拳の一夏と剣の千冬   作:zeke

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今回は賛否両論別れるかと思いますが、一夏×千冬ではありませんので先に記しておきます。


第20話

授業が終わり、女子達が着替えに先に教室に帰っている最中訓練機の後片付けをしている一夏のもとへ千冬が訪れると「織斑、デュノアを寮の同室にした。面倒を見てやれ」と一夏に命令した。

 

そんな千冬に一夏は呆れた表情で言う。

 

「織斑先生よぉ、話聞いた?俺にそんな甲斐性があるとでも?」

 

「まあ、そう言うな。デュノアには一応寮の規則は説明してある。お前のやる事と言ったら食事前に一緒に行くか?と誘うぐらいで構わん。訊かれたら教える位の心づもりで世話をすればいいさ」

 

「あっそ。まあ、そん位なら」

 

渋々了解する一夏についつい苦笑する千冬。

 

「お前ももう少し位社交的に成らんものかな」

 

「やめてくれ。また吐きそうだ。社交的な俺とか誰得だよ」

 

「少なくとも私としては安心するがな」

 

「俺の心配よりも自分の心配したら?」

 

「ふ、不出来な弟に彼女でもできれば少しは肩の荷が下りてお見合いでもするさ」

 

「あ~あ~、肩身が狭いぜ。んでも、俺の心配よりも手前の心配をして欲しいぜ。彼女じゃ無いけど嫁さん候補のあてはあっから」

 

さらりととんでもない事を言う一夏に千冬は驚きの表情を隠せなかった。

 

「嫁さん候補!?い、一体誰なんだそれは!?」

 

一夏の両肩を思いっきり掴みがくがくと一夏の体を前後に激しく揺さぶる千冬。そんな千冬の狼狽している姿を見て新鮮だな~と思いながら千冬の手を掴んで体を揺さぶられないようにする。

 

「あ~、今は紹介できねえ。本人の確認取れてねえし。事情が事情だから公に出来ねえんだよ。んでも、ちーたんの知ってる人物ってのは間違いねえ」

 

「箒か!?凰か!?」

 

「何でファーストとセカンドが出てくんだよ」

 

狼狽している千冬にあきれた表情で返答する一夏。だが、千冬は内心穏やかでない。本人は鋼のポーカーフェイスをして澄ました表情をしているつもりだが、実際狼狽しているし何よりも内心「い、い、一夏が結婚!?いや、待て!嫁さん候補と言っただけだ!ま、まだ正式に嫁として迎え入れると言ってないし……い、いやでも一夏ならば良い夫に成りそうだし……ああ、もう!相手は誰だ!相手が分かれば持っているコネを使って徹底的に調べ上げると言うのに!どうにかして相手が解らないものか……いや、待て!相手は私が知っている人物で間違いないと言った。ならば、私と一夏近辺の今までの交友関係を探れば解かるかもしれん。篠ノ之箒と凰 鈴音は違うっぽいが、照れ隠しで口走ったのだとしたら候補としてあり得る!」と激しく一人で問答をしていたが鋭い眼光を輝かせて、がっしりと一夏の両肩を掴んで逃げられない様にした。そして、

 

「……詳しく聞かせて貰おうか」

 

目の前の獲物を逃さなかった。

千冬のへんなスイッチが入ってしまった事に一夏は「喋りすぎたな~」と後悔しながらこれからどうしようかと考える。

 

――奥の手を使うか。欧米じゃあ当り前だし、グローバル化した日本でもどこかの家族はやってるだろう

 

そう思って両肩を掴んでいる千冬の手を掴むと手繰り寄せると、千冬と一夏の顔の距離は顔一つ分と成り、

 

チュッ

 

千冬のでこにキスをする。

 

「っな!?」

 

「はい。それじゃあ、この話はお終い。じゃあね~、織斑先生」

 

顔を赤面してゆでタコに成る千冬にあどけない笑顔でバイバイと手を振りながら千冬の前から立ち去る一夏を千冬は黙って赤面した状態で見送るしかできなかった。

 

 

 

 

放課後、授業が終わると実技以外睡眠学習していた一夏は授業を知らせるベルが鳴ると寝ていた身体を起こして誰よりも早く教室の外へ。

 

「ハア、織斑君今日も寝てましたね」

 

消え入りそうな教科担当の声を背にさっさと教室を出る一夏を尻目にデュノアは「あんなに急いで何処に行くんだろう」と思いながら素早く使った教科書を机の中に入れると一夏の後を追う事にした。

 

 

ピリピリと一夏の携帯が鳴り、ポケットから携帯電話を取り出して一夏は電話しながら廊下を歩く。

それをデュノアは数メートル離れて間を空けながら一夏の尾行をしていた。

尾行を開始して十数分後には校舎を出て、第一アリーナへと向かっていた。

 

シャルル・デュノアは、デュノア社の社長である父親の命を受けてIS学園に来ていた。母親が他界してすぐに父親を名乗る今の男が現れて状況は一変した。

IS適性が高い事が判明し、デュノア社のテストパイロットにされた。

 

父親と名乗る男と直接会った時間は1時間も満たない状況でデュノアは父親と名乗る男から特異ケース――織斑一夏――に接触し、彼の持つ第三世代の白式のデータを盗んで来る様に命じられてIS学園にスパイとしてやってきた。

 

そんな彼の目的である特異ケース――織斑一夏―が一人に成る瞬間を待っていた。隙を見て彼の専用機である白式のデータを盗まなければいけなかった。

 

だが、目の前を歩く特異ケース――織斑一夏―は、今一人の状態で歩いている。彼を気絶させて白式のデータを奪おうか。それとも、頻繁に接触を繰り返して親密に成った時に白式のデータを奪おうかと考えていると前方を歩いていた特異ケース――織斑一夏―が第一アリーナに入って行く。

 

特異ケース――織斑一夏―の後を追うデュノアも第一アリーナに入り、暫くすると特異ケースを見失った。

 

「あれ?」

 

突然目標を見失った事にデュノアは間の抜けた声を上げる。

そして、前方に先程まで一夏が居た場所に行くと辺りをきょろきょろと見渡した。

 

周囲に一夏の姿が無く扉が一つある。

 

「ここに入ったのかな?」

 

そう呟いて扉を開けて中に入る間、天井で黒く笑う人物がいた。

 

「よっ、と」

 

天井で黒く笑っていたのは一夏だった。

 

「しっかし、まさか野郎にストーキングされる日が来るとは、な」

 

何処か疲れた声で呟く一夏だが、デュノアが先程入って行った扉を施錠する。

 

一夏は知っていた。

この世界に同性愛が存在すると言う事を……

女性同士の同性愛は認識していたが、男同士の同性愛なんて認識していなかった。しかも、性質の悪い事にストーキングまでする一方的で押し付けな同性愛なんて御免だった。

 

「そんじゃあ、まあ、少しの間第一アリーナで捕まっててくれや」

 

そう言ってポンポンと施錠した扉を叩くと第一アリーナを後にする。

第一アリーナを出た所で

 

「おい、お前」

 

捕まった。背後から声を掛けられた。

 

「あ゛?」

 

しかも声の主は朝ビンタしてきたもう一人の転校生。

振り返り、相手の顔を見る。

 

「フン。教官の弟であるからどんな奴かと思って来てみれば。単なる露出魔の雑魚ではないか。まあ、最も戦闘力は高そうだが」

 

銀髪で眼帯をしているロリ。

しかし、その様子は何度見ても「あいつ」に似ていた。

 

「何だ?言いたい事があるならハッキリ言ってみろ」

 

暫く銀髪ロリを見ているとそう言って会話を切り出してきたので一夏は、

 

「あー誰かと思って振り返ってみれば、これはこれはクラス中からせっかちドジッコ(笑)認定された美少女ロリ転校生じゃ、あっりませんかー」

 

「!ふざけた奴め!!」

 

怒り心頭。顔を真赤にして言うラウラを前にニヤニヤしながら一夏は尋ねる。

 

「んで、何?迷子?」

 

「ふざけるな!何故私が迷子なんかに成らなければいけないのだ!」

 

「……すまん」

 

「ふん。解かればいいのだ」

 

「IS学園にサービスカウンターは設備されてない」

 

「だから、私は迷子ではないと言っている!」

 

「え!?」

 

「貴様!何故そんなに驚いている!」

 

「いや、だって、それじゃあ俺に話しかける理由なんてないじゃん。こんな出がらしみたいな存在の俺を、偉大な姉の威光に埋もれた平凡な奴に話しかける理由なんてないからさあ。てっきり、迷子に成ってここが何処だか解んなくなって目の前に男の俺が居て『ラッキー!あの男が居るこれで目的地までの道のりが聞ける!迷子になったって口走りそうならISで半殺しにすればいいし~』とか思って俺に話しかけたのかと」

 

「いや、だから何故私を迷子認定したままなのか説明しろ!私は断じて迷子なのでは無い!」

 

「……ATフィールドは心の壁だよシンジ君」

 

「カヲル君!って違うわ阿呆!何故にエヴァネタを披露せねばならないんだ!」

 

「!……貴様、出来る!!」

 

「フッ、当然であろう。我が黒兎隊には優秀な副官が居るのだからな」

 

ドヤ顔で言うラウラに戦慄する一夏。

一夏は暫くして正気に戻るとラウラの肩を掴み優しく話しかける。

 

「今お前が本当の事を話してくれたら良い事を教えてやろう」

 

「先にその良い事とやらを聞かせて貰おうか」

 

「この学園にはサービスカウンターの代わりに放送室という部屋があるのだよ」

 

「貴様!まだ私を「話を最後まで聞け!」……」

 

「その放送室の前まで俺が連れて行き、お前が放送室に入る」

 

「フムフム」

 

「そこで、お前は放送部員に迷子に成った事を伝え、ちーた……織斑先生を呼び出して貰う」

 

織斑先生と言う単語でラウラの眼つきが変わった事を見て一夏は内心『やはりな。此奴はちーたんのファン!しかも、熱烈の追っかけファンと見た!ならば……』とほくそ笑んで続ける。

 

「ほうほう」

 

「そして、織斑先生に『まあ、転校初日だから仕方ない奴め』と、ちょこっと小突かれながら寮まで案内して貰う!と言う予想図があるんだが……どうだろうか?」

 

ラウラは一夏の手を取り、「神はここに居た!」と跪き、目を輝かせて一夏を見ており、そんなラウラを見て一夏は内心『ロリチョロス』と嗤っていた。

 

ラウラの二つ返事によって計画が実行され一夏が計画通りラウラを放送室の前まで連れて行くとラウラが放送室に入って行き一夏はそれを確認すると放送室を後にした。

 

 

数分後『織斑先生、織斑先生。ラウラ・ボーデヴィッヒさんが放送室でお待ちです。至急放送室までおこし下さい』と放送が学園中に流れた。

 

 

それから暫らくして「織斑一夏!絶対に許さん!」と放送室からラウラの怒鳴り声が学園中に聞こえたのだった。




一夏「主は仰せられた。事実は歪曲して伝える物だと」

作者「うわ~、どっかの外道神父を思い出します」

一夏「貴様に解るまい!男にストーキングされる俺の心境を!」

作者「え、でも、周り美少女ばっかで世の中の男性から見れば滅茶苦茶羨ましいのでは?」

一夏「だからお前は阿呆なのだ!彼女持ち、婚約者持ちの男からしてみれば地獄以外の何でもないわ!他の女子に手を出した瞬間に修羅場ルートまっしぐらは目に見えてんだよ!」

作者「御免なさい」

一夏「解ってくれるなら良い」

作者「精々尻の貞操に気を付けて!ファイト!」

一夏「手前!書くなよ!絶対に「あー!」な展開は書くなよ!絶対だかんな!」


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