大宴会はまだまだ続きます。
今回はあの方が久しぶりに登場します。
そして、少し注意があります。
たぶん、きっと、恐らくキャラ崩壊が存在しています。
「いいぞ、もっとやれ」
という方は独り相撲をしてから本文へお進みください。
「ふーん、大変だったのね~」
「え、いや、僕はただ攫われただけですし……」
幽々子に異変の時の事を聞かれ答えているユウ。
今までより規模の大きい異変でありさらに黒幕は単独犯だと射命丸文が出版している『文々。新聞』に書かれている。しかし、この異変の現象である感染型鬱病のせいで大した情報量はなく、いつも通りのデタラメが存在するいつもの新聞になっていた。
しかし、そういうのは彼女たちに通じないようで射命丸が仕掛けたデタラメだけをスルーしている。しかし、大した情報量は無く、『単独犯』『大規模な鬱病』くらいしかわかっていない。そこで白玉楼組はユウに詳しいことを聞いていたのだ。
樽に直接ストローを入れて酒を飲みながら。
「あ、いやそうじゃなくて」
幽々子が酒を軽く飲みながら手を胸の前で振る。
ストローから口を話し、『大変』の意味を言う。
「弱っていたとはいえ、フラワーマスターさんと暗いトコで一緒だったんでしょ~? よく『気』に耐えられたわね~」
「フラワーマスター? 気?」
「フラワーマスターというのは風見幽香さんの二つ名みたいなものなんです。あと、気っていうのは妖力の事ですね」
「は、はぁ…えっと、それが何故『大変』なんでしょうか…?」
「その様子だと大丈夫だったみたいね~。フラワーマスターさん、嗜虐趣味があるから鬱憤晴らしに――ってことがあると思ったんだけど」
ここにきて幽香の嗜虐趣味をカミングアウトされたユウ。
しかし、ここはまだ幼い男子。首を少し曲げ、
「シギャクシュミ……?」
「教えてあげましょうか?」
「やめてください幽々子様」
教えようとした主人を速攻で止めにかかる妖夢。
嗜虐趣味という言葉をどんなものかを知らないユウは、あとで幽香さんに将棋をしながらどんなものかを教えてもらおうという、一番分かりやすくて最も危険なことを考えていた。
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「さて、そろそろ他のところに行く? ユウ」
「え?」
数分時が過ぎ、幽々子が突然こんなことを言った。
ユウと妖夢の頭の上に『?』が浮かぶ様子を見てクスリと笑うと
「だってユウは顔合わせのために散策してたんでしょ? 誰から話しかけようか悩んでずっとウロウロしてたから私がここに引きずり込んだわけだしね」
「あ、あはは……」
人見知りなユウが自ら話しかけるのは至難の業に等しい行為。しかも前回では乱入とはいえ少しひどい目にも会った。なので、ユウは人選に対して慎重なりすぎてしまい、なかなか話しかけることができなかったのだ。
今更それを自覚し空笑いするユウ。
「折角だし、妖夢も着いていってあげなさい」
「え……いいんですか?」
「えぇもちろん。たまには羽を伸ばしてらっしゃい」
そういってふんわり微笑む幽々子。
その様はまるで母親のようだった。
「ありがとうございます。行ってきます」
「い、行ってきます」
「は~い、いってらっしゃ~い」
こうしてユウと妖夢は幽々子のもとを離れ、挨拶巡りを開始した。
といっても、今回の宴会は大所帯のため、あまり歩く必要はなくすぐにたどり着いてしまうのだが。
そして誰かいないかなと二人が探していると、突然突風が来た。
「あややや!? 妖夢さんが幽々子さんの元を離れていらっしゃる!? さらになぜか犬人になってるユウさんと一緒!? 何があったんですかねえねえねえ」
「落ち着いてください文先輩。それとメモ帳と鉛筆をしまってください」
そう、風を操る幻想郷最速の天狗こと射命丸文である。
その背後にいるのは、ユウとは初めましての白い少女がいた。
「アナタはこの特ダネ臭漂うこの現象を見逃せというんですか!? いや見逃せない見逃さない見逃させない! さぁお二方今ここで全てを吐いてくだ――」
「落ち着きなさい」
「ぎゃふん!」
後ろにいた白い少女が大きくて硬そうで重そうなものを文の頭に振り下ろす。
文は一発KOし、地に伏しながらプルプルして頭を抱えていた。
この間何と10秒弱。出落ち感が溢れて止まらない文であった。
「あ、初めまして。私は白狼天狗の犬走椛と言います。一応、文先輩の後輩みたいな立ち位置です」
「あ、はい。初めマシテ……」
激動の十秒間を体験した直後のユウは心が少し離れかけていた。
妖夢は慣れているのか全く動じず、大丈夫ですかと文に話しかけていた。
「突然ですがユウさん」
「な、なんでしょうか椛さん」
「敬語やめていいですか? お互いに」
「へ?」
十秒間の処理を未だ絶賛進行中のユウだが、さらに意味不明の出来事がおこった。
敬語をやめていいかと聞かれ、別にいいんだけどこういう時ってどう返したらいいんだろういやそもそも何でなんだろうと高速思考を行うユウだったが、ついには
「え、えっと……だ、大丈夫デス」
「ふぅ、ありがとう。じゃあユウ、こっちに来てくれる?」
「ハイ」
ユウは考えるのを止めた。
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「(我ながらバカなこと言っちゃったなぁ……)」
ユウを膝に乗せ座る椛はそんなことを考えた。
ユウの事は文から聞いたことのある程度で「可愛い子なんですよー」とか「弄りがいがあるんですよねー」とか「今度会ったら何しましょうかー」とかそんなことしか聞いていない。
しかしそんな話を聞いていると、会ってみたいと思うようになってきていた。
どんな人間なんだろうと思い、今回の宴会で会えるかなと若干そわそわしていた椛だったが突然困った先輩こと文が
「む! スクープの匂い! 椛、行きますよ!」
「え!? あぁもう待ってくださいというか宴会中は控えてください!」
と追いかけると、そこには白玉楼の庭師とユウがいた。
そう、小悪魔特製高性能コスプレグッズにより一時的に犬人化しているユウがいたのだ。
ピコピコ動くその犬耳に迂闊にもこんなことを思ってしまった。
「(………弟?)」
そして、いやいや私は狼でしょと即座に自分突っ込みを入れる椛。
しかし、何故かはわからないが物凄い庇護欲に襲われた。
人間の男の子と聞いていたのでなんで犬耳が付いてるんだろうあと尻尾も、とは思ったがそんなこたぁどうでもいいと即座に思考を切り替え絶賛暴走中の文を大剣で止める。
「あ、初めまして。私は白狼天狗の犬走椛と言います。一応、文先輩の後輩みたいな立ち位置です」
「あ、はい。初めマシテ……」
相当困惑してるんだろうなぁ、と目の前で分かりやすく困惑しているユウを見てそう思う椛。
その様は、椛の庇護欲を駆り立てることになった。
「(もう、いいか)」
と、そうそうに諦めてしまったこっちもこっちで暴走している椛は、ならばとこんなことを口走った。
「敬語やめていいですか? お互いに」
「へ? え、えっと……だ、大丈夫デス」
よっしゃぁッ、と心の中でガッツポーズをする暴走椛。
そして続けざまに次の行動を開始。
この時点で椛にこんな欲が出てきていた。
「(モフモフしたい)」
もはや手遅れな椛は、こっち来てと言葉と共に手招きをする。
そして膝の上に乗せて座り、現在に至る。
ユウの頭を撫でながら悦に浸る椛と、なにやら顔をほんのり染めているユウ。
その光景はまるで姉弟のように見えた。
「(ユウさんまた撫でられて……あぁ、他の人も見てる。この後大変になるだろうなぁ)」
妖夢はプルプル震える文の頭を撫でながらそんなことを思っていた。
どうやら、ユウの挨拶巡りは苦労が絶えないことになりそうである。
はい、いかがでしたでしょうか。
そう、キャラ崩壊の可能性があるのは椛さんこともみちゃんです。
普段は敬語しか使わないキャラだと僕は思っています。
犬走椛、暴走椛……うまいこと言ったつもりです、はい。
あ、因みにもみちゃんは東方キャラの中で僕が一番好きなキャラです。かわいい(確信)。
では、また次回お会いしましょう。
ではでは。