大宴会編第三弾となりました。
果たして、ユウはまだ存命なのでしょうか?
今回は百玉楼組のお二人です!
「いいぞ、もっとやれ」
という方は心霊スポットを訪れてから本文へお進みください。
小悪魔のハイスぺックコスプレグッズによって犬人化してしまったユウ。
犬耳と尻尾にも神経が通っており、触れると極度に反応してしまうというユウにとって恐らく最悪に近い罰ゲームになってしまった。
そしてまぁ、予想通りあらゆる人にモフられ、悶絶する羽目になってしまい……
取ろうと思っても神経が通っているためか痛覚までそのままダイレクトに感じてしまい取れずにいる。小悪魔に魔法を切り取ってと懇願するもやはり断られてしまった。
そして今、
「気持ち良いわね~この感触」
「……! ……ッ!」
ユウは風前の灯火未満の命の炎が今まさに消えようとしていた。
ユウの脳裏に走馬灯のようにあらゆる思い出が一瞬で蘇る。
初めて幻想郷に来た事、神社での幸せな日々、妖怪に襲われた怖い思い出、紅魔館の少し怖かったけど楽しい人たち、友達になった妖精や妖怪と遊んだ日々、記憶に新しい異変。
「(たのし……かったなぁ………)」
炎が物凄い勢いで小さくなる中、ユウはそんなことを思ってしまう。
しかし、炎が凝縮しきるその直前、助け船が出されることとなる
「あの、幽々子様……そろそろお止めになった方が……」
「あら? 何でかしら?」
「ユウ様がそろそろ……」
「………あら」
ユウは膝枕された状態でビクビクと震えていた。顔は真っ赤に染まり、何とか意識は保てているものの触覚以外の感覚が麻痺している。
恐らくは今何かを話しかけたとしても、ユウの耳はそれを聞き取ってはくれないだろう。
一時間前、誰かが思ったことと全く同じ感想を二人は心の中で呟いた。
「(あぁ、これはダメなやつだわ)」
「(どう見てもダメなやつですね)」
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「うぅ~~~~~~……」
「ごめんなさいね、ユウ。謝るから許してちょうだい?」
「も、申し訳ありませんでした……」
数分後、ユウが徐々に復活。
今はユウ、幽々子、妖夢の三人で輪を作って座布団の上に正座で座っている。
もうすでにあの時のヨクワカラナイ感覚は消え去ったのだが、次は羞恥心がフツフツと沸き上がり結局顔を真っ赤に染めたまんまだった。
「悪気はなかったのよ。許してくれないかしら?」
「……」
数秒の間の後、ユウはコクリと頷いた。
それを見た妖夢は安堵した表情を浮かばせる。主人の命令(?)だったからとはいえ、初めましてであんなことをしてしまい、嫌われると思っていたらしい。
「ありがとう、ユウ。ところでなんだけど……」
そういって幽々子は掌を上に広げる。
そこには赤と黒の斑点が美しいテントウムシがいた。
「あっ、アク!」
「へぇ、アクっていうのねこの子。あなたの髪から出てきて少しびっくりしたわよ?」
ユウは幽々子の傍に行き、アクを受け取る。
するとアクは嬉しそうに掌を歩いて、そして羽を広げてユウの髪の中へと潜っていった。
「仲良いのね」
「はい、一緒に将棋を打ったりとかしてる友達なんです」
「(テントウムシが……将棋?)」
「そう、で? ユウは何回勝ったのかしら?全勝?」
「い、いえ……全勝どころか、全敗というか…」
「(テントウムシ相手に全敗ッ!?)」
「あらあら、ダメじゃない。今度教えてあげましょうか?」
「え、いいんですか?」
「ええ、アクがいいのならね」
「ホントですか!? ……あ、アクもいいみたいです。というかちょっといつもより右側がムズムズするような……って痛い!?」
「(それ以前にテントウムシと会話!!??)」
「どうしたの妖夢、驚いたような顔しちゃって」
「…ヘッ!? イ、イヤ!? 何でもナイデスヨ!!??」
振り返ってみると、なるほど確かにおかしい会話である。
白玉楼の真面目庭師にはまだ早かったのだろう、頭が混乱し変な返事をしてしまっていた。
「えっと…どうしたんですか……?」
ユウが心配そうに妖夢に聞く。
その心配げな顔に妖夢は正直に質問することにした。
「えっと………アク…さん? ってどんな虫なんですか?」
「テントウムシだよ?」
「いえそうではなく……テントウムシって会話出来たり将棋打てたりしましたっけ……?」
「妖夢、虫も日々進化するものなのよ?」
「えっ!?」
「このくらい、テントウムシにとっちゃ軽いものなのよ?」
「えぇッ!?」
幽々子の嘘八百に驚く妖夢。
じつは、アクは元々ただのテントウムシではなかった。幻想郷に住む力のある者達と同じ、『能力』を持っているのだ。それは『言語を理解する程度の能力』。その内容は字のごとく、書かれた文字や話された言葉の意味を理解できる。だからユウの言葉に反応できるし、一度知った物事は忘れることはあまりない。例えば、どこかの寺で偶然見た将棋の対戦のルールのまとめ本を読めばアクも将棋で遊べるのだ。それ以前に、アク自身の潜在能力が凄まじいのだろうが、それゆえについた能力なのかもしれない。
そのことをリグルから聞いていたユウはそのことを妖夢に話すと、妖夢は納得した様子だったが主人のはずの幽々子を恨みがましい目で睨みつけていた。
からかわれたのが恥ずかしかったようだ。少し顔が赤い。
それを幽々子はおほほと華麗に受け流していた。
「あら、もうお酒がない」
「えっ」
唐突に、幽々子がつぶやく。
その手には確かに空になった一升瓶が掲げられていた。
それだけではない。幽々子の近くのちゃぶ台には空の一升瓶が大量に、無造作に置かれてあった。
実はこれらは数分前はほぼ全て満タン状態だったのだ。
全部で36リットルはあっただろうお酒をものの数分で空にしてしまった幽々子。
ユウはその信じがたい光景に呆然としていた。
「ちょっとお酒取ってくるわね~。……樽二つくらい」
「!?」
ユウは戦慄する。
恐らく幽々子が向かったのは博麗神社の酒蔵。そこには大量の酒が保管されており、ユウも掃除するときにそこに入ったことがある。
「(確かあの樽って僕の何倍も大きかったような…?)」
それを二つ。
ユウは恐る恐る妖夢に聞く。
「あの……妖夢さん?」
「はい、なんですか?」
「幽々子さんって……その、しゅ、酒豪? だったりします……?」
思い出すのはいつぞやのパーティー。
地底の酒豪こと星熊勇儀に高アルコールの酒を飲まされたとき、ユウは思ったのだ。
酒をたくさん飲む人は、恐ろしいと。
「あー……酒、というより幽々子様は大食いですね」
「大食い?」
「はい。幽々子様の食事量は恐らくユウ様の夜ご飯の10倍かと」
「10倍!?」
「あ、これは朝食です」
「朝食ッ!!??」
驚きを隠すことなど不可能、妖夢に詰め寄ってしまうユウ。
そしてその視界の隅に樽二つ分を片手で運ぶ幽々子が映る。
「ただいま~」
「おかえりなさい」
「……」
ユウは思う。
酒豪より大食いの方が恐ろしいかもしれない、と。
いかがでしたでしょうか。
出来る限り幽々子のイメージを皆さん寄りにしてみました。
大丈夫……かな……?
妖夢が硬すぎたかな?と思ったりもしているのですが僕のイメージは『常に敬語な真面目庭師兼剣士(焦ると崩れる)』っていう感じなので、このままいきます。
さて、お次は誰ですかね?
では、また次回。