東方少年呪   作:CAKE

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はい、どうも。CAKEです。
シリアスって書くの難しいよね。ね。
当分はシリアスを書きません。難しいもん!


EP,1 【少年と名前】

「うわあああああああああああああああああああああッッッ!!」

「え、ちょ、待ちなさい!」

 

少年は、突然霊夢から逃れようと全力で離れようとした。

しかし、それは成されなかった。

少年の足は既に限界を迎えていた。走り出そうと足に力を込めた瞬間、何かが少年の中で切れたのだ。

それと同時に少年は和室の畳に倒れ伏す。

どうやら、アキレス腱が切れてしまったようだ。

 

「う……あ…………………」

 

少年もこのことを察したのだろう。自分の足を目をやり、絶望したような表情を浮かべる。

それでも少年は、霊夢から逃れようと必死にもがいていた。

 

「……………」

 

霊夢は目の前の少年を見て、眉をひそめた。

少年の足は切り傷やすり傷だらけ。血もたくさんこびり付いていた。

誰がどう見たって動ける状態ではないのだ。

それなのに少年は今も逃げようとしている。

明らかに正常ではない。異常。精神がやられてしまっている。

少年はただただ『逃げる』という強迫観念に囚われていたのだ。

 

「(相当辛いことがあったようね……)」

 

さらに、少年は見たところ人間。

上空から降って来たということはほぼ間違いなく『外来人』だということは予測がつく。

 

「(ということは妖怪の類じゃないわね……まさか、人間が?)」

 

霊夢は心の中で舌打ちをする。

『外の世界』には妖怪や幽霊はいない。となると、人間の仕業としか考えられない。

少年はまだまだ幼かった。

白いTシャツに黒のパーカー。そしてベージュの半ズボン。

髪は耳を隠すほど長く、前髪も目に着きそうなほど長かった。

恐らく年齢は11歳ほど。四肢も細く、ひ弱そうな体型だった。

こんな少年を精神が壊れるほど追い回したのは何故なのか、さっぱり理解ができなかった。

 

「(なんでこんなことするのかしらね………理解に苦しむわ。ともかく、暴れられても困るし、一旦落ち着かせなきゃ。)」

 

そして霊夢は少年に近づいた。

 

「やめて………来ないで…………」

 

少年も霊夢に気付き、逃げようとする。

しかし、アキレス腱の切れた足で逃げることなどできない。

少年は仰向けになり、震えた目で霊夢を見る。

次の瞬間、霊夢は少年を抱きすくめていた。

 

「………!」

 

少年は驚きの表情を見せる。

そして、霊夢は優しい口調で少年にこう言った。

 

「大丈夫よ。何があったかは知らないけど、私はアンタを襲ったりしないし、虐めもしないから。安心して頂戴」

 

少年の表情が歪む。

 

「う、うわあああああああああああああああああああああん!」

「え、ちょ……」

 

少年は泣き出し、霊夢に飛びつく。

霊夢は突然の少年の行動に思わず声を出してしまう。

その後しばらく、少年の鳴き声が止まることは無かった。

 

 

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「………ふぅ」

 

少年はしばらく泣き続けた後、力尽きたように眠ってしまった。

今は、同じベットに寝かせている。

 

「霊夢、来たわよ」

「ん、あぁ。こっちよ、永林」

 

実は霊夢は少年を保護した後、幻想郷唯一の医者、八意永林を呼んでいた。

そして霊夢は永林を少年のもとへ案内する。

 

「ふむ………」

「どう?永林。見るからにやばそうだけど」

「……そうね。まず、手首や肋骨といったあらゆる骨が折れてるわね。……あら、頭蓋骨も少し欠けてる」

「はぁ⁉︎ 頭蓋骨⁉︎ 一体この子何から逃げてたのよ……」

「逃げてたって、どういうこと?」

「あぁ、それはね……」

 

そして霊夢は今までの事や自分の推理を話した。

 

「成る程ね……どうりで足がここまで壊れてるのね」

「えぇ、どんだけ走ったらこうなるのよ………」

「うーん、細かいところまでは分からないけど、山道を30km全力疾走でもしたらこうなるかもしれないわね」

「30⁉︎」

 

普段飛んでいる霊夢は、その距離が絶望的な長さに思えた。

飛んで行くならまだしも、全力疾走となると、遥かにこの少年の限界を超えている。

 

「まぁ、結論から言っちゃえば、完治させることは可能よ。ただ、1週間くらいかかるけどね」

「1週間ね……」

 

こんな酷い怪我でも1週間あれば完治できると言う永林。

流石、月の頭脳。そう言おうと霊夢が口を開いた瞬間。

 

「ん…………」

 

少年が目を覚ました。

少年の目が開き、ゆっくりと霊夢の部屋を観察する。

次に少年の目は2人の女性を捉えた。

 

「あ…………」

 

霊夢はまた逃げるかもしれないと思い、身構える。

しかし、少年は逃げようとせず、ゆっくりと体を起こそうとした。

しかし、それはできなかった

 

「痛っ……」

 

全身のあらゆる骨が骨折状態。その痛みで起き上がれなかったのだ。

少年は慌てて体を布団に戻す。

 

「ここ………どこ……?」

「………私の家よ。アナタ、あそこでぶっ倒れていたのよ」

「(どうやら精神は正常に戻ったようね。後は体の治療だけ……手間が省けたわ)」

 

少年はしっかりと自我を持っていた。

つい先ほどまでの乱心さは見る影もなく、落ち着いて周りを見ていた。

 

「あなたは……?」

「博麗霊夢よ。霊夢でいいわ」

「私は八意永林。永林って呼んで頂戴」

「霊夢………永林………?」

「ええそうよ。突然だけど、あなたの名前を教えてくれない?」

「名前……? 分からない。多分無かった。ずっと『化け物』って言われてたから……」

「「………」」

 

少年には名前が無かった。しかし、霊夢達が気になっていたのはそこではない。

『ずっと化け物って言われてた』

この言葉が2人を固まらせていた。

すると、突然霊夢が口を開いた。

 

「……じゃあ、今ここで付けてもいいかしら?ずっと『アンタ』って言うのもアレだし……」

「………うん、いいよ」

「ん。じゃあ、何がいいかしらね…………『ユウ』っていうのはどうかしら」

「…………ユウ……」

 

少年は顔を俯かせ、自分に与えられた名前を復唱していた。

永林はというと、手を顎に置いて何か考え事をしていた。

 

「えっと………嫌だった?」

「…………ううん。ありがとう、霊夢!」

「え?ああ、どういたしまして……」

 

少年は嬉しそうに笑った。

初めて見せる少年の笑顔に霊夢は少し驚いてしまう。

 

「(あの時は恐怖で理性なんてものは無かったのに………凄いわね。もう立ち直ったみたい)」

 

でも、まあいいか。霊夢は小さく笑い、少年を撫でた。

 

「それじゃあ、ユウ? 聞きたいことがあるから、ちょっと色々質問してもいいかしら?」

「うん。わかった」

 

そして少年、『ユウ』は永林の問診に応じるのだった。




はい。どうだったでしょうか。
ここからユウ君の無双が始まるんですね……!(大嘘)
裏話なんですが、ユウっていうのは、YOUっていうのから取りました。非常にどうでもいいですね。
ではまた次回!あ、サブタイトルは決まってません。

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