東方少年呪   作:CAKE

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はい、どうも。CAKEです。
ようやく………謎の用事ラッシュが終わりました………いやったあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!
……コホン、失礼しました。
五週間も間を空けてしまいました。申し訳ありませんでした。
さて、長らくお待たせしました。新作です。
なんだか穏やかではないサブタイトルですが……どうなるんでしょう?
「いいぞ、もっとやれ」
という方は二重跳びを100回連続で成功させてから本文に進んでください。


EP,36 【ユウと誘拐】

幻想郷の昼下がり。

妖怪たちは夜に備え休養を取るものもいれば、人里に入り物を買ったり自由に過ごし、人間たちは商業に励んでいた。

ここ、団子屋『みるべえ』もまさしくそんな時間帯。そろそろ多くの客が種族関係なしに食べにくる、いわゆるピークの時間帯になる。そのため、従業員はより多くの食材の準備をしなければならないため忙しくなり、休む時間はこの店員の少ない『みるべえ』では休みなしで働きっぱなしになる。

の、はずなのだが。ぼちぼち増えてきている客に紛れて一人の店員が席に座っていた。

 

「へぇー、それでこれがあるんですね。これまた素晴ら……大変な目にあいましたね」

「そ、そうなんですよ…それで今、外しにもらうために紅魔館に行ってるんです」

 

そう、春だ。

あと30分もすれば『みるべえ』の中は客でいっぱいになると思われるというのに、仕事をさぼり、絶賛談笑中なのである。店長であるおっさん――本名は満留谷八兵衛という――は最初は怒っていたものの、もう諦めてしまったのか黙々と一人で寂しくピーク時に備え仕込みを行っていた。

 

「そうだったんですか……その寄り道で、ここに来てくれたんですか?」

「そう…だね。僕としては、早くいきたいんだけど…」

「あれ? ひょっとして、霊夢さんがここに寄ろうといったんですか?」

「そう……ね。私がここに連れ込んだのよ」

「なるほど~……ん? 霊夢さんって、ここ来たことありましたっけ」

「き、気まぐれよ! ここが当たりでよかったわ」

 

なぜか若干慌てる霊夢に春は首をかしげるが、まあいいかと呟き背もたれに寄り掛かった。

ユウはすでに四本目を食べ終わっており、最後の一本を手にした。対して霊夢はよほどゆっくり食べたかったのか、まだ三本も残っていた。

もちろん、本心は違う。できるだけ用事を引き伸ばし『結界の見直し』という面倒くさい用事を回避したいその一心であった。ちなみに、博麗神社にくるであろう紫に対し捕獲用結界を張っているので、恐らくもう掛かっているころだろう。結界の見直しは紫の式である八雲藍がしてくれることだろう。罪悪感は感じないといえば嘘になるが無視できる程度ではあるし、結界の見直しとなるとかなりの時間と労力を使うので、できれば回避したい事柄だった。

 

「(でも、幻想入りの原因は結界じゃない気がするよね……まあ、勘だけど)」

 

そう考えながら、すでに冷えて醤油ダレが固まってしまった団子を一つほおばる。冷えて固くなっているものの、団子の持つほんのりとした甘みは現存だった。

そんな中、最後の一本を食べ終わったユウがおずおずと春に尋ねる。

 

「あ、あの……トイレってどこにありますか…?」

「お手洗いですか? それだったら、外に出て右にあります」

「外付けなんですね…ありがとうございます」

 

ユウが立ち上がり、座っている霊夢を跨いで『みるべえ』を出て右へ。

残された二人は、会話はパタリとやみ、初対面の二人のように黙りこくってしまった。ほぼ春がユウに色々聞いていたので、霊夢に対する会話のタネがなかなか浮かばないのだろう。対する霊夢は何も考えず、ただただ、本当にゆっくりと団子を味わっていた。

 

「………えっと…」

「……」

「う、ウチの団子、どうですかね…」

「………美味しいわ」

「そ、そうですか! いやぁ、良かったです」

「………」

「………」

 

非常に気まずい。春はただ、ゆっくりと団子を味わう霊夢を見ているしかなかった。

そしてそのまま時間は経過し、霊夢がようやく最後の一本に手をかけたころ。

 

「(あれ……ユウ君、トイレ長くない?)」

 

まだ、ユウは帰ってきていなかった。

時間にして約十分、ユウが帰って来る気配はなくこの空間にはずっと気まずい雰囲気が流れていた。

さらに五分後。霊夢も団子を食べ終わったのだが、まだユウは帰ってきていなかった。

 

「(ちょ、いくらなんでも……!)」

「…遅いわね」

「へっ?」

「ごちそうさまでした。これ御代ね。ユウいつまで籠ってるのよ…」

「え、あ、私も行きます!」

 

春は机の上に置かれたお金を回収せずに霊夢についていく。

『みるべえ』の左にある外付けのトイレ。霊夢と春は右に曲がり≪団子屋『みるべえ』専用トイレ 客でない方もご自由にお使いください≫という看板が立てられたトイレの前に立つ。このトイレは目の前の扉を開けると座るタイプの便器があるだけで男女別にはしていない。イメージとしては公衆トイレだろうか。

 

「こらー! さっさと出てきなさーい!」

 

霊夢が荒々しく扉をノックする。

その反動で、トイレの扉は、いとも簡単に開いた。

そしてその中には、誰もいなかった。

 

「「………えええええええええええええええええ!?」」

 

ユウが消えてしまったことを理解し、大絶叫を上げる少女二人。

とっさに周りをキョロキョロと見回し、探し始める霊夢。春は「まさか、お持ち帰りされた……!?」と霊夢を同じ様にアワアワしていた。

 

「また消えた……っ!」

 

霊夢は鬱病異変が頭をよぎり、その場で飛翔。どこかに行ってしまう。

 

「あっ! ま、またのお越しをーー!」

 

一方、それに驚いた春であったが、お店の決まり文句を告げた後も『みるべえ』には戻らず、その場で立ち尽くすのみだった。

 

 

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「はい、どうぞ」

「あ、ありがとう、ございます……?」

 

一方、ユウは。

緑色の髪をした女性の家でもてなされていた。

 

「どういたしまして。じゃあ、私はこれ片づけてくるわね」

「あ、わかりました…」

 

その女性は、ずっと手に持っていた日傘を片付けるとユウの向かいにある椅子に座った。

 

「い、いただきます……」

「ふふ、召し上がれ」

 

ゆっくりと差し出されたお茶を飲む。

そのお茶からは一からの手作りだというのに青臭さが全くなく、それどころかほんのりと甘い匂いが湯気と共に立ち込めていた。

 

「あ……美味しい」

「そう、良かったわ」

 

その女性はふふふと和やかに笑う。

ユウはティーカップを置き、おずおずと切り出した。

 

「え、えっと……幽香さん…?」

「合ってるわよ。何かしら?」

「えっと……僕、なんでここに居るんですかね…?」

「なぜって……私に攫われたからよ」

 

ユウは「えっ!?」と椅子から立ち上がる。

それに対し幽香は「ほら、座って」といたずらっ子のような笑みを浮かべながら言った。

 

「何をするわけでもないわよ。異変で知り合った仲じゃない。見かけたから、つい攫ってしまっただけよ」

「そ、そうでしたか……」

「それはそうと、その耳とか尻尾とかって何なの?」

「あ、これはその、小悪魔さんに無理やり…」

「あー分かったわ。さしずめ、宴会の時でしょうね」

「そ、そうなんです」

 

そのまま二人は、幽香特製のお茶を飲みながら談笑をした。ちなみにユウは、誘拐された時の印象が強すぎたためか、紅魔館への用事の件はすっかり忘れてしまっている。

そして、ユウがお茶を飲み干したのを幽香が確認すると、彼女はゆっくり立ち上がった。

 

「ねえ、せっかくだし遊びましょうか。将棋盤ならあるしね」

「え、なんで知って……」

「異変中に『さっき一緒に将棋やったじゃないですか!』って言ってたじゃない。それでよ。じゃあ、やりましょうか」

「え、あ、はい。……あ、そうだ、幽香さん」

「なにかしら?」

 

幽香がタンスを漁りながら返事をする。

そしてユウは、あの時考えていた致命的なことを、幽香に尋ねてしまった。

 

「『シギャクシュミ』ってなんですか?」

 

ピク、と幽香の体が反応する。

そして、とてもイイ笑顔でゆっくりとユウの方へと振り返った。

 

「ユウ、それ、誰から聞いたの?」

「へ? 宴会中に幽々子さんという人から…」

「そう……」

 

幽香はゆっくりと、それでいて確実にユウの元へと歩く。

その様子にようやくユウの本能が異変に気付く。すでにユウの頭の中にいたアクは逃げ出して近くの花瓶に身を潜めていた。

 

「え、えと…」

「ユウ、それ付けられて何か変わったことは無いかしら?」

「へ? た、確かパチュリーさんがこの部分だけ敏感になるって……普段ないところだから…」

「そう、やっぱり……いらっしゃい」

「え? ゆ、幽香さん…? なんで抱き上げて……」

「嗜虐趣味について詳しく教えてあげるわ。抵抗しないで頂戴ね?」

「え、あ、はい……?」




はい、いかがでしたでしょうか。
ユウ………ご冥福をお祈りします。
いや、最初はこんな事にするつもりはなかったのですがね……キャラが僕の元を離れて自由行動し始めたんですよ。困ったものです(苦しい言い訳)
ではでは、また次回お会いしましょう。

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