ガールズ&パンツァー 紅蓮の戦車乙女   作:宣伝部長

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激闘!プラウダ戦です!

「いやぁ~・・・ついに準決勝かぁ~!!こうなんだか心が躍るぜぇ~!!」

 

「本当ですね!私達がココまで来れるなんて思いもしませんでしたよ」

 

「それもこれもみほちゃんと飛鳥のおかげだねぇ~♪」

 

「・・・・・へぇっ?」

 

「・・・たくっ、試合前からみほを困らせる事言ってんじゃねぇよ」

 

「あれ?飛鳥の戦車真っ白になってない?」

 

「これか?昨日仕上げたんだよ、ハヤブサさんチームと一緒にな」

 

「だからハヤブサさんチームも真っ白になっていたんですね、理解しました」

 

 

 

試合前と言う事もあり、緊張感に包まれてしまうのかと思ったが大洗のメンバーはその雰囲気すら見せずにいつもと変わりない雰囲気である。

但し、今回初参戦とも言えるカモさんチームは緊張を隠せないのか強張った表情で遠い景色を見つめている様子だ。

それに対してハヤブサさんチームは、やはり上級生だからだろうか落ち着いて戦車の最終チェックを声を出し合いながら行っていた。

 

 

 

「やっぱり上級生にもなると貫禄が見えますね!!」

 

「まぁ全員各自の分野ではエキスパートだからなそう簡単には臆さないだろう・・・1人を除いてな」

 

「あははは・・・・・」

 

 

 

飛鳥の視線の先では、ぽつんとヘルキャットの車体の上に体育座りをして黄昏る文の姿があった。

上級生に囲まれて1人疎外されているように見える彼女に流石の優花里も引き攣った笑みを浮かべていた。

 

 

 

「・・・飛鳥、お客みたいだぞ」

 

「んっ?アタシにか?さすがにプラウダに知り合いはいないはずなんだが・・・・・」

 

「・・・でも、一目逢いたいって・・・」

 

「はぁ・・・めんどくせぇ」

 

 

 

まさかの来客にめんどくさいながらも顔だけを合わせようと2人の後ろに付いてその人物の元に向かった。

しかし、後姿を見ると麻子と玲那がそっくりで少しクスッと笑ってしまいそうになったが、そこは我慢をしておいた。

すると2人に案内された先には凛とした女性が凄い目力で待っていた。

 

 

 

「貴女が・・・日野本飛鳥さんですか?」

 

「そうだよ」

 

「私は『雪上のジャンヌダルク』ことミレイアでございます!!」

 

「はぁ・・・・・」

 

「本日は戦姫とも呼ばれていられる貴女様に果たし状を送りに来ましたの!」

 

「却下」

 

「うえっ!?なっ!?なんでですか!?」

 

「いや、単純に考えてそれはめんどくせぇだろ」

 

「そ、そんな理由で私との勝負からお逃げになるのですか!?!?」

 

「はぁ・・・・・ったく、これだけは言っとくよ」

 

「な、なんですか?」

 

「大洗は・・・負けないから」

 

「ふふふっ・・・その自信をこの私の手でズタボロに引き裂いてあげます!!」

 

「へぇ~・・・楽しみにしてるよ」

 

 

 

去り際に2人の視線が合えば、じりじりとした火花が見えたような気がしたがお互いに背中を向け合うとお互いの陣営に戻った。

 

 

 

「・・・日野本さん、西住さんがブリーフィングだって言ってた」

 

「ほいよ」

 

「・・・それでさっきのはどんなヤツだったんだ?」

 

「革命児・・・かな?」

 

 

 

 

 

「そろそろ準決勝・・・あ、あぁっ、飛鳥様の試合姿が見られる!!」

 

「あぁ、そうだな・・・って、汚っ!?鼻水垂らしたまま泣くな!!」

 

「そんなの気にしてなんていられますか?ってか、なんで牛乳野郎がココに居るのよ!?」

 

「WHY?根暗ガールにそんな事を言われる筋合いはありませ~ん!!」

 

「エクレール様賑やかな方々ばかりですね」

 

「くっ・・・他人事のように言ってらっしゃらないでお止めになって下さいません?フォンデュ」

 

 

 

アンツィオ戦とはまた違ったメンバーで集まって観戦をしているのだが、犬猿の仲である2人のやり取りにエクレールは胃薬を片手にフォンデュに指示を出していた。

そんな彼女達の横には、優雅に紅茶を嗜むダージリンと惨劇に引き攣った表情のオレンジペコも同席していた。

 

 

 

「にしても、この寒さは尋常じゃないな・・・大洗の連中は大丈夫なのか?」

 

「飛鳥様でもこの戦況はあまり実戦されてはいません。それに他のメンバーは素人同然です。圧倒的に大洗が厳しいのは変わりないでしょう」

 

「Oh~StrangeTankが居ますね」

 

「そうですわね・・・前の試合とは違ってチャーフィーのカラーが真っ白に・・・それとヘルキャットも」

 

「なにかの作戦でしょうか?ダージリン様」

 

「ふふっ・・・見ていればおのずと見えて来るわ。それまではお預けと言った所かしら」

 

「・・・・・はぁ」

 

 

 

 

 

 

「しゃ、しゃぶい・・・こ、このままだと凍え死んじゃうよぉ~・・・・・」

 

「いつもの中二病のキャラすら忘れて素を越えたキャラが出来上がってないか?アイツ」

 

「斬子ちゃん朝も弱いんですが、寒いのにも滅法弱いみたいで最近なんて布団に包まって芋虫みたいになっていましたから」

 

「じゃあアイツは通信席に置いとくとして、ツバサ!!」

 

「はい!!」

 

「カリエンテ様の分も今日は頑張れそうかな?」

 

「はい!!一応筋トレも欠かさず練習メニューに取り組んでおきましたので申し分ないと思います!!」

 

「じゃあ他はそのままで行くから準備を頼んだ」

 

 

 

カタカタと震えながら通信席に座るカリエンテを横目にネコさんチームは準備に取り掛かっていた。

各々チームが試合前の準備をする中でカメさんチームに個人的に通信が入る。

 

 

 

「会長!ハヤブサさんチームから通信が・・・・・」

 

「・・・わかった、繋いでくれ~」

 

『杏!やっとお前との約束が果たせる時が来たぞ!!』

 

「いやぁ~みんな悪いねぇ~・・・・・私のわがままみたいなもんに付き合わせちゃってさ」

 

『我が校の危機だ・・・助太刀をするのは友として当然の事であろう』

 

『去年の優勝校相手に初陣だが、あたい達の絆の力にゃあ勝てないだろうさ!!』

 

「負けたら・・・最後」

 

「河嶋~そんな暗い事言うな~」

 

「そうだよ、桃ちゃん!弱気になったらダメじゃない」

 

「うぅ・・・柚子ちゃ~ん」

 

「まだ決勝も残ってるんですからこんな所で止まる訳には行きませんわね」

 

『その通りだ!!我々の物語はまだまだ終わらんぞぉ~!!』

 

「「「大洗ぃぃぃファイトォォォォォ!!!!!」」」

 

 

 

カメさんハヤブサさんチームから魂の叫びのような雄叫びが鳴り響くが、それは試合開始前のエンジン音で他のメンバーに聞こえる事はなかった。

ただ、廃校の件を事前に聞いている飛鳥の目には炎のような熱きモノが秘められているのにネコさんチームは気付いていなかった。

 

 

試合開始と同時に全車輌は固まり、北東へと迅速に前進をしていた。

殿はあんこうチームが務め、後方の守りはネコさんチームが配置されその中を他の車輌が固まった陣形である。

まだ試合開始直後の為に後方で特になにもする事のないネコさんチームは暇を持て余していた。

 

 

 

「まだ交戦には時間は掛かるはずだ。各自、体が冷えるだろうから用意してあるバッグからなんでも使って良いから暖まっておけ」

 

「バッグ・・・?コレの事か?」

 

「毛布、耳あて、ミット帽・・・本当に色々とありますね」

 

「ふふふっ・・・流石覇王!このような貢ぎ物を用意しているとは感泣至極じゃ」

 

「・・・・・煉獄の魔女・・・復活」

 

「でも、芋虫スタイルのままだからなんか変な格好ですね」

 

「・・・・・芋虫の魔女」

 

「なっ!?炎の魔力に満ち溢れた・・・我こそが煉獄の魔女カリエンテ!!!!・・・・・へっ、へっくち!!!!」

 

 

 

飛鳥は魔法瓶の水筒に用意していたホットココアを飲みながら前を走るみんなの後姿を細い目で眺めていた。

その後、一回戦車内に戻ると少しだが、震えながら無言で操縦している薫に目が留まった。

 

 

 

「ほれ」

 

「えっ?飛鳥」

 

「寒いんだろう?」

 

「そ、そんなことないって!!私はこれぐらいへっちゃら・・・・・へっぶし!!」

 

「説得力なさすぎだし、ホットココアならあるから飲むか?」

 

「えへへ・・・恩に着る」

 

「お前に風邪引かれたら困るからな」

 

「えっ!?そ、それって・・・・・///」

 

「血反吐を吐いて動けなくなるまで働いてもらわないと困るからな」

 

「怖っ!?えっ、私ってそこまでさせられるの?」

 

「あぁ」

 

「無表情で酷っ!?!?」

 

「覇王よ!乳眼鏡から接敵したとの報告があったぞ」

 

「乳眼鏡?」

 

「・・・・・沙織の事」

 

「あぁ・・・わかるわ」

 

『飛鳥ぁぁぁぁぁ!!!!』

 

「はぁぁ・・・・・なんでもないです」

 

 

 

喉頭マイクに聞こえないように舌打ちをする飛鳥の姿にネコさんチームは苦笑いになっていた。

だが、カリエンテには低い声で怒鳴る沙織の声が耳に響く為に目を細めながら引き攣った笑みを浮かべていた。

 

 

後方で上手く展開のわからないネコさんチームは、ヘッドホンから聞こえる味方からの声を頼りに情報を得ていた。

 

 

 

「エネミー2体を屠ってやったようだ・・・我が軍は、やはり覇道の導きによって最強の加護を付与されている!!」

 

「先輩!!このままどんどん突き進んで勝負を決めちゃいましょう!!」

 

「・・・・・怪しい」

 

「えっ?どうしてですか」

 

「向こうの隊長はプライドが非常に高いって文から聞いたんだ・・・そんなプライドの高いお嬢様が自分の戦車をみすみす撃破させるような事をすると思うか?」

 

「じゃあ・・・・・コレって・・・・・」

 

「罠だ」

 

 

 

そう思った時には遅く、ヘッドホンから急に活気溢れる各々の発言に飛鳥はすぐにキューポラから顔だけを出す。

すると勇猛果敢に前進して行く仲間の姿があった。

しかし、ヘッドホンから聞こえて来るみほの声は静止を願う言葉であった。

 

 

 

「遅かったか・・・・・」

 

「あんこうチームも味方の後を追うように進行を始めたみたいですけど、どうしましょうか?」

 

「それなら我が軍も味方に続いて・・・!!」

 

「いや、アタシ達はこのままで良い」

 

「けど、フラッグ車も前進しちまってるんだよ?私達1輌じゃなんにも出来ないんじゃ・・・・・」

 

『横入り、構わないかい?』

 

 

 

ネコさんチーム内で話し合いが始まろうとした所にネコさんチームの回線にハヤブサさんチームの三笠が割り込んで来たのである。

 

 

 

「あれ?全車輌は前進したんじゃ・・・・・?」

 

『ふっふっふっ・・・ボク達は飛鳥くんの指示がない限り動かないように指示を受けているからね』

 

「なぁっ!?覇王はこの展開を予知していたと言うのか・・・・・くっ、我には先読みの予言はなかったと言うのに・・・!!!!」

 

「そんなんじゃねぇっての・・・他の作戦の為に事前に動いてもらってただけだ。まさか、そのおかげでこの2輌だけが残るとはな」

 

「・・・・・本隊が包囲された」

 

「作戦よりも援護に向かうのが先か・・・ハヤブサさんチームはこちらと並走して付いて来てくれ」

 

『心得たぞ!!』

 

 

 

ヘッドホンから聞こえる本隊のSOSの声に2輌は急ぐように雪原を駆ける。

少しすれば、窮地に立たされている仲間を姿を発見し、車内にはピリッとした緊張感が走る。

しかし、飛鳥の口からは想像もしない一言が飛び出した。

 

 

 

「攻撃はせずあの大木の手前に停車!援護射撃は一切するな!!」

 

 

 

飛鳥の言葉に他のメンバーは驚いたような表情を見せるが、飛鳥の表情は一切変化はなくキューポラから上体を出すと双眼鏡を使い本隊の様子を探り始めたのであった。

 

 

その行動に車内はざわめくが飛鳥は双眼鏡を覗きながら話し始めた。

 

 

 

「味方を見捨てて呑気に索敵か・・・・・って、思ってるのか?」

 

「い、いや・・・そんなことはっ・・・!!」

 

「私はちょっと拍子抜けしたかな~・・・いつもの感じなら一気に突っ込んで敵のフラッグ車をパパッと仕留めて私達の勝利!!って、感じに決着するはずなのにさ」

 

「・・・・・それは、本当に言ってるのか?」

 

 

 

いつものように薫がおちゃらけた意見を言ってからその後に飛鳥からの罵倒やらツッコミがあり、終わる茶番劇のはずだった。

しかし、双眼鏡から目を離し車内に戻って来た飛鳥の目は笑っておらず、いつもと違う飛鳥にメンバー全員に緊張感と共に初めてみた飛鳥の表情に恐怖していた。

 

 

 

「・・・・・日野本さん」

 

「・・・・・悪い、忘れてくれ」

 

「飛鳥先輩・・・今日はなにか変ですよ?いつもみたいじゃないと言いますか・・・・・」

 

「う、うむ!覇王と言うよりも今の御主は魔王と言っても過言ではない!!」

 

「斬子ちゃん・・・それ、どう言う意味?」

 

「はあぁぁぁ・・・・・わかったよ、アタシの知っている事をすべて話す」

 

 

 

自分を心配してくるメンバーに気を張ってた自分がバカバカしくなって来たのか大きく息を吐くとかくかくしかじかでメンバーに自分の知っている事をすべてを話した。

 

 

 

「わ、我が母校が闇の力に呑み込まれ消滅せし・・・だと!?!?」

 

「・・・・・知らなかった・・・この戦いにそんな意味が・・・あったなんて」

 

「会長は言わなかったんだと思う。言えば、動揺する者も出るだろうし、気弱になってしまう者も出るだろうと思って黙っていたんだろう」

 

「そんな・・・こんな事・・・残酷すぎますよ」

 

「けどよ!勝てばいいんだろ?」

 

「口では簡単に言えるが、今の戦況は劣勢だ。本隊は敵の包囲網に完全に捕らえられている。そして、こちらの動ける車輌は2輌。それに加えてこちらは敵のフラッグ車すら未確認のままだ。この状況下での勝率は0%に等しいんだ」

 

「そ、それは・・・そうだけどさ」

 

 

 

飛鳥の言葉に全員悔しそうに唇を噛み締めるしか出来ずにいた。

しかし、そんな状況下の中とある通信をキャッチした。

 

 

 

『ネコさんチーム!ハヤブサさんチーム!応答お願いします!!』

 

「こちら、ネコさんチームだ。沙織、どうかしたのか?」

 

『こちら、ハヤブサさんチーム!全員無事だよー!!』

 

『2チームとも無事だったんだぁ~!!良かった~こっちにいないから途中でやられちゃったんじゃないかと思っちゃったじゃん』

 

「そんな簡単に倒されるかよ・・・っで、そっちはどうなんだ?」

 

『先程、プラウダの生徒さん方がやって来られまして降伏通達をお伝えに来られました』

 

「なぬっ!?!?我が暗黒紅蓮騎士団が戦わずして屈するだと!?!?」

 

「どんな名前だよ、私達の」

 

「・・・・・降伏するのか?」

 

『・・・降伏はしません』

 

「じゃあ・・・どうする?」

 

『敵の正確な位置を把握する為に偵察を出してみようと思います!そちらからも偵察をお願いしても良いですか?』

 

『まっかせておきなさ~い♪』

 

「そっちに食料や防寒グッズはあるか?」

 

『・・・・・ない』

 

「それなら至急救援物資がいるな・・・すぐに持って行くから待っとけ」

 

 

 

一通りやり取りを済ませると通信を切った飛鳥の表情にはいつものような雰囲気が戻って来たような気がした。

 

 

 

「アタシと薫と鮫島さんと三笠さんで救援物資を運ぶ。ツバサと玲那と文と不知火さんで偵察をお願いします。他のメンバーは外に簡易テント設置して待機しておいて下さい」

 

「「了解!!」」

 

『『了解!!』』

 

「それじゃあ・・・これより、起死回生作戦を実行します!!!!」

 

 


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