ」

 

 言いたい事を言い終わったアルデバランは杏子の部屋から出て行ってしまった。その後ろ姿を苦々しげに見ながら、杏子はベッドからしぶしぶ起き上がる。

 

 「…ったく、なんでアタシがこんな所に・・・。まあ飯と宿がタダで手に入るんだから文句は言えねえけど…」

 

 ぶつぶつ文句を言いながら、杏子は借り物のぶかぶかのパジャマを脱いで、昨日着ていた服に着替える。

 

 昨夜、杏子はアルデバランと一緒に焼き肉屋で食事をしたあと、アルデバランにこれから行くところがあるのかを聞かれた。

 家族や家を失った杏子にそんな物があるはずもないため、杏子は素直に「無い」と答えた。

 と、その答えを聞いたアルデバランは、

 

 「それならば俺の家に来い。部屋は無駄に多いし一人暮らしだからな。一人増えたところでどうという事は無い。お前のその性格を治すのには大分かかりそうだしな」

 

 と、杏子に提案した。

 最初は嫌がっていたものの、結局は食事と寝床が無料で手に入るという事、そして、目の前の大男が悪い人間ではない事が分かった事から、結局了承する事になった。

 こうしてアルデバランの家に居候することになった杏子だが、彼の家に招かれるや否や直ぐに風呂に放り込まれた。正確には風呂場に衣服を着けたまま放り込まれたのだが…。

 「風呂に入って身体くらい洗え!!」との事なのだがこれでも杏子は週に数回は銭湯に入っている。無論無銭でだが…。

 何だかんだ文句を言いつつも結局風呂に入って身体を洗い、疲れを癒した杏子はアルデバランのパジャマを借りると家の二階にある部屋を寝室代わりに使う事となった。

 

 杏子は昨日の事を回想しながら階段を下りて二階のキッチンに向かう。キッチンに近付くにつれて朝食の香ばしい匂いが鼻孔を刺激し、口の中が唾で溢れてくる。

 

 「ふ~、おっちゃ~ん。腹減ったー…」

 

 「朝起きたら顔を洗ってこい!!そんな寝ぼけ眼で飯を食うな!!あと、朝起きたらおはようだ!!腹減ったではない!!」

 

 「うおお!?」

 

 キッチンに入った瞬間に轟く怒号に思わず杏子も怯んだ。

 

 「な、べ、別にいいじゃねえかよ顔洗う位…」

 

 「そんな目ヤニだらけの顔で飯を食う奴が何処にある!!あと朝起きたらおはようと挨拶する事は常識だろうが!!飯を食う以前に礼儀がなっとらん!!」

 

 「…!!」

 

 アルデバランの言葉に杏子は顔を俯かせて肩を震わせる、が、やがて小さい声でぼそぼそと呟いた。

 

 「・・・おはようございます」

 

 「声が小さい!!もう一度!!」

 

 「おはようございます!!」

 

 やけくそになったのか杏子はアルデバランに向かって大声で怒鳴る。 アルデバランはそれを聞くと満足そうにうなずいた。

 

 「よし、ならさっさと顔を洗って来い。もう朝食の準備はできているぞ」

 

 「くそっ!やりゃあいいんだろやりゃあ!!」

 

 杏子は怒鳴りながら足音荒く洗面所に向かった。その後姿を見ながらアルデバランは頭を掻いた。

 

 「やれやれ、もう少しお淑やかになってもいいだろうに、あいつは」

 

 

 

 洗面所から戻ってきた杏子は、じと目ですでに椅子に座っているアルデバランを見るとさっさと自分も椅子に座る。

 朝食は意外なことに和食、それもなかなか美味しそうな出来であった。

 

 「なんか、あれだな」

 

 「ん?どうした?」

 

 「おっちゃんが料理を作るのって、かなり意外だ」

 

 「あのなあ、これでも俺は何人か弟子を養っていたのだ。家事の一通りできて当然だろうが」

 

 杏子の遠慮ない言葉にアルデバランは苦笑する。一方杏子はアルデバランの言葉を聞いて意外そうな表情でアルデバランを見る。

 

 「おっちゃん、弟子がいたのか?」

 

 「昔、な…」

 

 杏子の質問をアルデバランはそう言ってはぐらかす。その横顔はなぜか寂しげであった。

 その表情を見た杏子はそれ以上質問をしなかった。

 

 「…そっか、んじゃ、いただきます」

 

 「ん?おお、いただきます。お前も食事のときのマナーはいいんだがなあ」

 

 両手を合わせて食事の挨拶をした杏子を見て、アルデバランもつられるように挨拶をする。

 その後互いに朝食を食べ始める。

 

 (なんか、久しぶりだな。誰かと一緒に飯を食うって…)

 

 目の前の男が作った朝食を味わいながら、杏子はそんな事を考える。

 家族を失ってから、食事はずっと一人で食べていた。

 それを別に淋しいとも思わなかったし、別に構わないと思っていた。

 が、何故だろうか。目の前の男と一緒に食事をしていると、いつもよりも食べているものが味わい深く感じる。

 

 (ま、たまにはこんなのもいいかもな…)

 

 杏子は心の中でそう呟きながら味噌汁を美味しそうに啜った。

 


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