拳の一夏と剣の千冬   作:zeke

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今回は一夏くんが最強にこだわる理由が記されています。


第24話

 一夏は暗躍する。

 

――俺と戦え。

 

 それは、一夏が織斑千冬(世界最強)を超えるための道のりであり糧である。

 かつて、足元に幾つもの骸を作っても世界最強になると誓った。世界最強になれば、一夏は束の隣に立てる。

 

 ISを生み出した天才 篠ノ之束の隣に並び立てる。凡人である自分が天才の隣に並び立つには世界最強の称号()を手に入れる事以外、他に無い。

 そう思った。だから、一夏は世界最強になろうとする。

 

 世界最強の称号()と共に天才の隣に立ち、今、正々堂々と表立って生活出来ない篠ノ之束の居場所と成る事。

 そして、世界に知らしめる。天才と共に並び立ち、世界最強の最愛の人(篠ノ之束)を泣かす人物の最後を、付け狙う人間の最後を。

 

 その為に一夏は努力する。

 千冬を超えるために、どんな手を使ってでも勝とうとする。

 勝利への執着心は、人一倍に強く、その為ならば……

 

――例え、泥水を啜ってでも生き延びる。生ゴミだろうが、カビたパンだろうが食ってでも生き延びる。

 

 例え、人としてのプライドを捨ててでも戦う。

 

 あいつには見せれないだろう。あの子には……

 

 だが、最愛の人(篠ノ之束)と我が子を守るためならば人としてのプライドなど有ってないような物。簡単に捨てられる。

――束と我が子の為ならばプライドを捨ててでも生きて守りぬく、親として生きる生への並々ならぬ執着心。

 

 普通の人ならば、早々に真似は出来ない事だ。

 だが、束と我が子の為ならば惜しむ事なく捨てられる。

 

 

 

 そう、例え国家代表候補が相手で力が拮抗していたとしても、最後に問われるのは覚悟。

 

――それは、覚悟という名の執念。

 

 それの有無によって最後は決まる。

 一夏はその覚悟が、人一倍の執念がある。

 

 あの子の為に、束の為に、良き父親であろうと努力する。

 織斑一夏は、姉の織斑千冬と共に両親に捨てられた。

 

 だから、一夏はそんな両親の様には成りたくないと思って反面教師にすることで、家族を大切にすることを信条にしている。

 今は、家族と離れ離れだが、それでも家族を愛する想いは今も昔と変わらない。

 

 だからこそ、家族の為に必要ならば、足元に幾つもの骸を作る覚悟がある。

 

 その覚悟は高校1年生の一夏を他の国家代表候補と比べるならば、重くシッカリとした鋼の覚悟である。その背には、束と我が子がいると思えば、骨が折れた手足も動かせるし、アキレス腱が切れた足でも前に進める。

 

 否、前に進まなければいけない。

 親子3人で表立って生活するために。周囲の目を気にせず、命を狙われる事もなく生活するために。

 

家族の為に……

 

 

「だから、先ずは目の前の問題を片付けなければな」

 

 一夏はIS学園に設置されている監視カメラに自分が映らないように、かつ巡回の教師に出くわさない様に手元の学園のメインサーバーと繋がってる携帯で周囲を監視しながら慎重にIS学園の校舎に移動する。

 

 IS学園は如何なる法も無効とする独立地帯のような学校だ。

 無論、各国から代表候補生も入ってきておりその為、ハッキング場所がバレても問題ないのだ。

 何故なら、IS学園は如何なる法も無効化する独立地帯であると共に大勢の生徒が学園で生活している。

 

 故に木を隠すには森の中で、一人のハッカーがIS学園に紛れ込んでしまえば特定するのは困難を極める。何故なら、IS学園は如何なる法も無効化する独立地帯であると共に、万が一だが逆探知されたとしても、それはどこら辺からか。というだけのものであって、個人を特定するのは困難を極める。

 

 無論、IS学園にデュノアの様なスパイがいるとも否定できないが、そこら辺の事は一夏はどうでも良い。

 

 デュノア社のシャルルの父親のやり方が男としても、同じ子を持つ父親としても許せなかったからである。 

 

 子を憂わない国に未来はない。子は国の宝であり、未来でもある。

 なのに、デュノア社の社長は子を道具のようにしか思っていない。

 

「ならば、そんな企業に未来は要らないよなぁ!?デュノアの社長さんよぉ?」

 

 獰猛な瞳は見開かれ、その表情は怒りに満ちていた。

 

――憤怒の一夏。

 

 かつて神童と呼ばれたその頭脳を持ってして、デュノアの社長に絶望を叩き込む!それが今回行うミッション。

 IS学園の図書館に忍び込み、貸出させてもらえるノートパソコンを無断で拝借。

 

そして、IS学園の寮に戻りデュノアが寝たのを確認すると

 

 先ず、手元の携帯をパソコンと繋ぎ、ハッキングに適したパソコンに弄り変える。

 

 人工AIのMAKUBEX(マクベス)が携帯からパソコンのデスクトップに移動すると全ての準備が完了した。

 

「これより、デュノア社のメインサーバーにハッキングしてデュノア社が開発している第三世代機のデータを1/5だけ残して全てコピーをした後に、残りの4/5のデータを全て削除。二度と復元できない様にする」

 

「仰せのままに。マイマスター」

 

 MAKUBEX(マクベス)は執事のように頷くと目を見開き、パソコンの画面から飛ぶように消えていく。

 

 カタカタと物凄い速度でキーボードを叩き、海外のサーバーを経由してデュノア社の末端のパソコンからメインサーバーへと向かう。

 デュノア社の社長の弱点は喉から手が出るほど欲しい第三世代機の情報だ。

 シャルル曰く形にはなっていないとの事だが、それでも今までの情報は大切なデータだ。

 

そんな中、ハッカーによって第三世代の情報がクラッキングされれば致命的なダメージとなる。

政府からIS製造のライセンスが取り上げられそうな中での事件だ。致命的なのは火を見るよりも明らかだろう。

 

 無論、なぜ全部クラッキングしないかというと、一夏が今までデュノア社が集めたデータをコピーして手元に持つ事で、デュノア社の社長に相手が何らかの意図があって残したと気づかせると共に、シャルルの一件とは無関係な社員の生活の為である。

 デュノア社の社長が馬鹿であるならばデュノア社もそこまでだろう。

 

 本来ならば、解雇には事前に連絡が流れるはずだ。

 デュノア社でハッキング攻撃を受けて経営が危ないと知れば、優秀な人材は同業他社からの引き抜きにあう事だって有り得る。

 

 そこらへんを配慮しての考えだ。

 

「メインサーバーにハッキング成功!」

 

 一夏の手元のパソコンには、ハッキングでデュノア社のメインサーバーの中身が映し出されており、商品の武器の情報や新作の装備の情報、増長スラスターの開発データー。その他諸々の重要そうなデータが入っていた。

 

「1/4を残して全て削除。……ここは、まあ、復元できたら復元してみなって感じでいいや」

 

 さらに進むとデュノア社の社長のスケジュールデータがあり、それを見て一夏はニンマリする。

 

「赤っ恥をかいて貰うのも悪くねえなぁ、デュノアの社長さんよぉ!!」

 

 スケジュールデータを改ざんする。

 フランス政府の重役との会議を一日ずらして設定し、プライベートの情報と会社の会議のスケジュールを全て削除。明日、歯医者に行く偽の予定を立てる。

 

 

「ククク。会社とプライベートでアルツハイマー認定されてな!フランス政府の重役との会議を間違えることでデュノア社は、更に立場を悪くする。そうする事によって、焦りが生じ判断能力が低下する。しかも、プライベートと会社の人達から病人扱いされ、更に社長は追い詰められる」

 

 

 面白そうに嗤いながら一夏は更に作業を進める。

 

「ん?ここだけプロテクトが硬いな……だが、俺に喧嘩を売った時点でテメエは負けてんだよ!社長さん!!」

 

 カタカタとキーボードを叩きながらプロテクトされたデータを開く。

すると、

 

「ビンゴ!」

 

 パスワードが表示され、一夏はそのパスワードを入力するとフォルダーが開き中身が見れるようになった。

 その中身はデュノア社が開発している第三世代機のデータで一夏はそれをコピーすると作戦通り1/5だけを残して他は全て復元不可能なくらいにまでデータを破壊した。

 

「コピーを取ったか確認しておくか」

 

 一夏がデュノア社が開発中のデータのコピーを持っているからといっても、他にコピーが取られていたら計画は無駄である。

 

 カタカタとキーボードを叩き、コピーが取られた事がないか検索してみる。

 

 

………該当なし。

 

 一夏がコピーしたもの以外コピーを取られた形跡はなさそうだった。

 

「まあ、それもそうか。下手にコピーをして外部に漏れたらまずいもんなぁ」

 

 さっさと仕事を終えよう……そう思ってデュノア社のメインサーバーから帰ろうとすると、

 

「いや、……待てよ」

 

 妙案が浮かんだ。デュノア社の社長を主にピンポイントで攻撃できる妙案が。

 

 ケケケと笑い、背後に悪魔を見せながら一夏はSMエロ画像を検索し、データを入手。

 そして、デュノア社のホームページに向かい社長の画像を入手すると、加工し編集して合成画像を作り出した。

 

「うわっ!作った俺でも見ていて気持ち悪いわ。この画像」

 

 そのえげつないゲテモノ画像をデュノア社の社長のパソコンを乗っ取って、メッセージを添えたメールと共に添付して社長のパソコンに送りつけた。

 

「ククククク。明日はゲロ吐き注意報発令だな!」

 

 そのえげつない首のすげ替え合成写真を見た社長の顔を思い浮かべながらメインサーバーから帰ってくる。

 人工AIのMAKUBEX(マクベス)がデスクトップに戻ってきたのを確認すると、MAKUBEX(マクベス)を携帯の中に戻して第三世代機のデータをパソコンから繋いだ携帯に転送して、終わったのを確認すると携帯を取り外した。

 

 そして、使ったパソコンを無断拝借した時の初期設定に戻して足がつかないように隠蔽工作をし終わると朝日が立ち上っていた。

 

「もう朝か」

 

窓から朝日が一夏の顔を照らし、一夏は目を細め机にノートパソコンを置くと背伸びする。

一晩同じ姿勢でパソコン作業をしていた為、体の筋肉は固まっている。

 

背伸びをする事で筋肉をほぐしながら、これからの事を考える。

 

学園に登校中に隙を見てパソコンを返すか?

いや、それとも、人目が多くなるから今返すか?

 

立ち上がり、部屋に設置されている昨日わかしたまんまの電気ポットのロックを解除し、マイマグカップにインスタントコーヒーを入れてお湯を注ぐ。

マグカップからコーヒーの良い匂いが立ちのぼり、一夏の鼻腔を刺激する。

 

「あっつ!?」

 

 欠伸を噛み殺そうとして失敗し、欠伸してしまい結局手に熱々のインスタントコーヒーがかかり、その熱さで若干目が覚める。

 コーヒーを入れたマグカップを机に置き、机の上にあったティッシュペーパーで溢れたコーヒを拭き取ると、その使い捨てのティッシュをゴミ箱に放り込んで、ボーと考える。

熱々のインスタントコーヒー。襲い来る眠気。返却しなければいけないノートパソコン。

 

 

「……だる~い。眠い」

 

そう呟きながら机に置いたノートパソコンを片手に、ベランダから木へと飛び降りてIS学園の図書館へ無断で拝借したパソコンを返却すべく、二度目のあくびをしながら学園に向かうのだった。




次回は、一夏くんがどんなメールを送ったかその内容を投稿したいと思います。

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