ガールズ&パンツァー 紅蓮の戦車乙女   作:宣伝部長

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激闘!マジノ女学院です!!

「うっひょーい!!こんなに広い原野戦車で走り回れるのかよ!!いやっほぉぉぉ、最高だぜぇぇぇ!!」

「最近薫先輩のテンションおかしくないですか?」

「・・・・・バカだからだろう」

「テンションが低いアイツを逆に見たくはないな」

「あぁ、それもそうですね」

 

 

 

練習試合当日。

今回はマジノ女学園のホームグラウンドでの戦いとなる為にこちらにとってはアウェー・・・だが、そんなことを言っていると前回の聖グロもアウェーながら十分戦えているのだから気にしたら負けである。

 

 

 

「みほ・・・マジノ女学園と言えば、防御主体の学校だったな」

「うん、重戦車を中心とした陣地戦重視の戦法を得意とする学校です」

「だが、姉さんが言うには隊長が変わったみたいだ」

「そ、そうなの?」

「あぁ・・・噂をすればその隊長さん方が来てくれたみたいだ」

 

 

 

噂をすればラフティーS15に乗ったマジノ女学院の生徒が生徒会のメンバーと挨拶を交わしていた。飛鳥が姉から聞いていた昔の隊長像とは違い何処となく拍子抜けのような感じがした。

 

 

 

「あの・・・隊長の西住さんと副隊長の日野本さんはいらっしゃる?」

「えっと・・・隊長の西住です」

「同じく、副隊長の日野本です」

「・・・・・あっ、失礼。マジノ女学院隊長エクレールですわ」

 

 

 

こちらを見た瞬間エクレールと名乗った女性はポカンとした表情で固まっていたが、首を横に振ると軽くお辞儀した後に自己紹介をして来た。

 

 

 

「光栄ですわ!まさか、西住流の方と・・・」

「・・・んっ?」

「戦姫と相見えるなんて・・・・・」

「・・・・・ほぅ」

「今日は全力でやらせていただきますわ」

「こちらこそよろしくお願いします!」

 

 

 

隊長同士の握手が終わればマジノ女学院の陣営は撤収していった。それを見送る2人ではあったが、みほはいつもとは違った飛鳥の表情にゾクッと背筋に悪寒が走ると声を掛けずにはいられなかった。

 

 

 

「飛鳥さん・・・顔怖いよ」

「あぁ・・・すまん」

「さっきの呼び名になにか意味があるんですか?」

「中学の時の通り名」

「かっこいいじゃないですか・・・」

「嫌いじゃないけど、戦車道での通り名じゃないんだ」

「じゃ、じゃあ・・・・・」

「まぁ、気にすんな」

 

 

 

飛鳥はそれだけを口にするとくしゃくしゃとみほの頭を撫で回したかと思うとなにも言わずに自チームの元へと戻って行ってしまった。

 

 

 

「おかえり~♪どうよ、向こうの隊長さんは?」

「昔のアタシの通り名を知ってた」

「フンッ!覇王の昔の名か・・・実に興味深い!!」

「別に大層な名前じゃない」

「・・・イヤなのか?」

「昔のアタシを思い出すと恥ずかしくなる」

「ほぅ・・・厨二病と言うヤツじゃな」

「お前に言われるとなんか癪だな」

 

 

 

と言いつつ通信手の席に座ろうとする飛鳥に全員が首を傾げていた。

 

 

 

「飛鳥先輩・・・どうしてそこに?」

「んっ?今日は最初の方は4人の様子を見るから」

「練習試合だぜ!?私達だけじゃこの前みたいに・・・」

「だからこそこの試合でレベルアップしないと次のステップには進めないだろ」

「壁を・・・ぶち破れ・・・か」

「だぁ~!!やってやるぅぅぅ!!」

「あっ・・・あわわ・・・・・」

 

 

 

あたふたする4人を尻目に飛鳥は通信手の席で地図を開きながら再度この場で出来そうな知識を頭の中に叩き込む作業をしていた。

 

 

 

「沙織」

『あれ?なんでそのチャンネルに飛鳥がいるの?』

「今日はアタシが通信手」

『えええええ!?みほ!飛鳥がボイコットしてるよ!!』

「おい、聞こえの悪いこと言うな」

『むぅ~・・・負けたら飛鳥なんか奢ってよね』

「はいはい。・・・と言う訳で援護に徹するよ」

『わかりました!それではFチームには一番後方の守りをお願いします!!』

「了解」

 

 

 

今の話を聞いていたのか他の4人も頷くと試合開始の合図と共に最後尾に着いた。

 

 

戦車が動く最中も飛鳥は地図を睨んだままたまに赤ペンでなにやらチェックを入れている。4人には試すような素振りを見せていたが、試合が始まったのと同時に何かしらの策を考えるのであった。

ハッチを開けて顔を出すと目の前には横1列に並ぶ友軍とその先を双眼鏡で確認するとそこには防御陣地にて待ち構えるマジノ陣営が見えた。

 

 

 

「敵が見えて来た」

「みほちゃんの作戦はどうだっけ?」

「アミアミ作戦って言ってました!常に動きながら相手の弱点を突く!だそうです」

「・・・相手の装甲が厚いからそれがセオリー」

「我らはどうする?」

「西住先輩が言っていた通りに後衛に勤めます!皆さんよりは離れた位置で止まらず動いていて下さい」

「あいよ~」

 

 

 

飛鳥はチラッとなにかを確認するように操縦席を覗いた。

するといつもふざけたことを口にする薫も額に汗を垂らしながら集中しているのが見ただけで確認出来た。

そのまま後ろを見れば、玲那は照準器と睨めっこ、斬子は腕を組み飛鳥の視線にどや顔で返して来る余裕ぶりである。

ツバサは一生懸命に双眼鏡を首に掛けたまま周りを警戒している。

 

 

飛鳥は大きく深呼吸すると地図を広げたまま咽喉マイクに手を当てた。

 

 

 

「各チーム戦況をどうぞ」

『こちらAチーム!最前線にて敵を包囲しながら砲撃中だよ!』

『こちらBチーム!私達はAチームより少し離れた位置から砲撃をしています!』

『Cチームだ!我々は後方から敵車輌を攻撃中だ!!』

『Dチームでぇ~す♪私達もバンバン撃っちゃってま~す♪』

『こちらはEチームですわ。我が軍は包囲に成功、只今各個撃破に務めていますわ』

 

 

 

状況を判断しながら地図に赤ペンで色々と書き足していくと悩むように顎に手を当ててからまた咽喉マイクに手を当てた。

 

 

 

「敵の数はどう?」

『全部で5輌見えますわ!』

「んっ?6輌じゃないのか」

『ううん、こっちでも確認したけど5輌しか見当たらないよ!』

「薫!旋回!!」

「いきなりなに!?」

「Ⅲ突が狙われるかもしれん」

「本当ですか!」

「勘だけどね。玲那はいつでも撃てる準備で待機」

「・・・・・OK」

 

 

 

前衛をフォローするように陣取っていたFチームは旋回すると自分達よりも後方で狙撃をするⅢ突の援護に戻ろうとしていた。だが、その途中でツバサはあるモノに違和感を口にする。

 

 

 

「あの草むらになにか嫌な感じが・・・」

「玲那、前方の草むらに照準合わせて!戦車は一時停車」

「おう!」

「・・・照準良し」

「ツバサ」

「は、はい!撃てぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

一生懸命に叫ぶツバサの号令と共に玲那はトリガーを引いた。轟音と同時に出された砲弾はⅢ突の近くにある草むらへと飛んで行った。

砲弾は空を切らずになにかに当たって弾き飛んだ。そう、隠れていたR35に・・・。

 

 

 

「Cチーム!すぐに味方と合流しろ」

『すまない、戦略的撤退~~っ!!』

「みほ!アタシ達もⅢ突と一緒にそちらに合流する!」

『はい!』

「砲塔の回らないⅢ突を護りながら前線に合流する、わかったか?」

「向こうは・・・予想以上だな」

「えっ?なにが?」

「マジノは防御主体の戦術を得意としてきた学校。それがさっきのような行動をすることなんて今までになかった」

「う~ん・・・ってことは、やっぱりあの隊長が関係してるんじゃない?」

「新たなる救世主の誕生・・・闇に一点の光が降り注がれん」

「まぁ・・・油断出来ないヤツだって訳」

 

 

 

新隊長エクレールの着任により、今までとは違った動きがマジノに見えてきた。今までの防御主体ではなく別の戦術に変わろうとしているのかもしれない。そうなって来ると前線のメンバーは危険な状態かもしれないそう思った刹那。

 

 

 

『マジノの戦車が動いたっ!?』

「なっ、マジノが機動戦!?」

 

 

 

聞こえてきた情報に飛鳥は驚いていた。隊長が変わったぐらいで今までの伝統的な戦い方をこうまで正反対な戦い方に切り替えようとする隊長の肝っ玉にだ。隊長が変わったのにはなにかのトラブルだと言う情報しかなかったが、飛鳥はそこでなにかがあったに違いないと踏んだのだ。

 

 

ヘッドフォンに聞こえてくるのは他のチームの慌てた声ばかりだ。いきなりのことに場慣れしていないメンバーがパニックになっているのだろう。みほが必死に呼び掛けをしているようだが、事態は変わっていない。

 

 

 

 

「ちょっちヤバくないか?」

「形勢逆転・・・か」

「総崩れにならなければな」

「そ、そんな・・・・・」

 

 

 

状況のわからないFチームはⅢ突の背後を護るように後ろから迫り来るR35に砲撃をお見舞いすることしか出来ずにいた。

だが、そんな不穏なムードを突き破るようにある人物が大きな声をあげた。

 

 

 

『うろたえるなっ!!ここはマジノの庭だっ!!固まるな!!』

 

 

 

会長だった。いつも真面目な態度すら見せない彼女が声を荒げたのだ。さすがの飛鳥もいきなりの怒鳴り声にきょとんとした雰囲気になったが、落ち着きを取り戻し始めている他のメンバーの声が聞こえてくるのに対して体を震わせていた。

 

 

 

「やるじゃん・・・会長」

「そうみたいだな・・・薫、操縦変われ」

「あらら?どうしちゃったのよ」

「ちょっと燃えてきた」

 

 

 

飛鳥は笑っていた。純粋に楽しむような笑顔でオープンフィンガーの黒手袋を装着して薫と瞬時に操縦を変わった。このフォーメーションの場合、車長が薫、通信手がツバサに変わる。

そして、このフォーメーションは他のチームには内緒で練習していた作戦を意味している。

 

 

 

 

「準備はいいか?」

「いつでもどうぞ♪」

「練習の成果を見せる時です!」

「我が道の頂に・・・いざ、参らん!!」

「遠慮なく・・・やってくれ」

 

 

 

自動車部にはいつも無理を言って夜中に練習していた作戦を初めてみんなの前、初めての実戦で披露する。

だが、全員の表情からは不安よりもやる気に満ちていた。

 

 

 

 

 

「これより、作戦:神風を開始する!!」


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