そろそろ、第四章『犬人の冒険』が終わるかと思います。
いやまあ、私の気分で何かしらホイホイ入れちゃうかもなんですけどね。
さてさて、今回は前書きで語ることも少ないので早めに行きましょう!
あ、ごめんなさい。今回はちょいと量が少ないです。3000字越えなかったよ…
「いいぞ、もっとやれ」
というかたはGWの課題を終わらせてから本文に進んでください。
「まったく………なんで少し目を離した隙にいなくなっちゃうのよ」
「ご、ごめんなさい……」
人里から遠く離れた場所。
幽香が管理するヒマワリ畑、通称『太陽の畑』の傍にある整備された道を霊夢とユウは歩いていた。霊夢は突然消えたユウに大変ご立腹なようで、ユウを歩きながら叱りつけている。
「知ってる奴でもほいほい付いて行かない攫われない事! わかった?」
「は、はい……」
「今度いなくなったら知らないからね。またさっきみたいな事があっても」
「はい……」
しょんぼりした様子で霊夢の横に並んで歩くユウ。
本当に反省しているようで、目線は地面の方を向いている。
その様子に霊夢はため息をついた。
「でもま、私にも落ち度はあるわ」
「…………え?」
「だから、私の傍を離れない事。いいわね?」
「は、はい!」
ユウがビシっと敬礼のポーズをとる。
霊夢はそのぎこちない動きとポーズにクスリと笑みを浮かべた。
「分かったらほら、もっかい背中に乗りなさい。このまま歩いてると日が暮れるわ。飛んでいくわよ」
「う、うん!」
霊夢はユウが背中に乗れるように屈む。
それにユウが乗り、霊夢は体勢を整える。そして、いざと飛ぼうとした時、上空から声が聞こえた。
「見つけたぞーー!霊夢ーーー!!!」
「げ……藍…」
霊夢はしまったと悪態をつく。
まさかこんなところで見つかってしまうとは―――そう心の中で舌打ちをする。
そんなことを考えているうちに藍は霊夢の目の前に降り立っていた。
「さがしたぞ、全く。どこをほっつき歩いているんだ」
「そんなことより、なんでアンタがここにいんのよ。黒コートの見張りをしてたんじゃなかったの?」
「紫様がお前を探せと命令してきたのだ。どこぞの馬鹿が張った結界のせいでな」
「なんのことかしらね。で、見張りは橙にでも任せてるわけ?」
「そんなことさせられるか! あの黒コートはお前を連れ戻してからまた監視を再開する。だからさっさと戻るぞ」
「嫌よ、面倒くさい。それに、結界は問題ないって私の勘が言ってるのよ」
「なに?」
藍は霊夢の言葉に面食らったような表情を浮かべた。
霊夢の勘はそこらの勘はまるで違う。例えるならそれは神託のようなもので、外れることはなかなか無い。これは、能力というより体質だ。
そして、その勘の優れた的中率は藍ももちろん、幻想郷のほぼ全員が知っている。
「結界?」と首をかしげているユウを置いて、二人の話は展開していった。
「本当なのか?」
「ええ。確かにこの三人は何かしら共通点はあると思うけど」
「たしか、あの神橋理沙はユウの義姉だと言っていたな。となると、あの男も……」
「そういえば、宴会を眺めるように見てたわね」
「なるほどな……しかし、それは私ではなく紫様に言ってくれ」
そういうと藍は素早く霊夢の足元に術式が書かれた札のようなものを投げつける。
すると、霊夢が反応するよりも早く地面が割れ、『スキマ』が現れた。
そして霊夢とユウがスキマに完全に吸い込まれ、いなくなったのを確認すると深くため息をついた。
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「う゛っ!?」
どさり、と霊夢は固い地面に落下した。
「いったた……何時通っても嫌な空間だわ……」
「うぅ…」
霊夢は起き上がり、体にまとわりついた不快感のようなものを取り払おうと二の腕をさする。
ユウを見るとやはり同じなのか、犬耳や尻尾のあたりを少し気味悪そうにさすっていた。
『スキマ』とは、万物の境界の間にある隙間。それゆえのあいまいさが、不快感を与えてしまうのだ。
「はい、おかえりなさい」
ふと、後ろから声が聞こえる。
霊夢が振り向くと、そこにはやはりというべきか、博麗神社本殿をバックにして立つ紫の姿だった。
「何がおかえりよ……強引に連れ戻したくせに」
「こんな結界張るのがいけないんでしょう? 自業自得よ」
「私は結界の見直しなんていかないわよ」
「また勘かしら?」
「ええ。共通点はあると思うけどね」
霊夢は立ち上がり、服に着いた汚れをパンパンと叩いて落とす。
「そう……ひとまず、この結界を解いてくれないかしら」
「何言ってんのよ。その気になればこの程度アンタならどうにでもなるでしょ」
「お腹がすいて力が出ないのよぉ。だからお茶と茶菓子もお願いね」
「嫌よ。結界解いたら帰りなさい」
「冷たいわねぇ……」
紫はヨヨヨ…と泣き崩れる。
もちろん嘘泣きであり、霊夢もそれをよく知っているため、無視して結界を解いた。
「で、要件をちゃっちゃか話しなさい。それか帰れ」
「くすん……最近霊夢が冷たいわぁ…」
「よし帰れ」
「冗談よ、だからそのお祓い棒をしまってちょうだいな。要件は分かっている通り、結界の見直しよ」
「だから行かないって言ったでしょ。結界に不備は無いって――」
「ええそうよ。不備がないことを確認するのよ」
「………」
紫がどこからか扇子を取り出しバッと広げ、口元を隠す。
そこから表情を読み取るのは難しく、胡散臭さだけが倍増した。
しかし、霊夢は長年の付き合いからか何かを受け取ったらしく、深いため息をした。
「……ならさっさと行くわよ。ユウの件だってあるんだから」
「あら? 私はこのままの方がいいと思うわよ? まだ、私さわってないしね」
「絶対ダメ。ほら、行くわよ」
「はいはい」
そして、ユウをその場に取り残したまま霊夢と紫は空へ飛び出していった。
「………えっと、僕はどうすれば……」
「ゆうくーーーーーん!!」
「あ、おい理沙!」
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「………ようやく、いなくなってくれたかな?」
川のほとり、男はゆっくりと後ろを向いた。
そしてゆっくりと立ち上がり、釣り道具を片付ける。
そして小屋に戻ったと思えば、外に出てどこかへと歩いて行った。
その足取りは確かなもので、すでに行き先が決まっているようだった。
黒いフードの付いたコートを羽織り、魔法の森を抜けていく。
「だれなのかー?」
不意に、幼い少女のような声が聞こえた。
男は立ち止まり、きょろきょろと周りを見回した。そして、黒い服を着た金髪の少女、ルーミアを発見した。
「やあ、何かな」
「ここは人里じゃないのだー。何でここに居るのだー?」
「そうだね……人捜し、かな」
「誰か探してるのかー?」
「うん、そうだね」
「そーなのかー」
ルーミアはフワフワと男に近づく。
そして、ある程度近付いたところで――
「ところで、お兄さんは食べてもいい人種なのかー?」
「え、」
何を、という前にルーミアは男に襲い掛かった。
それを男はバックステップでさける。
「―――やれやれ」
次の瞬間。
男はルーミアに一瞬で近づき、刃物を抜いた。
「『霊剣斬』」
どさり、とルーミアが倒れる。
意識を失ったのか、ピクリとも動かなかった。
「ごめんね。峰打ちだから、勘弁してくれ」
そういうと、男はまた歩き出した。
その左手には、銀色に光るナイフが怪しげに煌めいていた。
はい、いかがでしたでしょうか。
今回の事はいろいろ考察ポイントが多かったと思います。
まだ材料は足りないと思いますが……ある程度分かってきた人もいるんじゃないかな?
おっとと、ここでなんか言うとヒントになっちゃうな。とりあえず、ここまでで。
ではでは、また次回お会いしましょう。