ガールズ&パンツァー 紅蓮の戦車乙女   作:宣伝部長

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背水の陣です!!

「あっはっはっ!!さすがは姫だな!用意周到だなぁ~!!」

 

「念の為に後方部に予備分を取り付けておいただけです。それよりも、何故ハヤブサさんチームにも予備分があったんですか?アタシは指示していませんでしたが・・・・・」

 

「不知火の勘だよ♪アイツの勘はこれまで外れた事はなかったからね!飛鳥くんの真似事をしてみて取り付けておいたって訳さ!!」

 

「まぁ、これだけの物資があれば本隊の士気も下がらずには済みます。・・・・・おい!遅れたら放って行くぞ?」

 

「いやいやいや!!なんで私だけリュック2個なの?可笑しくない?鮫島さんは分かるよ?なのになんで非力な私に2個ってかなり無理があると思うんですけど!?!?」

 

「つべこべ言わず歩けよ・・・駄犬」

 

「えええっ!?犬なの?私、飛鳥の犬に成り下がったの!?い、いや・・・待てよ!それならこれからは犬としてあんなことやこんなことも・・・・・ぐっへっへ・・・・・」

 

「アイツなんか涎を垂れ流しながら歩いてるけど大丈夫なのかい?」

 

「はい、いつも通りなんで気にせず先に進みましょう」

 

「あはは・・・平常運転ねぇ~・・・・・」

 

 

 

救援物資を運送中の4人は1列になって目的地である本隊の場所へと向かっていた。

しかし、先頭を歩いている飛鳥のリュックには真っ赤な旗が突き刺さっていた。

なんの役に立つかと言うと・・・・・。

 

 

 

『飛鳥さん、前方に敵影があります。少し右側に迂回しながらまた前進して下さい』

 

「了解しました。玖琉院さんも引き続き遠方からの指示出しをお願いします」

 

 

 

連絡が来たのは、戦車にて待機をしている中で一番視力の良い玖琉院からである。

戦車の位置から敵影をざっくりと見えるらしく、玖琉院はナビ役を任せられたのだ。

目印である赤旗を中心に敵影に接近しないように事前に指示を受けて救援物資部隊は動いていた。

そのおかげで、飛鳥達一行はトラブルもなく本隊の元へと向かえている。

 

 

 

 

その頃、偵察部隊は・・・。

 

 

 

「この辺りも傾斜がありますね・・・要注意箇所・・・と」

 

「・・・ここからなら敵車輌もかろうじて確認出来ます」

 

「向こうは油断しきっていますからこの短い間に地形を把握し、有利な位置を探しておきましょう」

 

「はい・・・敵車輌の偵察は本隊のみんながしてくれるみたいだから・・・・・私達は日野本さんにお願いされた事をしましょう」

 

 

 

玲那と不知火は、広範囲の地形の偵察をしていた。

飛鳥曰く、『地形も最大の武器となる』との事らしく2人は止まる事無く雪原の中をもくもくと走り回っていた。

 

 

 

 

そして、もう一方の偵察部隊はと言うと・・・・・。

 

 

 

「ブリザードのノンナってどんな人なんですか!?」

 

「長身でサラッとした黒髪で無表情だよ!!」

 

「わ、わかりました!!・・・て言うかバレてるみたいですけど、大丈夫なんですか!?!?」

 

「戦姫の手の者め!!今すぐに止まりなさい!!」

 

「体力ある方?」

 

「自信はありますけど・・・」

 

「それなら諦めずに走るのよぉぉぉ!!」

 

 

 

ツバサと文は、プラウダの主力とも言われている『ブリザードのノンナ』とも言われているノンナが何処に居るのかの確認であった。

しかし、突如として現れたミレイアに目を付けられて現在逃走中である。

必死に逃げる2人だが、目的は忘れずに辺りの警戒は続けていた。

 

 

 

「吹雪いて来た・・・偵察に出てるみんなも心配だけど、補給物資を持って来てくれる飛鳥さん達は・・・・・」

 

「アタシ達がどうかしたか?」

 

「飛鳥さん!?それに・・・偵察のみんな」

 

 

 

噂をすればなんとやら、補給物資隊とそれに別々に偵察に出していた偵察部隊も難なく本隊に集まる事が出来た。

ちなみにツバサと文が汗だくだったのは事情を聞いて納得した。

 

 

 

「あの雪の中でこんなにも詳細に・・・」

 

「しかも、地形の深さ、遮蔽物、乗員もリサーチされてるなんて驚いたな」

 

「我々は命を全うしたまでだよ」

 

「その通りであります!」

 

「これも勝つ為なら最善を尽くすまでよ」

 

「頼れる仲間で助かったぜ!」

 

「はい、これで作戦が立てやすくなりました♪」

 

 

 

完成された完璧な地図を土台に作戦会議が始まった。

その奥では、大きな鍋でなにやら料理を作り始めていた。

 

 

 

「あの・・・なにをお作りになるおつもりなのですか?」

 

「あぁ・・・豚汁だよ!あたいだけで作るにゃあ荷が重いからさぁ~手を貸してはくれないかい?」

 

「わかりました!!根性でやるぞぉぉぉ!!!!」

 

「「「おおぉぉぉ!!!」」」

 

 

 

一同が一丸になって豚汁作りが開始された。

そんな光景に作戦会議をしているメンバーも気になるようだ。

 

 

 

「アレは全部日野本の私物なのか?」

 

「そうですよ。この日の為に一応用意出来る物はすべて用意しました」

 

「だ、大丈夫なの?あの・・・お金とか・・・・・」

 

「心配なく、学校がなくなるよりは損害は少ないと思います」

 

「飛鳥さん・・・貴女・・・・・」

 

「えぇ・・・すべては三笠さん方から聞いています」

 

 

 

飛鳥の真剣な表情に生徒会のメンバーは伏せるように俯いてしまい、横に居たみほはどうしたらいいのかわからずに見守る事しか出来ずにいた。

しかし、飛鳥は大きく息を吐くとこう呟いた。

 

 

 

「廃校なんてアタシが意地でも阻止してみせます」

 

「日野本ちゃん・・・・・」

 

「だから、アタシは全力で戦います。全身全霊で・・・・・」

 

「うん、私達が大洗を勝利に導きましょう!!」

 

「ありがとう・・・2人共」

 

 

 

2人の今までにない熱意に生徒会のメンバーも勇気付けられたのかさっきまでの雰囲気とは違った顔つきに変わっていた。

そして、作戦も決まったメンバーは出来たてアツアツの豚汁をみんなで囲んで楽しむのであった。

 

 

 

「かあぁぁぁ~・・・冷え切った身体に豚汁が染み渡るぅぅぅぅぅ!!!!」

 

「キモいぞ・・・薫」

 

「ズサッと胸に来る一言も無表情で言うんじゃないぞ、麻子ぉぉぉ!!」

 

「はいはい」

 

「お前、罰ゲームであんこう踊りな」

 

「えええっ!?!?そ、それは・・・飛鳥が踊ったら踊ってやらぁぁぁ!!」

 

「ほぅ・・・上等!女に二言はないな?」

 

「へんっ!どうせ、飛鳥は口だけであんこう踊りなんて・・・「薫先輩っ!!」・・・へっ?嘘でしょ?」

 

 

 

この場に居た全員が目を疑った。

そう・・・飛鳥が真剣な表情であんこう踊りを舞っているのだ。

しかも、キレッキレの振り付けで・・・・・。

 

 

 

「アタシはあんこう踊りを恥と思った事は一切ない!!小さな頃からあの舞台には何度も立っていたからな!!」

 

「謀ったな!飛鳥ぁぁぁ!!」

 

「・・・・・見事に策に嵌ったな」

 

「にしても、飛鳥が本当に踊り出すなんて思わなかったよね」

 

「アレは・・・皆を盛り上げようとしているように私は見えますよ」

 

「盛り上げる・・・ですか?」

 

「そうさ!始まる前までは押せ押せムードだったのに今は叩きのめされてこの状況さね!アイツは隊長らしく皆の士気を上げようと必死なのさ!!」

 

「飛鳥・・・さん・・・っ!!」

 

「えっ!?みぽりん!?」

 

 

 

同じ隊長として意を決したのかみほも駆け寄って来て飛鳥と一緒にあんこう踊りを始めたのだ。

その光景に最初は戸惑うメンバー達だったが、1人また1人と踊る人数は増えて行き、いつの間にか全員で踊っていた。

踊っているみんなの表情には先程までの暗い顔はなく満面の笑みで躍る姿があった。

しかし、その踊りはいつの間にか居たプラウダの生徒の呼び掛けにより、中断させられてしまった。

 

 

 

「もうすぐタイムリミットです!降伏は・・・「しない」・・・っ!?」

 

「全力でお相手すると伝えておいてくれ」

 

 

 

プラウダの生徒の言葉を遮るように飛鳥が鋭い目つきで自分達の答えを口にするとビクッと怖がったようにプラウダの生徒はたじろぐ。

そんな彼女の耳元にそっと顔を近付けて宣戦布告を告げたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「覇王よ、よくぞ我がもとに舞い戻ったな!褒めて使わす!!」

 

「芋虫のままで言われても迫力ないぞ」

 

 

 

任務を済ませた飛鳥一行は戦車の元に辿り着くとお互いに戦車に乗り込んだ。

しかし、最初とは違い。今回は飛鳥が砲手のスタイルである。

 

 

 

「全員作戦内容は把握したか?」

 

「ネコさんとハヤブサさんで出て来る仲間を全力サポートだろ?」

 

「フラッグ車とか距離が反対側だからな。無理に狙いに行こうとすれば、こちらが先に迎撃されて本隊を危険に晒してしまうからな」

 

「まずは、敵の主力を削ぐ事ですね」

 

「そう言う訳だ。激しい撃ち合いになるのは必須事項だ。カリエンテ様の装填スピードが勝敗を分けるから本気を頼むぞ」

 

「ふっふっふっ・・・ここまで暖めてきた灼眼を解放する時が満ちた・・・と言う事か」

 

「ツバサと玲奈は・・・臨機応変に頼む」

 

「はい!」

 

「・・・わかった」

 

 

 

エンジンも暖まったの確認するとハヤブサさんチームに合図を送り、2輌はゆっくりと前進を始める。

それと同時刻に本隊も準備が整ったのか、後は合図を待つのみになった。

 

 

 

「みほ!」

 

『はい!それでは、これから敵包囲網を一気に突破するところてん作戦を開始します!!パンツァー・フォー!!』

 

『援護射撃開始!!!』

 

「喰らいやがれぇぇぇ!!!」

 

 

 

本隊が飛び出したと同時に敵の砲撃が飛び交う。

しかし、敵は気付いてはいなかったその背後に忍び寄る影に・・・。

 

 

 

「えっ?ノンナ!!敵がこっちに向かって来てるじゃない!?」

 

「そのようですね」

 

「なんで貴女はそう呑気なのよ!!」

 

「カチューシャ様!背後に敵影が・・・」

 

「そんな訳ないわ!敵は正面に全車輌いる・・・って、本当に居るじゃない!?!?」

 

 

 

まさかの出来事に慌てふためくカチューシャ。

その間に大洗本隊は勢い良く間を擦り抜けて行く。

無事ハヤブサさんチームも合流に成功し、本隊はそのまま敵陣営を走り抜ける。

しかし、そこにはネコさんのチームはなかった。

 

 

 

「正面に4輌、後方からも4輌来てるって!みぽりん、どうする?」

 

「・・・・・うーん」

 

『正面の4輌引き受けたよ!ハヤブサさんチーム、援護射撃お願い出来る?』

 

『背中を護るのくらいお安い御用さ♪全車輌撃破目指しますか!!』

 

『上手くいったら後で合流するね!じゃあ、西住ちゃん!お願いね!!』

 

 

 

そう言うとカメさんチームとハヤブサさんチームは前方に展開している4輌に突貫するのであった。

そんな2輌をみほは悲しそうな目で見送る事しか出来ずにいた。

 

 

 

「海原」

 

「はい」

 

「頼んだよ」

 

「その心強いお言葉!この海原花蓮、全力で参りますわ!!」

 

 

 

信頼せし者からのエールに力を授けられた花蓮は、白色のレースの手袋を深く食い込ませると照準器を覗き込んだまま嬉しそうに笑った。

敵の砲撃から避ける様に動き回る中でも花蓮は躊躇なく砲撃を続ける。

通り抜けざまに履帯を破壊したり、ウィークポイントに的確に砲撃は命中している。

それに・・・危なくなった時には、ハヤブサが舞う。

 

 

 

「一撃必中」

 

「やるじゃないかぁ~魅哉!」

 

『さんきゅ~♪』

 

「当然です。この程度ならまだ朝飯前です」

 

「言うじゃないかい?じゃあアイツ等に楽させてやるかい?」

 

「任せてください」

 

 

 

フルスロットルの最中でも的確に砲撃を当てる魅哉に対して車内の全員が感心していた。

しかし、フルスロットルのヘルキャットを容易に操縦している京華も流石である。

2輌が4輌を翻弄したおかげでカメさんチーム、ハヤブサさんチームは無傷で4両の撃破に成功した。

 

 

 

「完全勝利だな!あっはっはっ!!!!」

 

「三笠さん・・・上機嫌ですね」

 

「アイツはあぁ見えて今回の初陣には一番緊張していたからね。今の実戦で吹っ切れたんじゃないかい?」

 

「あの三笠さんが緊張を・・・・・っのわぁ!?!?」

 

 

 

急ブレーキに居た全員は体勢を崩す。

キューポラから身体を乗り出していた三笠は飛び出しそうになったが、咄嗟に岬が足を掴んでくれていたので雪原に投げ出されずには済んだ。

しかし、外に出ていた三笠は思いがけない光景を目の当たりにしてしまう。

そう、敵の砲撃を受け横転してしまい煙と白旗をあげるカメさんチームの姿に・・・・・。

 

 

 

「杏ぅぅぅぅぅ!!!!!」

 

『そんなに叫ばなくても生きてるよ。けど、もう走行は不能だね、こりゃあ』

 

『ふぅ~・・・ここまでですか、ハヤブサさんチームの皆さん健闘を祈ります』

 

「あぁ、ボク達に任せときなさい!!」

 

 

 

一緒に学園を救おうとしていた仲間の離脱に三笠は唇をぎゅっと噛み締める。

しかし、インカム越しにはいつも通りさで返事を返すと敵からの砲撃を避けつつ本隊との合流を目指す。

 

 

 

 

 

「頼んだぞ・・・三笠」


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