ガールズ&パンツァー 紅蓮の戦車乙女   作:宣伝部長

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奮闘します!

「作戦内容はどんな感じ?」

《市街地にて地形を最大限に生かして戦います!!》

《大洗は庭です!任せてください!!》

「それなら任せてくれ」

 

 

 

次の戦場はホームグラウンドとも言える大洗の市街地である。

地の利があるこちらが少しは有利に動けるはずである。

すると各戦車が分かれるように散開した。

 

 

 

「今から市街地にて戦闘になる」

「おっ、それは楽しめそうじゃん♪」

「フフフッ・・・我が領土に踏み入ったことを後悔させる好機ではないか!」

「アタシ達は確実に1輌は撃破させる」

「・・・・・OK」

「どうやって迎え撃ちますか?」

「それなら良い場所がある」

 

 

 

飛鳥が口にした意外な場所に一同驚きの声を出すも全員の表情には意味ありげな笑みが浮かぶとチャーフィーは急ぐように目的の場所を目指して前進を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

《こちらCチーム!1輌撃破!!》

《Bチームも1輌撃破!!》

「やるではないか!我が同胞達は!!」

「一気に2輌撃破とはさすがだな」

 

 

 

散開してからまだそれ程時間も経過していないのに友軍の戦果にテンションは上がっていた。

 

 

 

 

「前方から敵戦車1輌が接近中!!」

「焦るな・・・合図があるまで待機」

 

 

 

なにも知らずに迫って来る敵戦車に対して一同は息を殺してジッと身構える。

そう彼女達が身を潜めているのは大きなキャンプ場の奥地で擬態するように待ち伏せしていたのである。

そして、敵戦車がゆっくりとこちらに近付いて来た瞬間。

 

 

 

「撃てぇぇぇ!!!」

 

 

 

合図と共に放たれた砲弾は無防備な相手の側面装甲を見事に貫き、煙と共に白旗が上がるのをキューポラから顔を出した飛鳥が確認し、親指を立てて車内に戻って来るとハイタッチが起きていた。

 

 

 

 

「まさかこんな場所に戦車が隠れられるスペースがあるとか本当にビックリだっての!」

「アタシの愛車を置いてたんだ」

「・・・その戦車は」

「パンターD型」

「強そうな名前ですね」

「それが中学の時の相棒か」

「いや、ただの練習車・・・・・えっ!?」

 

 

 

過去の話題で賑わうFチームだったが、突如として聞こえてきた情報に飛鳥は真剣な表情に変わった。

 

 

 

「んっ?どうかしたか?」

「B、Cチームがやられた」

「なんだって!?」

「しかも、Cチームが撃破したと思っていた敵車輌はまだ生きてる」

「せ、せせ、戦況はどうなのだっ!?」

「4対2・・・このままだと・・・」

《Fチーム!応答願います!!》

 

 

 

不穏なムードを切り裂くように沙織の大声が戦車内に響き渡る。

 

 

 

「沙織!そっちの状況は!?」

《て、敵に追い回されちゃってるよ~!》

「どの辺とかわからないか」

《必死に逃げちゃってるからそんなのわかんないよ~!!》

「くそっ!薫、すぐに戦車を出して!!」

「はいよ~!!」

 

 

テンパっている沙織の状況に危機的状況だと判断した飛鳥はすぐさま指示を出した。

急発進したチャーフィーから飛鳥は上体を出すと目を瞑ってなにかを感じ取っていた。

 

 

 

「微かにだけど、砲撃の音が聞こえる」

「どっちの方角!?」

「8時の方角!!」

「間に合え~!!」

 

 

 

方向転換を済ませてから全速力でAチームを助けに行こうとした矢先に飛鳥はあるモノを目にした。

そう、それはあの山岳地帯で履帯が外れて放置されていたEチームである。

 

 

 

「会長、生きてたんですね」

《おまたせ~っで、ヤバい感じなんだよね》

「Aチームが狙われてます」

《じゃあ援護に行かないとね》

「この道に戦車が通った跡がありますから左右から回り込んで行けます」

《あいよ~♪じゃあ、行きますか》

 

 

 

 

そう言って2手に分かれるとFチームは戦車を走らせるがAチームがどの辺りに居るのかはわからずにいた。

 

 

 

「沙織!今の状況は?」

《もう追い詰められちゃった!!》

「敵の位置はわかるか!!」

《えっ・・・えっと・・・》

《魚剣と書かれた看板のある店の前!》

 

 

 

みほの大きな声に瞬時にキューポラから飛び出すと一番高い位置から情報が一致する店を捜索した。

すると右側にみほの言った看板が目に入った。

 

 

 

 

「急停車!主砲を4時の方角に!!徹甲弾からAPFSDS弾に再装填用意!!」

 

 

 

車内に大きな飛鳥の声が響く。それと同時に急ブレーキをかけた薫。指示通りに主砲を素早く動かす為に玲那とツバサが必死になっていた。斬子も通常の徹甲弾ではなく、細長い弾芯を持ち貫通力を高めたAPFSDS弾に入れ替えた。

だが、主砲の先にあるのは壁。敵の戦車の位置など全然見えてはいない状態だ。

そんな状況にも誰も口を挟まずにただ見守ることしか出来ずに指示を待っていた。

 

 

 

「この先に敵車輌がいる」

「いっ!?透視能力使いだと!?!?」

「テメェ、人間じゃねぇ!?」

「2人共黙って下さい」

「・・・・・信じる」

「放てぇぇぇ!!」

 

 

 

微動だにせず照準器を覗き込む玲那。初めて出会った暗い雰囲気だった車椅子の女の子は立派な戦士へと変わろうとしていた。そんな彼女に託した飛鳥は叫ぶように砲撃の号令を出した。トリガーを引かれて飛び出した弾丸は軽々と塀などを破壊して進んで行ったと思えば、ターゲットに見事命中し直撃した音と同時に煙と白旗が上がるのが確認出来た。

 

 

 

《やられた~》

「くっ・・・みほ!まだ行けそうか」

《今の援護射撃のおかげで隙が出来たのでなんとかあの場からは離脱出来ました!》

《生徒会チームがやられちゃったよ~!!》

「こちらも合流する・・・待ってろ!」

 

 

 

休む暇もなく戦車は前進を開始。飛鳥はAチームの状況を会話から察知すると一目散に大通りを目指した。だが、Fチームが大通りに出た時には既にⅣ号戦車から白旗が上がってしまっていた。

 

 

 

「Aチームが・・・!?」

「あの土壇場で2輌も倒してるじゃん!西住流ぱねぇ!!」

「敵隊長車輌は・・・健在か」

「聖騎士VS暗黒騎士の戦いじゃ」

「それだと私達負けるんじゃ・・・」

「来る!!」

 

 

 

飛鳥がそう叫んだ瞬間に止まっていたチャーチルがこちらにターゲットを変えて迫って来たのだ。それにいち早く反応したのは薫だった。なにも言われていないのに前進したかと思えば、相手の主砲が狙いを定めるよりも先に横すれすれで交差したのであった。

 

 

 

 

「野生の血が騒いだ?」

「天性の勘って言ってちょうだい♪」

「撃ち合いになるかもしれないから煉獄の魔女の力を見せてくれますか?」

「フフフッ・・・我の本気を見たいとな?出し惜しむ場でもないから良かろう、この灼眼を解放する!!」

「ツバサもカリエンテ様のお手伝いを頼む」

「はい!!」

「走りながらの射撃になる・・・当てられる?」

「やらなきゃ・・・ダメ」

「そうなるね」

 

 

 

そう言ってる間に旋回すると向こうも旋回しており、離れた位置で睨み合う形になった。

車長であるドシッと身構えるように座り込む大きく深呼吸をした

 

 

「それじゃあ・・・」

 

 

「「「パンツァー・フォー!!!」」」

 

 

 

打ち合わせもなく5人揃っての掛け声と共に戦車は前進した。敵戦車の砲撃にも臆さずに正面からぶつかり合う形に持ち込んだのだ。どちらもこの距離だとまともに喰らえば一撃である。お互いに離さない様に肉薄し合う中でも激しく砲撃戦は繰り広げられている。

飛鳥はこんな状況にも心躍らせていた。中学の時とは違うこの戦い方に・・・。

 

 

 

 

だが、飛鳥はこの状況で聞きたくない音を耳にした。ガキンッと何かが壊れる音を・・・。

 

 

 

 

「動かなぁぁぁい!!」

 

 

 

あんなに馬鹿をしたり、ちょけたりする薫が悔しそうに壁を叩いている。飛鳥は動かなくなった理由にさっきの音が原因だと言うことに気付いた。少し車体が右に傾いている気付いた。そう、履帯が切れてしまったのだと察した。

調整はちゃんとしてきたつもりだったが、こんなに激しく動かすのは想定外だったからガタが来ていたのかもしれない・・・。しかも、このタイミングでだ。

 

 

 

それでもまだ敗北は決まっていない。薫が叫んだのはお互いに砲撃して離れた時・・・そう、装填スピードですべてが決まる。

 

 

 

 

「ヴォーパルインフェルノ!!!!」

 

 

 

斬子が装填を終えた瞬間に叫んだと同時に砲撃はされたが、次の瞬間に凄まじい衝撃がチャーフィーを襲った。飛鳥は咄嗟に身動きのとれない玲那を護る為にギュッと抱き締めていた。玲那は結果を見届けるように照準器の先を睨んだままだった。

 

 

揺れが収まると玲那は力尽きたように飛鳥にもたれかかった。そして、小さな握り拳を前に突き出して笑顔を見せた。

 

 

 

 

《大洗女子学園、聖グロリアーナ女学園、共に全車走行不能!よって、引き分けになります!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合が終わったFチームのメンバーは車内から出ると力が抜けたように地面にへたり込んでいた。

 

 

 

「やべぇ・・・今になって体が震えてくるぅ~」

「灼眼の使い過ぎで・・・魔力がもう残ってない」

「私ももう無理です」

「・・・・・限界」

「お疲れさん」

「飛鳥さん」

 

 

 

4人に近くの自販機で買って来た冷たいジュースを配っているとダージリンと他に2人の生徒が後ろに付いていた。

 

 

 

「久し振りにあんなに激しい戦いをさせてもらいましたわ。黒森峰以来かしら」

「そりゃあ光栄ですこと」

「良いメンバーに出会えたんですのね」

「そうだね」

 

 

 

金髪に大きめの黒いリボンを付けている女性は玲那に熱く先程の砲撃戦話し掛けているが、玲那は怖がった子犬のようにぷるぷると震えていた。

オレンジ色の髪の女の子は斬子と装填に関する話をしているのだろうが、厨二病全快の言葉がわからないのか首を傾げながら話を聞いていた。

 

 

 

「母校が戦車道を復活して良かったですわね」

「本当はアタシに聖グロに来て欲しかったんだろ?」

「当然です。その為に去年お声を掛けたんですから・・・でも」

「でも?」

「な、なんでもありませんわ!忘れてましたわ、私のおすすめの紅茶を教えて差し上げますわ」

「切り替えはえぇ・・・」

「なにか言いました?」

「いや、なんでも」

 

 

 

ダージリンは自分が好んでいる紅茶をオレンジ色の髪の子・・・オレンジペコに淹れさせるとこの場に居る全員でひとときのティータイムを過ごした。

また再戦をする約束を交わすと3人は上機嫌で自分達の陣営に戻って行ったのであった。

 

 

 

すると生徒会のメンバーと引きつった表情を浮かべるAチームのメンバーがやって来た。

 

 

 

「いやぁ~惜しい試合だったねぇ~」

「アクシデントがなくても危なかったのは変わりないけど・・・」

「引き分けだったが、我々は必ず勝たなくてはならんのだ!だから、約束通りにあんこう踊りをしてもらう!!」

「マジで!?頑張ったんだからいいんじゃんか!!」

「問答無用!!」

 

 

 

桃の台詞に飛鳥と玲那以外はガクッと肩を落としてしょんぼりとしていたが、不意に玲那が手を挙げてこう一言呟いた。

 

 

 

 

「勝利にこだわるなら・・・・・河嶋先輩も砲撃を当てて下さい」

「ぐっ・・・!?」

「桃ちゃん、最後に駆けつけたあの時もゼロ距離で外してたんだ」

「なっ・・・!?」

「そう言えば、桃は今まで砲撃をまともに当てたことありませんわね」

「か、会長・・・・・」

「そうだね~まぁ、こう言うのは連帯責任だから」

「それじゃあ行きましょうか」

 

 

 

 

と言う訳でAチーム、Eチーム、Fチームは大洗町の名物であるアンコウを模したピンク色の全身タイツを着用してあんこう踊りをする破目となった。ちなみに飛鳥は特等席でもある大太鼓を叩きながら大爆笑していたと言う噂である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか・・・踊ることになるなんてな・・・最悪だぜ」

「まったくです。それにしても・・・斬子ちゃんの踊りのキレ凄かったね!踊ったことあるの?」

「あ、あの面妖な踊りは・・・そ、そう!!儀式の舞で良く使われる事があったからマスターしておいたのだ!」

 

 

 

通院している病院へ行った玲那以外の残された4人はアウトレットにある喫茶店でのほほんと過ごしていた。

 

 

 

「出港まで時間あるからアウトレット回らない?」

「いいですね!私もお供します!」

「我は寄る所があるから別行動だな」

「アタシはもう少しここに居る」

「OK!それじゃあ・・・行きますか!!」

 

 

 

残った飛鳥は味わうようにコーヒーを楽しんでいたが、不意に目の前に誰かが座るのに気付いた。

するとそこには見知った人物がにやにやとした顔でこちらを見ていた。

 

 

 

 

「アグレッシブな試合内容でしたねぇ~大将♪」

「見に来てたんだ・・・焔姉ちゃん」

「そりゃあ見に来るに決まってんじゃん!母校の試合なんだからあったりまえだぜ!」

「じゃあ・・・母さんも?」

「ハラハラしながら一緒に見てたぜ♪」

 

 

 

扇子を出して満面の笑顔で仰いでいる女性・・・次女こと日野本 焔(ひのもと ほむら)は嬉しそうに飛鳥の肩を力強く叩いていた。それに対して嫌がる素振りも見せずに飛鳥ははにかんでいた。

 

 

 

「・・・にしても、西住流のお嬢さんが大洗に居るなんてねぇ~あの子黒森峰で副隊長してなかったけ?」

「前年の事件とかじゃないかな・・・被弾した僚車が川に転落してしまってその仲間を救助しに行ったヤツ」

「あぁ・・・それであの子の乗ってたフラッグ車がやられて負けたんだったな」

「・・・でも、みほのやったことは間違いじゃない」

「そうだね。けど、しほさんの考えとは違うから厳しく怒られたのかもね」

「それならアタシはみほが目指したいと思う戦車道を進むよ」

「ええ~!!お姉ちゃん道は?」

「そんなのあっても絶対に進まん」

「飛鳥ちゃんのいけず~」

 

 

 

今度は飛鳥の頭を胸の辺りでギュッと抱き締めた。さすがに息苦しいのか飛鳥はじたばたと暴れると少ししてから解放された。ふと姉の顔を見ると真剣だった。

 

 

 

「それで?今の戦力でいけそうか」

「正直に言うと・・・キツイ」

「ちゃんと機能してるのはⅣ号とチャーフィーだけだったしな」

「公式戦までに間に合えばいいんだけど・・・」

「それなら荒治療で強襲戦車競技(タンカスロン)に参戦とかどうだ?」

「それは却下」

「ですよねぇ~」

 

 

 

強襲戦車競技とは日本戦車道連盟非公式・非公認の戦車競技のことである。戦車道と言うよりは武士道のような気もする。焔が言う通りの荒治療いわば最終手段になるトレーニング方法になるかもしれない。だが、みほの想いを最優先に考えれば論外にも等しいだろう。

 

 

 

 

「それならまた違う学校に練習試合を申し込むしかないな」

「実戦で学んだ方が良いか」

「けど、公式戦も間近なんだから手の内を見せたがらない学校が多いかもね」

「・・・そうだね」

 

 

 

考え込む飛鳥。そんな彼女を横目に焔は携帯を取り出すと慌てたように立ち上がった。

 

 

 

 

「うわ~!!マナーモードにしてたから母さんの着信に気付かなかった!?」

「早く行かなきゃ怒られるよ」

「そうだな、飛鳥!なにか困ったことあったら姉さん達を頼るんだぞぉ~!!」

「わかった」

 

 

 

 

大きく手を振りながら走り去っていく姉を見送っている飛鳥の表情はなにか決意をきめた表情へと変わっていた。

 

 


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