イギリスへ千冬、山田先生、学園にいる専用機持ちが全て出揃っているIS学園に残されている防衛戦力は一夏のAI GINJI、AKABANE、JUBEと彼らの体となる無人機3体。そして一夏のペットの
その理由とは、何か問題が起きた時その者達を責任を取って殺害するというとんでもない約束を学園側としたのだ。さて、そんな男達も事前に説明がなされIS学園に派遣されたのだがその実力は達人クラス2人と特A級の達人が一人。3人は学園に来ると先ずは受付で学園長室に案内される。3人が学園長室に入るとにこやかな笑みを浮かべた笑みを浮かべた男性が3人を迎え入れる。
「良くおいで下さいました。どうぞどうぞ、お座りください」
「「「それでは、失礼します」」」
案内されるがまま学園長室にある来客用のソファーに3人は座ると学園長もその向かい側の席に座る。
「初めまして。この学園の長をやっております轡木 十蔵です。まあ、この世の流れで妻が学園長という表向きですが」
「それはそれはご丁寧に。え~、今回あいつ……織斑一夏からの命令でこの学園の警備を担当指揮させて貰います五反田弾です。まあ、あいつから戻るまでの間の警備と防衛を任されておりますので短い間かもしれませんがそれまでの間この3人、命がけでこの学園の警備をやらせていただきます」
「それはそれは、お願いします。……ですが、その――申し上げにくいのですが」
「まあ、おっしゃりたい事は解ります。貴方も学園の長と言う立場だ。ですので、あいつから申し付かっている事がありますので述べて宜しいでしょうか?」
「ええ、構いません。どうぞ」
「実力を見て貰えと。満足にたる戦力かどうか見極めて貰えと申し付かっております」
「それはそれは……ですが、それだと……そのかなり危険となりますがよろしいのでしょうか?」
「ええ、それでご納得いただけるのでしたら。戦闘人数は幾らでも。そちらに任せます。我々修羅は織斑一夏から敗北を許されていませんから」
「……解りました。それでは、十分後に第三アリーナで。教師達と模擬戦をお願いします」
「ええ、きっとご納得頂けると思いますよ」
学園長に第三アリーナに案内された弾と2人の達人。既にアリーナにはラファールリヴァイヴと打鉄を身に纏った教師が5人彼等を待っていた。5人の教師はじろりと鋭い視線を3人に向ける。
『では、時間がある教師を全員連れてまいりましたので是非とも』
アリーナの放送室にいる学園長からにこやかに期待してますよと言われる3人だが、弾は苦笑いし2人の達人は教師達に視線を向けたまま。緊張が走る。ISとは一機だけでも各国の軍事バランスを大きく崩す。それが5機も。
「んで、お前達はどっちを相手にする?お前達のノルマは一人1機な」
「それでは自分はあのラファールを」
「俺は打鉄の方を」
「OK,全員あいつから貰ったあのブーツを履いてるな?んじゃあ、始めるとするか。学園長!そちらの教師陣からラファールリヴァイヴと打鉄に乗る教師を一人ずつ選んで出してくれ!!こちらもこの二人を出すから!残りの教師は俺とこいつらの戦いが終わった後って事で宜しいですか?」
『解りました。それでは、榊原先生とエドワース先生お願いします。残りの先生方は勝負が終わるまで下がってください』
達人クラスの修羅2人と訓練機とはいえISを身に纏った先生が二人対峙する。教師と修羅の間にカウントダウンの表示が空中に映し出される。
5
4
3
2
1
……0
カウントが0になった瞬間修羅が動いた。打鉄に乗る教師はその手に近接用ブレード
「どら!」
「せい!」
打鉄に乗る教師が振るう近接用ブレード
一方ラファールリヴァイヴを相手にしていた修羅は蛇行しながら距離を詰めて行くため教師は修羅の対処に手間取っていた。まず銃とは照準を合わせて引き金を引く事で対象に命中するのだがその照準を修羅に合わせないと命中しない。素早く動き蛇行する修羅と距離を詰められ内心焦りながら照準を合わす教師。幾ら照準を合わせても直ぐにずれる為教師は一瞬だけ照準があった修羅に向けて引き金を引く。
IS用サブマシンガン スコルピオン・ストームから連射される弾丸は全て修羅が通った後を辿る。修羅が居た場所を弾丸は通過していく。
「
修羅は距離を詰めると左肩からラファールリヴァイヴを纏った教師に向けて突撃する。
教師は片手に持つ楯で防御するが力負けしてしまい背後に倒れそうになる前に後ろに加速と共に距離をとろうとするが、IS用サブマシンガン スコルピオン・ストームを持っていた手を掴まれると背負い投げがされる。空中を舞う体。視界は180度転回すると共に背中から胸にかけて地面に撃墜した衝撃が走る。
「
勢いよく地面に倒れた教師に向かって下半身を用いて下方向に行う発勁。背負い投げを食らって無防備な教師に腹部から背中にかけて衝撃が走りそれはシールドエネルギーを削る。全部とは言わないが半分近く削られるシールドエネルギー。
「ハアアア!
先程の攻撃によって未だ地面に転がって教師に向かって達人クラスの修羅は飛びあがり、宙を舞い空中からの落下を利用した足刀蹴りを行う。
地面に横たわる無防備な教師の腹部に突き刺さる足刀蹴りは教師の乗るラファールリヴァイヴの残りのシールドエネルギーをゼロにする。シールドエネルギーがゼロになったISはパワードスーツとしての機能を終え単なる重荷となった鎧にしかならない。片方の勝負はついた。男でもISに勝てる証明がされ、学園側としても満足のいく結果であろうが全ての勝負はまだついていない。
一方の勝負の決着がついたところでもう片方の達人クラスの修羅と打鉄に乗る教師との勝負も決着がつこうとしていた。
打鉄を乗る教師が振るう近接用ブレード
だが、その凶刃が修羅の体を切り刻む事は無く凶刃は修羅の体に命中する少し前に修羅の真剣白刃取りによって止められていた。
「
白刃取りした状態から手をずらして刀身をへし折ると同時に前蹴りと廻し蹴りの中間の軌道を描く蹴りを放つ。
持っていた近接用ブレード
攻撃を受け反動で後ろに吹き飛ばされた教師は修羅と距離が開いていた。上空に逃げる教師。上空を押さえれば地上から攻撃する術を持たない修羅に対してアサルトライフル
「
修羅が空中を蹴って烈風の如き空中三角飛びから突貫する逆突きの正拳を行ってきたのだ。地上にいると思っていた修羅が真正面に現れ、突然の出現に完全に虚を突かれた教師の体にその攻撃は命中する。教師は虚を突かれたため防御する事も出来ずシールドエネルギーがゼロに成る。只の鎧となったISに空中を飛行する機能は無い。空中を落下する教師を修羅はキャッチすると共に地上へと落下する。最早助かる術は無く、刻一刻と地面に落下する現状をみて教師は目を瞑る。二人の体が地面に激突する寸前教師を抱えた修羅が履いている靴が靴の裏からエネルギーを発射して修羅を持ち上げる。この靴こそ一夏が修羅がISと戦う為にヴェーダを使って設計し組み立てた空中移動できる靴なのだ。
靴裏からエネルギーが小刻みに噴射され修羅が空中から落下していたエネルギーが緩和されていく。
そして、落下のエネルギーを完全に殺した状態で修羅は地面に降り立った。
パチパチと拍手をしながらアリーナのフィールドに侵入する弾。
「お前達、よくやった」
労いの言葉を述べる弾に軽く会釈しながらアリーナのフィールドから出て行く達人クラスの修羅達。その後ろ姿を見届けると残りの教師陣に視線を向けながら準備運動をする。準備運動をする弾を見て息をのむ達人クラスの修羅達。これから修羅の頂に最も近い者の戦いが始まるのだ。自分達達人クラスより上の特A級の達人の戦いが。準備運動は勿論その動きを見逃すなど愚行も良い所だ。
準備運動をする弾に迫る複数の影。フィールドからは動かなくなりお荷物となったISとそれに乗っていた教師は既にアリーナのフィールドから消え代わりに新たな教師が3人現れる。全員訓練機を身に纏った状態で。打鉄にラファールリヴァイヴ2機の合計3機のISを一度に一人の人間が相手にしなければならない。一件無謀に見えるが達人クラスの修羅がISをそれぞれ一機ずつ落としていたのだ。弾にとって訓練機3機を相手にするという事は苦ではない。
それぞれの教師がその手に得物を握りしめる。ある教師はサブマシンガンを、ある教師は近接用ブレードを、ある教師はアサルトライフルを握りしめる。教師陣と弾との距離は5m程の距離がありカウントダウンが始まった。
試合を告げるカウントダウンが0に成ると同時に今度は教師陣が先に動き弾をぐるりと取り囲む。
「さて、お前等。その眼を見開いてよく見ておけ。
襲い掛かる教師陣に対して弾は空手の様々な技を繰り出して全方位の教師を一掃する。一方的に与えられる怒涛の攻撃。教師達が持つ武器すらも破壊し教師たちが乗るISのシールドエネルギーを大幅に削り反撃すらできない教師に怒涛の攻めは過熱していく。
「
高速回転しながら蹴りを連続で放ち、周囲の敵を一掃する技を披露する。その攻撃によって残りのシールドエネルギーが全てゼロに成り教師陣営が乗るISが全て同時に片膝を突き動かぬ鎧と化した。
「こうしてエネルギーが無ければ幾らISと言えども単なるでかい荷物にしかならない。確かにあいつが言ってた通りだ」
動かなくなったISを見て呆れる弾。そんな弾の姿を見て声が出ない達人クラスの修羅の二人。
「あれが修羅の頂に最も近い人の実力」
二人は弾と同じ技を使える。だが、幾ら同じ技を使えようとも弾と同時に技を発動しても必ず敗北していただろう。達人クラスと特A級の達人で更にその上位に位置するであろう弾とではそれだけ技の威力も速度も違うのだから。
「しかも我々と違って倒すまでに2分も掛かっていない」
言葉を失う修羅二人に弾はアリーナのフィールドから戻ってくる。
「良し、お前等これで俺等の力は示せただろう。後はあの学園長がどう判断するかだが……来たようだな」
弾と二人の修羅がいるアリーナのフィールド脇に設置されている待機所に学園長が現れる。にこやかな表情を崩さずゆっくりと移動をするが隙が無い。突然の事にも少しは対処できるかもしれない。
「それでは、今回の件ですが……文句のつけようがありません。是非とも学園警備をお願いします」
「ええ、解りました。こちらも文字通り全力で取り組まさせていただきます」
「それでは、これから学園の者にこの学園を案内させますので」
「ええ、宜しくお願いします」
この後、弾は久しぶりに彼女に出会う事となるのだがそれを弾は知る由も無い。
● ●
一方その頃ドイツ空軍基地にいる一夏は現在山田先生とクラリッサの二人と対峙していた。既にISを展開して身に纏っている二人。外野は専用機持ちと千冬にクラリッサの部下たち。それに基地に駐屯している暇なドイツ兵達で埋め尽くされていた。ドイツ空軍基地で有名であろうクラリッサにあの織斑千冬の弟、世界で唯一男性でISが使える男性IS操縦者織斑一夏との闘い!更にそこには織斑一夏ご指名でIS学園の山田教諭も参戦のバトルロワイヤル。おっもしろ可笑しく宣伝すればこんなものだろう。
まあ、何かしらのうわさが基地内に駆け巡り見物人が集まったことは事実。
「よくもまあこれだけ集まるものだな。まあ、構わんか」
そう言って幼児化した一夏は右手にピストル型注射器を握りしめ、首筋にその注射針を突き刺すと引き金を引く。注射器の中身が首の血管に注入され心臓を通して全身へと行き渡る。手足の末端細胞にまで注射器の中身の成分が行き渡ると全身から水蒸気を発しだし、やがて一夏は年相応の肉体へと戻る。無駄のない筋肉、鍛え抜かれた本来の体。
「ククク、成ったわ!本来の体に!!」
来ていた服は幼児サイズだったのでパッツンパッツンに成りはしたがそんな事は彼にとっては些細な事。今回使用した試験薬は前回と違って激痛を伴うことは無く、無事本来の肉体に戻りはしたのだ。満足のいく結果である。
軽く体を動かしてみると懐かしの感触。自然と唇がほころび、歓喜あふれるままに一夏は宣言してしまう。
「よし、俺は今回ISを使用しない!本来の体に戻ったのだ丁度良いハンデたり得るだろう」
その言葉に外野はどよめき、クラリッサはぶち切れ、ラウラはそんなクラリッサを見て溜息をもらす。
「貴様、先程から調子に乗りすぎだ!教官の弟だか何だか知らないがいい加減にして貰おうか!」
ぶち切れ状態のクラリッサに対して山田先生はアハハハと苦笑い。状況は同じでもこんなにも反応に差はあるのかと思うと少しばかり興味がわかなくもない。が、これからの戦いを思うと興奮が抑えきれない。生身の人間とIS2機とのバトルロワイヤル。ISとは一機でも多く持っている事で軍事バランスが大きく変化するものでありその為に様々な条約や条例が作られる始末。そして、女尊断碑の風潮を作りし原因。そんなISを今から倒すのだ。これを興奮するなと言う方が無理であろう。
「もう一度言っておいてやるよ。お前達は自ら敗北する……始めてくれ!」
一夏の言葉で3人の間にカウントダウンの表示が始まる。空中に投影されたカウントダウンは戦いを告げる音色。皆が皆カウントダウンを固唾を飲んで見守る。山田先生やクラリッサは真剣な表情をし、一夏は不敵な笑みを浮かべて今か今かと待ちこんでいた。
ついにカウントダウンの数値が0に成り戦いを告げる合図がなされる。
クラリッサの専用機
「行くぞ!」
ワイヤー・ブレードが20基程山田先生へと一斉に放たれる。
「なんだ。俺じゃねえのか……つまらねえな」
落胆する一夏にクラリッサはニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
「安心しろ、お前の相手は私がする。食らうが良い
それまで静かだった突起物が一斉に一夏の方に向き、一夏に向かって放たれる。迫りくる突起物。一夏との間に阻むものは何一つない。山田先生も蛇のように唸るワイヤー・ブレードに拘束されてしばらく動けない状態が続く。故に山田先生が突起物と一夏の間に割って入り一夏を守るという事は無い。その突起物が一夏に迫り、後コンマ数秒というところでそれは起こった。
「
一夏が空中をアッパー気味に殴るとそれは現れた。迫りくる突起物と一夏との間に気で作られた水色の巨大な握り拳をした腕が地面から出現し突起物の襲来を防ぐ。突起物は出現したその巨大な腕に命中する。その突起物こそラウラのAICを攻撃性に変えたクラリッサのISの特徴である攻撃性AIC。まるでドリルで削ったかのような掘削力を僅かに見せる。
「へえ、これがおたく等のご自慢ですか」
「馬鹿な!私の攻撃性AICがたったの数cmしか侵入していないだと!?」
驚きの表情を浮かべるクラリッサ。自慢の攻撃性AICを生身の人間に易々と防がれおまけに観察するようにその攻撃姿を見られたのだ。
「例えるならば植物の根が自ら肉体を伸ばして地面に侵食する様か」
「私を忘れて貰っては困りますよ!!」
最早空気と化した山田先生が再び登場した。その手に米国製45口径アサルトライフル フルタイム・バレットを手にした状態で。
照準をクラリッサに向けると引き金を引き銃口から連射される弾丸。そして、その銃先を変えて一夏にまで向ける山田先生。弾丸はクラリッサと一夏に向かて放たれ、クラリッサはその弾丸を食らってしまうが一夏はもう一回空中をアッパー気味に殴り
山田先生から放たれた弾丸は一夏に命中する前に突如出現した巨大な腕によって防がれ一夏はかすり傷一つ負う事は無かった。
「……ですよね~。はい、それじゃあクラリッサさんには申し訳ありませんがサクッと倒させて貰うとしましょうか。
「――舐めるなよ!やれるものならやってみるが良い!!」
いつの間にかクラリッサの周りに山田先生のシールドの包囲網が完成しており後は引き金を引くだけと言う状況。だが、クラリッサも背部から山田先生に向けて突起物をのぞかせており後は引き金を引くだけと言う状況。百の棘と千の弾丸が火花を散らし交差する。
「さて、どうしたものかな」
目の前に広がる光景は山田先生とドイツ軍のクラリッサ副官のバトル。両者互いに譲らず一瞬でも気を逸らせば敗北する現状。互いに拮抗しあっている状況で一瞬たりとも気を逸らすなど愚行も良い所であろう。
ここで何もせずに静観していれば山田先生とクラリッサ副官の勝負に決着がつき俺はその勝者と戦えばいい。相手もバトルで体力が消耗している分こちら側が勝利する確率はぐんと高くなる。が、どうにもこの現状にモヤモヤとした言い知れぬ不快感が込みあげてくる。
ふと、記憶をたどると今日はIS学園に弾と達人クラスの修羅が2名学園警備として派遣した日では無かっただろうか?
「ああ、この不快感。そうだ、この不快感は己の弱さに対するかつて味わったあの悔しさを思わせるものだ!!」
なぜ動かなかった?目の前で強者が戦っているというのに。己の強さを見せつける絶好の機会だというのに。自分の愚かさに反吐が出そうだ。高々IS2機に自分は何を恐れる必要があっただろうか?
この不快感を拳に乗せ全力で地面に向けて放つ!!ドーンと鈍い音が周囲一帯に響き渡り地面はクレーターでぼっこりと抉れる。まるで隕石でも落ちたかのように消滅した地面。外野は全員こちらに視線を向けており、戦っていた山田先生とクラリッサ副官も攻撃の手を休めこちらに視線を向けていた。
「そうだ!何もわざわざ待つ必要などなかったのだ二人纏めて相手をすれば、な!!」
外野は俺の言葉にどよめきを見せるが関係ない。俺にはその力がある。その力を皆に世界に見せつければいいのだ。
「
種はまいた。後は相手が勝手に勘違いをして敗北するのだから。
ドーンと鈍い音が響き渡り、私は山田教諭への攻撃の手を止め音の発信源を見るとあの男が地面を殴っていた。その威力は地面にクレーターを作るほどで生身であれほどの威力を出すなどあの男はどれだけ強いのか計り知れない。あの拳がもし私に向けられたらと思うとぞっとする。だが、そんな私の思いは次の瞬間に霧散した。
「
あの男がそう呟くと急に私の前に現れあの拳を振るってくる。
マズい!あの拳を浴びてしまえば一体どれほどのダメージを負うのか計り知れない!!振るわれる拳を後ろに回避して何とか避けるが次に私の目に飛び込んできたのは空中から飛び掛かり、あの拳を向けてくる姿が!急ぎ回避するが、地面に激突してしまう。衝撃が背中から駆け巡りシールドエネルギーがダメージによって削られるがそんな事は些細な事だ。あの拳、あのクレーターを作った拳が直撃すれば先程地面に激突した衝撃で受けたダメージよりも遥かに大きなダメージを負っていただろう。地面に背中から倒れた私にあの男は更に容赦なく追撃してくる。鬼畜か!?
どうにか立ち上がり回避するが、背後から銃声と衝撃が私を襲う。
「!!」
あの女だ。間違いない!これはバトルロワイヤルだったのだ。隙を見せる方が悪い。
「貴様!」
振り向き様に攻撃しようとするがそこには信じられない光景が映し出されていた。山田教諭があの男の攻撃を避けながらあの男に反撃していた。先程の私を襲った銃弾はその流れ弾だったというわけだ。
いや、そんな事よりも信じられない事にあの男は私と山田教諭を二人相手取り戦っていたというのか!?ならば――
「ならば、この攻撃してくる男はなんだというのだ!?」
山田教諭に攻撃している男もまた織斑一夏。そして、今現在私に攻撃して来る男も織斑一夏。
今現在ダメージを負いながらようやく回避している私を相手にしながらも同時に山田教諭も相手にしていたのかと思うとその化物ぶりにゾッとする。ISとは一機だけ他国よりも多く持っている事で軍事バランスが崩れる。故にISは重宝され、その操縦者もまた重宝されるが、この男はその根本の考えからへし折りにくる。ISなど取るに足らない存在で2体同時に相手取ってでも戦える。その事実をこの男は証明してしまった。認めたくないがこの男は私よりも強い。下手をすれば織斑教官よりも。
それからも一夏の
後に残ったのは地面に横たわるクラリッサ副官と山田先生という敗者。そして、一歩も動かずに勝利を治めた勝者。
勝負は誰の眼から見ても明らかだった。そんな勝者に歩み寄る審判の千冬。
そっと一夏の手を取り勝者の宣言をするのかと思いきや更に胸ぐらをつかみ一夏を投げとばす。
「のわ!?」
投げ飛ばされ思わず受け身を取る一夏。素早く起きあがり千冬に詰め寄る。
「何すんだよ!」
「戯け!お前は加減と言うものを知らんのか!?」
「おいおい、俺はちゃんと加減したぜ。まず第一に二人のISは無事だろう?シールドエネルギーが回復すれば動けるようになるはずだ。第二に二人に怪我はない。まあ、2,3日程打ち身で痛むだろうがその程度だ。戦闘に支障をきたす事は無い」
「ウムム」
唸る千冬に一夏はわざとらしく膝を抱えて落ち込んだふりをする。
「だというのに、織斑先生に信用されてなかったんですね、俺って」
チラッと千冬を見てはまた落ち込んだふりをする。
「勝者宣言されるかと思い期待に胸を膨らませてたらまさかの投げですわ~。はあ、あげて落とされるとはまさにこの事。やべ~、やる気なくしますわ~」
「………ああ、もう解った!すまなかったな。それで、私は何をすれば良い?」
「そうか!では、皆の前で俺に頭を撫でられて恥辱の限りw」
一夏が全て言い終わる前にぺきっと言う異音が一夏の腕からして見れば手首の関節が外されていた。外野はその光景にドン引き。
「それで、何か言ったか?」
千冬は圧倒的な威圧感を放ちながら一夏に再度問う。
一夏は外れた関節を戻しながらもう一度言う。
「猫耳メイド服姿になって膝枕をして俺の頭を撫でt」
全てを言い終わる前にマウスキラーで口を封じ込まれググっと力を入れられる一夏。
「何か言ったか?」
マウスキラーから解放されるとようやく一夏はやれやれと言いたげな表情を浮かべた。
「チッ、解ったよ。それじゃあ、頭を撫でてくれや」
選べねえとかふざけんなやと内心ぼやくが千冬に頭を撫で始められると目を細める。かつて小さい頃に撫でて貰った優しい手の感触。早くも無く遅くも無い絶妙な速度と力加減で調整されたその手つきは懐かしさを覚える。
視線が一夏と千冬に集まるのを感じ一夏は眼を開くと外野が全員千冬と一夏に視線を向けていた
「……なあ、これ以外と恥ずかしいな」
「し、仕方ないだろう!お前が言い出した事だ!!ほら、もう良いだろう!!」
「あ、ああ」
二人して赤面し互いに背を向けあう。
千冬はコホンと咳払いし山田先生とクラリッサに補給を行うように指示を出すが、終始赤面していたため威厳は全く無く寧ろ皆千冬を生暖かい眼で見守るのだった。