魔法聖闘士セイント☆マギカ   作:天秤座の暗黒聖闘士

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プロローグ1 黄金との邂逅

 

何度も何度もやり直してきた…。

 

 

 

ただ一つの約束を守るために…。

 

 

 

 『…馬鹿な私を…助けてくれないかな……』

 

 

 

 『…約束する!!何度やり直したとしても、絶対に……を救ってみせる!!』

 

 

 

 でも……、

 

 

 

 何度繰り返しても、何度繰り返しても、彼女を救えない…。

 

 

 

 でも私は諦めない。彼女を救うまでは。決して…。

 

 

 

 

 プロローグ 黄金との遭遇

 

 

 

 

 とある病室で、少女、暁美ほむらは目を覚ました。

 目を覚ました彼女は、壁に掛けられたカレンダーを見る。

 そして、その日付を見て確信した。

 

 …また戻ってきた、と…。

 

 「…よお、ようやくお目覚めか?嬢ちゃん」

 

 「……!?」

 

 と、突然誰もいないはずの病室に、何者かの声が響いた。ほむらはギョッとした顔で声の聞こえた方向を見る。

 

 そこには一人の男が床に置かれた四角い箱に座ってこちらをおもしろそうに見ていた。男の眼は鋭く吊り上っており、髪の毛は群青、黒っぽいコートを纏った体は、細身だがかなり鍛えられているのが見て取れた。

 そして何より、男の周囲からは何か異様な気配が滲み出ていた。そう、それはまるで、死霊のような…。

 

 「誰!?」

 

 ほむらはベッドから跳ね起きると男を睨みつける。何しろ今までのループでこんな男は存在しなかった。今まで目を覚ましたら病室にはだれもいなかったはずだ。

 

 「落ち着け嬢ちゃん。俺は別にてめえにどうこうしようって気はねえんだぜ?大体そんな貧相な体形じゃ、なあ…」

 

 「!!!!!!」

 

 男の言葉にほむらは顔を赤らめて、別の意味で男を睨みつける。ますます警戒を強めてしまったほむらに男は大きく溜息をついた。

 

 「はーっ!ったく、これだからガキのお守は嫌だって言ったんだよ。あの野郎、面倒な仕事押しつけやがって…。…おいクソガキ!!」

 

 「…だ、だれがクソガキよ!!」

 

 男の言葉にほむらはますます顔を赤らめて男を睨みつける。そんな少女に男はにやりと笑みを浮かべる。

 

 「ほー、気の強いのは俺好みだぜ。ま、それは将来に期待として…。お前、確か何度も人生やり直してるんだってな。お友達を救いたくて、だっけ?」

 

 「!?ど、どうしてそれを…」

 

 今までの表情から一変し、ほむらは困惑の表情を浮かべる。その様子をみて男はしたり顔を浮かべる。

 

 「まあ、それは依頼主から聞いた、とだけ言ってくか。でだ、単刀直入に言うぞ?そのてめえの望み、俺も手伝ってやろうか?」

 

 「…!?何ですって!?」

 

 男の思いがけない言葉にほむらは動揺の表情を浮かべた。男はそんなほむらを涼しげに見ながら何処から取り出したのか缶ビールの蓋を開け、それを一気に飲み干すと大きく息を吐きながら言葉をつづけた。

 

 「つまりだ、てめえ一人で大変だったら俺も手伝ってやるっつってんだよ。てめえのお友達の鹿目まどかとかいうのを魔法少女にすんのを妨害するのも、ワルプルギス潰すのも、その他の魔女潰すのもな」

 

 ニヒルな笑みを浮かべながら話す男を、ほむらは信じられない表情で見つめていた。

 

 何でこの男は魔女の存在を、ワルプルギスの事を知っている?

 

 何でこの男は私の目的を知っている?

 

 この男は、一体…。

 

 「さあ、どうする?協力してほしいか、それとも断るか。ま、俺はどっちでもいいんだがね、何もせずに帰るとジジイ共と依頼主がうるせえんだよ。だから出来る限り受けてほしいんだがね」

 

 男を睨みつけるほむらに、男はニヒルな笑みを崩すことなくほむらに問いかける。しかし、ほむらはキッと男を睨みつけて、返答を返す。

 

 「…断るわ、私は一人でまどかを助けるって決めた。もう、誰にも頼らないって決めた!何処の誰とも分からない貴方には、頼る気は無い!」

 

 ほむらの固い決意を秘めた表情に、男はきょとんとした表情をすると、直ぐに面倒そうな表情で溜息を吐いた。

 

 「はあ…、ったく、あの青銅のガキを思い出しちまう…。しゃあねえな。んじゃあこれを聞いても俺の協力はいらないって言えるか?」

 

 男はにやりと何処か悪戯を思いついたかのような笑みを浮かべる。

 

 「俺は魔女を元の人間にもどす方法を知っている」

 

 「!!?な、何ですって!?」

 

 ほむらの表情は一瞬で驚愕に変わった。その表情を見た男はしてやったりと言いたげな顔で、ほむらを見る。

 

 「ああ、本当だ。とはいってもまだ試したことはねえが、ジジイ共の言うことじゃ可能らしいぜ?」

 

 男の言葉に、ほむらは沈黙して考える。果たして男の誘いを受けるべきか、否か。

男の言うことが本当なら、魔女化した美樹さやかを救えるかもしれない。そして、万が一にもまどかが魔女になってしまったら、その時も…。

 だが、この男は何でその方法を知っている?まさかこの男は、インキュベーターの…。

 

 「いっとくが俺はインキュベーターとか言うのとは無関係だぜ?あのくそ忌々しい淫獣セールスマン共とは関わり合いたくもねえ」

 

 ほむらの思考を読んだかのように、男は一足早く口を開く。その表情は嫌悪感に満ちており、男の言葉が真実であると何よりもはっきりと告げていた。

 男の言葉を聞いたほむらは、再び口を開いた。

 

 「…一つ、聞かせて」

 

 「あん?」

 

 「まどかを救って、私を助けて、貴方には何の得があるの?」

 

 ほむらは男をじっと見ながら、真剣な表情で問う。男はその質問に、頭を引っ掻きながら顔をそむけて何かを考えていたが、やがて再び視線をほむらに向けた。

 

 「得、ねえ…。俺にはねえよ。俺はただ依頼主の依頼受けてるだけだからよ」

 

 「ならその依頼主の目的は?」

 

 「そりゃあ企業秘密……てわけじゃねえから、まあいいか。言ってやるよ。依頼主の目的は」

 

 この世界の真のハッピーエンド。

 

 男はどこか面倒くさそうな表情で、そう答えた。男の返答を聞いたほむらは、目を閉じて再び沈黙した。が、やがて眼を開き、決意に満ちた表情で男を見る。

 

 「一つ言っておくわ、私の邪魔はしないで。どんなことがあってもね」

 

 「…へっ、そりゃ場合によりけりだな。俺が気に食わねえこととかの場合は遠慮なく邪魔させてもらうがな。で?俺に協力をお願いするのか?」

 

 「…まだ貴方を完全に信用したわけじゃない。でも、私には一人でも多くの味方が必要なのは事実だから」

 

 「ハッ、まあいいぜ、んなら付き合うとするか。ま、短い間だと思うがね?」

 

 男はニヤリとほむらに笑みを向ける。ほむらは表情を変えることなく男を見る。

 

 「そう言えば自己紹介してなかったわね。私の名前は…」

 

 「暁美ほむらだろうが。知ってらあ」

 

 「…そ、なら、貴方の名前は?」

 

 「お、そういや俺の名前を言ってなかったな」

 

 男は頭を引っ掻くと再びほむらに視線を向け、自身の名前を名乗る。

 

 

 

 

 「俺の名前はマニゴルド。蟹座の黄金聖闘士だ」

 

 

 

 こうして、世界を繰り返す少女と、死刑執行人の名を持つ黄金の闘士は、此処に巡り合った。

 

 

 

 

 

 

 


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