東方少年呪   作:CAKE

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はい、どうも。CAKEです。
かなりの勢いでお待たせしてしまいました。申し訳ありません。
今後は投稿ペースを乱さぬよう頑張って執筆しようと思います。
さて、今話ですが……一部R-15入っちゃうかも? そこら辺の区別がついていないのでわかりませんが、だ、大丈夫、な、はず、です。
で、ではでは、
「いいぞ、もっとやれ」
という方はペットを愛でてから本文に進んでください。


EP,37 【ユウとシギャクシュミ】

 

「………」

 

八雲紫の式である八雲藍は無言で空を飛んでいた。

その表情は心なしか暗く、疲れ切っているように見える。

それもそのはずだ。つい先ほどまで謎の男――黒コート、とでもしておこうか――を監視している中、突然紫から連絡が入ったのだ。

 

『藍? 聞こえているかしら?』

『はい、聞こえていますよ。どうしたのですか?』

『閉じ込められちゃった』

『………はい?』

『だぁかぁらぁ、閉じ込められちゃったのよ。結界の見直しで呼びに行ったらね、あの子神社に捕獲結界を仕掛けていったのよ。おかげで力も出ないし境内から出られないワケ』

『は、はぁ……』

『と、いうことで。霊夢を連れ戻してくれない?』

『え!? い、今からですか?』

『ええ』

『でも、この男の監視は…?』

『今、そいつは何してるの?』

『さ、魚を釣っています……二時間くらい』

『なら大丈夫よ。すぐに見つけられるしね。というわけでさっさと行きなさい。それとも、あなたが結界の見直し全部する?』

『わ、わかりました……』

 

あの大宴会から私がずっと張っていたあの黒コートは何一つ怪しい動きは見せなかった。

あの後、黒コートは魔法の森の一角にある古びた廃屋に入ったかと思うと、しばらく出てくることは無かった。

まさか中に入るわけにもいかないので仕方なく廃屋から少し離れたところで霊力を感じながら監視していたのだが、黒コートは何をするわけでもなく、ただ横になって片腕を天井に向けて軽く伸ばす形を保っていた。姿勢からして、恐らく読書でもしていたのだろう。

そしてその後、黒コートは釣竿を携えて廃屋から出てきた。

そしてそのまま川に行き、片腕しかないのを何とも思わないかのような動きで釣りをはじめ、結局そこから動くことは無かった。

 

「(あの男……一体何者だ? 確かに彼は人里で見たことないことからして外来人で間違いない……。我々が彼の存在に今の今まで全く気付かなかったなどありえない。)」

 

霊夢を探しながら深く考える藍。

黒コートの存在は八雲にとって『謎』の一言に尽きる存在だった。

顔は口元しかわからず、何故か片腕は欠けている。

元々黒コートはあの大宴会中にひょっこりと人知れず宴会を見物しに来たただの一般人にしか過ぎない。

だが、幻想郷にはもともといなかった人物であること、所謂外来人であることが黒コートの存在を奇怪なものにしていた。

今現在での幻想入りはほぼあり得ないのにも関わず、日照優人や神橋裡沙、そしてあの黒コートと三人連続で幻想入りを果たしている。

こうなってしまっては、なにか関係があると考えざるを得ないし、恐らく間違ってもいないのだろう。

その関係性は、今はまだわからない。分からないが――

 

「(なぜだろうな………何か、漠然とした、はっきりとしないが、危機的な何かを感じる……。あ、まさか、あのシャリーとかいう妖怪も幻想入りして現れた妖怪だったのか…?)」

 

藍は考え続けた。手がかりを頭で探す。まるで、なくしてしまった何かを物入れをひっくり返して探すように頭を使う。

そして……

 

「(……ダメだな。今はまだ、分からない)」

 

答えは出なかった。まだ、パズルのピースが足りない。今答えを出すのは早計というものだろう。

諦めたようにため息を溢し、前を見ると彼女の姿を視界にとらえた。

 

「(はあ……ここに居たか、博麗霊夢)」

 

再び大きなため息をついて、藍は太陽の畑に降り立った。

 

 

---------–---------–---------–---------–---------–---------–---------–---------–---------–---------–

 

 

 

「幽香あああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

少し時は遡る。

突然、花の大妖怪、風見幽香が管理する太陽の畑に大声で突撃する侵入者が現れた。

侵入者の名前は、博麗霊夢。特徴的な紅白の巫女服を身にまとい、絶賛音速飛行中である。

そして、見るものを圧倒する広大すぎるひまわり畑をガン無視し、その奥にある一軒の木造の家に突っ込んだ。

 

ドゴォオン!!

 

ドアを吹っ飛ばし、家の中に侵入。

その中には一人の少年がいた。

 

「―――!―――ッ!」

 

犬耳と尻尾をひっつけた少年、ベットの上にいるユウが霊夢の姿を確認した瞬間なにやら涙目で叫んでいた。

よく見ると、ユウの体は大人でも折るのには難しそうな太い花の茎のようなものが巻き付いているではないか。さらにユウの口には蔓でできた特製猿轡をされており、まともにしゃべれそうにない。

その顔は見てわかるように焦りと羞恥が混ざったように赤くしており、助けてくれと今も叫んでいる。

霊夢は一瞬ナニカに支配されかかり固まった後、正気に戻ったように顔をブンブンと振り、助けようとユウに近づく。

しかし、その瞬間。

 

「――――――――ッッッ!!??」

 

ユウの体が激しく痙攣する。

そして、ベッドの後ろからヌッと一人の女性が出てくる。

その手には、ユウの尻尾。

 

「フフ……だめじゃなぁい…うるさくしちゃ……フフフ……」

 

口角を三日月のようにせり上げた、緑色の髪をした女性がユウの耳元で舐めるように囁く。

そこには幻想郷でおなじみの、ドS(サディスト)幽香が降臨なさっていた。

霊夢は何かに縛られるようにその場に固まってしまう。

 

「ほら……せっかく観客も来てくれたみたいだし……もうすこぉし、頑張りましょうね…?」

「―――!―――――!!」

「暴れないの……フフッ……そんなことするなら………」

 

幽香が本来付いている方ではない、犬耳に顔を近づけて……

 

「ふぅぅ――…」

 

息を吹きかけた。

 

「――!?!?!?!?!?!?!?」

 

ユウが激しく悶え、ユウを縛っている茎がミシミシと音を立てる。

その音がきっかけだった。脳をフリーズさせられていた霊夢の自我が復活。

霊夢は状況をようやく正しく理解し、大声で叫んだ。

 

「なぁにやってんのよ幽香ああああああぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァ!!!!!!」

 

その声は、全ての向日葵たちにも聞こえる、馬鹿デカい声だったという。

 

 

---------–---------–---------–---------–---------–---------–---------–---------–---------–---------–

 

 

「な、ななな何やってくれてんのよ幽香! ユウになにしたのか説明しなさい! いやしろ! 今すぐに!」

「なによ。ユウが『嗜虐趣味』について知りたいっていうから身をもって教えてあげようとしただけよ?」

「ユウがそんな言葉知ってるわけないでしょ! というかそもそも何で誘拐なんかしてくれたのよ面倒くさいじゃない!」

「質問が多いわねぇ……私はただ異変で監禁された仲であるユウに偶然会っただけよ」

「何でそっから誘拐なんていう理解不能な行動に出るのかしら!?」

「誘拐とは失礼ね。ただ本人にも無断で我が家に案内しただけよ」

「それを誘拐というのよ!」

 

ゼェハァと息を荒げる霊夢。

しかし、幽香は悪びれる様子もなく受け流すように対応していた。

このまま話していても埒が明かないと悟った霊夢は深くため息をつき、ベッドの上で体を抱きかかえ震えているユウの元へ向かう。

 

「ともかく、私たちは紅魔館に行かなきゃならないの。この耳と尻尾を外すためにね。無駄な時間食っちゃったわ」

「そのままでもいいと思うのだけれど……もったいない。まぁ、分かったわ。それじゃあユウ?またアソびましょうね?」

 

ユウはビクゥッ!? と震えた後霊夢の陰にサッと隠れる。

その目には涙を浮かばせており、その様はまるで警戒する小動物のように可愛らしかったと後に幽香は語った。

 

「まったく……ほら、ユウ。背中に乗りなさい。おぶってくわよ」

「………(コクコク)」

 

そして霊夢はユウを背負い、幽香宅を後にしたのだった。




はい、いかがでしたでしょうか。
案の定、ユウはやられてしまいましたね……ごちそうさまです。
空白時間は是非皆様の豊かな想像力で補ってみてください。
そして、今話もチラッと出てきた謎の黒コート……何者なんでしょう?
ではでは、また次回お会いしましょう。

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