「奇襲を狙うつもりだったんだが・・・ココで決めるか」
「千智、本隊は数分後には到着するから焦る必要はないよ」
「いや、マウスと共闘すれば一瞬だ」
「じゃあターゲットはどれにするんすか?」
「・・・・・本当は飛鳥と一騎打ちしたかったんだがな。この場で私情をはさんだら優勝が遠ざかる・・・目標は敵フラッグ車だ」
「・・・みほさん」
「小梅、変わろうか?」
「ううん、私がやります!」
「チッ!マウスだけでも厄介なのに・・・良い勘してやがんな、アイツ」
「飛鳥!どうすんだこの状況っ!!」
「くっ・・・あんこうチームに敵を近付けさせないに決まってんだろ!」
「合点承知っ!!」
「全車に通達!フラッグ車がやられればこの試合は敗北になる!総員奮起せよっ!!」
『『『了解っ!!!!』』』
まさかの展開に慌てふためく大洗陣営。
だが、飛鳥の号令に感化されると全員が奮闘を開始する。
するとみほからとある通信が入る。
「なにっ!?マウス攻略の糸口が掴めたのか?」
『はい!少々無茶な作戦にはなると思いますが、絶対に成功させます!!』
「じゃあ・・・あの連中の足止めは任せとけ」
『少しの間ですが、よろしくお願いします!!』
「了解」
それと同時にみほを中心としたマウス攻略メンバーはこの場から離れていく。
マウスは後を追うように追走するが、ティーガーⅡ達はチャーフィーから溢れ出る威圧に動けずにいた。
向こうは、ティーガーⅡが1輌、パンターG型が2輌。
それに対してこちらは、ネコさんチーム、カモさんチーム、カバさんチームの3輌。
「千智、フラッグ車を追わなくていいの?」
「あんなに狙い定められてたら逆に撃破される」
「・・・・・いままでにない圧力」
「姉貴!向こうはこっちと一戦やり合うつもりっすよ?」
「好都合だな」
「ち~ちゃん嬉しそぉ~」
「2輌で相手の取り巻き2輌をお願いしてもいいですか?」
『心得たっ!』
『任せときなさいよっ!』
「ふぅ・・・敵の本隊もこちらに近付きつつあるから速攻で決めるのが一番の上策」
「ココが一番の勝負所かよ!燃えてくるってもんよ!!」
「先輩!陣形はどうしますか?」
「このままで行くよ・・・みんなを信じてるからな」
「・・・・・わかった」
「ふっはっはっ!!リミッターを外させてもらうっ!!」
「それじゃあ・・・パンツァー・フォー!!!!」
先制打と言わんばかりの砲撃がチャーフィーから放たれる。
しかし、同タイミングで動いていたのか砲弾は側面を掠り反れた。
と同時に3輌対3輌の戦いが始まる。
「相手の砲手・・・上手いな」
「千智!マウスが身動きを取れなくされたって!!」
「やっぱり・・・なにか考えがあっての行動か・・・侮れないな、西住さんは・・・・・護衛として付けてたⅢ号戦車はどうした?」
「さっき二手に分かれる際にポルシェティーガーにやられてるよ」
「じゃあ姉貴!救援に・・・・・」
「不可能だ」
そう千智が言った途端仲間のパンターG型が救援に向かおうと方向転換した瞬間鋭い砲撃を受けてしまう。
一瞬の判断ミスが敗北になると言う事を示されたようにも見える。
千智はチャーフィーからの熱い視線を送ってくる人物と目が合う。
「へへっ・・・みほの作戦のおかげで向こうは集中出来てないみたいだな」
「私・・・興奮してきた」
「ったく・・・いきなり脱がないでくれよ」
「脱がねぇよ!!」
などと馬鹿なやり取りをする2人ではあるが、真剣な眼差しではあった。
飛鳥は目の前の相手がなにか行動を起こさないかと目を逸らす事はしなかった。
しかし、相手の砲塔の向く位置に疑問が生じる。
この異変に気付いて喉頭マイクに手を当てた時にはもう遅かった。
「カモさんチーム大破っ!!」
「死角を狙われたか・・・攻撃の手を緩めるなっ!」
「・・・わかった」
「ツバサ!カモさんチームの状況はどうだ?」
「怪我人はありません!」
チャーフィーの背後に位置していたカモさんチームは、死角からの砲撃で撃墜されてしまっていた。
そう先程の砲撃がこの出来事を起こしてしまったのだ。
かなりの精度がなければ、背後に位置する車輌を撃ち抜くのは至難の業。
しかし、交換とばかりに相手のパンターG型を撃破する。
「これは~ヤバくな~い?」
「千智・・・マウスもやられたって報告が・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「姉貴!どうするよっ!!」
「やり合うしかないだろう」
「・・・・・うん!」
「アイツなら捨て身で来るな」
「どうしてわかるんですか?」
「アイツの事だからこの状況・・・捨て身で1輌撃破は確実に狙いに来る」
「じゃあ、私達はどうするんだ?」
「迎え撃つに決まってるだろ」
そう言っていると向かい合うように両車が停車する。
カバさんチームは後方斜めでいつでも援護射撃が出来るように陣取っていた。
先行を仕掛けてきたのは、ティーガーⅡ。
全速力で向かって来る相手に対して玲那は冷静に砲撃を放った。
砲弾は見事に右側の履帯を射抜いた。
車体は右半分が浮いた形でネコさんチームの横を擦り抜けた。
しかし、その瞬間であった砲撃音が聞こえたのは・・・。
飛鳥は慌てたように振り返る。
そこには横転しているティーガーⅡと正面装甲を的確に撃ち抜かれて白旗を出すカバさんチームの姿があった。
「向こうの砲手も見事だな」
「姉貴ぃぃぃっ!!」
「でも、向こうのⅢ突は仕留められた」
「さすがだね~小梅ちゃ~ん」
「・・・・・まだまだです、私は・・・・・」
「はぁ・・・後は隊長にすべてを祈るのみか」
「マジかよ・・・あの状況下でやりやがったな・・・黒森峰の砲手さん」
「カバさんチーム、怪我人はゼロです!!」
『不覚を取った・・・無念だ』
『私達の分も任せたわよ、日野本さん!』
「11対6・・・か」
「先輩・・・カメさんチームが行動不能らしいです」
『日野本ちゃ~ん・・・ちょっと無理させ過ぎたみたい・・・後は任せたよ』
「先輩!黒森峰本隊、まもなく到着します!!」
その報告と共に飛鳥は地図を取り出して打ち合わせの内容を思い出していた。
イヤホンではもう黒森峰本隊と接敵したらしくふらふら作戦が開始されていた。
忙しく指示が飛び交う中で飛鳥は戦車内に戻る。
「ふらふら作戦が始まった」
「現在戦力を分ける事に成功しているみたいで各個奮戦しています!」
「玲那・・・変わろうか」
「・・・・・うん」
強く握手を交わした2人。
互いに位置が変わると玲那はキューポラから上体を出す。
飛鳥は一回髪を掻き上げると大きく深呼吸した後に喉頭マイクに手を当てる。
「こちらネコさんチーム・・・これより見敵必殺(サーチアンドデストロイ)を執行する」
『かしこまりました!皆さん位置情報を的確に伝達お願いします!!』
『『了解っ!!』』
『隊長!後続にいるエレファントとヤークトティーガーの方任せてもらっても宜しいですか?』
『お願いします!』
「ウサギさんチームはやる気だねぇ~♪」
「じゃあ・・・アタシは全車輌撃破する」
「むむっ・・・覇王はやりかねんから恐ろしい」
「・・・て言うかなんでちょっと拗ねてるんですか?」
「重戦車を狩りたかったんだとよ」
『日野本先輩!そろそろ合流します!!』
「・・・了解」
アヒルさんチームの通信と共に戦車は前進する。
大通りに顔を出そうとする最中に目の前を逃げるように走り抜けるアヒルさんチーム。
それを確認した途端停車を指示する飛鳥だったが、次の瞬間・・・砲撃。
タイミングはドンピシャで後続にいた敵車輌の横っ腹に直撃。
白旗を確認した直後、そのまま追走を始める。
「あんこうチームは敵フラッグ車との一騎打ちに成功!!現在はレオポンさんチームが進路を封鎖中との通達が・・・」
「正念場だな・・・アヒルさんチーム!アタシ達はレオポンさんチームの援護に向かう!!」
『了解ですっ!!』
「無茶はするな・・・よっ!!」
救援に向かう移動の最中も援護射撃とばかりに砲撃し、敵車輌1輌の履帯を切ってからこの場を去った。
「ウサギさんチーム!やられちゃいました!!」
「・・・でも、あの2輌は宣言通りに喰ったんだから上出来だな」
「こりゃあ私達も先輩の腕を見せないとね!」
「・・・・・目標地点あとわずか」
「挨拶代わりだ・・・受け取れぇぇっ!!」
援軍として敵の背後から現れると登場と共に1輌の背面に砲撃をぶちかますと撃破させた。
「失敗兵器だけでも邪魔だと言うのに・・・!!」
「アタシ達は全力で時間稼ぎ!全員最後の力振り絞れぇぇぇ!!」
「「うおおおぉぉぉっ!!!!」」
前と後ろとの共闘が開始される。
しかし、敵は前の通路を閉鎖しているレオポンさんチームに砲撃が集まっており、後ろは無視するつもりだろう。
「アイツら・・・意地でも横槍入れたいみたいだな」
「どうすんだ!飛鳥!!」
「行かせる訳ないだろうっ!!」
そう言って飛鳥はカリエンテにとある砲弾を指示した。
と同時に標準を敵車輌から味方車輌の方へと向ける。
「先輩!!」
「黙って見てろっ!!」
次の瞬間砲撃は撃ちだされた・・・レオポンチームの背後へと・・・。
見事に着弾したのは、さっきカリエンテに伝えておいた・・・榴弾。
轟音と共に着弾したレオポンチームの背後の通路は瓦礫で埋まってしまう。
「・・・・・見事」
「言っただろう?行かせねぇ・・・ってよ」
「アヒルさんチーム!レオポンさんチーム!共に走行不能ですっ!!」
「後は・・・アタシらとあんこうチームだけか」
「どうする、覇王」
「みほはやってくれる・・・そう信じてやる事さ!!」
と残った敵車輌に砲弾を浴びせる。
しかし、ここは狭い路地裏。
アヒルさんチームを追走していた車輌も合流してしまい完全に逃げ道の無い状況に陥ってしまった。
「これは・・・万事休すですね」
「いや、背水の陣かもしれぬ・・・」
「この状況下なら四面楚歌だな」
「・・・・・絶体絶命」
「つっこまないからな」
などと口ではボケていたが、この絶体絶命の状況下に冷や汗が頬を伝う。
しかし、この緊迫した空気を突き破るアナウンスが鳴り響く。
《黒森峰、フラッグ車・・・走行不能!よって・・・・・大洗女子学園の勝利っ!!!!》
そのアナウンスと共に飛鳥の体から力がふっと抜けた。
それと同時にメンバー全員が抱きついて来て喜ぶ姿に飛鳥は自然にガッツポーズと笑顔になっていた。