拳の一夏と剣の千冬   作:zeke

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第67話

 人事を尽くして天命を待つという諺がある。

 今の簪はまさにその諺通りだ。

 

 時はタッグトーナメントの当日、控え室で簪は指輪の待機状態になっている打鉄弐式を眺めながら昨日までの事を走馬灯のように思い出していた。完成した打鉄弐式の飛行テストを行い、問題なく飛行運転を終えた簪をみて一夏は満足しながら頷くと翌日から地獄の様な激しい特訓の日々が始まった。

 

 毎日命がけの修行。近接格闘戦を想定した模擬線や遠距離を想定した模擬戦等の修行漬け。毎日毎日修行が終わり、自分のベッドに入る頃には寝る事も困難な激しい筋肉痛が襲い、修行中の特に近距離格闘を想定した模擬戦では一夏の容赦ない攻撃が簪を襲い、一撃でも受ければ意識が飛びそうに成るほどの衝撃が全身を襲い最初は得物の近距離武装の薙刀の《夢現》を手から離した瞬間に容赦ない追撃が襲い幾らISが絶対防御があるとは言え衝撃を全部防げるわけでもなく、何度も何度も気を失い意識が戻れば口の中に血の味がした。

 

 体が小さい一夏の事を見くびっていた事も否定できず、心のどこかで舐めていたのも事実だがそれを抜き差しても簪は一夏の足元には到底及ばない。気が付けばいつもアリーナの地面に蹲ったり、横たわったりする日々だった。

だが、慣れというのは怖いものでそんな過酷な修行も最初の2週間ほどは辛いと感じていたが2週間程過ぎればなれてきて一夏の攻撃を受けても獲物を手放さなくなった。そして初めて気づいたのだがその時一夏からの追撃は比較的緩やかで攻撃性は低い追撃を受けるという事。

 

この時簪は一夏の目的を察した。

 

一夏は自分に得物を離すなという事を教えようとしているという事に。

事実得物を離さなければ一夏の追撃を簪は防ぎ、あるいは回避すれば反撃に出るという事まで出来た。だが、惜しくも時間が足りなかった。

 

 トーナメント前の特訓最終日に一夏に一撃反撃をするも《夢現》を雪片弐型で防がれて終わりだった。

 

 特訓中、一度もダメージを与えることが出来ず、ただただ回避スキルが向上しただけだった。

 

 

 特訓中、何度も死にそうになったり、死にたくなるような惨めな思いをした。

 自分より小さな小学生ぐらいの身長の一夏にぼろ負けして精神的にもきつく、手はまめだらけとなり肉体的にも限界に達していたが姉に負けたくない一心で歯を食いしばって修行を耐え抜いた。

 

 そんな修行を思い出しながら簪は今日のタッグマッチトーナメントの対戦相手発表を待っていた。

 

「お、出たみたいだぞ。……これはこれは」

 

 隣にいる一夏の声に思い出から帰ると一夏に視線の先を追うと壁に設置されたディスプレイに対戦相手が表示され初戦の相手は篠ノ之箒と更識楯無VS織斑一夏と更識簪の表示がされていた。

 

「成程、運命の女神さまとやらは余程せっかちと見える。楽しみは最後に取っておくものだろうに……」

 

 そう言ってクククと笑う一夏。

 眼を細め、その表情は呆れとも楽しんでいるとも読み取れる表情でどう反応していいのか簪には解らなかった。

 

「さて、それではそろそろ行くか。簪、心の準備は万全か?どうやら、事前に入手した生徒達の優勝候補データでは俺らのチームが最下位だそうだ」

 

 

「……どうして今そのことを?」

 

「なに、生徒達の思惑を伝え、やる気を出させる燃料として暴露したまでよ」

 

「普通、逆にやる気が下がると思うけれども…」

 

「なに、番狂わせをすれば良いだけだ。それにより観客席は湧き、大勢の者が嘆き、悲しみ、怒りに包まれる」

 

「どうして?」

 

「お前は知らんかったかもしれんが生徒会長公認で賭けが行われていてな」

 

『まあ、俺公認なわけだが』と心の中で付け加えながら一夏はニヤリと笑みを浮かべて説明を続ける。

 

「それで、賭けの内容だが今回の最有力優勝候補に更識楯無と篠ノ之箒ペアが上がった訳だ。まあ、当然と言えばば当然か。お前の姉に第四世代のIS赤椿に乗る箒。現状、各国で第三世代開発に着手しているのが手一杯なのに対してそれをすっ飛ばして次世代ISを乗るのだから、自然と期待は高まるのが普通だな。んでだが、俺らのチームに入れた投票は二人、俺とお前のみ!」

 

「私、投票した覚えがないのだけれども……」

 

「それは当然、俺がお前の名前を使い投票したからな!お前は対価を支払わず賭けの商品を手に入れる!なんと、食券半年分だ!!さあ、後は優勝し名を示すのだ!!勝利の栄光を君に……と言いたいところだが、手前で手に入れろ。俺は道を示すだけだ」

 

 

 傍若無人の一夏の言葉には何故か耳を傾けてしまう。

 耳を傾ける、魅了の力の様なものがあった。

 

「さあ、ふって湧いた観客席から聞こえるのは歓喜の声か、悲劇の声か。選ぶのはお前だ、簪。後はお前が選び歩むべき道だ。他人の不幸は蜜の味、観客席が悲劇の悲鳴に見舞われたとき俺の心は満たされる。優勝の時にその祭壇に向けられるのは嫉妬の視線。妬み、恨み、あらゆる負の視線が向けられるってのは、どうだ?こういう筋書きは」

 

「……貴方、マゾ?」

 

「いいや違う!断じて違う!!訂正を要求するぞ、簪!!俺はだな、」

 

そう言って言葉を続けようとする一夏を遮って大きな揺れが起こった。

地震を思わすような巨大な揺れ。

 

「な、なにが起こっているの……」

 

「ちい、おいMAKUBEX!!」

 

 一夏の呼びかけに応じるかのように一夏と簪の前に体長5cmほどの大きさの妖精がホログラムによって空中に映し出される。

 まるでアニメや映画の様な妖精は簪に一礼すると一夏に報告を行った。

 

 

「マスター、どうやらこの学園に襲撃が行われています。先程の揺れはその襲撃による最初の攻撃です。それにより学園を覆う結界の一部が破損」

 

「おいおい、そりゃあ大変じゃねえか!?」

 

「さらに悲報が。破損した結界の個所から未確認飛行物体が数機侵入。現在、その行方を全力で追っていますがその目的は専用機持ちと思われ……」

 

「あ~、長い!つまるところ……こう言うこったろ!!」

 

一夏が控室の壁に視線を向けると揺れはさらに大きくなり、壁と天井は大きな亀裂が走る。

やがて、天井と壁の一部が崩れその中からMAKUBEXの報告があった未確認機体が二機、姿を見せる。

 

「おい、簪!」

 

「うん!おいで打鉄弐式」

 

阿吽の呼吸で一夏と簪はISを展開する。

簪の手には超振動薙刀【夢現】を握りしめ、その矛先を未確認機体に向ける。

一方、一夏は右手に自身よりも2倍以上ある大きさの大剣【雪片弐型】を握りしめ、左手には黒い球体 神の頭脳たる【ヴェーダ】の子機を握りしめていた。

 

「さあ、ヴェーダ 解析(アナライズ)

 

 そう宣言すると左手に握りしめる【ヴェーダ】の子機から光が放たれその光は一夏と簪に向かってくる未確認機体を捉え、足から頭まで移動する。

やがて光は弱くなり、光が消えると一夏はその【ヴェーダ】の子機を量子返還する。

 

解析(アナライズ)完了っと!こいつ等のデータは手に入れた。ククク、これで俺の戦力が増えそうだ。おい、簪!とっとと蹴散らすぞ」

 

「……解ってる!」

 

「へいへい、そうか。んじゃあ、解析した敵のデータを送るから一人一体って事で宜しく」

 

 そう言って空中ディスプレイを呼び出し少しいじると簪の目の前に未確認機体のデータが送られてきて簪は頷くと一夏は【雪片弐型】を左手でも握りしめ、その剣先を未確認機体に向けた。

 

「んじゃあ、ヴェーダの解析(アナライズ)も出来たみたいだし、いっちょやるか!」

 

「うん!」

 

 PICによる加速で未確認機体との距離を詰め、その姿の全貌が簪の目に映る。女性的なシルエットとは対象に巨大な右腕の肘からブレードが装備され、左腕は熱線を放つ兵器。

 

「お、織斑君……これって!?」

 

 一夏から送られてきたデータと視界に映る光景をみて思っていた疑惑は確信へと変わる。

 

「ん?ああ、無人機だろうな」

 

「ありえない!だって、だってISは人が、人が動かすもの……機械が、ロボットが動かす物じゃあ、ない!!」

 

「前に一度ああ言うのに襲われた事があった。今回の敵はその発展機と言った所だろうよ。それに、前回と違って俺は力を失っている。お前が見ての通り身長はもちろん体力や筋力もまた前回の襲撃時よりも落ちている。一見絶望的な状態だが、こちらにはヴェーダがある。ヴェーダ、簪を敵との戦闘で勝利へと導け」

 

 瞬時に簪の目の前に現れた敵の詳細データが変化し、より立体的になった。立体したデータが左手を簪の方に向ければそれに合わせて敵の無人機も左手を簪の方に向ける。

 そして、立体化したデータの左手から超高密度圧縮熱線が放たれればそれに合わせて敵の無人機も左手の砲口から超高密度圧縮熱線の光が集まり、簪は自分が撃たれる事を知った。

 

「それなら!」

 

 瞬時加速による爆発的な加速により無人機との距離を詰め、自身の近距離武装【夢現】の攻撃距離に入れると下段から上段へと斬り上げる様に【夢現】を振るう。その剣先は無人機の左肩を深々と捉えており、斬り落とす。

斬り落とされた無人機の右腕はもう発射する直前だったのか熱線が放たれるもその矛先は簪を捉えてはおらず、簪の真横を通り過ぎ簪の後ろの壁に激突し、壁を溶かす。

再度【夢現】で斬りかかる簪に対し、無人機は右腕のブレードで応戦する。

 

 閃光と金属音が控え室に響き渡る。

 

 何回かの斬り合いで簪は徐々に押されていく。

 

「……一撃一撃が重い!!」

 

 無人機の女性的なシルエットとは反対に巨大な右腕は、その見た目通りに強く重い一撃を放ち、幾らISの補助があるとはいえ簪の華奢な女性の腕では真正面から全てを防ぎきるのは難易度が高すぎた。無人機が斬りつける斬撃を防ぎ、逸らすも徐々に押され始める。

 少しでも受け損ねれば隙が出来る。その隙を作る事でどういう結果をもたらすのか知っていた。

 

「ったく、おい簪!いつまでそんな雑魚を相手に粘ってんだ。そんなんじゃあ、何時までたってもお前は籠の鳥。姉に負け続けるだけの人生だ」

 

 戦闘中にそんな一夏の煽りを受けて簪の中で何かが弾けた。

 

「私は、私はもう逃げない!逃げたりしない!!姉さんに……勝つ!」

 

 スパンと無人機の斬撃よりも早く簪の斬撃が無人機の右腕を肘から斬り飛ばした。

 両腕をなくした無人機に向かって簪は背中の速射荷電粒子砲の【春雷】を容赦なく連射する。爆ぜる装甲、吹き飛ぶ部品。容赦のない無慈悲な攻撃の音は荷電粒子砲のエネルギーが尽きるまで続いた。

 視界を覆う煙が攻撃を受けた無人機から発せられ、煙をまといながら無人機は地面に倒れた。

 

「……倒せたの?」

 

煙を纏った状態で地面に沈黙する無人機を確認すると視線を一夏の方に向けた。

すると、そこには巨大な大剣【雪片弐型】が体を貫き地面に繋がれた状態で沈黙した無人機を文字通り尻に敷き、腕を無人機の頭に手をかざす一夏の姿がそこにあった。

 

「何をしているの?」

 

「な~に、少し躾をしてやろうと思ってな。誰に逆らっているのか、誰の許しを得て俺に刃を向けているのか。それらをこいつ等の持ち主に教えてやろうと思ったまでよ」

 

邪悪な笑みを簪に向け、再び視線を沈黙した無人機に向ける。

 

「どうだ、MAKUBEX?」

 

そう無人機に語り掛けると無人機が合成音を出しながら答えた。

 

『良好です。ただ、やはり戦闘の影響で体中央部が破損。戦闘は困難を極めるかと』

 

「だが、これで無人機にお前達AIを搭載させることが可能なことが証明された。これより全AIを用いて出来る限りの敵無人機を強奪する!簪、お前は引き続き敵無人機の対処にあたってくれ。まあ、敵は専用機持ちを狙っている可能性が極めて高いから専用機持ち達と合流してくれ。俺はISを用いて敵専用機のハッキングによる強奪を狙う」

 

 コクリと簪は頷くとそのままPICによる加速で一夏の前から姿を消した。

 

簪と一夏の下に無人機が現れて同時刻にデュノアとラウラのペアにも無人機が現れていた。

 

「なんだあれは!?」

 

「ラウラ、危ない!」

 

ラウラに向けられた腕から超高密度圧縮熱線が放たれ、ラウラと敵無人機の間にデュノアが割って入るとその手に展開した巨大な物理シールドで熱線を防ぐ。

だが、次が無かった。一度目の攻撃を凌いだ時に盾は融解し、二度目の攻撃の時には堅牢な物理シールドの面影などとうに無い状態で、防御力など皆無に等しかった。

 

 無人機の非情な追撃がデュノアに向けられる。

 左腕から放たれた熱線はデュノアに照準が向けられており、受ければ如何にISを身に纏っていると言えどもただではすまない。

 装甲を焼き払い肌を焦がす事は間違いない。

 

「させるか!」

 

 今度は軍人上がりのラウラがデュノアの前に出た。

ドイツが誇る第三世代ISの特殊武装AICによる防御で無人機から放たれた熱線を止めるとお返しと言わんばかりに 大口径レールカノンの砲口を無人機に向けて砲撃を行う。

 アリーナに響き渡るレールカノンの轟音。巨大な砲弾は螺旋を描きながら一直線に無人機へと放たれる。

 

 無人機に当たる直前、無人機は右腕のブレードで砲弾を一刀両断した。

 真っ二つになった砲弾は無人機を避けて爆ぜる。

 

「こいつ!?」

 

 自身の反撃をいなされ驚愕の表情を浮かべるラウラ。

 そんなラウラに無人機は再度熱線による攻撃を浴びせる。

 

「危ない、ラウラ!」

 

 

 ラウラに飛び掛り直撃を避けるもデュノアの背中を熱線が焼く。

 肉が焦げる臭いがラウラとデュノアの鼻孔に香り、デュノアは苦悶の表情を浮かべる。

 

「シャルロット!ク、貴様ぁ!!」

 

 

 ラウラは瞬時に左目の眼帯をむしり捨てる。その下に普段封印されていた反射速度を数倍に跳ね上げる補助ハイパーセンサー『ヴォーダン・オージェ』が金色の輝きを放つ。

 フルパワーのAICを無人機に向けて展開し、無人機の動きを止める。

ピシリと時が止まったようにAICによる効果でその場で動きが止まる無人機に向けて大口径レールカノンの砲口を向けた。

 

「これで!」

 

 レールカノンから砲撃が放たれる瞬間、上空から放たれた巨大な赤い熱線によりレールカノンが融解した。

 爆ぜる大口径レースカノン。放たれる寸前だったため、融解し噴射先を失ったエネルギーはレールカノン内部で暴走し暴発を引き起こす。

 

「ああ!?」

 

暴発したレールカノンはその所有者であるラウラに牙を向け、ラウラは爆発に巻き込まれる。

如何に軍人といえども急な爆発に対処出来るわけもなく、ラウラは爆発に巻き込まれた影響でAICに向けていた意識を中断してしっまった影響で無人機を止めていたAICの効果が切れる。AICから解放された無人機は反撃にうって出る。

無人機の左腕の砲口から赤い紅蓮の光が集まり、その光が一際輝こうとした時、無人機はその砲口をラウラではなく上空に向けた。

 

 突如飛来した追尾式ミサイル。その数計48発。

 マルチロックオンシステムによる狙いはラウラとデュノアを襲う無人機二機を狙っていた。

 熱線を放ち、飛来するミサイルを迎撃する無人機達。ミサイル

 

「今よ!」

 

 オープンチャンネルから聞こえてくる声にラウラとデュノアは我に返るとデュノアはその両手に六一口径アサルトカノン【ガルム】を展開し、ラウラはワイヤブレードを全部無人機達に向けるとワイヤーが無人機達を絡めとる。そんな無人機達にデュノアは惜しむ事無く集中砲火を浴びせる。

 土砂降りの雨のように無人機達に襲い掛かる砲弾。

 轟音がアリーナに何度も響き渡る。空薬莢が無数に地面に転がり、地面やアリーナの壁は一部熱線で溶けて消失しておりその戦闘の激しさを物語っていた。

 

 デュノアは六一口径アサルトカノン【ガルム】の弾が尽きると攻撃をやめた。無人機達が居た場所に立ちこもる土煙を静かに監視しながら六一口径アサルトカノン【ガルム】を量子変換する。

 

「やったのか?」

 

「さあ、どうだろう?」

 

 土煙が徐々に静まりを見せ、薄くなった時二人は見た。

 大破した無人機を。突っ立ったままの状態で静まり返る無人機。

 

 その姿を見た瞬間二人は安堵の表情を浮かべる。

 が、次の瞬間。

 

 

 突っ立ったままの無人機の後ろに隠れていたもう一体の無人機がバイザー型のライン・アイが怪しく光り、左腕をラウラとデュノアに向けていた。真っ赤に焼けたように紅蓮の光が集まる無人機の左腕にある砲口。

 

「全く、これだから甘いのだ。お前達は、さあ!」

 

 オープンチャンネルと共に二人の真上の上空から巨大な熱線が二人に砲口を向けている無人機の前で沈黙する無人機に直撃する。真っ赤な紅蓮の炎の火柱を浴びた無人機は爆発し、そのせいで二人に砲口を向けていた無人機も手元が狂い、熱線は二人がいる場所とは別のアリーナの壁にぶち当たり壁が融解する。

 

 再度、攻撃を無人機に再開しようとする二人だがその必要はなかった。

 二人に攻撃しようとした無人機は痙攣を起こしたように地面で震え、まるで苦しそうに地面を転げまわる。

 

 やがて、無人機は地面に仰向けになったまま沈黙した。

 

 

 

「終ったぞ」

 

オープンチャンネルから聞こえる一夏の声に簪とデュノアとラウラは安堵の表情を浮かべた。今度こそ終ったのだと。地面に仰向けになった状態で沈黙する無人機に視線を向ける三人。

 

 急に苦しみだした無人機。

 無人機なのにまるで人が乗っているかのように急に苦しみだした。いったい何がどうなっているのか全く分からない。

 

 

「簪、デュノアとラウラを引き連れていったん退却しろ。良いな」

 

 

 オープンチャンネルから一方的な命令が言い渡され通信が切られた。

 デュノアとラウラを援護した無人機の姿はすでに上空には無く、簪はデュノアとラウラを引き連れて一旦退却を選択する。3人が居なくなったアリーナで仰向けに沈黙する無人機のライン・アイが再び光を取り戻し、ゆっくりと立ち上がる。

 そして、上空に飛翔すると他の専用機持ちの処へと向かう。

 

 

 

 

「あ~あ。無人機が二機破壊されたか。んで、更に二年生と三年生のペア イージスチームにより無人機が損壊中と」

 

 ISとヴェーダ、そしてAIを用いたハッキングにより一夏は無人機の奪取を行っていた。

 やり方は比較的簡単。ヴェーダによる解析(アナライズ)の結果を見ながら無人機のプログラムの穴や弱点をISを用いてハッキングしてプログラムを乗っ取り、そこにAIを入れる。

 例えるならば新品のペットボトルを空にして、空にしたペットボトルに水を入れるという作業を今やっているのだ。AIは全部で5機。1機は学園のメインサーバーに残しているため4機のAIを使えるが、今現在MAKUBEXを奪取した無人機に搭載させているので残り3機だが、先程デュノアとラウラを襲っていた無人機2機の内1機が破壊されもう1機にJUBEを載せた。残るAIはGINJIとAKABANEのみ。

 

 そして、監視カメラのリアルタイムで映し出される戦闘風景の映像を見ながら今後の予定を考える。

 イージスチームと箒・楯無チームはそのコンビネーションで無人機と拮抗、もしくは優勢と見えるが別のセシリア・鈴チームは無人機に押されており、劣勢。しかも、無人機の損害は比較的軽度のもの。

 だが、学園を覆うシールドを破壊するほどの火力を無人機達が持っていることを考えると考える時間はあまり残されていない。

 

「ん~、どうすっかな」

 

 その手には小さな注射器が握られており、クルクルと注射器を回す。その中身はヴェーダを使って更識家の息がかかった病院で作った試作の解毒剤。幼児化した一夏の体を元に戻す事が出来るかもしれない試作品。

これを摂取すれば再び元の体に戻る事が出来る。が、その後の副作用でもしかしたら動けないかもしれない。

副作用の効果を無視出来ない以上使うのはあまり得策ではないだろう。

 

「ここでイージスチームに援護すれば一気に情勢はこちらに傾くが、無人機の損害は結構なものとなる。それではダメだ」

 

となると選択肢はセシリア・鈴チームの援護となる。

 試作の解毒剤を地面に置き、急ぎMAKUBEXとJUBEにセシリア・鈴チームの救援の指示を出す。

 

 

 

 

 2機の無人機がセシリアと鈴に襲い掛かる。

 超高密度圧縮熱線による射撃に対してセシリアはBT兵器のビットとスターライトmkⅢによるオールレンジ攻撃、鈴は衝撃砲による射撃で無人機に攻撃するが一向に怯む事はなく、時間と共に攻撃は激しさを増していく。

しかも最悪なことに時間が経過するにつれて無人機達が連携を取り始めた。

 

「ああ、もう!こいつ等しつこい!!」

 

「しかも、高火力。鈴さん、あまり攻撃を受けるのは得策ではありませんわよ」

 

「そんな事解っているわよ!」

 

 徐々に距離を詰められる鈴とセシリア。

 熱線を浴びれば装甲が溶け、シールドエネルギーが大幅に削られる。現に鈴はその影響で胸から腕までの装甲が溶けており、セシリアであればその豊満なバストのせいで胸が熱線で大やけどは間違いなしだったが幸か不幸かぺったんこな胸の影響でたいした怪我はしていなかった。

 

「ああ、胸が!?」

 

「あら、鈴さんたいした怪我をされなくて良かったですわね。その胸で」

 

「真の敵はあんたよ、セシリア!!」

 

 衝撃砲の照準をセシリアの方に向け、セシリアはそれに気付いたのか気付いていないのか解らないがスターライトmkⅢの銃口を鈴の方に向ける。スターライトmkⅢから発せられる青白いBT兵器特有の光。

 鈴はそれに反応したのか衝撃砲の引き金を引いた。

 スターライトmkⅢの銃口から発せられた光は鈴の横を通り抜け後ろに迫っていた無人機の頭部へと命中した。また、鈴が発した衝撃砲はセシリアの髪を掠めセシリアを斬りつけようとした無人機の右腕に着弾した。

 

 

「けど、一先ずこいつ等を片付けなきゃね」

 

「そうですわね。ですが鈴さん」

 

「何?お礼でも言おうっていうの?」

 

「お釣りが出てますわよ!よくも私の髪を!」

 

「良いじゃないの。怪我なんてしてないでしょ?」

 

「髪が傷つきましたし。現在進行形で心が傷ついてますわよ!」

 

「そんな事を言ったら私だってセシリアに胸の事を言われて傷ついているわよ!」

 

「私は現実を述べただけですわ!」

 

「何よ!」

 

「何ですの!?」

 

 いがみ合う二人だが、そんな二人に再び無人機が襲い掛かる。

 二機の無人機は同時に熱線を発し、セシリアに熱線が襲う。巨大な紅蓮の光がセシリアを包む。紅蓮の光が収まるとその中からセシリアが力が抜けた状態で空中から地面に落下する。意識が無いのか目が閉じられ鈴の声にも反応しない。

 

「セシリア!」

 

 鈴の悲痛な叫びがアリーナに響き渡る。

 標的が減ったことで無人機達の視線は鈴一人に釘付けとなる。瞬時加速。

 突然視界から消えたと思ったら距離をつめ、すぐ目の前に現れた。ブレードが展開されており、斬撃が鈴を襲う。青竜刀 双天牙月によりどうにか防ぐが大きく弾き飛ばされてしまう。

 

 弾き飛ばされた方にはもう一機の無人機が待ち構えており、鈴が気付いた時には振りかざしたブレードが振り下ろされた時だった。迫り来るブレードはスローモーションのようにゆっくりと見えるがそれを避ける事は出来なかった。

 

『あ、死んだな』と思った。迫り来るブレードが鈴に直撃しようとした瞬間、無人機の機能が突然停止し、二機の無人機は地面に向けて垂直落下を引き起こした。

落下していく無人機に何が起きたのか理解できずにただ呆然と無人機を見つめることしか出来なかった。

 

 

地面に向かって垂直落下をする無人機達。

地面に激突する寸前無人機達は再び再起動し、スラスターを噴かせ空中で態勢をたてなおすと加速と共に撤退を開始する。

 

撤退する無人機達を呆然と見送ると鈴は我に返った。

 

「セシリア!!」

 

 攻撃を受けたセシリアはISの絶対防御に守られていたがそれでも全てのダメージを防ぐ事は無い。操縦者に命の危機が迫る攻撃のみを防ぎ、または緩衝するのだ。それ故にセシリアが受けた攻撃の全ては無効化されずダメージが軽減されただけに過ぎない。

重度の火傷。本来ならば死んでいてもおかしくない火力の攻撃を直撃で受けたのだ。意識を失い、装甲はあちこち融解しひどい有様だった。

 

 鈴の呼びかけに全く反応しないセシリアをみて鈴は焦りが生じる。

 

「ねえ、セシリアってば……起きなさいよ!!」

 

「あ、あまり耳元で大きな声を出さないでくださいます?」

 

 目に涙を浮かべた鈴に貴族の気品を漂わせて微笑を浮かべるセシリア。

 

「後、鈴さんも涙を流すんですのね」

 

「な、涙なんか流してないわよ!これはあれよ、あれ、そう!鼻水よ!!あんたなんかに涙なんて流すわけ無いじゃない!」

 

「……鈴さん、取りあえず離れてくださいませんこと?鼻水であれば余計に私にくっ付かないで下さいまし。汚いですし、染みますし、汚いですし」

 

「あ、あんたって人は!!私の感動を、涙を返しなさいよ!」

 

ビキリと青筋を立てる鈴にクスリと微笑むセシリア。

 

「ほら涙、流されているんじゃありませんの」

 

「あ!」

 

顔が一気に茹でタコの如く赤面する鈴を見て感謝の意を述べるセシリア。

 

「鈴さん、ありがとうございますね。私の為に涙を流して下さって」

 

「ねえ、セシリア。それ死亡フラグってやつだから!」

 

「大会がどうなるのか解りませんけれども、おそらく中止か後日と言うことになるでしょう。さあ、鈴さん。私の怪我が治りましたらお一つパーティーなどは如何でしょう?」

 

「ねえセシリア、わざとなの!?狙って言っているの!?」

 

「狙う?はて、私は確かに射撃は得意ですけれども今何を狙えば宜しいので?」

 

「あ、うん。解った。天然なのね」

 

「鈴さん、取りあえず怪我の治療が終わり次第祝勝会と参りましょう!」

 

「あ、馬鹿!なんであんたは、そんなにポンポンポンポンフラグを立てるかな!?」

 

 

そんな二人の前に突如無人機が一機だけ再来した。

 

「ほらあ、セシリアのせいでまた無人機が来ちゃったじゃない!ねえ、何でそんなポンポンとフラグたてるのよ!」

 

 涙目の鈴だが、セシリアは戦闘が出来る状況ではなく鈴が一人で対処するしかなかった。

 双天牙月をバトンのように連結させると剣先を無人機に向けて臨戦態勢となる。すでに衝撃砲はチャージしてあり最大出力で無人機に放つ一歩手前だった。

 

 無人機をよくよく見ると胸の装甲が破壊されており、中身の機械部分が見えていた。すでに半壊状態の無人機。一撃当てれれば機能停止するかもしれない。セシリアであれば一撃で撃ち抜き機能停止できたかもしれないが鈴は射撃は普通程度の腕前だ。どちらかというならば衝撃砲による連射で距離を詰め双天牙月での近距離戦を得意とする。

 

「おい、セカンド!矛を収めろ。そいつは味方だ。セシリアの回収に向かわせた。セシリア、そいつに身を任せろ。セカンド、一時撤退だ。そいつについて来い」

 

 オープンチャンネルから一夏の声が流れ、無人機はセシリアを軽々とお姫様抱っこすると宙に飛ぶとアリーナから出て行った。鈴もまた無人機の後を追いアリーナを後にする。

 

 

 

 セシリアが無人機に救出されている同時刻、箒・更識刀奈チームの前にも無人機が現れていた。

 

「楯無さん!」

 

「ええ、解っているわ箒ちゃん」

 

 すぐに専用機を展開すると無人機はそれを確認し、刀奈と箒に襲い掛かる。

 熱線による紅蓮の閃光。対IS用として開発された無人機。紅蓮の閃光は刀奈に直撃する直前に突如現れた巨大な水で出来たシールドに遮られ、水蒸気を発しながら防がれた。

 

「フフ、お姉さんの首。そうそう易々と取らせたりさせないわよ」

 

 一夏にその当主の座を奪われてなお元更識楯無の実力は未だ衰えては居なかった。

 紅蓮の閃光が更に連続して発せられるが刀奈に直撃する前に全て巨大な水のシールドに防がれるだけ。ならばと、無人機は加速によって距離をつめ右腕のブレードで刀奈に切りつける。

 無人機の豪腕から繰り出される斬撃は一撃一撃が重く徐々にスピードを増していく。それに対し刀奈は特殊ナノマシンによって超高周波振動する水を螺旋状に纏ったランス【蒼流旋】で斬撃を防いでいく。金属音がアリーナに鳴り響き、無人機は一向に致命打を与えれずに居た。

無人機が繰り出す斬撃を防ぎ、逸らし、反撃する。澄ました顔をして対処する刀奈だが打ち合う内に一撃一撃が重い無人機の攻撃で内心焦りが生じていた。重い斬撃を防ぎ、逸らしている内に徐々に疲労が蓄積していき体力が削られていっているのが解った。水の力を利用した【蒼流旋】をもってしても無人機の重い斬撃は刀奈の体力を徐々に疲労という形で削っていく。

 

上段から斬りかかる無人機のブレードを【蒼流旋】で受け止める刀奈。徐々に押されていきブレードは刀奈に差し迫る。顔面に迫り来るブレードに初めて焦りの表情を見せる。

 

「拙いわね」

 

【蒼流旋】で受け流そうとランスの角度を変えた瞬間灼熱の熱線が刀奈に浴びせられる。紅蓮の閃光は刀奈の腕に直撃し、アクア・クリスタルで全身を覆っていた水のヴェールを瞬時に蒸発させ腕部の装甲を溶かし腕を焼く。

 

 

「クゥッ!」

 

「楯無さん!?」

 

 ハイパーセンサー越しで見る箒。上空で無人機を前にしてよそ見をしてしまい隙を無人機に与えてしまう。剛腕からくりだされるブレードの斬撃。気づいた時にはもうすでに斬撃は箒の体に迫っており箒はなすすべもなくブレードの斬撃を浴びてしまう。

 剛腕から繰り出された斬撃は装甲を破壊し、シールドエネルギーを削りながら箒を大きく弾き飛ばした。箒が弾き飛ばされた場所は刀奈を相手にしていた無人機のすぐそばで地面から箒が体を起こした時には無人機のブレードは振り上げられていた。ふり降ろされ箒に迫りくるブレード。

ブレードが箒に命中する直前、ブレードが装備された右腕に巻き付く蛇腹剣。

 腕を捕らわれた無人機がその蛇腹剣の出どころに無人機が視線を向けるとそこには刀奈が左手に【蒼流旋】右手に蛇腹剣を握りしめて立っていた。この蛇腹剣こそ更識刀奈の専用機霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)に装備されている【蒼流旋】とは別のもう一つの武装【ラスティー・ネイル】。

 

「フ」

 

 蛇腹剣【ラスティー・ネイル】にはアクア・クリスタルにより、水を纏っており刀奈が蛇腹剣【ラスティー・ネイル】を引くとそれに合わせて蛇腹剣【ラスティー・ネイル】が巻き付いていた無人機の腕がズタズタに引き裂かれた。

 

「ミストルティンの槍 発動!!」

 

水の淑女は時に激流を引き起こす。

通常時は防御用に装甲表面を覆っているアクア・ナノマシンを一点に集中、攻性成形することで強力な攻撃力とする一撃必殺の大技でもあり、自らも大怪我を負いかねない諸刃の剣。それを【蒼流旋】で発動する。水のヴェールが消失し、素肌の部分があらわになる。

 

「箒ちゃん、エネルギーを全て防御に回しなさい!」

 

「楯無さん一体何を!?」

 

「大丈夫、お姉さん強いから」

 

激流となった水は【蒼流旋】に纏わりつき、その一撃のエネルギー総量は小型気化爆弾4個分に相当する。

 

「食らいなさい!」

 

 瞬時加速で右腕をズタズタに引き裂いた無人機との距離を詰め、その一撃を放つ。

 膨大なエネルギーは無人機の腹部を覆う装甲を破壊していくが、途中無人機が【蒼流旋】の矛先を掴んだ。グググと押し返される【蒼流旋】だが、それで水の淑女の激流が収まる訳では無い。

 

「その程度で!!」

 

 

【蒼流旋】に取り付けられた4門のガトリングガンの銃口から火が噴き無人機は不意の事で【蒼流旋】を掴んでいた手を離してしまう。

【蒼流旋】の矛先を掴んでいた手が離された事により解放された矛先は無人機の腹部の装甲を破壊していく。無人機の腹部の装甲が破壊された瞬間、ミストルティンの槍による爆発が刀奈と無人機を覆う。

 

「楯無さ~ん!!」

 

 爆発に飲み込まれた刀奈にオープンチャンネルで声をかける箒だが、その声に刀奈は反応しなかった。

 爆発の後に見えた光景は無人機と共に横たわる刀奈。

 

「た、楯無さん?」

 

 信じられない光景を見た箒の目は見開き時が止まったかのように思えた。

 そして、最悪な事を告げる音が更識刀奈の傍から発せられる。ゆっくりと上半身を起こす刀奈が相手をしていた無人機。残酷な現実が箒を襲う。

 

「あ、ああ!?」

 

 刀奈のミストルティンの槍が無人機に命中し無人機を貫く瞬前、刀奈を殴り飛ばしたのだ。その結果、無人機の腹部を破壊していたミストルティンの槍は無人機から離れたた爆発の威力がそがれたのだ。

 

 その様子を見ていたのは箒だけではなくその上空を飛行している者もばっちりとその様子を目撃していた。

 

「え!?」

 

 目の前の光景を受け入れたくなかった。

 その人は自分が、倒すべき相手だったのに。自分以外に倒されるのが許せなかった。

 ドクンドクンと胸の鼓動は高くなる。気づけばいつの間にか手に【夢現】を握りしめていた。

 

「うあああ!?」

 

 叫びと共に瞬時加速と共に強襲。

 超振動薙刀【夢現】を振るう。ヴェーダによるサポートで次の無人機の動きが解る。左手を上げると発せられるであろう熱線。それが次の攻撃。

 攻撃を仕掛けられる前に無人機の懐に飛び込むと未だ動きが鈍い無人機の首を超振動薙刀【夢現】で弾き飛ばした。更に首をなくした無人機の腕を【夢現】で斬り飛ばした。

無人機を沈黙させた簪にもう一機の無人機が簪を襲う。熱線による攻撃。

 

簪に向けられる無人機の左腕。そんな映像が簪の前にヴェーダの能力によって映し出されその数秒後に無人機の左腕が簪に向けられる。

 

「許さ……ない!」

 

 

 距離を詰める簪に応援の手が差し伸べられた。

 

「手を貸す!」

 

 紅椿を身に纏う箒。その手に握られている【雨月】・【空裂】の内、【雨月】を振るう。刺突系のレーザーが無人機を襲う。

 レーザーが無人機を襲い時間稼ぎが完了した。

 

「フン!」

 

追撃と言わんばかりに今度は【空裂】を振るう。斬撃は目に見えるエネルギー刃として無人機に直撃し装甲を破壊する。

ひび割れる無人機の装甲。無数のひびが入った装甲はさして防御力は無かった。

 

「あなたは、あなた達だけは絶対に許さ……ない!!」

 

 首を、腕を脚を切り飛ばし、ひび割れた装甲に薙刀を突き立てる簪。装甲がひとつまた一つと茹で卵の殻を取るようにぼろぼろとこぼれていき、装甲が消え中が丸見えとなると血管代わりの配線が無数に張り巡らされており、コアらしきものがヴェーダによって知らされる。

 

「これで!」

 

 ガンっとコアらしきものに超振動薙刀【夢現】を突きたてると無人機のエネルギー供給は断たれ、無人機は力尽きたように地面に横たわった。

 

 

 全てが一段落した片付いた簪ははっと我に返り、更識刀奈に駆け寄った。

 

「お姉ちゃん!!」

 

 刀奈の専用機霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)は蓄積ダメージによって強制排除されており、そのダメージの深刻さを物語っていた。簪は姉の刀奈を担ぎ上げると無人機の残骸が転がるその場を後にし箒も簪に続いてその場を後にした。


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