ストライク・ザ・ブラッド 錬鉄の英雄譚   作:ヘルム

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今回の騒動の収束の仕方は根本的に違っています。
正直言って、古城たち三人あまり活躍しません。ええ。これで不満がある方どうぞ!書き直させていただきますので!だって、仕方ないじゃん!
あ、ちなみに今回で贋作宝具違うのを使います。ええ、だって、ぶっちゃけ、これだけならばまだ手の施しがあるかもしれないなーとやってしまったんですもの。というか、こういう事態をそのまま傍観し続けるエミヤさんなんてエミヤさんじゃないもん!
まあ、腐った後ならばやりかねないんですけど、今回のエミヤさん割とプラス的思考の持ち主だから、そんなことありえないんですー!!

はぁ、はあ、はい…ではどうぞ!



戦王の使者VII

「姫柊!!大丈夫か!?」

 

見慣れた少女が銀色の槍を携えて割り込んできたのを見て、驚きの声を上げた古城はすぐにその少女の元に駆け寄る。

ただし、少女の方は随分ととげとげしい表情を帯びて立っていた。

その雰囲気に思わずといった調子でたじろぐ古城に対して随分と温度の冷たい言葉が投げかけられる。

 

「…新しい眷獣を従えたんですね?」

「え?あ、ああ。」

「これは、その仕方なかったのよ!新しい眷獣を出さないと地上に出られないっていうから、この男が無理矢理…」

 

さすがにそんないわれをされる覚えはないと感じた古城はムッとした調子でその言葉を返す。

 

「いや、無理矢理なんてしてねーだろ!!どっちかというと、お前がこっちに勧めてき…」

「バカバカバカ。なんでこの場でそんな余計なことを言うのよ!!」

 

ポカポカと軽い調子で古城を殴る紗矢華。どこからどう見ても痴話喧嘩にしか見えない光景を見させられる雪菜。正直、どう反応したらいいか困るというものだ。

だが、やがて大きくため息をすると、

 

「そうですか。よかったです。」

 

と言い出した。その言葉に対して、一瞬、唖然とした表情になる古城と紗矢華。

 

「えーと、怒ってねえのか?」

「はい。私はもしかしたら、嫌がる紗矢華さんに強引に吸血行為を迫っていたのかもしれないと思ったのですが、今の調子を見るとそんな様子もなかったようですし、安心しました。」

「そ、そっか。よかった…」

 

安心したと言った姫柊よりもはるかにホッとしたような調子で二人は息を吐く。

そんな様子に呆れたのか、痺れを切らしたのか横から低い声が響く。

 

『話は終わったか?だったら、とっとと、目の前の相手に集中した方がいい。どうやらあちら側はすでに準備万端のようだからな。』

 

コンテナの天辺で観戦をしている黒男が三人に向かって忠告した瞬間。一瞬、黒男の方を向いた後、すぐに彼が忠告した方向を見る。

見ると、ナラクヴェーラの女王が特有のハングマシンのようなアームの中央に何か光を収束させ始める。

その光が大きく、更に収束された瞬間、色を変え、古城たちに照準を向ける。そして、発射!!

 

その攻撃に対して、紗矢華が前に出て、煌華麟の能力『次元切断』を応用した次元の壁を作り出す。古城と雪菜たちはその後ろに下がることで何とか回避する。

その間に途中から来た雪菜は情報を得るために口を動かす。

 

「先輩!あのコンテナの天辺にいる方は誰なんですか!?」

「知らねえよ!ただ、話を聞く限りじゃ、ヴァトラーと闘ってたっていうんだ。しかも、最低でも、ヴァトラーと同じかそれ以上の怪物だって言ってたよ!!あいつは!」

「え?」

 

その言葉に対して、雪菜は驚きの言葉を示した。あのヴァトラーという男についてはそれなりに名を聞くために、情報もかなりの数がある。そのため、彼が手こずったということはそれはもはやとんでもないと言っても過言ではない戦闘能力を有していることになるのだ。

 

(それに…何だろう?何となくこの感覚、前にも感じた気配のような気が…)

 

煌華麟の次元瘴壁が消された瞬間、今度は、女王は今度はアームの側面部分に円形のミサイル型の兵器が連射される。

 

「ちっ!だったらこっちも手加減しねえ!!焔光の夜爵(カレイド ブラッド)の名を継ぎし暁古城が汝の枷を解き放つ。

疾く在れ(きやがれ)!!9番目の眷獣!!双角の深緋(アルナスル・ミニウム)!!」

 

深紅の二角馬(ヴァイコーン)がミサイルに向けて突進する。ミサイルの雨を激しい爆発と共に迎撃する。だが、それで迎撃できるのは前方にあるミサイルだけだ。後方の遅れて射出されたミサイルにまでは届かない。

 

遅れてやってきたそれらの攻撃は古城たちの横を通り過ぎていく。

このまま、あれらを放置しておけば、確実に島内の建物に破壊の魔の手が及ぶ。そして、それこそ、テロリスト『黒死皇派』一派であるクリストフ=ガルドシュたちの目的でもあった。

実は、女王の乗車席に乗り、これを操作したのはクリストフ=ガルドシュである。この操縦席の中で、にんまりと嫌な笑みを浮かべていた。

アレをあのまま放置すれば確実に絃神島に痛手を負わせることができる。今は小さな篝火だが、いずれこの者たちを倒せば次はあの島の番だ!そう考え、ガルドシュは非常に愉快そうにその結末を見守った。

だが、彼らは知らなかった。そんな安い攻撃を絶対に島に近づけまいとする守護神がこの港にはいるのだということを…

黒男・シロウは不意に立ち上がる。そして、ミサイルたちが行った行き先の方を睨み、弓を構える。それだけならば、別に何も驚きはしない。あの円形ミサイルは複雑な動作をすることにより容易に察知させないような設計がなされている。一流スナイパーどころか、スーパーコンピュータでさえ、あの複雑な軌道を読むには時間がそれなりにかかる。

そう。だから、彼らは知らない。人間の経験則というものは時としてその人々が作り出した叡智の結晶すらも凌駕するのだということを!!

 

シロウが弓に矢を番える。そして、複雑な軌道を描く円形ミサイルはついには絃神島に入り込もうしたその時だった。

 

バババシュッ!!

 

とほぼ同時にしか聞こえないような弓を射る音が辺りに響く。矢は円形ミサイルを追っていくかのように、絃神島に入っていく。

その光景を見た瞬間、ガルドシュは嘲笑の笑みを浮かべた。

何を馬鹿なことを、あんな複雑な軌道を描く物体を一体誰が撃ち落とせるというのだ、と…

 

だが、次の光景を見た瞬間、その顔は驚愕に埋め尽くされることになった。そう。あの黒男が放った矢は見事にあの円形ミサイルを貫き、その攻撃による爆発は島内のビルには着弾せずに虚しく空を切るのみだった。

 

『なっ!!!?』

 

全員が同様の驚愕の声を漏らし、叫び、黒男の方へと視線が集まる。ヴァトラーの方はこの程度できるのは、黒男にとっては当たり前だと受け止めているのかもしれない。何も言わずに、ただ、感心したようにそして祝福するように笑みを浮かべて、立っていた。

 

『馬鹿な!!あんなどこに行くか予想できぬ物を正確に射っただと!?そんなことは不可能だ!!』

 

ガルドシュは悲鳴に近い抗議の声を操縦席から出す。相対している古城たちもガルドシュとはまったく、心境が同じだった。武術に心得がない古城ですら理解できた。

アレは言うまでもなく神業だ。人間離れした戦闘能力というのは最近の経験上見慣れているはずだった。だが、そんな彼からしても、アレは常軌を逸した怪物の所業であると確信ができる。今まで見てきた異常が可愛く見えるほどの…なるほどアレならばヴァトラーの目に適うのも頷ける。

 

一方、当の奇跡をなした本人は何処吹く風と言わんばかりに、着弾したのを確認すると、また、座り込んでいた。無言ではあるもののそこにはサッサと終わらせろ!という威圧感が含まれている気がした。

 

『っ!?なめるなよ!!ナラクヴェーラ分隊に告ぐ!!あのコンテナの上の男を引きずり落とせ!!!』

 

一方、そんなことをしでかした男の高見の見物を許すなど、ガルドシュたちテロリストのプライドが許さなかった。

親のナラクヴェーラの命令の元、子ナラクヴェーラたちが黒男に向けて動き出す。

一方、それに対して、今度は黒男の方が嘲笑を送る。

 

『はっ!テロリスト崩れが一丁前にプライドを着飾るとは…

 

貴様らのような戦争を手当たり次第に災いを撒き散らす害虫がプライドを着飾るなど、天に唾を吐くほどの不敬だと心得なかったのか?戯け!!』

 

彼がそんなことを言っている間に、子ナラクヴェーラは彼の目の前へと移動していた。弓を構え、矢を放とうとする黒男。だが、その構えをすぐに解き、ことの成り行きを見守ることに徹した。

子ナラクヴェーラの中にいる獣人は一体何をしているのか理解できなかったが、好機だと思い、その蜘蛛のような脚を目の前の男を潰さんばかりの勢いで突き出す。

だが、次の瞬間、彼が見たものは日光にも似た強大な光だ。

 

何事かと思った、刹那、轟雷に似た響きが辺りに轟く。子ナラクヴェーラはそのあまりに強大な電気の塊を叩きつけられ、なすすべもなく崩れ去る。

 

『第四真祖…っ!?』

 

苦虫を潰したような表情をするクリストフ=ガルドシュ。それに対して、古城は淡々と睨み返しながら、告げる。

 

「無視すんじゃねえよ。オレとしてもあそこまで宣言しといて、そのまま終わったんじゃあまりに格好がつかねえだろうが!」

 

古城は、別に格好つけたがりというわけではない。だが、自分が個人的に怒りを覚えた相手を誰かに奪われるというのは流石にいただけない。

このテロリストどもは自分の可愛い妹にまで手を挙げたのだ。ならば、この者たちを倒すのは自分だ。

それが今の古城の思考回路を埋め尽くしていたことであった。

普段は怠けている分、こういう時この男は本気を出すわけである。

 

『いいだろう!!ならば、貴様を倒した後に、あの黒男を倒すこととしよう!!』

 

女王ナラクヴェーラが古城に向けて照準を定める。

そして、最初と同様の一撃を発射するために特徴的なアームの部分に光を収束し始める。

 

「させるか!!深緋の双角(アルナスル・ミニウム)!!」

 

光の収束を邪魔させるように深紅の二角馬(ヴァイコーン)が突進し、破壊を帯びた振動の咆哮が響く。

それだけで、確実に、着実に化け蟹どもの装甲は剥がれ、破壊の渦の中心にて瓦礫の山と化すかのように思えた。だが、人生とはそんなに甘くない。最初の破壊ほど、望む以上の破壊は望めなかった。

 

『効かんよ!!第四真祖の攻撃は既に学習(・・)済みだ!!』

「ちっ!!だったら、これならどうだ!?獅子の黄金(レグルス・アウルム)!!」

 

今度は、雷光の獅子を向かわせる。雷光と振動が重なり、破壊の渦が嵐へと変貌する。この破壊の嵐の中では草木の一本すら跡形もなく消え去るだろう。

その破壊の嵐が消え去った後、そこには瓦礫の山の集団があった。

 

「…やったか?」

 

不安げに呟く古城とそれに同行するように見つめる剣巫と舞威媛。

一瞬、ほんの一瞬、それらが動き出さないかもしれない未来図(ビジョン)を思い浮かべてしまったために、それらが動き出さないのに安堵の表情を浮かべてしまった三人。だが、すぐにそれは警戒の色へと変わる。

やはりというべきか、ナラクヴェーラは周囲の瓦礫を吸収して、破損箇所を修復し始めていた。

その光景に思わず歯噛みした古城たちはまた一歩距離をとる。

 

『ふはははは。さすが、第四真祖といったところか!!今の火力、いやはや見事!!だが、このナラクヴェーラは食らったダメージを確実に学習することでより強くなる!!

 

君たちにできることはただ、その場で立ち尽くすことだけだよ!!』

 

「くそ!壊せば、壊すほど強くなんのかよ!一体どうすれ『そうか。つまり、その学習をなんとかすれば、君のそのご自慢の兵器はただの鉄の塊と化すわけだな。』…え?」

 

低いが辺りに響かせるような声色で黒男は一つの矢をナラクヴェーラに向けていた。矢のように伸びてはいるものの、これはあらゆる魔術を発動前に戻してしまうほどの対魔術性能を持った短剣である。

その名も…

 

破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)!!』

 

その真名が解放された矢は音速を超え、真っ直ぐにナラクヴェーラの女王へと向かっていく。当然、音速を超えた矢をナラクヴェーラは捕捉はできたもののその時には既に遅かった。

ナラクヴェーラの女王へとその矢が着弾した瞬間、閃光にも似た爆発が周囲を覆い、古城たち三人やヴァトラーは目を覆った。

そして、その閃光の輝きが終わった後、何事もなかったかのように、ナラクヴェーラたちはそこに佇んでいた。

思わずといった調子でガルドシュは吹き出す。

 

『く…はは…ははははは!!!なんだ?偉そうなことを言ってその程度か?これならば、第四真祖の攻撃の方がよほど効果的だったぞ!どうやら、ヴァトラー殿も目が曇っておいでらしい。この程度の者を真祖に並ぶなどと…』

『本当にそう思うか?』

 

試すような口調で問いかける黒男。だが、これもハッタリだろうと捉えたのだろう。ガルドシュはなおも嘲笑を失わぬ笑みを浮かべ、声を上げた。

 

『ああ、思うな!!ふふ、まったく、笑わせてくれる!』

『そうか…無知とは恐ろしいものだな。おい、そこの第四真祖!』

「え?お、俺かよ!?」

『貴様以外に誰がいる。試しにそこのガラクタ共に攻撃してみろ。』

「え、でも…」

 

彼が戸惑うのも当然だ。彼の攻撃はいまさっき、ナラクヴェーラに学習されて、既に最初ほどの破壊は期待されない。

そんな中で、彼が何か破壊しようにも、できはしないのではないのだろうかと考えるのが普通だ。

 

『いいから。やってみろ!それで分かる。』

「わ、分かったよ!!疾く在れ(きやがれ)獅子の黄金(レグルス・アウルム)!!」

 

雷光の獅子はまたも、ナラクヴェーラに向かって突進する。

無駄なことを、とガルドシュは思った。既に学習している攻撃を向けられたところでこのナラクヴェーラには無駄なこと。このナラクヴェーラは堅固にして最強の動く砦と同義だ。絶対に誰にもその根幹までは破壊されない。

 

そう思っていた(・・・・・・・)

 

だが、雷光の獅子の牙はまるで紙細工を千切るかのように、それらの脚を食い破った。

 

『なっ!?』

 

驚愕はテロリストのものか、はたまた古城たちのものだっただろうか?テロリストご自慢の兵器は瞬く間に、また、瓦礫の山と化していた。

 

『貴様、何をした!!こんなこと、こんなことは絶対にあり得ない!ナラクヴェーラが既に学習した力を受け流せないなど…』

『世の中は君たちが思っている以上に広いということだ。テロリスト。その兵器。異能に対応するのであればそれだけの兵器を動かすために大量の魔術が重ね掛けされているに違いないだろう?

 

ならば、簡単だ。その学習する魔術も含めて、動けなくなるまで重ね掛けされた魔術を跡形もなく消し飛ばせばいい話だ。

 

だが、まあ、この効果は魔術にしか適応されないからな。そのガラクタはどうやら魔術で動いていなかったわけではなさそうだが…学習することとその内容、更には再生までは、違ったらしいな。そこだけは完璧に魔術だけに置き換えてしまっていたらしい。

 

これで貴様のご自慢の兵器は戦乱の嵐に飲まれても再生もせず、ただ、少し普通の戦車よりも火力が優れているただの化け蟹に成り下がったわけだ。

 

さて、これでもそのテロリズム(馬鹿なこと)を続けるだけの気概はあるかな?』

 

ガルドシュはその内容を聞いた時、頭が真っ白になってしまった。

つまり、こういうことである。自分たちの計画は今あの黒男が射ったたった一つの矢によってまるで砂上の楼閣のようにもろくも崩れ落ちてしまったのだと。

 

『貴様ーーーー!!』

 

感じ、気づいた時には怒号と共に女王ナラクヴェーラが黒男に向かって突進していった。だが、届かない。その前進する脚はまるで豆腐のように砕け、斬れる。

古城と紗矢華がその脚を攻撃したのである。もはや、動けなくなったガラクタを放っぽり出し、操縦席から降りたガルドシュは軍用ナイフを手にまたも突進していく。狙いは明確。あのコンテナの上で卑しくも、堂々と立っているあの憎き黒男である。

だが、そんな彼らとの間に一人の少女が前に出てくる。

 

「そこをどけーー!剣巫ーーーー!!!」

 

対する彼女はその獣人に向かい、粛々と祝詞を捧げるように紡ぎだす。

 

「獅子の巫女たる高神の剣巫が願い奉る。破魔の曙光。雪霞の新狼。鋼の神器を用いて我に悪神百鬼を討たせたまえ!!」

 

祝詞が完成した時、その手に持つ銀色の槍は一層輝きが増す。

そして、その神聖な輝きを持って、獣人に向かって突進する。

 

互いの影が交錯し、背を向けた状態で留まる。

 

「ぐっ、くっ!おのれっ!?」

 

傷をつけられたのはガルドシュだった。ナイフを手からずり落とし、胸から胴にかけて袈裟掛けに近い一撃。だが、とっさに急所を外したのだろう。彼はまだ黒男を目で追い続け、そして確認した後、今度は素手で突進し始める。だが、その後ろから追い、前に出た一人の少年がまたも行く手を塞ぐ。

そう。暁古城だ。彼はまだ妹にしてくれた礼の分をこの男に浴びせていない。唇を噛み、滲んだ血で吸血鬼の身体能力を強制的に引き出す。そして、その全膂力を腕に集中する。

 

「終わりだ!!おっさん!!」

 

彼が吼え、そして突き出す拳は獣人の顔に容易く減り込み、クリストフ=ガルドシュは苦悶の悲鳴を出しながら、崩れ落ちていった。

ここに黒死皇派のテロリズムが終結に導かれたのだった。


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