「勝利後のラムネは美味いなぁ~♪」
試合が終わった選手一同は温泉を満喫していた。
ワイワイと盛り上がっている中でマジノ連合のメンバーは全員露天風呂に集合していた。
飛鳥の提案にて勝利の美酒としてキンキンに冷えたラムネを堪能していた。
「・・・ったく、エクレール!いつまでタオルで身体隠してんだよ!!」
「ひ、人前で肌を晒すのは少々恥ずかしいですわ」
「ガレット、ツバサ、よろしく~♪」
「お覚悟っ!!」
「エクレール・・・豪に入れば郷に従え・・・よ」
「いやぁぁぁっ!?!?」
タオルがひん剥かれる姿を眺めながらラムネを飲む飛鳥。
しかし、何かを察知した飛鳥も大きく溜め息をつく。
「飛鳥ちゅわぁ~ん♪」
「My honey~♪」
「飛鳥様ぁぁぁぁっ♪」
「お前らは大人しくしてろっ!!」
見事なル〇ンダイブで迫り来る・・・薫、ティナ、ラビオリ。
それに対して慣れた対応で3人を吹っ飛ばす飛鳥。
その光景には周りに居たメンバーも拍手していた。
「やっぱり貴女はいつでも人気者よね」
「そう言うエミもベルウォールでは人気者みたいじゃないか・・・瞳から聞いたよ」
「私のはなんて言うか戦車道部を纏めようとしてたらいつの間にかマネージャーとか呼ばれだしちゃってさ?今では何とかやっていけてる・・・って感じかな」
「まっ!ドイツで戦車道するよりもこっちで自分の戦車道見つけた方がエミらしくていいんじゃないか?」
「・・・あぁ、そうね」
「んっ?エミ」
「あっ!飛鳥ちゃん!エミちゃん!2人でなに話してたの?」
「ツンデレ小学生エミちゃんの話」
「えっ!?昔のエミちゃんの話?」
「ちょっ!?飛鳥っ!!」
「戦姫っ!!ちょっといいか!!」
ワイワイと幼馴染の3人が話し合っていた。
するとミレイアとルフナの2人が立っていた。
「雪上のジャンヌダルクがこのアタシに質問とはどういった用件かな?」
「ミレイアでいい!!そんな事はどうでもいいの!今回の試合でも思ったんだけど、貴女はどうして敵の作戦を見破れるのっ!?先見の力が長けているのっ!?」
「・・・そんなのない」
「なっ!?私の考えが違うのならどう説明しますの?」
「あぁ~・・・簡単に説明するなら・・・・・」
「勘だな」「勘ね」「勘ですね」
「なんでエミと瞳も解ったように答えてんだよ」
「そんなの昔から口癖のように聞かされてる私達からしたら解って当然よ。ねっ、瞳」
「そうだねぇ~みほちゃんに昔聞かれた時も同じように答えてたもんね」
「生まれ持った才能・・・ですね」
「そんな大それたモノじゃないよ。努力したら身に付くモノなんじゃないか?アタシはいつの間にか会得してたみたいだけど・・・・・」
「やはりそれも戦姫と言われる所以の一つなのかもしれませんわね」
「みんなアタシの事買いかぶり過ぎだっての・・・・・っと」
ラムネをグイッと飲み干した飛鳥は湯船から出るように立ち上がった。
「んっ?そんなにラムネ持って何処に行くんだ?」
「ちょっとした野暮用だよ」
ラムネを3本持って飛鳥はサウナへと向かう。
ゆっくりと中に入るとそこには見慣れたメンバーが座っていた。
「こんな所に隠れてたら干からびてミイラになっちまうぞ?ほれっ」
「今日の主役は君達であって私達は招かれざる客人・・・表舞台に姿を見せるべきじゃない」
「あははっ!!そんなの関係ねぇよ!戦車道やってるヤツはみんな仲間!・・・だろ?」
「ふふっ・・・君のそうゆう所は昔から変わらないね」
「アキ!ミッコ!温泉の後には食事も用意してあるからたくさん食べて帰るんだぞ?お持ち帰りも出来るように伝えているから遠慮なく持って帰っていいからなっ!!」
「ミカ!!やっぱり飛鳥さんは女神様だったよっ!!」
「いつもいっつもありがとうございます!!」
「可愛い後輩に辛い思いさせ過ぎるなよ?それじゃあ楽しんで行ってくれ♪」
「・・・善処するよ」
サウナを後にしたと同時にお腹が鳴ったのに気付くと温泉を後にして食事に行こうと更衣室に向かう。
いそいそと着替えているのだが、不意に近付いて来た人達に顔を向ける。
「アタシになにか用ですか?山守さん、土居さん」
「音子でいい!それにしても・・・お前スタイルいいな」
「はっ?」
「私も千冬でいいわ。それにしても・・・貴女モデルか何かなの?」
「はっ??」
「おいおい俺が先にコイツのスタイルに惚れたんだ!てめぇ、いい加減にしろよ」
「あら、どう考えても私の方が先に目を付けていたわ」
「アンタら勝手にアタシの裸をまじまじと見ながら喧嘩おっぱじめてんじゃねぇよ!!」
「いえ、恐縮ではございますが日野本殿の裸を素晴らしいモノだと感服いたしましたっ!!」
「そう言う感想待ってないから、西さん!!」
「あっ、恐れ多いのですが私の事は絹代で構いませんので何卒宜しくお願い致します」
「だ・か・らぁぁぁっ!!!!」
自分の裸を前にして言い合い始める面々に怒鳴り散らす飛鳥。
だが、ふと視界の隅に会長が真剣な表情で出て行く姿に逃げるように着替えて飛び出した。
「会長・・・どうかしたのか?」
「いやぁ~ちょっと呼び出されちゃったみたいなんだよねぇ~・・・まぁ、飛鳥ちゃんはゆっくりと楽しんでおいてよ」
「お言葉に甘えてそうさせて貰います♪」
「うん、じゃあ行って来る」
小さな会長の背中を飛鳥はいつものようにふらふらっと手を振って見送った。
その後は食事会で盛り上げるようにあんこう音頭を披露したり、お手製の料理などを用意して今回参加してくれた学校を精一杯おもてなししたのであった。
会長が不在だった為に他校の見送りはネコさんチームとハヤブサさんチームが進んで引き受けていた。
「いやぁ~親善試合も見事な成果だったな、姫!!」
「そう言ってもらえると嬉しいです。あんな試合はいつもの戦車道とは違った楽しみ方があって楽しかったです」
「うむ、いつもとは違う三つ巴の戦場は緊張感も別段に違うから武者震いが止まらなかったぞっ!!」
「気に入ったのなら強襲戦車競技にチャレンジしてみませんか?」
「強襲戦車競技・・・初めて聞くな・・・・・んっ?アレは・・・どうしたんだ?」
「みんな立ち往生していますね」
戦車を並走しながらキューポラ越しに会話をしていた飛鳥と三笠。
しかし、学校に辿り着くとそこには大洗のメンバーが立ち往生していたのである。
「みんな~何かあったのか!!」
「まだ残っていた生徒が居たみたいですね」
「・・・・・っ!?!?!?」
「大洗女子学園は8月31日付で廃校が決定し・・・・・っ!?き、君はっ・・・!!」
いきなり目の前に現れたスーツ姿の男。
その人物を目の当たりにした飛鳥は目を見開いたと同時に唇を噛みしめ怒りを込めるように拳を握りしめていた。
男は気付いておらず、眼鏡をくいっと上げてから要件を口にしたのだが、まさかの出会いに引き攣ったような表情になり、冷や汗が体中から溢れ出て来るのを感じ取っていた。
「お前だけは・・・絶対に許さないっ!!!!」
「ひいぃぃぃっ!?!?」
「お、落ち着けぇぇぇっ!!みんな!飛鳥を止めてぇぇぇっ!!」
今まで見せた事のないような怒りに満ちた表情の飛鳥は男に向かって歩き出す。
しかし、それをいち早く抱きついてでも止めに入ったのは、文であった。
「アイツが・・・現れたせいで・・・アタシの戦車道は滅茶苦茶にされたんだぞっ!!!!」
「姫っ!!落ち着けって!!」
「飛鳥!!止まれってぇぇぇ!!」
「逃げるなぁぁぁぁっ!!!!」
薫、文、岬の3人で飛鳥を止めようとするもそれでもじりじりと前に進む姿に男は慌てたように走り去っていった。
憎しみのこもった叫び声がこだまする中で三笠は杏の前に立っていた。
「先程の男が放った言葉は真実か?」
「あぁ・・・廃校が免れると言う話は確約ではなかったそうだ」
「それでは・・・ボク達が必死になって戦って来たのは無意味だったと・・・」
「・・・・・・・・・・」
「皆さん、抑えられない気持ちがあるのは理解出来ます。ですが、寮の方は寮に帰って、自宅の方は家族の皆様と一緒に引っ越しの準備をしてください。急な事ではありますがお願い致しますわ」
暗いムードの中で自分に注目を集めるように手を鳴らした花蓮は冷静に指示を伝える。
そして、残されたカメさんチーム。
泣きじゃくる桃。
それを宥める柚子。
そっと会長を抱きしめる花蓮。
その胸に顔をうずめる杏。
4人はしばらくそのままでいた。
戦車倉庫にカメさんチーム以外は集まっていた。
みんなが静まり返った空気の中で三笠がとある話題を持ちかけた。
「姫・・・あの男とはなにか因縁があるのかい?」
「・・・・・中学時代にひと悶着あった」
「そうか・・・姫が嫌じゃなければ教えてくれないかい」
「別に構わないけど、どうして知りたいんです?」
「当然じゃないですか!!あんな先輩の姿を見て放ってなんておけないじゃないですか!?」
「・・・ツバサ」
「それに私達は仲間なんだからアンタが抱え込んでるもん全部出しなさいよ!!」
「沙織にそんな事言われるなんてな・・・驚いたわ」
「なっ!?」
「飛鳥さん・・・教えてくれますか?私と別れてからのお話を・・・・・」
さっきの怒りで握りしめていた手を撫でてから周りを見渡すと飛鳥の周囲をチームメイトが心配そうな表情で見守っていたのだ。
「わかった・・・アタシの昔話に付き合ってくれ」
大きく深呼吸をした飛鳥はいつものようにポケットから棒付き飴を取り出すと昔話を始めるのであった。