セシリアと戦った翌日の朝のホームルーム、一夏は黒板の前に立った状態で千冬に話しかけていた。一夏の背後にある黒板には織斑一夏クラス長決定とでかでかと書かれており、一夏は不機嫌さMAXだった。
「おい、姉貴。ちょっといいか?」
「なんだ織斑。それと学校では織斑先生と呼べ。出来なくてもやれ」
「織斑先生(笑)」
「殺されたいか?」
「それは、こっちのセリフじゃボケがっ!?なんで、なんで俺がクラス長になってんだ?ああん!?」
一夏の怒鳴り声が今日も朝からよく響く。
そう、一夏はクラス長をかけた戦いでセシリアに完全勝利した。なのに、何故かクラス長に成っていたのだ。これは、どこかの誰かの悪意を感じずにはいられなかった。
「フン。セシリア・オルコットがクラス長の座を辞退したので、そのままお前をクラス長に私の独断と偏見で決定した」
「おい、コラ!糞姉貴、人権侵害だぞ!」
「フ、私がルールだ。お前を目の届く範囲で監視するための措置だ。それに見ろ」
そう言って千冬は教室に居る生徒全員を見渡す。生徒はにこやかな表情をしており、誰も異論は持ち合わせてないといった雰囲気に教室が包まれていた。
「お前以外誰も異論は無さそうだが?」
「当たり前じゃボケエエエエエ!!!クラス長なんて面倒い仕事を押し付けれて俺以外の全員満足だろうに決まってんだろ!!手前、覚えとけやちーたん!この恨み絶対に晴らしてやる!!」
そう言って一夏は若干泣きながら教室の窓ガラスを突き破りIS学園入学して二回目の窓からダイブを決行してホームルームの逃亡を図った。
「ちーたん!?」「え!?それって、まさか織斑先生の事!?」「やだ、可愛い!!」全員が千冬に向かって一斉に視線を向ける。
「……」千冬は気まずくなったのか何も言わずに顔を下に向ける。そして、体中から話しかけるなオーラを放つ。
「え、えっと~、それじゃあ、織斑君抜きではありますが、ホームルームを始めます」
山田先生司会のもと朝のホームルームが始まった。
★☆★
結局その後の授業も一夏が教室に帰ってくる事はなく、午前中の授業が終わり時間は昼食の時間となった。
しかし、その時に事件は起こった。
『お昼のニュースの時間で……』
普段流れる放送部員によるお昼のニュースの時に急に放送が止まった。
ザーザーと砂嵐の雑音が流れ一向に放送が流れない。
「どうしたのでしょうか?」
「さあ?」
セシリアと箒が不思議そうに話していると放送がようやく繋がった。
『おっ昼の
「「え!?一夏(さん)!?」」
何故か一夏の声で………
『えー、本日の放送は、なんか朝からどんよりとした気分なんですよね~。何 故 か 俺がクラス長になったせいで!!』
千冬のクラスに戦慄が走る。これは、マズイ。何かがまずい。本能がそう告げていた。
『まあ、終わった事は仕方ありませんよね――』
どこか諦めた声の一夏にクラスの一同がホッとした時
『――でも、このどんよりとした気分は晴れません。そ こ で どこかの誰かさんに仕返しするために俺、家まで戻ってまいりました!』
何かがおかしい。朝、泣きながら窓を突き破って逃走した人物とは思えないほど明るい一夏。
絶対に何かがおかしい。
『んという事で、取ってきたぜ日記!』
???日記???
一夏のクラス中、というか学校中から疑問符が沸き起こる。
『今日は朝から素敵な贈り物をしてくれた誰かさんの為に日記を音読させて貰いまーす』
そう言って前置きをすると一夏は日記を音読しだした。
『✖✖年○○月◆◇日 晴れ あ~、これは今から6年前だな~。懐かしい。今日、ちーたんにブラジャーを買って来いと言われた。僕はブラジャーというのが良く分からず、指示されるがまま街の服屋さんに行って、お店の人に「ブラジャーください!」と言った。お店の人は少し苦笑いをしていたが、メモを渡すとその商品を持ってきてくれた。色は水色のブラジャーで、メモにサイズBと書かれていた。お店の人は丁寧にブラジャーを包んでくれたマル―――あー、懐かしいこれはちーたん……織斑先生のブラジャーを初めて買いに行った時の日記だな。( 'ω')あの時初めてブラジャーを買いに行ったぜ!その後Cカップと徐々に胸が大きくなり今ではバストサイズが88と成長したぜ!』
あ、これは、あかんクラスの誰もがそう思った。
同時刻 職員室にも同じ放送が流されていた。その放送が流れ始めると静かな静寂の後、教員の誰もが死を覚悟した。主に千冬によって。
それ程までに千冬の怒りは頂点に達していた。怒りの所為か羞恥の所為か、あるいは両方か――両方だろう。取り敢えず千冬は無言になるも顔を赤らめていた。
しかし、千冬の無言の「喋れば殺す」「笑えば殺す」「視線を向ければ殺す!」と言った具合の圧力に教師達は命を握られているかのような感覚に陥った。
まず、千冬がコーヒーを入れていたマグカップが粉々に砕けた(千冬は触ってろおらず)。次に職員室の窓ガラスが一枚も残らず亀裂が走った。千冬が使っていた机が真っ二つに割れた。窓の向こうで飛んでいた鳥達が昏睡状態に陥り、地面に大量に落下した。
『お!みんな静かに聴いてくれてる!そんだけ大好評ってことか!!うっしゃあ!そりゃ、そうだもんな。みんなが憧れの織斑先生だもんな。うん、俺感激。って事で次、行くぜ!次は………ちーたん、ネコさんパジャマ卒業したヨ!だ』
―――誰かこの放送を止めてくれ!
学園に居る人間 (千冬と一夏以外)全員がそう思った時
『あ、この放送は俺がクラス長っていう面倒な仕事を押し付けられた腹いせに毎日流す予定だからな!!みんな、安心してくれていいぜ!』
無慈悲な答えが帰ってきた。
『それじゃあ、ちーたん、ネコさんパジャマを卒業したヨ!始まるぜ~~』
聞きたくない聞きたくない聞きたくない!言わないで言わないで!聞きたいけれども聞きたくない!と言うか死にたくない!!職員室にいる教師全員がそう思っていたその頃、生徒会室では
「虚ちゃん!生徒会長権限で織斑一夏君のクラス長の任を解くわ!書類作成急いで!」
ある意味学園危機に普段は仕事をしない生徒会長更織楯無も自ら進んで仕事をしていた。