ガールズ&パンツァー 紅蓮の戦車乙女   作:宣伝部長

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中二病、してます!

「なに・・・これ」

 

 

 

グラウンドには自分の想像を超えるような驚きの光景が広がっていた。

 

 

 

「日野本さん!この子どうかな!?バレー魂入ってるよね!」

「バレー部・・・らしいな」

 

 

車体と砲塔の両側面に「バレー部復活!」といったスローガンを書いてあり、さらに車体各部にもバレーボールが描かれている八十九式。

 

 

「かっこいいぜよ!」

「支配者の風格だな」

「上出来だな」

「武田の赤備え、ドイツ国防軍アフリカ軍団、新選組の隊服をモチーフにしたカラーリング。それに車体前部にはガイウス・ユリウス・カエサルの名言「VENI, VIDI, VICI(来た、見た、勝った)」か・・・なにか4人の魂が1つになったって感じの戦車だな」

「さすが、日野本殿!人目見ただけでわかるとはやるな!」

「4人からいつも聞かされてたらなんとなく・・・ねっ」

 

 

車体前部および側面上部を赤色、後部および転輪をサンドイエロー、そして砲身および車体下部側面を浅葱色と白色のダンダラ模様に塗装。また車体上部の後方に六文銭や風林火山、新撰組の隊旗などを模した幟を左右に計4本取り付けられたⅢ突。

 

 

「日野本先輩!!私達の戦車すっごく可愛くないですか!?」

「あぁ・・・うん。良いと思うよ」

 

 

シンプルに車体全体を可愛らしくピンクに塗装されてしまっているM3。

 

 

「いいねぇ~♪」

「さすが会長ですわね」

「あははは・・・・・」

 

 

極めつけには神々しいくらいに金色に塗装された38T。

 

 

 

 

横でみほは呆気に取られており、優花里は大事な戦車が様変わりしていることにワーワーと喚いていた。

 

 

 

「出遅れたか!?私達も今から自分色に塗るか・・・」

「いや、飛鳥先輩に怒られちゃいますよ!!」

「ふふふっ・・・こんなの初めてだな」

「えっ!?飛鳥が笑ってる!?」

「みんな写メだ!写メ!!」

 

 

 

あまり笑顔を見せない飛鳥が楽しそうに笑っている姿に何人かは携帯を取り出したが、時は既に遅くいつも通りの表情に変われば薫だけが殴られてしまい頭の上には大きなたんこぶが出来ていた。

 

 

そして、飛鳥は思い出すかのように会長に昨日を話をしに向かった。

 

 

「生徒会長、ちょっと話があるんだけどいいかな?」

「日野本ちゃんから私にお願いなんて珍しいねぇ~・・・っで、なんかあったの?」

「Fチームに後1人人手が欲しいんだけど、どうにかならないか」

「う~ん・・・あっ、海原!!」

 

 

 

呼び出した海原に杏が耳打ちをすると海原は一枚の紙を手渡してきた。それは選択必修科目を決める時の用紙だ。そこには知らない名前と戦車道の所に○が記されていた。

 

 

 

「この方戦車道を選択してはいるのですが、まだ1度も授業に顔を出しておりませんの。休んでいる訳でもないのですが、学校のどこにも見当たらなくて困っているんですの」

「この子を誘い出せ・・・って、言う訳ですか」

「そゆこと~♪私もどう言う子か知らないからさ~1年生みたいだし、ココに居る1年生の諸君に聞いてみてよ」

 

 

 

と言うことにより、飛鳥は手がかりである名前だけを頼りに1年生に聞き込みを開始するのであった。

 

 

 

「相良 斬子(さがら きりこ)さんですか・・・う~ん・・・」

「あっ、いっつも腕に包帯巻いてましたよ!!」

「それに眼帯とかしてなかった?」

「してた、してた!黒色のだっけ?」

「けど、いつも目つきが怖くて誰も話しかけたことないよね」

「それに摩訶不思議な言葉使ってるよね。えっと・・・魔眼とか魔法とか」

「あれは日野本先輩とは違う怖い威圧感があるよねー」

「しーっ!本人の目の前なんだからそんなこと言っちゃダメでしょ!」

「あっ・・・せ、先輩は優しいし頼りになるから安心してください!!」

「昨日のマニュアルもすっごく丁寧で助かりましたよ!」

 

 

 

話を聞いているだけだと普通っぽい雰囲気ではないのは確かであろう。だが、こちらにはもう異様な4人組も居るから珍しくはないか。不意に近くに居た丸山 紗希(まるやま さき)の頭を撫でながら考えていた。嫌がられるかと思ったが、紗希は逃げる素振りもなくそれを気持ち良さそうに受けていた。すると他の1年が羨ましそうに見ていたのに気付かない飛鳥であった。

 

 

 

「それじゃあこの子を探しに行くしかないか」

「日野本先輩!良かったらお手伝い致しましょうか?」

「今日は走行練習と狙撃練習だ。お前達は特にやらないとダメだ」

「うっ・・・はい」

 

 

 

 

すると練習が開始する為に1年達は戦車の中へと入って行った。

 

 

 

「聞いての通りだ。アタシはこの子を探しに行くから3人で頼んだぞ」

「走行と狙撃だからなんとかなるっしょ!!」

「はい!飛鳥先輩、よろしくお願いします!」

「・・・・・任せた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・いない」

 

 

 

教室、保健室、トイレ、図書室、体育館、など捜索をしたが、彼女を見たと言う人は何処にもいなかった。もう残っているのはあまり人が近付かない屋上だけになる。と言うのも噂ではあるが、屋上には幽霊が出るとの噂がある為にあまり人が出入りしないみたいである。

 

 

 

「はぁ・・・行くしかないか」

 

 

 

 

意を決して屋上に続く扉を開けたらそこには1人の女性が黄昏るように空を眺めていた。だが、扉が閉じた時の音に反応してこちらに振り返ると彼女は飛鳥の存在に驚いたのかビックリした表情をしていた。

 

 

左目に黒の眼帯。右腕には包帯。1年生から聞いた情報通りの女の子である。

 

 

 

「この場所には我が強固な結界を張り巡らせていたはずだ・・・。くっ・・・やはり、この太陽神からの攻撃を受け続けてしまったせいだと言うのか・・・。貴様、どうやってココに来た」

「どうって・・・普通に扉から・・・」

「いや、待て待て!もしかしたら・・・貴様も闇の力に導かれし者じゃないのか!?おぉ、その髪は・・・炎の申し子の証か!?ふっふっふっ・・・それならこの結界を貴様が越えて来たことにも理由がつくと言う訳だ」

「えっ・・・?」

「よもや、このような下界にて同志に巡り会えることになるとは・・・これも輪廻廻廊の力だと言うのか」

 

 

 

1人でなにやら盛り上がっている様子だが、飛鳥にはサッパリと理解出来る訳もなく見守ることしか出来ないでいた。

 

 

 

「相良 斬子・・・さん?」

「フンッ・・・その名はこの世界で使っている偽りの名だ。私は煉獄の魔女カリエンテ!!」

「・・・魔女?」

「そう、私は如何なる炎もこの灼熱魔眼で自由自在に扱う事が出来る最上級の魔法使いなのだ!!」

「灼熱・・・魔眼?」

「そうだな、特別に同志のお前には見せてやろう・・・炎の魔力に満ち溢れた我が灼眼を!!」

 

 

 

そう言って彼女は眼帯に手を掛けた同時に飛鳥に近付いて来た。

信じている訳でもないが、彼女の自信に満ち溢れた表情に飛鳥も疑ってはいるがじっと彼女と対峙するように立っていた。

彼女がゆっくりと眼帯を外すと眼帯のあった右目は真っ赤に燃えているように紅く染まっているように見えた。

 

 

 

「燃えてる・・・」

「この灼眼は魔力を秘めている為に普段はこの眼帯で封印をしていなければ危険なのだ」

「・・・・・ほぅ」

「それで、貴様は今回この私になにか用があって来たのではないか?」

「あっ、戦車道の件なんだけど・・・・・」

「・・・・・あぅっ」

 

 

 

戦車道のワードを口にした瞬間に先程までの自信に満ちた表情がガラリと変わるとビクビクした感じで飛鳥の表情を窺っている。

 

 

 

「アタシは貴女が授業に来ないからこうやって探しに来たんだ」

「お、怒ってます?」

「いや、別に」

「本当に怒ってません?」

「だから、怒ってない」

「本当に本当ですよね?」

「・・・怒ってない」

「ふっふっふっ!ここでいつも魔界とこの世界を繋ぐ特異点を探していて授業に行くことすら忘れてしまっていたから怒られると思っておったわ!!」

 

 

 

言い終わると同時に飛鳥のチョップが頭を見事に捉えたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「煉獄の魔女カリエンテ!?!?」」」

「そう、この世で最強と呼ばれている炎を司る魔法使いよ!」

「は、初めて見た~!!」

「サ、サインとか貰っといた方がいいのかな?」

 

 

 

一同が声を揃えて叫ぶ中当の本人だけはどや顔で胸を張ってポーズを決めていた。

彼女達とは離れた場所で飛鳥は生徒会メンバーからある話を聞いていた。

 

 

 

 

「・・・練習試合ね」

「そうだ、実戦を積まなければ得られるモノもないからな」

「そう言うことで今回は私のご友人にお願いしましたの」

「それで、聖グロリアーナ女学院に決まった訳か・・・でも、相手は全国高校戦車道四強校の一角だぞ」

「まぁねぇ~♪なんとかなるようになるっしょ!!」

「なんとか・・・ねぇ~」

「どうかしたの?日野本さん」

「いや、なんでもない。それで、練習はどうだった?」

「まだ連携も揃ってませんの。それに狙撃もあまり命中精度は良くありませんわ」

「昨日の今日だからその辺はこれから・・・か」

「その為にも実戦でバシバシやってかないとねぇ~♪」

「この後は生徒会室で代表者を集めてフリーフィングをするからお前は代表者を連れて来るように」

 

 

 

 

そう言うと生徒会のメンバーは先に生徒会室に向かった。

解放された飛鳥だったが、そんな彼女の元に珍しい人物が声を掛けて来た。

 

 

 

「・・・・・飛鳥さん、少し気になる事があるのですが、お伺いしても宜しいでしょうか?」

「華か・・・アタシに何か用か?」

「砲撃の事を聞きたいのですが・・・」

「それならみほに聞いたらいいんじゃ・・・・・」

「みほさんが砲撃なら飛鳥さんに聞いた方が良いとおっしゃいましたので・・・」

 

 

 

もじもじと気まずそうな華を横目にチラッと視線を逸らすと離れた場所で申し訳なさそうに両手を合わせてこちらを見守るみほの姿が目に入った。

 

 

 

「わかった。それで、なにが知りたいの?」

「行進間射撃のことなんですが・・・相手に命中させる方法などあるのですか?」

「勘」

「勘・・・ですか?」

「戦車と砲手の双方が優秀で命中させている人は多い。けど、アタシがやってるのはただの当てずっぽう・・・そう、山勘」

 

 

 

一応、戦車、予測、地形、天候、癖、相手のテンション等々飛鳥は華に教えるが自分が頼っているのは勘だと豪語する。たまに照準器を覗き込んでいる時体に何か違和感のようなモノを感じ取るようになってから命中率が上がったと言う。その話を真剣に聞いていた華は「私はまだ未熟なのですね」と呟いていた。

 

 

 

「あぁ・・・後は装填手との連携」

「優花里さんとのですか?」

「撃つ為には弾が必要でしょ?だから、速い装填も砲手にとっては武器になるよ」

「参考になります!」

「力になれたなら良かった。お~い!各チームの代表者は生徒会室にて聖グロリアーナ女学院戦に対してのフリーフィングするから行くぞ」

 

 

 

 

華の頭をポンポンと軽く叩くと生徒会メンバーに言われた通りに代表者達を連れて生徒会室に向かった。

 

 

 

 

「・・・・・聖グロリアーナ」

「はい!全国大会でも準優勝のしたことのある強豪校です!」

「フンッ、聖なる力に導かれた者の集まりなればそれは容易い事だ」

「聖なる力・・・・・スゲェ!!」

「まぁ、我が灼眼を前にすればその者共など烏合の衆と化すだろう。それに我らには心強い者もいるからな」

 

 

 

そう言って斬子が視線を向けたのは飛鳥であった。

 

 

 

「飛鳥のこと?」

「そうだ、ヤツと対峙した時に我はヤツから覇道の力を見た」

「そ、そんなのも見えるんですか!?!?」

「あぁ・・・だが、ヤツからは禍々しい闇のオーラが見えた。恐らくは暗黒の力に導かれた者なのであろう」

「だ、だから日野本先輩って怖いんだぁ~!?」

「それって私達もヤバくない?」

「安心しろ、ヤツはちゃんと力の制御が出来ているから周りに被害が出ることはないだろう」

「西住流の西住先輩に覇道の力の使い手の日野本先輩・・・・・マジやべぇ・・・」

 

 

 

ワイワイと残されたメンバーは飛鳥とみほの話題で盛り上がっていた。なにも知らない2人はこの時同時に大きなくしゃみをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室には生徒会メンバーと各チームの代表が集まってブリーフィングが始まっていた。作戦内容は桃がホワイトボードに図を描きながら説明を行っていた。

 

 

だが、みほは浮かない表情、飛鳥は苦笑いを浮かべていた。

 

 

 

 

「西住ちゃんも日野本ちゃんもどうかした~?」

「えっ・・・あ、あの・・・」

「聖グロリアーナも桃ちゃんのこの作戦を想定すると思われる。そのせいで逆包囲されるって可能性がある」

「黙れ!私の作戦に口を挟むな!それならお前が作戦を考えろ!それから・・・桃ちゃん言うな!!」

「却下」

「で、ですが・・・想定なので作戦はこのままで大丈夫だと思います」

「そうだねぇ~今回は河嶋の作戦で行くか。あぁ、それと隊長は西住ちゃんね?指揮もよろしく~♪」

「えっ!?そ、それなら飛鳥さんの方が・・・・・」

「日野本さんにもお願いしたのですが、自分には性に合わないと申されまして自分より西住さんの方がよろしいと仰っておりましたので・・・」

 

 

 

みほは少しムッとした表情で飛鳥を見るが、にやにやと笑う彼女が拍手をすると周りも釣られる様に拍手が起こり、満場一致でみほが隊長に任命される事になった。

 

 

 

 

「頑張ってよ~勝ったら干し芋3日分あげちゃうから」

「もし、負けたらの場合は・・・」

「あんこう踊りでいいんじゃないか?」

「おっ、いいねぇ~♪それ、採用♪」

 

 

 

飛鳥の一言に干し芋を齧りながら罰ゲームは決まってしまった。飛鳥以外のメンバーはこの世の終わりを悟ったかのような表情に様変わりしてしまうが、発言した本人はケロッとした表情でいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「あんこう踊り!?!?」」」

 

 

 

ブリーフィングが終わって帰宅途中にみほがそのワードを口にすると飛鳥の言った通りに全員が声を荒げて驚いていた。

 

 

 

 

「飛鳥!なんでそんなこと口走ってるのよ!?」

「いやぁ~みほが知らないから良い機会だと思って・・・」

「コイツ・・・まさに外道じゃ!!」

「一生言われますよね」

 

 

 

みんなの猛抗議を目の当たりにしたみほはふとある事に気付いた。

 

 

 

「飛鳥さんは踊らないんですか?」

「あぁ・・・アタシは太鼓叩かなきゃだから無理だね」

「うぐぐ・・・役得野朗め」

「・・・つか、勝とうよ!勝てばいいんでしょ!!」

「わかりました!!負けたら私もあんこう踊りやります!!西住殿だけに辱しめは受けさせません!!」

「私もやります!」

「私も!」

「みほちゃんの為なら!!」

「私もお供します!!」

 

 

 

この場にいない麻子と玲那は置いといて他のメンバーはあんこう踊りをみほだけにはさせまいと決意を固めた。その言葉にみほも勇気付けられたようにひきつった表情から笑顔に変わっていた。

 

 

 

 

「それよか・・・私は麻子がちゃんと来るかの方が心配だよ」

「あぁ~麻子は朝弱かったもんな」

「うぅ・・・誰か我に解るように説明せよ!何故、あの面妖な踊りをせねばならん話になっておるのだ!!」

「今度の日曜日に練習試合だ。学校に朝6時には集合だ」

「・・・・・へっ?」

「あれ?カリエンテにも説明してなかったっけ?」

「今初めて聞いたぞぉぉぉ!!」

 

 

 

いきなり怒ったように叫ぶ斬子に対して皆は不思議そうに首を傾げた。

 

 

 

 

「6時に起きれるものか!?」

「いや、集合が6時だから起きるのは5時過ぎになるかと・・・」

「どっちでも同じじゃ!!我は闇に生きる者・・・そう、夜に目覚めるモノなのだ!!」

「・・・っで、本音は?」

「起きれません!誰か助けて下さい!!」

 

 

 

強気に主張をする斬子だったが、不意に目が合った飛鳥の目が笑っていないというのを感じ取れば潔く全員の前で土下座をしたのであった。

 

 

 

「はぁ・・・ツバサ!前日に泊めてやってくれ」

「はい!お任せ下さい!!」

「フンッ、良きに計らえ」

「切り替わるの・・・はやっ!?」

「それで、麻子はどうするんだ?」

「私がちゃんと家に行くから大丈夫だよ!!」

「一応、なんとかなると思う・・・かな?」

「まぁ、そっちはみほ達に任せるよ」

 

 

 

 

不安要素があるのは気になるが解散する事になった。

そして、戦車道を復活させてからの初めての戦い。

去年の大洗女子では考えられなかった出来事だ。

飛鳥はそんな奇跡に胸踊らせて日曜日を待ったのであった。

 

 

 


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