ガールズ&パンツァー 紅蓮の戦車乙女   作:宣伝部長

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一回戦、無事突破です!

「・・・貴女が噂の戦姫さんかしら?」

 

「いや、アタシは日野本飛鳥。戦姫ってのはもう昔の名だよ。それで、隊長自らアタシの所に来るなんてどうかしたんですか?」

 

 

 

不意にある人物に呼び止められた。

タンカースジャケットのポケットに両手を突っ込み、ホットパンツ姿の彼女、ケイは嬉しそうに前屈みになって飛鳥の顔をじっと見つめる。

動じずに頬を掻いていた飛鳥ではあったが、急に抱きつかれると周りの全員が驚いていた。

 

 

 

「Exciting!最後の攻防戦は久し振りにドキドキしたわ~!!」

 

「そりゃあ、どうも。姑息な手を使おうとも思ったんだけどね」

 

「あら?それじゃあ何故その手を使わなかったの?」

 

「そりゃあ、アンタにも同じ事が言えると思うんだが・・・」

 

「That's戦車道♪これは戦争じゃない、道を外れたら戦車が泣くでしょう?」

 

「ははっ・・・戦車を限界ギリギリまで使ってるアタシ達の戦車は違う意味で泣いてるだろうけどな」

 

「それは・・・感謝の涙ってことじゃないかしら」

 

「それならありがたいよ」

 

 

 

すぐに打ち解けた2人は今日の試合の反省点の話にまで発展していた。

ケイは無線傍受の件には申し訳なさそうにしていたのだが、飛鳥は新しい戦法だとにやっと笑いながら褒めていた。

そんな彼女達を見守る大洗のメンバーではあったが、ぞろぞろと来客が現れた。

 

 

 

「・・・チャーフィーの砲手はいるか?」

 

「・・・・・」

 

 

 

ナオミはいきなり低めの声で用件を口にした。

みんなの視線が車椅子に乗る玲那に向けられると彼女は堂々と手を挙げていた。

そんな彼女に眉ひとつ動かさずに無表情のままナオミは前に立った。

見下ろすナオミ。見上げる玲那。2人の視線が少しの間火花のようなモノが飛び散っているんじゃないかと思った矢先にお互いが手を差し出すと固い握手を交わしたのだ。

ナオミはフッと笑うと玲那は物凄く嬉しそうだった。

そう・・・言葉を交わさずとも彼女達は通じ合えたのだ。目には見えない同じ砲手としての想いが・・・。

 

 

 

「Youが西住流の隊長さんデスかー!!」

 

「あっ・・・えっと・・・そ、その・・・・・はい」

 

「初めて見ましたがVeryCuteデスネ~♪」

 

「そんなの・・・うぅぅ・・・・・」

 

「ヤバいデース!その表情たまらないデース!!」

 

「えええっ!?」

 

 

 

西住流が気になっていたティナはみほと話し合っていたのだが、たまにみほの見せる恥じらいの表情に興奮ボルテージが極限に達した途端ハグをし始めたのだ。

それだけなら良いのだが、あからさまに目がハートになっており、荒い呼吸で今にもなにかを犯すんじゃないかと言うヤバい状態に陥っていた。

そんな彼女達を横目に見ていた飛鳥とケイの元に杏がいつもの干し芋を食べながらやって来た。

 

 

 

「いやぁ~・・・なんとか勝てたねぇ~」

 

「Oh!アンジー、ナイスファイト!!」

 

「ギリギリだったけどねぇ~・・・それで、飛鳥ちゃん!次の対戦相手はどこと当たりそう?」

 

「確か・・・マジノかアンツィオ・・・だったんじゃないかしら」

 

「う~ん・・・マジノと言いたいが、下手をすればアンツィオだな」

 

「Why?」

 

「マジノは隊長が変わったから戦法もまだまだ発展途上って所。それに対してアンツィオはノリと勢い・・・一瞬でも油断するとヤバいって訳」

 

「それは手強そうだねぇ~・・・」

 

「やはり車輌の差があるのがアタシ達の欠点だな」

 

 

 

そう言った飛鳥はすかさず何処かに電話を掛けていた。

 

 

 

「飛鳥ちゃん、何処に掛けてるの?」

 

「せんしゃ倶楽部の本店」

 

「へぇ~・・・なにか良い案でもある感じだねぇ~」

 

「まぁね!おっ、店長さん・・・中古戦車ない?」

 

「Oh!Crazy!! 」

 

「あっはっはっ・・・やっぱり面白いねぇ~飛鳥ちゃんは・・・・・」

 

 

 

ケイと杏が見守る中でも飛鳥は淡々と交渉をしている。

必死な素振りも見せない姿に2人は固唾を呑んでその瞬間を待っていた。

そして、飛鳥が交渉を終えて携帯を切った瞬間に飛鳥はグッと親指を立てて見せた。

 

 

 

「へへっ・・・1輌ゲットしちゃいましたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そんな・・・私達マジノ女学院が一回戦で負けるなんて・・・・・」

 

「エクレール様!!」

 

「紙一重で負けてしまうなんて・・・まだまだ爪が甘いと言う事ですわね。大洗とのリベンジマッチは次回に持越し・・・ですわね」

 

 

 

フラッグ車である自分の戦車に白旗が上がってしまったことに悔しむように下唇を噛み締めていたエクレールではあったが、こちらに駆け寄ってくる仲間の姿を見ると力が抜けたように背もたれに寄り掛かって自分の憧れる飛鳥の姿を思い浮かべていた。

 

 

 

そんなマジノ女学院を見下ろすような形でM13/40が堂々とした風貌で立ち尽くしていた。

その横では試合が終わったからだろうか少女が棒付きの飴を咥えながら寝そべっていた。

 

 

 

「勝て・・・た」

 

 

 

左目に龍のエンブレムの付いた眼帯をしている少女はぽつりとそう呟いた。

ころころと口の中で飴を転がしているとこちらに向かって走ってくる少女がいた。

それに気付いた少女は、バッと立ち上がるとこちらに来る少女に大きく手を振った。

緑色のツインテールの髪型に黒いリボンを揺らし、こけそうになりながらも少女は走っていた。

 

 

 

「リコッタァァァ!!!!」

 

「ドゥーチェェェ!!!!」

 

 

 

嬉しさの余り勢い良く飛び付いて来たドゥーチェと呼ばれた少女は涙ぐみながら胸に顔を埋めていた。

受け入れている側のリコッタと呼ばれた少女も彼女の涙で急に込み上げて来たのかポロポロと涙を浮かべていた。

 

 

 

「資金難や保有戦車の性能不足に泣かされて敗北の連続だった我がアンツィオ高校だったが、やっと・・・やっとのことで念願の一回戦突破を果たすことが出来た!!」

 

「これもドゥーチェ・アンチョビが戦車道部復興に尽力して来た結果!!」

 

「それは違うぞ!これは私を信じてちゃんと付いて来てくれた同志諸君のおかげだぁ~!!」

 

 

 

そう言って振り返るといつの間にか生徒達全員が集まっており、大きな声で勝鬨を上げるのであった。

そんな生徒の中から2人の生徒が出て来た。

黒髪の生徒はペパロニ、金髪の生徒はカルパッチョと呼ばれている。

ペパロニは嬉しそうに鼻の下を人差し指でこすっており、カルパッチョはニコニコと満面の笑みであった。

 

 

 

「マジノ女学院に今回勝てたのは・・・リコッタのおかげですね」

 

「そうだな、最後の勇猛果敢ぶりにはこの私も驚かされたからな・・・」

 

「1人でマジノに突っ込もうとするなんて普通じゃ考えられないっすよ!!」

 

「ふっふっふっ~・・・そんな褒めてもなんも出ないですよ」

 

「褒められてないですよ」

 

「あいたっ!」

 

 

 

褒められて上機嫌になるリコッタではあるが、不意に頭を何者かに小突かれてしまう。

頭を抱えつつも振り返るとそこには頼れる相棒ラビオリがいた。

とろんとした目をしている彼女ではあるが、眠たい訳ではないといつも少女は口にしている。

そして彼女はM13/40の操縦手でもある。

 

 

 

「それでも今回はリコッタの突撃で敵を総崩れに出来たんだ!やはりノリと勢いは大切にしなくちゃな!!」

 

「そうっすね!」

 

「この調子で悲願の準決勝・・・いや、決勝戦に挑むって訳ですね?」

 

「そうだ!マジノに勝ったこの勢いを持って次の対戦校も打ち砕き・・・悲願の決勝戦への進出!!いや、優勝だぁ~!!」

 

 

 

アンチョビがそう目標を掲げるとそれに対して生徒全員が讃えるように「ドゥーチェ!ドゥーチェ!」と右手を高らかに挙げて盛り上がりを見せていた。

そんな中、次の対戦校が決まった事にカルパッチョは眉を潜めていた。

 

 

 

「ドゥーチェ!次の対戦相手が大洗女子に決まりました!」

 

「あのサンダース大付属が負けたんですか・・・大会3強の一角が早々にご退場ってことですね」

 

「ラビオリ、カルパッチョ!!2人はこれから大洗の情報収集を頼んだぞ!!」

 

「「はい!」」

 

 

 

返事をした2人を尻目に横では生徒達がいそいそとなにかの準備に取り掛かっていた。

するとリコッタとペパロニがいつの間にかマジノ女学院の生徒達全員を引き連れていた。

 

 

 

「敗れた私達を呼んでどう言うおつもりかしら?」

 

「な~に試合だけが戦車道じゃない!勝負を終えたら試合に関わった選手やスタッフを労う・・・それこそがアンツィオの流儀だ!!」

 

「エクレール様・・・」

 

「えぇ・・・これ程まで統率力・・・見事に完敗・・・と言ったところですわね」

 

 

 

こうして、アンツィオとマジノは両校集まった大宴会が開催された。

敵同士だったのに食事をしている者は全員が笑顔で頬張っていた。

そんな光景をラビオリはぶどうジュースの入ったグラスを手に夕焼け空を眺めていた。

 

 

 

「あの西住流か・・・それにあのお方にも会える・・・ふふっ、ふふはっ・・・楽しみ」

 


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