「エミ!!」
『なによっ!!』
「先に一番槍頂きました~♪」
『ちょっ!?なんで先にアンタがやってんのよっ!!』
「コレが・・・運命ってヤツさ」
『ムキィィィッ!!!!』
子供のようなやり取りをしているエミと飛鳥。
だが、ネコさんチームのメンバーはこんなに楽し雰囲気で喋る飛鳥は初体験である。
「別人みたいだよな・・・」
「・・・・・新鮮です」
「闇の気配がなく、怒りのオーラすらも微塵も感じぬぞ」
「エミさん、みほさん、飛鳥さんは小さい頃からのお知り合いみたいです。だから、あんなに楽しそうなんじゃないでしょうか?」
「それにしても・・・あの笑顔は怖いぞ」
「うむ、いつもとは違うまた別の不気味さを増加させている」
「おい、聞こえてんぞ?」
飛鳥の低い一言にピンっと背筋を伸ばす2人。
ピリッとした空気の中に通信が割り込んでくる。
『飛鳥様!ご報告いたしますわ』
「エクレールか、どうかしたのか?」
『現在Bチームと交戦中なのですが、フラッグ車だけが確認出来ておりませんの』
「なにかしらの策か・・・それとも・・・・・」
『飛鳥!目の前見て!!』
「んっ?アレは・・・・・」
急に叫ぶエミの声にキューポラから頭を出した飛鳥はとある光景を目の当たりにした。
Bチームのフラッグ車をAチームが総動員で追いかけてる姿を・・・・・。
「両フラッグ車確認!!」
「了解っ!!」
「おっ!そうだ!玲那、車長やってみるか?」
「・・・い、いいの?」
「あぁ、憧れてたんだろ?振り落とされるんじゃないぞ」
「・・・・・うん!ありがとう♪」
そう言って飛鳥と玲那はチェンジした。
砲手が飛鳥になった途端にピリッとした緊張感が走る。
「エミ!」
『今度はなにっ!!』
「アタシの背後を任せたいんだけど、頼まれてくれるか?」
『へぇ~アンタからの頼み事なんて面白いわね!その話乗ったわ!!』
「それじゃあ・・・アタシとエミで裏から周り込むから他の車輌はそのまま追走!!健闘を祈るっ!!」
『『『了解っ!!』』』
ネコさんチームとティーガーⅠだけは別行動をする為に裏へと回り込む。
残りのメンバーは追走が始まり、三つ巴が始まるのであった。
『飛鳥!!この先には何があるの?』
「確か・・・かなり大きめの駐車場!!」
『それなら待ち伏せしてる連中が・・・』
「絶対にいるっ!!」
裏通りを抜けた先に待ち受けていたのは、Bチーム。
丁度乗り上げた後だったのだろうフラッグ車のダージリンと鉢合わせしたのであった。
思惑通りの展開に飛鳥とエミはニヤリと笑った。
「戦姫(ワルキューレ)!?どうしてココに居るのよ!!ダージリンを追ってたんじゃないの!?」
「あちらは別動隊のようです。やはり・・・一筋縄ではいかない相手のようです」
「相手は少数だが、精鋭部隊!!薫、見せ所っ!!」
「あいあいさー!!」
まさかの乱入にフラッグ車を護るように陣取るカチューシャとノンナ。
それに食いつくように仕掛けようとする飛鳥とエミ。
そして、その間に追いついたみほ。
3チームのフラッグ車がこの場に集合してしまうのであった。
「えっ!?みぽりん!!飛鳥、飛鳥達も居るよ!!」
「・・・・・天下分け目の駐車場」
「西住殿!どうするでありますか?」
「ここは・・・・・」
「みほは任せたぞ?」
『言われなくてもそうさせてもらうっての!!』
「元気でよろしい・・・それじゃあ難所を攻略するか」
「ダージリン様、いかがいたしましょう」
「そうね、一瞬の油断が命取りになるわ。そうでしょ?カチューシャ」
「言われなくてもわかってるわよっ!!」
三すくみ状態・・・各々の思考が入り乱れる中先手を打ったのはやはりこの女であった。
「直撃っ!?状況は!?」
「恐らく履帯だけを狙われました!!」
「戦姫(ワルキューレ)!!!!!」
「先手必勝!!カリエンテは装填急げっ!!」
「任せておけぇぇ!!」
「薫!!Bチームのフラッグ車から離れるなっ!!離れたら負けると思えっ!!」
「わかった!!」
「ツバサは動きがあったらすぐに報告!玲那も何かあればよろしくっ!!」
「はい!!」「・・・うん!!」
得意とする履帯撃ちを決めるとネコさんチームは食い入るようにBチームフラッグ車にタックルを仕掛ける。
「くっ・・・野蛮な方々ですわね。ダージリン、どうしますの?」
「焦らずに相手の思惑通りに・・・このまま並走して相手の虚を突くわ」
「はい!!」
激しくぶつかり合う2輌。
だが、背後では違う2輌が火花を散らしていた。
「アイツには後で礼言わないとな」
「エミちゃん!!」
「あぁ、打倒!みほ!!」
「相手から熱いなにかを感じますわね」
「えっ!?華、そんなのわかるの!?」
「・・・・・やる気満々だな」
「皆さん、油断せず行きましょうっ!!」
「「了解っ!!」」
こっちは逆に激しい砲撃戦が繰り広げられていた。
8の字を描くようにキレッキレの戦闘に戦車内のメンバーは闘志に溢れていた。
その2つの渦中に居たカチューシャとノンナは何もせずに居た。
「戦姫にしてやられましたね、カチューシャ」
「何を呑気な事を言ってるのよ!ノンナ!!早く援護射撃を・・・・・」
「いえ、この状況では迂闊に撃つのは得策ではありません。それを理解した上で戦姫はあの戦法を仕掛けているかと・・・」
「なぁっ!!ここまで考えてたの!?戦姫!!!!」
「ふぇっくしょん!!」
「のわっ!?汚っ!!!!」
「仕掛けるタイミングは逃すなっ!!合図と共に行くぞっ!!」
「神風ですか?」
「モチのロンッ!!!!」
「速度を上げるばかりが、人生ではない・・・・・」
「・・・はい?」
「・・・・・言葉通りの意味よ」
「急停車ぁぁぁ!!」
ダージリンのいつの格言にポカンとした車内ではあったが、不意に叫んだアッサムの声に操縦士は咄嗟に反応する。
並走していたのに急停車して背後を手にしたダージリンは口元を緩ませた。
「先に痺れを切らせたな・・・薫!!」
「わかってるわよっ!!神風ぇぇぇっ!!」
ネコさんチームの得意とする神風作戦。
平然とドリフトさせる薫の表情は童心に帰ったようであった。
見事な腕前で小回りをきかせたドリフトで180度も回転させたネコさんチームはBチームのフラッグ車とお見合いする形になった。
「・・・・・っ!?!?」
「おらぁぁぁぁっ!!!!」
驚きでティーカップを落としてしまうダージリン。
叫び声と共に両車輛から砲弾が放たれる。
ドリフトのせいもあり、2輌は煙に包まれていた。
それと同時刻。
「そろそろ引導を渡してあげなきゃね」
「エミちゃん、楽しそうだね」
「当たり前でしょ!!こう言う機会じゃなきゃ闘えないんだから」
「・・・このままだとジリ貧だぞ、どうする?」
「次の一撃で決めましょう、華さん」
「わかりました・・・次の一撃に集中して・・・・・」
こちらの2輌も短期決戦を望むのか大きく8の字を描くと睨み合うように対峙した後前進を開始した。
「撃てぇぇぇっ!!」
「今ですっ!!!!」
双方の号令と共に放たれた砲弾。
見事な一撃は両車輛に着弾し、双方の車輛からは白旗が姿を見せた。
そして、もう一方では白旗は一本。
車長として身を乗り出していた玲那は目の前の光景に拳を高らかに挙げた。
≪大洗・知波単 フラッグ車 走行不能
聖グロリアーナ・プラウダ フラッグ車 走行不能
マジノ連合 ティーガーⅠ 走行不能
よって、マジノ連合の勝利!!!!≫