東方少年呪   作:CAKE

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どうも、CAKEです。
サブタイトルが何やらおかしいですね。どういうことなんでしょう。
それと、ホントに戦闘描写が難しいので今回も文字数少なくなっちゃいそうです。
「いいぞ、もっとやれ」
という方は太極拳をしてから本文へお進みください。


EP,23 【分岐点】

「はぁぁぁぁぁぁッッ!」

「があアァァァァッッ!」

 

二人は同時にスペルを発動させた。

しかし、宣言はしていない。

理由は簡単。この戦いはもはや『弾幕ごっこ』などではないから。

シャリ―は以前見かけた死にかけの妖怪から『うつす程度の能力』を使い、その妖怪が持っていた『封じる程度の能力』を自分に『写し』ていたのだ。

そしてそれを表に出した瞬間から力のコントロールがうまくいかないようになってしまった。

シャリ―はもとから制御するつもりはなかったのだが。

霊夢からは大量の赤弾と札が出現し、シャリ―からは蒼く輝く弾を数発撃った。

 

「(あの弾幕は……?)」

 

霊夢は様子見代わりに再び『霊符「夢想封印」』を放つが、シャリ―が初めて見るタイプの弾幕を放ったことで霊夢の警戒にその弾幕も含まれる。

赤弾と札は追尾するような動きでシャリ―に迫り、シャリ―を追い詰めていく。

そこで、シャリ―の口角が吊り上がった。

 

   「(放符『サファイアボム』)」

 

シャリ―が放った弾は、突然より一層輝き、そして、破裂した。

一つの弾を中心に大量の蒼玉が放出された。

“放符『サファイアボム』”。

大量の弾幕を一つの場所に集め、そしてそれを薄い膜状の妖力で包み込んだ、一つの弾と見立て、それを任意のタイミングで妖力の供給をやめ一気に放出する弾幕。

そのシャリ―独自の技は、一か所に無理やり大量の弾幕を詰み込んでいたため、放出した時の弾の速度は段違い。それこそ、爆風のように一瞬にして過ぎ去ってしまうほどだ。

普通の人間程度の目では、何が起こったのかでさえ把握しづらいだろう。

赤い弾と蒼い弾がぶつかり、相殺する。

そして、霊夢に高速で移動する弾が、シャリ―に追尾式の札が迫る。

 

「ッ!」

 

霊夢は断じて普通などではない。

高速の弾を見切り、的確に回避していくばかりか、流れに逆らってジリジリとシャリ―の方へと向かう。

シャリーも追尾してくる札を身のこなしで躱し、札同士をぶつけることで自爆させつつ霊夢に追加弾を送っていた。

霊夢はその追加弾からシャリ―の場所を割り出し的確に札を投げつける。

そして数十秒後、お互いのスペルは効力を切らした。スペルブレイク。

 

「!?」

 

そこで、霊夢は目を見開いた。

シャリ―の姿が見当たらないのだ。シャリ―が放つ追加弾から場所を割り出していた霊夢には、あたかもシャリ―が姿を消したように思えてしまう。

霊夢は空中を漂いながら前後左右を見るが、どこにも姿が見当たらない。

 

「おらぁぁぁアアアアアアアア!」

 

シャリ―の声が響く。

そして霊夢は慌てて体を横にずらした。

そして、さっきまで霊夢のいた場所を蒼い物体が通り抜けた。

と、同時に霊夢がその物体を打ち抜く。

 

「ふんッ!」

「くッ!?」

 

それはシャリ―だった。

シャリ―は霊夢からの一撃を何とか回避。慌てて距離をとる。

 

「クッソォ……いい勘してんじゃねぇか。ま、そりゃそうかァ……」

「今のあんたと同じ戦法をとる奴が私の友達にいるのよ。その、弾幕の陰に隠れて姿を消して不意を突くそのやり方をね」

「ケッそうかい。そりゃ運が悪かったなぁ」

「ええ、運が悪かったわね」

 

そう言い、シャリ―は手で目を覆った。

そして戦いを続けようと霊夢が身構えると、

 

「ああ、そうじゃないんだ」

 

シャリ―が手を顔から放し、顔を上げる。

そして、霊夢の顔――目を真っ直ぐに見る。

にやり、と嗤うシャリ―。

 

「運が悪いのは、俺じゃないんだよね」

 

いつの間にか口調が戻っているそのシャリ―の目も、ただの蒼白の目に戻っていた。

そして、そのシャリ―が右腕を振り上げると同時に霊夢も後ろを向いた。

そこには、左腕を大きく振りかぶるシャリ―が目の前にいたのだ。

 

 

―――「鏡のように自分の体を大気に『写し』たのさ」

 

 

霊夢は避けられないと悟り、咄嗟に手をガードするように交差させる。

しかし、相手は本気の妖怪。人間程度ではあっという間にミンチだろう。

そして、シャリ―の左腕は霊夢に振り落とされる。

 

「ダメッ!」

「「ッ!?」」

 

触れ落とされると同時に、霊夢は何者かに抱きしめられる。

そしてシャリ―が振り落としたその腕は、霊夢の体を通り、降り抜かれる。

しかし、霊夢に外傷が付くことは無かった。

シャリ―の腕が、霊夢の体を『すり抜けた』のだ。

 

「り、理沙!?」

 

霊夢に抱き着いた人物、それは理沙だった。

それと同時に霊夢は今の自分の体を見て、納得する。

 

「(体が透けてる……そういうこと)」

 

神橋裡沙、彼女は『透ける程度の能力』を持つ少女なのだ。

その能力を使えば物体をすり抜けることが可能になる。また、触れているものにも能力を使うことは咲夜と同じように可能である。しかし、その副作用として、自分の体も透けて見えてしまうのだ。

 

「なッ!? ――ッ!」

 

シャリ―が驚愕するが、その隙を狙ったように極太レーザーが放たれる。

ぎりぎり回避したシャリ―はその放った人物に目を向けた。そこには

 

「貴方が元凶ね?」

「あ、アハハ……」

 

シャリ―が言う『主力群』の一人であり幻想郷最強の妖怪の一角、風見幽香だった。

シャリ―は思わず苦笑いしてしまう。

 

「私の家がこんなんになっちゃって……ねぇ、何か知らない?」

「え、えっと…俺がちょっと改造を……」

「そう、そうなの……あら? よく見れば貴方、私の体で好き勝手やってくれた奴じゃない」

「あはは……」

 

シャリーがダラダラと汗を流し始める。

活力剤を大量摂取した彼さえを凌ぐ妖力量を前に、シャリ―は少し空中で後ずさった。

 

「風見さん? なんでうつ病にかかってないんですかねぇ…?」

「ああ、地上に出してもらったとき、活力効果のある花の蜜を飲んだのよ。そうするとたちまち元気になったわ」

「そうですか……」

 

シャリーと幽香が話し合っている(?)時、霊夢は理沙と話していた。

 

「ねぇ、ユウは?」

「……ゆう君には危険だから離れたところで隠れてもらってます」

「……そう」

 

霊夢は安堵する。

ユウが無事だった。それだけで気持ちが少し休まった。

 

「さて、霊夢?」

 

いつの間にか、霊夢の横に来ていた幽香が、シャリ―を睨んだまま呼びかける。

 

「……なにかしら」

「彼をどうすればいいのかしら?」

「決まってるじゃない。封印よ。アイツはもう幻想郷のルールを破った。アイツに宴会に参加する権利なんてないわ」

「そう、なら………思う存分、『ヤッちゃってもいい』のよね?」

「………ドウゾ」

 

霊夢の機械じみた声とともに、即座に幽香が極太レーザーをぶっ放した。

 

 

   「元祖『マスタースパーク』」

 

 

 

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レーザーと弾幕が飛び交う、そんな地獄絵図のようになっている空の隅で、ユウは物陰に隠れていた。

正確には先ほどまでいた穴もとい旧監禁場所だ。

幽香から蜜をもらい、すっかり元気になったアクと留守番している。

 

「アク……裡沙さんの事、どう思う?」

 

アクは何も答えない。

体育座りしているユウの膝の上でただじっとしているだけだ。

理沙さんに会ったのはさっきが初めてのはずだ。

なのに、なぜだろうか、とても懐かしい気持ちになった。涙が出そうになるくらいに。

ユウはただ、この場所でじっとしているしかなかった。皆を信じて。




はい、いかがでしたでしょうか。
なんと2915文字!戦闘描写でこれは嬉しいです。
因みに理沙ちゃんは飛べます。飛べない少女はただの少女なんです!
え?飛べるのが非常識だって?
やだなぁ、幻想郷ではアレコレにとらわれちゃダメだって巫女さん言ってたじゃないですか!え?言ってない?あ、そうッスカ。
そろそろ、読者様の怒りを買う前にふざけるのはやめときます。まだおそくないよね?
次回が恐らく戦闘最終回です。がんばれ、僕。
では、また次回。

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