東方少年呪   作:CAKE

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はい、どうも。CAKEです。
三週間もお待たせしてしまいました。ごめんなさい。
「いいぞ、もっとや……いやフザケンナ」
という方、申し訳ありませんでした(ローリング土下座)。
それでは、本文へどうぞ。


EP,16 【人里と鬱病】

「〜♪ 〜♪」

 

幻想郷は今日も平和だ。

空は雲ひとつ見つからない晴天で、ぽかぽかとした日差しが降り注いでいた。

その日差しの下、博麗神社ではユウが上機嫌で境内の掃除をしていた。

すっかりユウの仕事になった境内の掃除は、今ではユウの楽しみの1つでもあった。

この掃除している時間。なぜかは分からないのだが、とても懐かしいような気持ちになるのだ。

オリジナルのリズム、音程で鼻歌を奏でながら掃除をしていたユウ。

すると、鳥居の向こう側から一人の女性が来た。

 

「こんにちは、ユウ」

「こ、こんにちは! え、えっと………慧音さん?」

 

ユウが不安げに慧音の名前をよび、合ってるよ、と慧音は優しく笑った。

 

「霊夢はいるかい?」

「うん! ちょっと待ってて下さいね!」

 

そしてユウは博麗神社本殿に走って行った。箒を放り投げて。

それを見て慧音は、やれやれと箒を拾う。

しばらくして、ユウが霊夢を連れて来た。

霊夢は箒を持った慧音を見ると何かを察したのか、ジロリとユウを見る。

それを受けてユウは目を逸らし少し霊夢から離れる。

そして霊夢はため息をつき、

 

「ていっ」

「痛ッ!」

 

ユウに手刀を降ろした。こうかはばつぐんだ!

ユウは泣き目で頭を押さえる。

 

「や、やぁ霊夢。容赦ないな」

「まあね。で、何の用………なんか疲れてる?」

 

霊夢は慧音を改めて見てある事に気づく。

慧音から生気をあまり感じないのだ。

 

「ああ……鬱病でな」

「鬱……あんたがねぇ」

 

慧音は人里一の真面目人だった。

人里の警備や循環、更には子供達に寺子屋というところで教育も行っている。

これらの事を一人で行うのはかなりの重労。しかしそれを彼女は毎日一人でやっている。

 

「そうなのだ……最近やる気が無いというか、だるい感じがしててな」

「珍しいこともあるものね。それで、要件って?」

「私が元に戻るまで人里の警備をして欲しい。頼めるか?」

「んー。まぁ、いいわよ」

「すまない。助かる…」

 

慧音の鬱病はそれなりに深いようで、慧音は相当衰弱していた。

目の下にはクマが出来ており、こう言ってはあれだがいつもよりも老けて見えてしまう。

慧音は要件を話して、依頼料を奉納。次には帰って行ってしまった。

 

「慧音さん、大丈夫かな……」

「心配ないわよ。じゃあ、ちょっと行ってくるから留守番しててね」

「わかった」

 

そうしてユウは再び箒を手に掃除を再開。

霊夢は人里へ向けて飛んで行った。

 

 

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「………なによ、これ」

 

人里に着いた霊夢。そこには、異様な光景が広がっていた。

道端で座り込む人、緊急休暇を取る店々、そして何よりも、生物の気配がなかった。

確かに人はそこにいる。しかし、そこに生気や気配は存在していなかった。

この時、霊夢はあるものの存在を脳裏にかすめた。

 

「(………『異変』)」

 

誰もが衰弱し、ため息すらつかない程の深い鬱。

それが、人里全体に渡って伝染していた。

 

「ちょっと、大丈夫?」

 

霊夢は道端で座り込む男性に声をかけた。

すると男性は呟くような声で、おう、と言った。

 

「大丈夫じゃなさそうね。何があったの?」

「………わかんねぇ………ただ、なんかが起きてらぁ…………俺も含め……………みんなが腑抜けになった…………………」

 

耳をそばたてなければ聞き取れない声でそう言う。

そう、と霊夢は言うと、男性を家まで運び、人里の外へと出た。

そこには、霊夢も予想していなかった光景が広がっていた。

 

「………うそ」

 

野良妖怪までもが、衰弱し、倒れ込んでいたのだ。

それも一匹などではなく、会う妖怪の皆が同じように倒れていた。

 

「……どういうこと、新手の病気?」

 

そう呟き霊夢は永遠亭へと急いだのである。

 

 

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「ねぇ、アク、起きてる?」

 

ユウがそう呼びかけると、アクはユウの髪の毛から出てきて、肩に止まった。

 

「暇だから、何かして遊ばない? 僕は留守番しなきゃいけないし……」

「………」

 

アクは飛び立つと、こっちに来てと言わんばかりに本堂の中へと入って行った。

そしてアクはとある引き出しの、上から三番目の引き戸に止まる。

 

「ここに何かあるの?」

 

そしてユウはその引き戸を引き、中を見る。

するとそこには……

 

「将棋?」

 

将棋盤があった。

以前、霊夢もユウも暇を持て余した時、霊夢が「暇だしこれやらない?」とこの将棋盤を持ち出したことがある。

なのでユウはしっかりとルールを記憶している。

しかし問題というか、不安な点があった。

 

「アク、将棋分かるの?」

 

自分でも最初は理解できなかったルールを偉大なる相棒であるテントウムシ様が理解でしておるのかと、そういうことである。

するとアクは髪の毛に入り、ユウの頭の右側でモゾモゾ。YESだ。

 

「……わかった。やろう!」

「……」

 

するとアクは再び髪の毛から出てきて、将棋を打ち始めるのだった。

 

 

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「あら、霊夢じゃない。どうかしたの?」

 

場所は変わって永遠亭。

倒れていた妖怪はどうやら人里周辺のみだったようで、迷いの竹林と呼ばれる広大な竹林にはまだ元気が残る妖怪も大勢いた。

その迷いの竹林に永遠亭、現代でいう病院は建っていた。

 

「ええ、人里で新手の病気みたいなのが蔓延してるの。何か知らない?」

「知らないわ。なによそれ」

「鬱病みたいなものよ。なんでもやる気とかがないみたいで。生気が全くなかったわ」

 

そう言うと永琳は手を顎に置き、考える。

 

「今のじゃわからないけど、私も私で調査してみるわ」

「ええ、そうして。じゃ、私はもう帰るわね。ユウを待たせちゃいけないし、そろそろ夕飯作らないと」

 

ええ、と永琳が返事すると、霊夢は博麗神社目指して飛んで行った。

その直後、永琳は近くにあった壁に寄り掛かる。

 

「確かにこれは……不味いわね」

 

永琳の机には、空の活力剤が三本置かれていた。

 

 

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時は少し戻り、博麗神社。

 

「うう、また負けた……」

「………♪」

 

まだ霊夢は帰ってきておらず、ユウとアクは将棋を打ち続けていた。

現在、3連敗のユウ。アクが調子に乗り始める頃、本堂の扉が開いた。

 

「あら? 霊夢はいないの?」

「え?」

 

そこには、ピンク色の日傘を持った、緑色の髪を持つ女性がいた。

 

「それに、テントウムシと将棋をしてる貴方は誰かしら?」

 

その女性は笑ってそう問い、なぜかユウは冷や汗をかいたのだった。




文字数がほぼ3000字です。
さて、異変らしきものが起こりましたね。
スッと解決するのか、厄介ごとなのか……どっちでしょうか?
ではでは、お次はみんな大好きゆう○りんです。
ユウ……頑張れ。
では、また次回。


名前:ユウ
年齢:10
性別:男
服装:白いTシャツ・黒いパーカー・ベージュのズボン
髪型:黒・長め
身長:121cm

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