死なないことはチートでは無いのだろう   作:my茸

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やや遅れました…投稿です。
は な し が す す ま な い !

ぐぬぬぬ…
これは妖怪のせいなのね?そうなのね?


追記:名前が変わりました。エルフを愛する心は変わりません。



第9話、私とグリモアと俺と

前回のあらすじ〜

 

じゃがまるくん27000ヴァリス?

嘘…だろ…?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本編スタート〜

 

♢♢♢♢

 

謎の女との遭遇の後は無事もなくホームに着くことができた。

 

…よかった、いい男(アベさん)に出会わなくて本当に良かった。

 

謎の女(もうA子さんでいいや)は遅いと言ってたが、今日の時間は普段ダンジョンに行ってる時に比べたら全然早い。

 

「あれ?ヘスティア、バイトからまだ帰ってないのか」

 

ってあれ…?今日バイトない日じゃ無かったか?

部屋は暗く、人の気配は無かった。

ベルもいない。

昨日の今日でダンジョン?さすがにそれは無いよな、と考えながら魔石灯に明かりをつける。

 

『ベル君と外食に行ってくるよ。

 

追伸:このメモを君が明日まで見ないなんてことが無いことを祈るよ。 ヘスティア』

 

メモが置いてあった。

 

…え?俺は?俺は連れて行ってくれないの?

酷いっ!ダブルスタンダードだ‼︎泣いてやるっ!

 

…まぁ俺も外で食べてくると思ったんだろうな。それなりに金持ってったし。全部じゃがまるくんと化したけどな。

 

アイズさんェ…

 

まあとりあえずする事もないしを暇だ。

え?追伸に書いてあることはいいのかって?ナニソレアスタシラナイナー。

 

…まあ折角だし。暇つぶしにA子さんがくれた本読んでみますかね。

タイトルは書いてない。何の本だ?

開いてみるしかないよなー。

 

『自伝・猫と契約して美人魔法少女になった私の話ッ〜番外・大魔法使いに俺はなる!編〜』

 

私なのか俺なのかどっちだよ…いや他にも色々言いたいことあるけども。

本をそっと閉じ…そうになるのを堪えて内容を確認することにする。

内容大事だよね内容。うん。

 

『アーニャでもわかる現代魔法!その1』

 

アーニャでも分かるのか。そりゃ凄えや!

…何でこの本さり気なくアーニャの事ディスってんの?てかまさかの固有名詞?

 

読んでいくと、出だしとサブタイはアレだったけど中身は健全なものだった。

作者よ、何故出だしとサブタイをアレにした。

 

魔法に関する本、か…

 

『魔法は先天系と後天系の二つに分類することができる。先天系とは言わずもがな対象の–−−』

 

この一文一文の間に書いてある文字は何だ?

見ようによっては柄の様にも見えるけど…

 

ページをめくる。

 

『魔法とは興味である。後天系(こうしゃ)にこと限って言えばこの要素は肝心だ。何事に関心を抱き、認め、嘆き、崇め、誓い、渇望するか。引き金は常に己の中にある。』

 

文字に引き込まれていく。

 

【絵】が現れた。

人の顔。文書で構成され、描写された顔。

瞼を閉じた男の顔だ。

 

さらにページをめくる。

 

『力を望むか。ならば問え、砕け、刮目せよ、虚偽を許さない醜悪な鏡はここに用意した』

 

これは【俺の顔】だ。

これは【俺の心】だ。

これは【俺の全て(ほんしん)】だ。

俺の知らない、俺自身。

 

ページをめくる。

 

『さあ、始めるか』

 

絵の、『俺』の瞼が開く。俺の声と共に。

文字で描かれた黒い瞳、文章で綴られた薄い唇が言葉を発する。

 

ページをめくる。

 

『俺にとって魔法とは何だ?』

 

自らを助ける力。

英雄と呼ばれた人物達が使いこなしたもの。

使う人間によっては堕落の原因となる諸刃の剣。

 

『俺にとって魔法とは?』

 

力だ。何かを倒すための力。

怪物かもしれない、人間かもしれない、それ以外かもしれない。そんな何かを倒すためのもの。

鋭く、強く、無慈悲かつ圧倒的、そんなもの。

 

ページをめくる。

 

『俺にとって魔法はどんなものだ?』

 

雷。

恐ろしく鳴り響く、強大な雷霆(らいてい)

一瞬で空を裂き、地を割り、山を燃やす。

俺には到底かなわない、自然という力の内の一つ。

何よりも疾く、鋭い……自然(かみ)(いかづち)

俺は、雷になりたい。

 

『魔法に何を求めるんだ?』

 

守ることができるように。

助けることが出来るように。

己の無力さを恨まずにすむように。

空を駆け抜けるあの雷霆の様に。

背中を押してくれる風の様に。

誰よりも速く。

何よりも疾く。

俺の仲間の所へ。

大切な人達の所へ。

 

『それだけか?』

 

いや。

俺は知りたい。

死ねない体(このスキル)理由(わけ)を。

この力を俺が持った理由を。

そして、俺自身の事を。

 

 

…だから、

 

 

 

俺はやりたい事をやり、知りたい事を知る。

ただそのための力が欲しい。

 

 

 

 

『"やりたい事をやる"、か。強欲だな』

 

欲が無い俺なんて眼鏡の無いペ○ンジュンだろ。

 

『ネタが古いな…だが、それでこそ俺だ』

 

本の中の俺は、ニヒルに笑った。

それを見ると同時に、俺の意識は闇へと沈んでいった。

 

 

 

…ん?

『それでこそ俺』…ってネタが古い事に対してじゃ無いよね⁉︎違うよね⁉︎

 

 

♢♢♢♢

 

「………くん。………タ君っ」

 

……………?

 

「…?」

 

「アスタ君!」

 

「魔法帝ッ⁉︎」

 

「どんな驚き方だ⁉︎それとアスタ違いだよアスタ君っ⁉︎」

 

目を開けると同時に、予想以上に近くにあったヘスティアの顔に仰け反…ろうとして椅子ごと後ろに倒れる。

因みに魔法が使えない方のアスタ君はまだ魔法帝にはなってない。

…あれ?魔法使えないの(アスタ)もじゃないですかやだー。

などと余計な事を考えながら、ゴン!と頭を打つ。

眠気が吹き飛んだ。…最悪な目覚ましだ。

 

「ってぇ…何だようるさいな…」

 

「君がいつまでも寝てるから起こしてあげたんじゃないか」

 

むすっとした声で言うとヘスティアもむすっとした声で返してきた。

 

「いや、いつ帰ってきたんだよ…」

 

「今日はミアハのところでベル君と(・・・・)泊まらせて貰ったんだよ」

 

「ああ、お前がまた酔っぱらったのな」

 

「うぐっ⁉︎」

 

ミアハ様も大変だなぁと思いました。まる。

あと"ベル君と"を強調するなよ…何か必死さが悲しいから…

 

「…んん?そもそもいつ寝たんだ俺…あれ?本は?」

 

「本?そんなものは無かったぜ?」

 

まだ寝ぼけてるのかいアスタ君…って感じでヘスティアにジト目で見られた…やだっ、屈辱ぅ‼︎

 

「…なんか凄く失礼な事考えてないかい?」

 

「いえいえ堕神(ヘスティア)に馬鹿にされて屈辱とか全く思ってなくもないです!」

 

「いや思ってるよね⁉︎」

 

さすがツッコミ神(ヘスティア)、相変わらずキレのあるツッコミだぜ‼︎

 

「…え、だからそう言ってるじゃん、俺の一つ前のセリフ読み直せよ…」

 

「メメタァ!…あ、ほんとだ、言ってるね…」

 

「だろ?」

 

あと、メメタァ!は本来の使い方は効果音だからな。

はいここテストに出るよー、エイナさんの。

…いや出ねぇよ。

 

「ってそれは結局ボクに失礼じゃないかぁぁぁ!!!!」

 

「まあそれはともかく」

 

「それはともかく⁉︎」

 

さっきから気になっていた事を再度聞いてみることにする。

 

何も置かれていない机を見る。

 

「なぁヘスティア、ほんとに本は無かったのか?」

 

「え、ああ…うん。少なくともボクは見てないよ。なんて本なんだい?」

 

既にやや朧げな記憶を思い出しながら頭に浮かんだ事を伝える。

 

「タイトルは書いて無かった。あと…なんかふざけた本だったな」

 

「わかるわけないじゃないか…」

 

ジト目で見てくるヘスティア。

まあそうだよな…

 

「まあ無かったんなら無いんだろうな…」

 

何で無いんだ…?

昨日のあれは夢だったのか…?

いやでも記憶はしっかりしてるし…。

そもそもあの本は何だったんだ…?

 

「うーん…わからない」

 

あ、そういえば、

 

「なあヘスティア、ベルはどこ行ったんだ?」

 

「ベル君ならもうとっくに出かけたぜ?」

 

「……え、嘘?今何時?」

 

「一大事〜♪」

 

きゃるん、とキメ顔ウインク付き。

 

「どわっはっは〜♪… はぁ…あざというざいやや古い」

 

「君も乗ってきたのにそれは酷くないかいアスタ君っ⁉︎」

 

はいはい、と。

時間は…?

 

 

1 3 時 だ と ⁉︎

 

「妖怪のせいなのね?そうなのね⁉︎」

 

「アスタ君、ブーメランって知ってるかい?」

 

アスタは今日もダンジョンへと向かう。

 

 

 

 

♢♢♢♢

 

廃墟と化した、現在は使われていない教会。

その中で、月を見ている。

ステンドグラス越しの月は、今にも消えそうな光を私に届ける。

ふと、思った。

 

 

生きることは、素敵なこと。

 

生きるからこそ、人と出逢い、人と繋がりを持つ。

 

でも、生き続けるのは、素敵なこと?

 

生き続けるからこそ、友を失い、繋がりは切れる。

 

私は思うのだ。

 

神は、この世で最も幸せであり、最も不幸でもある。

 

そんな事を思いながら、その女(・・・)は、今も机で眠っている青年の事を思い出し、優しく微笑む。

そして、古びた本を抱え、立ち去っていった。




いつもよりやや長めでした。

次回からモンスターフィリアに入ります。
魔法の発動はもう少し後ですね。
ヒロイン…?ナニソレボクシラナイ。
嘘!嘘だよっ‼︎ちゃんと書くから!

ナス科の地上絵ことエルフ愛好家でした!

コメント、お待ちしてます!

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