新年明けましておめでとうございます。2017年でございます。
皆さんはおみくじ引きましたか? 私は引いてきました。
何とその結果は凶。何とも言えない感じでした。
どうせなら大凶引きたかった。
さて、前振りも長いと鬱陶しいのでささっと本編行きましょうか。
「いいぞ、もっとやれ」
という方はお餅を食してから本文に進んでください。
EP,34 【ユウと新しい日常】
「んぅ………」
博麗神社の一室。
ユウは静かに目を覚ました。目を開けた途端に飛び込んでくる暖かい太陽の光を手で遮りながらゆっくりと体を起こす。
「……寝坊しちゃった!?」
既に太陽は天高く昇っており、確実にいつもより遅くに起きてしまっていた。
毎朝境内の掃除をやっていたユウにとって、寝坊というのは由々しき事態だったのだ。
急いで部屋の隅にあるタンスから普段着であるパーカーとズボンを取り出した。永遠亭から拝借している寝間着を脱ぎ捨てて急いでそれらに着替える。すぐに部屋から出ようとするも脱ぎ捨てたグシャグシャな寝間着が視界に移り、数秒迷った末にきれいに畳んでようやく部屋を出る。
博麗神社の縁側を駆け足でバタバタと霊夢の部屋に向かった。しかし、本堂中央前、つまりは賽銭箱の後ろを通ったところでユウははたと足を止める。視界の端に、ある人物が見えたからだ。
ユウはその人物のところに走って近付いた。
そして、息を切らしながらユウはその人物に謝った。
「ご、ごめんなさい霊夢さん!ね、寝坊しちゃって……」
そう、楽園の素敵な巫女さんこと博麗霊夢である。
霊夢はユウの代わりにやっていた境内を掃除する手を止めて、手を腰に当てる。よく人が怒った時にするポーズだ。
「もう、何やってんのよ」
「ごめんなさい……」
「ま、いいわ。途中までは私がやっておいたから。あとはよろしくね?」
「う、うん! 任せて!」
ユウは笑顔で箒を受け取る。
箒を手渡した霊夢は神社の中に戻るが、その途中で振り返りこう言った。
「終わったら戻ってらっしゃい。朝ごはんにするわよ」
「わかった」
「あ、それと今日魔理沙が来るからね」
「魔理沙さんが? 何か約束してるの?」
「勘よ」
「なるほど。わかったよ」
「それじゃ、よろしく。あー、それと……ま、いいか」
そう言い残して霊夢は神社に戻っていった。
なんだろう、とユウは疑問に思いながらも掃除を開始した。
サッサッサッと無言でユウは掃除をしていた。参道の端には霊夢とユウが掃除するうえで溜まった落ち葉や砂が山となっていた。
数分後。
「ふぅ……こんなものかなぁ」
ユウは賽銭箱に腰かけ、自分が掃除した参道を見て呟いた。
普通、賽銭箱の上には乗ってはいけないのだが、そもそも参拝客がいないうえに霊夢はそこまで作法とかは気にしないので別に構わないことになっている。
「よし! 朝ごはん食べよっと!」
そう言ってユウはピョンッと賽銭箱から飛び降り、本堂に戻ろうとする。
しかし、そこで空からヒューーーン、と。何かが落下する音が聞こえる。
ユウはその音につられて上を向くと、白黒な何かが見えたのである。
「ほ、ほんとに魔理沙さんが来た……」
世紀の泥棒魔法使い、霧雨魔理沙である。
「やっぱり、霊夢の勘はすごいなぁ……」
そんなことを呟いているうちに、すでに魔理沙はユウの目の前に着地していた。
「よ! ユウ。暇だから遊びに来たぜ」
「霊夢が予知してたよ。いらっしゃい」
「だろうな。今から朝飯か?」
「うん。掃除が終わったから、そうだよ」
実は魔理沙が着地した時にゴミの山が少し吹き飛び、散らばってはいたが、ユウはそれを見なかったことにした。お腹が減ってしまっているのだから、仕方がない。
「そうか。じゃあ、私もいただくぜ」
「え、魔理沙さんも食べてくの?」
「ああ。どうせ昨日の宴会の余りが残ってるんだろう?」
「ああ、確かにそうかもしれないね。じゃあ……」
「あ、ちょっと待ってくれ」
ユウは魔理沙に背を向きかけるも、魔理沙に肩をつかまれ無理やり正面を向かされる。
ユウは抵抗する術もなく、魔理沙の正面に立った。
「………」
「えっと…魔理沙さん?」
魔理沙がユウをじっと見たまま目を離さない。
いよいよユウは不安になってきて、魔理沙の拘束から逃れようかと考えたとき。
ユウは後に、さっさと逃れるべきだったと後悔するのだった。
魔理沙の右手が頭の上へと移動する。
「(モフッ)」
「ふにゃッ!?」
---------–---------–---------–---------–---------–---------–---------–---------–---------–---------–
「で、やっぱりこうなったわけね」
霊夢は神社に入ってきた魔理沙とユウを見てため息交じりにそう言った。
ユウは今、深く呼吸をしながら魔理沙の腕につかまっていた。もう、それを見ただけで霊夢には何があったかはすぐに察したようだ。
魔理沙はユウを近くの座布団を枕に寝かせながら、ヘヘヘと笑った。
「まぁな。昨日からずっと触りたいと思ってたんだ。だから早めにお邪魔したってわけだぜ」
「宴会中に触れなかったの?」
「パチュリーに捕まっちまってな」
「なるほどね」
そう言うと霊夢は既に作ってあった食事を持ってこようと席を立つ。
が、その時。
「霊夢さーん! あ、いた!」
「いた、じゃないわよ。何壁突き抜けてんのよ」
食事を持った、能力発動中の理沙が壁から幽霊のごとくニュッと出てきたのだ。
理沙の能力は触れたものも透けさせる事ができる。なので、それを使いなるべく温かいうちに食事を運ぼうとした結果―――
「――迷っちゃいまして」
「普通に廊下使わないからそうなるのよ。ほら、さっさと並べる」
「はーい」
理沙は薄く見えていた幽霊みたいな状態を解除する。すると、徐々に色が濃くなってゆき、最終的には普通の人間になった。
「ホント、不思議な能力だぜ……」
それを見て魔理沙が呟く。
理沙の持つ『透ける程度の能力』は、戦闘では相当有利。むしろチートだと言っても差し支えないだろう。なにせ、攻撃が通らないのだ。不意を突いたとしても、仮に常に発動されていたら攻撃が通らず意味がない。
「(まったく、不思議なうえに厄介な能力だぜ……)」
「そういえば、魔理沙」
「おおう!? なんだぜ」
「なんでびっくりしてんのよ……ユウを起こして。寝たままじゃ朝食が始まらないわ」
「おう、合点承知だぜ。おーい、起きろー。ありがたい朝飯の時間だぞー」
魔理沙がユウの頬を人差し指でつっつき始める。
するとユウは何かにうなされた様な声を上げながらゆっくりと起き上がった。
「うう……酷い目に遭った」
「おう、そりゃ災難だったな。……分かった、悪かった。だから無言で私を睨むな」
「………むぅ」
「ほらほら、そんなバカみたいな事してないで、さっさと席に着きなさい」
「…はぁーい」
「おう、頂くぜ」
「帰ってほしいところなんだけどね」
「嫌だぜ。私は毎日ここで飯を食うって決めてんだからな」
「迷惑」
「承知してるぜ」
「…ゆう君、いつもこんな感じなの?」
「…うん」
そして今日も、幻想郷は平和なのであった。
「あ! それ私のおかず!」
「ふっ、裡沙よ。ここでは早い者勝ちなんだぜ? ほれっ、隙あり!」
「あ、また! ちょ、魔理沙さ、やめろーー!」
「あらあら、楽しそうね」
「うわぁぁぁ!?」
「ちょ、紫、なんてとこから出てきてるのよ!?」
はい、いかがでしたでしょうか。
犬のまま放置されてしまったユウ、一体どうなるんでしょうね。
もちろん妖怪になったわけじゃないですよ? 取れないですけどね。
さて、お知らせです。次回は三週間後になってしまいます。リアル事情があれなので、申し訳ありません。
では、また三週間後にお会いしましょう。
ではでは。