ネットが使えるかわかりませんので、ハーメルンをチェックすることができるのかどうか。
それはともかく、R-15ってどこまで書いたらタグつけなきゃいけないんですかね。
今回のがもしも引っかかるならつけますけども。
R-12くらいだと思って書いてます。
じゃあどうぞ。
お母さんにいじられる
それから、日が暮れるまで公園でお話をしていた私と真希ちゃんだけど、まだまだ話足りない気持ちが二人ともにあった。
そこで私は家に電話をして、真希ちゃんの家に泊まることをお母さんに伝えたのだけど、
『比企谷くんによろしくね』
「真希ちゃんって言ったよね」
いきなりお母さんは素っ頓狂なことを言ってきた。頭痛い。
『友達の家に泊まるって、彼氏とお泊りの隠語じゃないの?』
「違います。お母さんもしたことあったの?」
『お父さんとお泊りしたとき、お婆ちゃんにそう言ったことあるわよ。お母さんに隠さなくてもいいのよ? お父さんには誤魔化しておくし』
「怒るよ?」
お母さんは、最近こういうことをよく言ってくるんだけど、本気なのか冗談なのかわからないから反応に困る。
『あら怖い。着替えは大丈夫なの?』
「うん。下着とか歯ブラシはコンビニで買うし、寝間着は真希ちゃんに借りるから」
『そう……』
「お母さん?」
『ううん、なんでもない。明日は何時頃帰ってくるの?』
「お昼くらいには、多分。ご飯作っちゃってたよね? ごめんなさい」
『気にしなくていいのよ。留美ちゃんの恋路のためならお母さん協力惜しまないわよ』
「八幡じゃないってば」
『ふふ、ごめんごめん。比企谷くんとのデートのお話は明日じっくりと聞かせてね』
「……うん」
『楽しんできなさい。真希ちゃんのご両親によろしく言っておいてね』
「わかった。それじゃね」
携帯電話を切って一息つく。お父さんもお母さんも、私が八幡のことを好きなことは知っている。お父さんは複雑そうにだけど、二人とも応援してくれている。それはいいんだけど、お母さんは時折というか頻繁に私をからかってくるのがちょっと困りもの。
お母さんはいつもはクールで格好いいのだけど、ちょっと剽軽になってテンションが上がる。まあ、何と言うか、可愛いんだけどね。お父さんと二人して頭を抱えることがある。
実際私は今頭を抱えたい。
真希ちゃんちにお泊り
「留美ちゃんのお母さんなんだって?」
「お泊りは大丈夫。楽しんできなさいだってさ」
「そっか。急だったんでダメかと思ったけど、よかったね」
「うん……明日、八幡とのデートを根掘り葉掘り聞かれそうだけど」
「何か言いたくないことでもあったの? チューしたとか」
「……う、ん。まあ」
「……え、マジで?」
「鼻に、だけどね」
「ああ、そうなんだ……鼻? え、どういう状況だったの?」
「それは落ち着いてから、ね」
詳細を聞きたがる真希ちゃんをかわし、山北家へと向かう。実は、真希ちゃんちにお邪魔するのは初めてだったりするので、ちょっと緊張する。というか、お泊り自体初めてなんだけど。
途中でコンビニに寄り、私のお泊りセットとパジャマパーティ用のジュースとお菓子を買い込む。真希ちゃん曰く必須らしい。
「いやー、実は友達とお泊りとか憧れてたんだよね」
「真希ちゃんもしたことなかったの?」
「うん。話に出たことはあったけど、なんだかんだで実現したことなくって。初めてが留美ちゃんなんて嬉しいよ」
「私も真希ちゃんが初めてで嬉しいよ」
店内で真希ちゃんとお話ししながら買い物をしていると、横で品出しをしていた店員さんが驚いた顔をして私たちを見た。どうしたのかな。
買い物を終え向かった山北家は閑静な住宅街にあった。日は暮れて暗くなっており、付近からは晩御飯の準備をしている雰囲気が見て取れた。山北家もその例に漏れず、いい匂いが漂ってきていた。
「ただいまーっ!」
「お邪魔します」
「はーい、おかえり」
おそらくキッチンがあるであろう方向から、女性の声が聞こえてきた。炒め物の音がしているから料理中なのは間違いなさそうだ。
真希ちゃんに連れられリビングに入る。リビングに隣接したキッチンで料理をしている人は、一見して真希ちゃんのお母さんだとわかる可愛らしい人だった。
真希ちゃんのお母さんはいったん料理の手を止めて私の出迎えをしてくれた。
「お母さん、さっき電話したけど今日留美ちゃん泊まるから」
「初めまして鶴見留美です。今日は急にお邪魔してすいません」
「はい、こんばんわ。礼儀正しい子ね。真希とは大違いだわ」
「お母さん、余計なこと言わないでよ」
「はいはい。あ、お父さんの帰りは遅くなるから気にしないで遊んでなさいな」
「ご飯は私の部屋で食べたいんだけど、いい?」
「準備できたら呼ぶけどまだかかるから、その前にお風呂入っちゃいなさい」
「はーい。行こ、留美ちゃん」
うちとはちょっと違うけど、真希ちゃんとおばさんとの仲は非常に良好のようだ。見ていて微笑ましい。
真希ちゃんに手を引かれ、二階の部屋に向かう。真希ちゃんの部屋は、実に真希ちゃんらしい感じがした。綺麗に整理され本棚は順番通りに本が並んでいる。ラインナップは少女漫画と少年漫画で、少年漫画の方が多いかな。可愛らしいぬいぐるみとクッションがあり、女の子らしい部屋でもある。
「さ、留美ちゃん適当なとこ座って」
「うん、お邪魔します」
真希ちゃんに促がされベッドに座る。真希ちゃんが自分の椅子に座って相対する。なんか不思議な感じがする。
「おじさんはお仕事? 土曜日だけど」
「昔の友達に会ってくるとか言ってたよ。多分飲んでくるだろうから、帰りは日をまたぐかも」
「それじゃ、ご挨拶は明日の朝かな」
「お昼まで起きてこないかも」
ふふと笑いあう。
「それじゃ、お母さんに言われたことだしお風呂に入っちゃおうか」
「そうだね」
「留美ちゃん先に入ってきていいよ。着替えは」
「え、一緒に入ろうよ」
「……え?」
タンスに向かおうとした真希ちゃんが絶句する。頬を引きつらせて振り返る。そんなに驚くこと言ったかな。
「一緒に入ろう?」
「いや、聞こえなかったわけじゃないから。いや、え……マジで?」
「マジで」
真希ちゃんがフリーズする。椅子から立ち上がろうとする状態で止まっているけど、その体勢辛くない?
「真希ちゃんは、嫌?」
「嫌じゃないけど……っていうか、留美ちゃん吹っ切れすぎじゃない?」
「言いたいことは言うことにしたの」
友達と一緒にお風呂に入るのは普通のことだと、結衣さんもそう言っていた。雪乃さんがとっても恥ずかしがってたけど嫌ではないらしいし。
「……よし、それじゃ一緒に入ろうか」
「そんなに気合入れてすること?」
「気合入れなきゃ留美ちゃんに翻弄されっぱなしになっちゃうからね」
そうして、私と真希ちゃんは連れ立ってお風呂へ向かった。
真希ちゃんから着替えを借りて、替えの下着は準備した。真希ちゃんは服を洗濯機に入れていいとは言ってくれたけど、さすがにそこまでお世話になるわけにはいかない。私は持ってきていた袋に下着を入れることにする。
私の隣で服を脱いだ真希ちゃんの下着は、私の色気のないスポーツブラとは違って可愛い。そして昼間のお姉さんたちほどではないにしろ、同年代の中でもちょっと大きいくらいかな。上着を洗濯機に入れると次は下だ。こちらもブラと同じ色で可愛らしいストライプ。体育の着替えで見た時にも思ったけど、真希ちゃんは腰がくびれていてお尻も引き締まっている。本人はお尻が大きいのを気にしているようだけど、贅沢な悩みだ。
「あ、あのさ留美ちゃん。見すぎじゃない?」
「真希ちゃんこそ」
「……」
「……」
「お風呂はいろっか」
「そだね」
私は堂々と真希ちゃんの着替えを見ていたけど、真希ちゃんの方だって私の方をチラチラ見ていたのだ。真希ちゃんも堂々とすればいいのに。
真希ちゃんはちょっと躊躇いつつ、ブラのホックを外す。何とは言わないけど、明らかに私より膨らんでいて形もよく、私とはちょっと違う色をしている。……赤ちゃんじゃなくても吸い付きたくなる気持ちがわかってしまうかもしれない。
真希ちゃんが気にしている大きなお尻から伸びる、すらっとした脚線美。そして薄いながらも茂みが……いいなぁ。
「だから留美ちゃん見すぎだってば。恥ずかしいなぁ、もう」
「真希ちゃんだって見てるじゃない」
「まあ、そうだけど……。ほら、お風呂行こ!」
「うん」
誰かとお風呂に入るなんて、お父さんとお母さん以来かな。新鮮と言っていいのかどうか。
お風呂に入るときはまず体を洗ってから。いつもならシャワーを一気に浴びてぱっぱと洗っちゃうんだけど、今日は一緒に入るお友達がいる。
「えーっと、どうしたものかな」
「さすがに二人で入ると狭く感じるね」
何がどうなってか、私は自分ちのお風呂に親友の留美ちゃんと入っている。入ること自体は覚悟を決めたからいいんだけど、入った後のことを考えていなかった。単純に狭い。
とはいえ、じっとしていてもどうしようもない。
「んー、よし。それじゃ留美ちゃん、イスに座って。洗ってあげる」
「え、真希ちゃん先でいいよ」
「ほらほら、遠慮しないで」
留美ちゃんをイスに座らせてノズルを手に取る。うちのお湯の調節はちょっとコツがいるんだ。
「お湯こんなものでいいかな?」
「んー、そうだね。ちょうどいいよ」
「それじゃいくよー」
温度調節をして、留美ちゃんの頭からシャワーをかける。長くて黒くて綺麗な髪が一気に湿る。私は髪を伸ばすとくせっ毛になっちゃうからうらやましい。わしゃわしゃーっと髪を撫ぜると、指に髪が絡まない。枝毛もなさそうだし、ちゃんと手入れしてるんだな。
お湯は留美ちゃんの華奢な体を濡らしていく。抱きしめたら折れちゃいそう、とまでは言わないけどとっても細い。かといって、病的な印象はなく肉付きはそれなりにある。
体の前面はほとんど平たい。在るには在るけどちょっと膨らんでいる、といった具合かな。留美ちゃんの身体は基本的に柔らかい。柔軟的な意味でも、触感的な意味でも、触り心地がいい。だから、多分そこも柔らかいんだろうなと思う。……ちょっとくらいなら触ってもいいかな?
さらに言うと、その中心は綺麗な色をしていて、吸い付きたいと思ってしまった。いけないいけない。
腰は細くてお尻はちっちゃい。デカ尻の私からするとうらやましい限り。お湯が留美ちゃんの腰やお尻を辿って流れていくのを見て、生唾を飲みそうになってしまった。
正直な話、留美ちゃんの身体は肉感的とは言えない。色々とちっちゃい。だけど、なぜだか留美ちゃんは色っぽく感じる。私に語彙がないからうまく表現できないんだけど、エロイと言うより、色っぽいのかな。
「じゃ、行くよー」
「うん」
スポンジを濡らしボディソープを泡立てて留美ちゃんに渡す。体の前の方を洗っておいてもらい、その間に私は髪を洗わせてもらう。
やっぱりサラサラな髪は手櫛してもひっかかることはない。私が自分でやるような雑な洗い方はしちゃダメな気がする。
「真希ちゃん、洗い方上手いね」
「そう? いつになく緊張してるんだけど」
「そんなに?」
だって本当にきれいな髪なんだもん。洗濯物だったら揉み洗いとかできそうな長さだけど、以ての外だし。
コンディショナーまでしっかりとやったところで気疲れしてしまった。
「真希ちゃんなんで疲れてるの?」
「気分的には爆発物処理か、宝石店の店員さんでした」
「なぜに?」
それだけ気を使ったってことで。
シャワーで綺麗に洗い流し、留美ちゃんからスポンジを受け取って背中を擦る。想像通りに触り心地がいい。肌が私と同じ物質とは思えない。絹とかこんな感じなのかな、触ったことないけど。
……そしてお尻のあたりを洗っているときに気づいたんだけど、留美ちゃんはまだのようだった。どこがとは、何がとは言わないけど。
「じゃ、次は真希ちゃんね」
「はいはい」
嬉しそうな留美ちゃんを見ると少し罪悪感が湧いてしまう。留美ちゃんと代わり、イスに座る。気疲れしたものの、楽しいのは確かだね、うん。
真希ちゃんの髪型はショートカットで、私よりかなり短い。真希ちゃんは私の髪をきれいだというけど、真希ちゃんの髪だって相当なものだと思う。柔らかくてサラサラだ。
「お客さん、痒いところはないですかー?」
「……留美ちゃんがそういうこと言うと違和感バリバリなんだけど」
「ないですかー?」
「いや、ないけどさ」
真希ちゃんはノリが悪いな。
頭皮をマッサージしながら髪を洗う。座っている真希ちゃんの後ろから覗き込むような体勢。私だったら見えないんだろうけど、真希ちゃんだと見えるようだ。真希ちゃんがスポンジで洗うたびにムニュムニュと形を変える。こちらも柔らかそうだ。
「流すよー」
「はーい」
髪を洗い流すと真希ちゃんがプルプルと頭を振る。猫みたいだ。
真希ちゃんからスポンジを受け取り、背中を洗う。染み一つないきれいな背中で体のラインの綺麗さが際立つ。背中にツツーっと指を這わせたくなってきた。
……やってみちゃおうかな。
お互いの体を洗いっこして、その後ちょっとドタバタして二人して真っ赤になりながらお風呂から出る。
ちょうどいいタイミングで晩御飯の準備ができたらしい。おばさんにお礼を言ってお盆を受け取り、真希ちゃんの部屋へ。
ほかほかのとても美味しそうな山北家の晩御飯は、ご飯に味噌汁、お漬物と野菜炒め。家によって味付けは変わるというけど、鶴見家の味付けとは違うものの大変おいしいご飯でした。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
「おばさん料理上手だね」
「そうかな? 美味しいのは確かだけど、他のお宅と比べたことないし」
「それじゃ、今度は真希ちゃんがうちに来る番だね」
「うん。近いうちにね」
さて。お風呂に入ったしお腹も膨れた。人心地付いたところで私はしなければならないことがあった。
八幡に電話
「ねえ真希ちゃん。ちょっと電話したいところがあるんだけど」
「うん? どうぞ」
「八幡に電話するから、真希ちゃんも話すこと考えておいてね」
「ちょっと待った」
携帯を手にした私の手を真希ちゃんが握る。離してくれないと電話かけられないんだけど。
「いや、何で?」
「真希ちゃんとうまくいってないのを八幡に相談したんだ。それで、うまくいったよって、報告しようと思って」
「いや、それも何で、だけど。何で私も八幡さんとお話しするの!?」
「したくないの?」
首を傾げる。真希ちゃんは顔を赤くして黙ってしまった。その反応からしてしたいのだとは予想つくけど、恥ずかしさが先立ってるのかな。
「真希ちゃんはヘタレだなぁ」
「い、いいでしょ! 慣れてないんだし」
私も慣れるほど電話してないけど、まあいいや。
今日は八幡から電話してきてくれているから、履歴からすぐにかけることができた。
少し待つ。ちょうどご飯時でもあったけどすぐに電話に出てくれた。
『もしもし』
「こんばんは八幡」
私が声に出すと、真希ちゃんがビクッと身を震わせた。見ていて面白い。
私はスピーカーモードにすると、私と真希ちゃんの間にスマートフォンを置いた。
『どうしたんだ、留美?』
「改めて今日のお礼と、結果報告。電話大丈夫?」
『そか。飯は食い終わったからいいぞ』
「うん」
真希ちゃんも挨拶すればいいのに、椅子の上でカチコチに固まっている。うーん、いい感じに乙女回路が回っている様子。
「まずね。真希ちゃんとうまくいったよ」
『よかったな』
「うん……なんか、軽いね」
『心配してなかったからな』
「そうなの?」
『山北さんと会ったり話したのは少しだけだったけど、あの子が留美のこと好きなことはよくわかったよ。留美もだろ』
「うん。よく知ってる」
真希ちゃんの方を見ると、顔を真っ赤にしていた。真希ちゃんって結構照れ屋なんだね。
固まっている真希ちゃんの手をギュッと握る。とうとう目がグルグルしだした真希ちゃんは、まるで湯気でも出ているようだった。
『何より、留美が好きな子なんだから。心配する必要なんかあるか?』
「なるほど」
信頼されてると考えると嬉しいんだけど、心配されないのも、
「それはそれでなんかムカツく」
『理不尽だなおい』
私としては結構怖かったんだけど、八幡が気にしていないのがなんか嫌だ。心配するまでもないって思われていても。
「……まあいいや。それで改めてお礼を言っておこうと思って。ありがとね」
『俺は何にもしちゃいないよ。頑張ったのは留美だろ』
「八幡が頑張る勇気をくれたからだよ」
『……ま、受け取っておくよ』
どことなく照れくさそうな雰囲気を八幡の声から感じ取れた。照れているのか、思い出しているのか。……私も思い出してきちゃって頬が熱い。
「それでね。今真希ちゃんちに泊まりに来てるの」
『ほー、そりゃ仲のいいことでなによりだ』
「一緒にお風呂に入ったよ」
「っ!!」
『……なんでお前はそういうことを言うかね』
「知りたいかと思って。あと留美」
『あのな……』
隣にいた真希ちゃんが言葉にならない悲鳴を上げ、私の口を閉じようとしてくるのをかわす。八幡に意識させるには地道な積み重ねが必要なので理解してもらいたい。
「というわけで、ほら真希ちゃん」
「ほぇっ!?」
『そこにいるんかい』
スピーカーモードなので渡しても意味はないのだけど、床に置いてあったスマートフォンを真希ちゃんに渡す。またもや真希ちゃんは固まってしまった。
「るるる、留美ちゃん!?」
「話すこと考えておいてって、言ったじゃない」
「そりゃ、そうだけど」
「だから、はい」
真希ちゃんを促して、やっと動き出した。うーん、ホントにヘタレちゃうんだな、真希ちゃんは。
「あー、その……こんばんは」
『ああ、どうも。何となく留美が無理やりやらせてる感があるんだが、無理しなくていいぞ?』
「いえ。私もお話ししたいなと思ってたところなんです」
『そうか?』
話し始めたら吹っ切れたのか、真希ちゃんは落ち着いてきたようだ。でも、正座して顔の前に電話を持ってきているあたり、まだテンパっているように見える。
「どうも、ご心配おかけしたようで」
『さっき留美にも言ったけど、別に心配はしてねえよ』
「それでも、私と留美ちゃんが仲直りするのを助けてくれたんですよね。だったら、ありがとうございます」
『はいよ』
ペコリと頭を下げる真希ちゃん。八幡もすんなりとお礼を受け取ってくれた。
『ま、上手くいったんなら何よりだ。仲良くやんな。言うまでもないとは思うけどな』
「ええ、言われるまでもありませんよ!」
『おお、元気だな』
ニッコニコの笑顔の真希ちゃんと嬉しそうな八幡。なんか、二人で分かりあっている感じがしてちょっと嫉妬する。まあ、さっき真希ちゃんも同じように感じていたんだろうけど。
「ねえ八幡」
『ん、何だ?』
「そろそろ真希ちゃんを名前で呼んでもいいんじゃない?」
『は?』
「え、ちょ、留美ちゃん!?」
だから、これは私のちょっとした意地悪と、真希ちゃんへの応援だ。
『俺に名前で呼ばれていいことないだろ?』
「私は嬉しいよ?」
『留美はなぁ……妹みたいなもんだし』
「ふぅん……だったら真希ちゃんも妹みたいなもんでいいんじゃない?」
「留美ちゃん! 言ってることが無茶苦茶だよ!?」
「真希ちゃんはどうなの?」
私としては真希ちゃんも八幡に名前で呼ばれたがっているような気がしているんだけど、実際どうしたいかは真希ちゃんが言うべきことだ。再度急かしてみる。
「え、いや、私は、その……嫌じゃない、けど」
「だって、八幡」
『あー、何だって?』
「聞こえない振りするならもう一回言うけど?」
『……わかったよ、聞こえてるよ』
全く、二人して往生際が悪いというか。腹くくってしまえばいいのに。
『なんか、留美が吹っ切れるとこうなるんだよな』
「ええ、それはもう。身に染みてわかってます」
『すでに被害にあっていたか』
何か二人して失礼なこと言っているようだ。ただ私は言いたいことを言っているだけなのに。
『っつーか、本当にいいのか? 正直俺から名前で呼ばれても嬉しくないと思うんだが』
「いいですよ。っていうか、前から名前で呼んでくださいって言ってたじゃないですか」
『名前で呼ぶなんて妹と留美ぐらいなもんなんだけどな』
「やったね八ちゃん。家族が増えるよ!」
『おい、やめろ』
そういって、二人して黙ってしまった。何か特別なやり取りだったのかな。時々私にはわからないネタを使うからな、二人とも。
『女子中学生が使うネタとしてはどうなんだ今の?』
「あ、あはは。通じるとは思ってなくて。今はほら、ネットでいろいろと調べられますし」
『ネットリテラシーとかどうなってんだ? マジで真希のことが心配になってきたぞ』
「っ! ……えへへ、あんまり心配かけないようにしまーす」
『そうしてくれ』
わかりやすいほど顔をにやけさせる真希ちゃん。これで八幡のことが好きかどうかわからないとか言ってるんだから、説得力がない。
『んで、だ。話はこんなもんか?』
「うん、そうかな」
「遅くにすいませんでした」
『いや、大した用事もないから別にいいけどな』
真希ちゃんは顔のにやつきを頬をムニムニして必死に抑えようとしている。私も端から見るとああ見えるときがあるんだろうな。改めて気を付けなきゃ。
『それじゃ、おやすみ。夜更かしすんなよ』
「うん、おやすみ」
「おやすみなさい」
おやすみ、の言い方が優しいのは八幡のお兄ちゃんらしさなのかな。小町さんに言いなれてそうな言い方だった。
電話を切ると、真希ちゃんがほうっと息をついた。緊張が解けたような、お話しできなくなって残念なような、どっちかな。
「もう、いきなり言い出すんだもんな、留美ちゃん」
「真希ちゃんから言い出しそうな雰囲気がなかったし」
「だって、言い出す気なかったもん」
もう、と言いながら真希ちゃんは紙コップにジュースを注ぐ。私はお菓子の袋を開けるとしよう。
「八幡にはああ言われたけど」
「今日は夜更し予定だもんね」
ふふと笑いあう。話したいことはいっぱいある。
「本当に八幡さんは優しいよね。怒るイメージが湧かないや」
「今日八幡に怒られたよ」
「え、何したの留美ちゃん」
「八幡の前で胸揉んだらおでこ突かれた」
「え、何してんの留美ちゃん」
さあ、パジャマパーティーの始まりだ。
せいぜいR-12くらいでしょ?
といったところで、本当に第一部完。
後はネタを思いついたら短編として投稿します。
続きネタが思いつけば長編になるかも。
といったところで、じゃあまた。
PS
キャラ設定集みたいのはあげてもいいもんですかねえ。
オリジナル要素の設定でもまとめてみようかと思うんですが。
ついでに、留実ママが言い淀んだときの心中では、
(さすがにゴムとか言ったら本気で嫌われちゃうかしら)
とか思ってました。最近生徒会役員共読んだせいかな?
活動報告をあげましたので、よろしければご覧下さい。