東方少年呪   作:CAKE

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はい、どうも。CAKEです。
ついにEP,30まで漕ぎつくことができました。
これも皆様のおかげ。感謝感激雨嵐天変地異でございます。
今回は霊夢さん中心のお話になります。
この小説のヒントになることが多量に含まれているので少し想像しながらご覧ください。
「いいぞ、もっとやれ」
という方は、レイトン教授をプレイしてから本文へお進みください。


EP,30 【そんなとき、霊夢は】

「……いつできたのよ、あの大所帯は」

「あはは、珍しいことになってるぜ?」

「しかも何なのよ、あの犬耳と尻尾は」

「さぁ、分からないぜ」

 

霊夢と魔理沙は、ユウを見てそう呟いた。

正確には、ユウの周りの人物をだが。

 

「妖夢に椛に文……しかもユウは椛に抱き着かれてるし……一体全体何があったのよ」

「えーと妖夢と椛は分からんとして文はすぐ分かるな」

「そりゃそうでしょ。目がネタになってるもの」

「こりゃ明日の新聞は買いだな」

 

現在、ユウは挨拶巡りをしている場合ではなかった。

保護者であるはずの妖夢は温かい目を向けるだけで何もできずにいて、椛はユウの姉のように振る舞っていた。文に至っては「椛に異変が……!?」とメモ帳と鉛筆をワナワナさせている始末。

 

「あれはもう助けは来ないわね」

「なんだなんだ、心配か?」

「ま、保護者みたいなものだからね」

「なっ……!?」

 

魔理沙が驚愕した顔で霊夢を見る。

それはもう、常識が覆された時のリアクションと酷似していた。

 

「……なによ」

「…いや、まさか霊夢がアッサリ認めるとは思わなくて……」

「どういうことかしら?」

 

霊夢が凄くイイ笑顔で魔理沙に詰め寄る。

魔理沙は目を逸らせながら誤魔化しに入った。

 

「まぁ、うん。その……あれだ。変わったな、霊夢」

「はぁ? どこがよ」

「いや、前は金以外無関心っていう感じだったから、その……なんだ。友達として嬉しいぜ」

「どういうことなの……」

 

魔理沙は、ユウが来る前の霊夢を少し思い出す。

あの頃の霊夢は、何事にも深い興味を示さずにいた。話を持ち掛けると口には出さないもののまず思うのが、面倒くさいの一言だった。そしてそれは人を対象にしても同じで、少なくとも誰かを心配するなどまずなかった。

しかし、ユウが来てから、霊夢は本当に変わった。ユウが遅れて帰って来た時に般若のように怒る霊夢を魔理沙は何度も見ているし、つい先ほどの心配している発言がいい証拠だろう。

 

「うん……悪くないな。やっぱ」

「なんのことなのよ……」

「いやいや、気にしなくてもいいぜ?」

「はぁ……まあいいけど」

 

魔理沙は少し笑って酒を飲む。と、同時にむせ返った。

喉が焼けるような感覚、魔理沙は盛大に咳き込みながら言った。

 

「ゲホッ! ゲホッ! …萃香! お前酒すり替えたろ!」

「あ、バレた?」

 

すると虚空から萃香の姿が現れる。

伊吹萃香、彼女は『密と疎を操る程度の能力』を持っており体を霧のように疎らにすることによって疑似的に姿を消すことができる。

そうして現れた萃香はにっこりとしたいい笑顔をしながらある酒が入った一升瓶を持っていた。

 

「ちょ、おま、それ『鬼殺し・改弐』じゃないか! そんなもん私は飲めないぜ!?」

「うん、私もちょっとキツイかな。アルコールに味を足したようなものだからね」

「そんなもの人間の私が飲めるわけないだろーー!」

 

ウガ――ッ!と怒る魔理沙を尻目にアハハという笑い声を残して逃げる萃香。

霊夢はそこに置かれた『鬼殺し・改弐』をアルコール度数を見てみた。

 

「アルコール度数98%って……って、体感アルコール度数160%!?」

 

鬼の酒に対する執念は凄かった。体感アルコール度数が100%を軽々しく突破するほどに。

頭を抱えため息をこぼす霊夢。

 

「……………ッ!?」

 

そしてその時、霊夢にある直感が走った。

霊夢の勘はとてもよく当たる。そしてそれを理解している霊夢は神橋理沙が参戦してきて混沌に拍車をかけているユウ達を尻目にその場所へと向かった。

 

 

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「……」

 

その男は、木の陰から見ていた。じっと、彼女を見ていた。

その眼差しは温かく、そして穏やかなものだった。

彼は、辺りを見回してみる。周りにバレたらまずいので、遠く離れているところから見ているがとても賑やかで楽しそうで、彼の夢がそこに詰まっているような錯覚を受けた。

いっそのこと登場して混ざってしまおうかとも考えたが彼女を見て、考えを改めた。

やはり、あの場に混ざる資格など、俺にはない。

そう考え、おとなしく酒瓶を取り出して、口で器用に開けてそれを飲む。

その時、後ろから声が聞こえた。

 

「あんた、誰よ」

 

後ろを向くと、まず目に入るのは紅白の派手な巫女服。博麗の巫女がそこにいた。

彼はもう一度酒を飲み、ゆっくりとした口調で返事をする。

 

「やぁ、博麗の巫女さん。博麗レムさんで合ってるかな?」

「霊夢よ霊夢。で、あんたは何者?」

「おっと、申し訳ない。それで何者か、か。そうだね……旅人かな」

「へぇ、旅人ね。見たところ人間のようだけどアンタ名前は?」

「俺の名前は……そうだね、訳があって言えないんだが、それでもいいかい?」

「……まぁ、いいわ。それよりもアンタ、見ない顔ね。外来人?」

「外来人とは、ちょっと違うかな。でもまぁ、似たようなものさ」

「ふぅん……」

 

霊夢は言った会話を止め、宴会会場を眺めながら酒を飲む男を観察する。

体全体を黒いローブで隠しており、見えるのはせいぜい口元が見え隠れするだけ。すこし髭が生えているのが分かる。ローブの掛かり方からして右腕は無いようだ。何があったかは知らないが置いておくとする。足には黒いブーツを着用しており何も問題は無いように見える。霊力はいたって普通レベル。何も特異点は見当たらない。

しかし、それが逆に不気味だった。彼は間違いなく外来人。そして、現在幻想入りする方法は八雲紫による神隠ししかない。

 

「……アンタ、どうやって幻想入りしたか覚えてる?」

「幻想入り? ……あぁ、そういう事か。確かにそう呼ばれてたな。いや、あまり覚えてないよ」

「なにか、気持ち悪い空間に入ったりしなかった?」

「いんや、しなかったね」

 

またしても謎の幻想入り。

もうこれは異変なんじゃいかと思い、勘弁してよと呻き声をあげる。

それが聞こえたのか、彼はハハハを笑い声をあげた。

 

「大丈夫、異変なんかじゃないさ。気にしなくていいよ」

「……何か知ってるの?」

「さぁね。そんなことより、異変解決おめでとう。現場には行けなかったけど凄かったらしいじゃないか。さすがだね」

「……どうも」

「ただ」

 

彼は先ほどの少し茶化すような声色を止め真面目な口調でこう言った。

 

「この後にも、気を付けるようにね。まだ、終わってないかもしれないから」

「……は?」

「じゃあ、俺はもう行くよ。頑張ってな」

「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

 

そう呼びかけるものの、彼は凄まじいスピードで去っていった。

思わずため息がこぼれてしまう。

 

「……紫」

「あら、気付いてたの」

「当たり前でしょ。……で?」

 

紫が閉じていたスキマから出てくる。

そしてこちらもまた、ふざけたようなムードは全て消え去る。

 

「彼を招待した覚えはないわ。それに、スキマを通ったような跡もなかった」

「……どういう事よ」

「さぁ、結界は万全のはずだし、スキマも通ってない。ますます分からないわね」

「で? どうするつもりなの?」

「既に藍に彼を尾行させてる。私はこの宴会が終わったら結界の確認にいくわ。その時は、あなたも着いてきて」

「はいはい。じゃ、戻りましょうか」

「ええ、そうね」

 

こうして、二人は宴会会場へと戻っていった。

その時彼女達が目にしたものは、姉的存在が一人増え、膝枕をされているユウ。

紫と霊夢は、ただただ苦笑いを溢し見守ることしかできなかった。

 




はい。いかがでしたでしょうか。
謎の黒ローブさんここで登場です。さて、いったい何者なんでしょうかね。
そして謎の幻想入りが三連続、そして謎の言葉……
謎が増えていくばかりです。
次回はユウ君の方に戻ります。
では、また次回お会いしましょう。
ではでは。



………あっ、そういえば『東方少年呪』一周年だ(遅)。
読者の皆様、ありがとうございます!!

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