東方少年呪   作:CAKE

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はい、どうも。CAKEです。
ずいぶん前のやらかしですが、ネタバレみたいになってしまい誠に申し訳ありませんでした。それで、大幅にEP.19を改編し、再投稿予約させていただきました。
さて、今回はこの異変の最終回から多分三話前くらいになります。
やっぱり章ごとに分けた方がいいですかねぇ。少し考えています。
「いいぞ、もっとやれ」
という方は、逆立ちをしたまま本編へお進みください。


EP,19 【少女と全貌】

「………」

 

私は先ほど森から採ってきた果実を黙々と食べていた。

このボロ小屋のカビ臭い匂いにも慣れ、今ではここに定住している。

私―――神橋裡沙は人間と妖怪、その両方に追われ、目立つことのない森の中で過ごしていた。

全ては、この能力のせい。これのせいでこんなことになってしまった。

あの子は今、どうしているのだろうか。

もう一度、あの子と過ごせるのだろうか。

それが、私の唯一の生きる理由だった。

 

しばらくして私は、小屋を出て果実を採りに行った。

すると、木の根元に何かを見つけた。

私はそれに近づき観察する。

空間に穴が開いている。大体掌を広げた程度の大きさだ。

その奥は禍々しい紫色をしていて、どこに繋がっているのか、いやそもそもどこかに繋がっているのかは分からなかった。

前かがみになって、恐る恐るその穴に片手を入れてみる。

 

「……ッ!?」

 

その瞬間、ものすごい引力で穴へと引きずり込まれる。

突然のことだったので、その時の姿勢も相まって抵抗すらできずに引き込まれた。

掌ほどだったはずの穴に私は引きずり込まれ、そしてそのままどこかへと落ちていった。

 

 

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落ちてくる天井。このままでは、1秒としないうちにペッシャンコだろう。

霊夢は素早く構え、落ちてくる天井に拳を突き上げた。

 

「破ッ!!」

 

すると霊夢の真上にあった部分の天井が壊れ、穴が出来上がる。

しかし、それは霊夢の真上の部分のみ。

このままでは少女は天井によって潰されてしまう。

妖怪だったならば平気なのだろうが、霊力を感じるということは間違いなく人間だろう。

そういった力は種族によって異なっており、またそれは例外なく決まっている。

人間ならば霊力、妖怪ならば妖力、神ならば神力。

霊夢は少女の方にも向かおうとするが、間に合わない。

そして、天井は地面へとたたきつけられ、ドォォオン、という音とともに埃や木片をまき散らした。

 

「くッ」

 

霊夢はとっさに閉じた目を開け、少女の救出に向かおうとした。

が、その光景に踏み出そうとしていた足を止める。

 

「………うそ」

 

少女は立っていた。

目は固く閉じ、頭を抱えた状態で怪我一つ無く立っていたのだ。

しかし、霊夢が驚いたのはそこでは無い。

少女の体は透けていた。その体から向こうの景色がぼんやり見える。

 

「(……幽霊?)」

 

そんなことを思っていると、少女は目を開けて周りを確認する。

すると、少女の体はだんだん鮮明に見えるようになって、ついには普通の少女と変わりなくなってしまった。

そして霊夢は幽霊だという考えを改めた。

この少女は外来人だと。服もそうだが、能力持ちの人間は20歳といかないうちに幻想入りするのが大半だ。恐らく彼女もそうなのだろう。

霊夢は話をしようと、少女に歩み寄る。

しかし、少女との差は縮まることはなかった。

少女が後ずさりしたからだ。怯え切った顔で。

 

「(この感覚……)」

 

前にもあったと霊夢は思う。ユウのときもこうだった、と。

今の少女が霊夢に向ける目は、あの時のユウと同じ、逃げなければという目だった。

しかし、少女は逃げ出すようなことはせず、一定の位置に立っていた。

霊夢は安堵する。もし、今全力で縦横無尽に走り回られてはまずい。

霊夢は距離を保ったまま、少女に話しかけた。

 

「私は貴女の敵じゃない。安心して」

「………」

「私は博麗霊夢。博麗神社ってところの巫女よ。」

「……………神橋、裡沙」

 

小さい声で少女、裡沙は呟いた。

霊夢はしっかりと聞き取り、話を続ける。

 

「ん、裡沙ね。裡沙、ここにいると危ないわ。ひとまず、ここから離れて隠れて――ッ!?」

 

突然、霊夢の後ろに何かの気配が現れる。

とっさに後ろを向き、持っていたお祓い棒で防御する。

 

ガキィン!

 

そこには、拳で霊夢のお祓い棒を受けとめる、人型妖怪の姿だった。

 

「チッ」

 

妖怪は舌打ちをして、後ろへ飛び下がる。

霊夢はその妖怪と対峙した。

 

「不意を突いたと思ったんだけどなぁ…やっぱこの程度じゃ主力群だめか」

「あんた……誰よ」

 

そこにいたのは男性の妖怪。

青色より少し濃い藍色の着物を着ていて、足には下駄を履いている。

顔はきれいに整い、所謂イケメンという奴だ。

パッと見ではただの人間にしか見えないが、溢れんばかりの妖力が彼が人間ではないことを物語っている。

 

「俺の名前はシャリ―。まぁ、自分で付けたもんだけどな。一応、この異変の黒幕さ」

 

微笑を浮かべながら、黒幕、シャリ―は言う。

 

「俺には『うつす程度の能力』っていうのがあってね。一見貧相そうな名前だけどこれが便利でねぇ。今回の異変で言うなら、鬱病という病気を人から人へと『うつる』、感染病にしたんだ。そうしたらあっという間に広がって人里はあの通り。まさかここまでうまくいくとはねぇ」

「じゃあなんであんたは無事なのよ。その感染症は妖怪にも例外なく罹っていた。あんたも例外じゃないでしょう?」

「病気っていうのは、薬があれば治っちまうのさ。勿論、そんなことされたら俺の計画がパーになっちまう。それは困るんでね。永遠亭まで行って活力剤を飲み干したんだ。そのおかげでこの通り。やる気と元気に満ち溢れてるよ。おまけに妖力もな」

 

そういうことか、霊夢は歯噛みする。

先ほどの突然背後に現れる奇襲攻撃。あれもその能力のおかげだろう。

シャリ―からは大量の妖力がダダ漏れになっている。

あれほどの膨大な妖力なのに、幻想郷のバランサーと呼ばれる霊夢が気づかないわけがない。

恐らくは、自らの体を空間から空間へ『移す』ことで瞬間移動のようなことができたのだろう。

本人も言う通り、実に厄介そうな能力である。

 

「ユウはどこにやったの」

「さぁねぇ。風見幽香の体に自分の魂を『移し』て彼女に眠ってもらった後、博麗神社に行ったはいいけどユウ君しかいなくてねぇ。ちょっと粘ってみたけどダメだったし、だったらそっちから来てもらった方が早いから攫わせてもらったけど……はて、どこにぶち込んだっけか」

「そう……なら、力ずくで吐いてもらうわよ! ついでにこの異変も止める!」

「お、いいねぇ。そうこなくちゃ」

 

そうして巫女と妖怪は、ぶつかった。

 

 

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「ユウはどこにやったの」

「(……ゆう君!?)」

 

裡沙は霊夢の言葉に動揺した。

それもそのはず。なぜなら「ゆう」という人物は彼女にとって大きな存在だったからだ。

 

不気味な穴を抜けた先は見知らぬ部屋だった。

見たことのないほどに清潔で、花がたくさん並んでいた。

そして少女は何となしにだが、確信した。違う世界に来た、と。

そして周りの散策から始めようとしたところ、霊夢が現れたのである。

 

そして裡沙は思った。

 

「(ゆう君も、ここにいる?)」

 

もしそうなら、ゆうは今誘拐されており、大変な目にあっている。

そして理沙は居ても立ってもいられなくなり、静かにその場を移動した。

彼女は自らの能力を使い、タイミングを見計らって、近くの瓦礫の裏に身をひそめたのだった。




はい、いかがでしょうか。
オリキャラの名前ですが神橋裡沙(カンバシリサ)です。
大幅に改変したのでね。少しは読みやすくなっているかと思います。
ふと思ったのですが、本編の進み方、ちょっと駆け足すぎますかねぇ。
うーん、どうなんだろうか。
では、また次回。

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