ガールズ&パンツァー 紅蓮の戦車乙女   作:宣伝部長

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公式戦が始まります!!

いつも通りの戦車道の練習の時間。

全国大会の一回戦も近付く中で重要な時間であるのだが・・・。

 

 

 

「んっ?優花里が休み?」

「そうみたい・・・」

「メールは返って来ないし、電話掛けても圏外なんだよね~」

「似てるな・・・ツバサも同じ状態なんだよ」

「まぁ・・・ツバサちゃんもですか?」

「そうなんだよねぇ~ツバサちゃんの変わりに私が起こしてあげようとしたら顔面を蹴るんだぜぇ~」

「アレは絶対に薫が悪い」

「えっ!?」

「軽蔑します」

「華っ!?」

「ダメ人間だな」

「麻子ぉぉぉぉ!!」

 

 

 

崩れ落ちる薫はさておき無断で休んでしまっている2人には少し違和感を感じる。

特に真面目な性格の2人が連絡も寄越さないのが不思議だ。

 

 

 

「案ずるな!我が同胞達は我らの為に過酷なミッションを成し遂げて帰って来ようぞ!!」

「カリエンテさん、なにか知っているのですか?」

「あっ・・・その・・・・・実はツバサに口止めされてて・・・・・」

「その割にはサラッと口にしてるような・・・」

「そ、それは・・・・・」

「お前はアタシ達の不安を和らげたかっただけだろ。それなら、それ以上は言わなくていい」

「覇王・・・恩に着る」

「おい、貴様ら!とっとと練習に取り掛かれ!!」

 

 

 

 

カリエンテの言葉にある程度の予想は出来た。

それはチームのことを思っての行動であるだろう。

飛鳥は1人無事だけを祈り、戦車の練習に取り組んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、

 

 

 

「此処が秋山さんのお部屋ですか」

「・・・・・戦車がいっぱい」

「かなりマニアックなセンスだな、これは」

「こんなにも優花里のお友達が来て下さるなんて思ってもいなくて驚いたわ」

「いえ、こちらこそ突然の訪問申し訳ありません。コレはつまらない物ですが・・・」

「あら、ご丁寧にどうも♪じゃあゆっくりしていって下さいね」

 

 

 

あの後に沙織や薫に尋問を受けたカリエンテは泣きながらも受け答えをしていた。

最後まで仲間を売らない精神はさすがと言うべきか・・・口は軽いのに・・・。

このままじゃ埒が明かないと思ったメンバーは優花里の実家へと直行した。

突然の訪問にご両親は驚いていたものの歓迎されて今は優花里の部屋に7人が集まっている。

カリエンテは泣いたまま家に帰ってしまった。

 

 

 

「いつもの飛鳥じゃなくて寒気がした」

「次そんなこと口走ったら蹴飛ばすからな」

「ひぃぃぃぃ!?」

「にしても、玲那が来るなんて思わなかったな」

「前に・・・お部屋に戦車があるって・・・聞いたから」

「そっか!れなちんも戦車好きなんだ♪」

「れなちん?」

「なに?飛鳥もそんな風に呼んで欲しい?」

「いや、遠慮しとく」

 

 

 

優花里の部屋で賑わうメンバー達ではあったが、不意に窓が開いたのだ。

すると開いた窓からひょこっと優花里が顔を出したので一番近くにいた薫が腰を抜かしていた。

 

 

 

「ぬわっ!?なんでそんな所から入って来るんだよ!!」

「いやぁ~・・・ちょっとこんな格好だと親が心配すると思いまして・・・・・」

「あぁ・・・って、ツバサちゃんも一緒だったの!?」

「はい!私の方から志願させて頂きました!」

「志願・・・とはどう言う意味でしょうか?」

「対戦校に潜入して来たんだろ?」

「はい!!」

 

 

 

ボロボロな格好の2人。

大きな返事をしたツバサはあるモノを飛鳥に手渡した。

手渡されたのはUSBメモリースティックである。

それには他のメンバーを首を傾げていたが、飛鳥は部屋の主である優花里にそれを投げた。

 

 

 

 

「いいの?こんなことして・・・」

「試合前の偵察行為は承認されています」

「それでも一言は欲しかったな」

「す、すみません・・・」

「いいじゃないの~2人の成果見ようぜぇ~♪」

 

 

 

映し出されたのは優花里とツバサがサンダースに潜入している映像であった。

2人はコンビニの服装からサンダースの服装に着替えていた。

沙織はたまに疑問に思った事を口ずさんでいたが、優花里やツバサはちゃんと受け答えしていた。

その映像には相手校の車輌や編成、他にはフラッグ車の詳細などが映し出されていた。

 

 

 

「ファイヤフライ1輌、M4A1シャーマン 76mm砲搭載型1輌、75mm砲搭載型7輌・・・」

「あれ?9輌だけなの?」

「すみません・・・全体ブリーフィングでは最後の1輌は公表されませんでした」

「切り札でしょうか?」

「いや、グリズリー巡航戦車だ」

「僅か、188輌しか製造されなかったM4A1シャーマン戦車の改良車じゃないですか!?」

「飛鳥さん、どうしてわかるんですか?」

「ティナの愛車だよ。アイツが乗るのはアレしかない」

「流石、長年のお付き合いだからこそ解ることなんですわね」

 

 

 

すると飛鳥は懐から4枚の写真を出して来た。

そこにはティナと先程映像に映し出されていた3人の写真である。

 

 

 

「これはどうしたんだ?」

「ちょっとアタシの方でも調べていたんだ。エクレールにちょっとな」

「マジノの隊長といつ連絡先交換したんだよ」

「抽選会の時に交換した」

「・・・抜け目ないな」

「それでなにか解ったことはあるんですか?」

 

 

 

ウェーブの掛かった金髪の女性の写真を手にすると飛鳥は説明を始めた。

 

 

 

「あぁ・・・向こうのリーダーであるケイは陣頭指揮を好む傾向がある。つまり、フラッグ車は彼女ではない」

「つまり、最初に鉢合わせてしまう可能性があるのは・・・・・」

「彼女かもしれないな」

「最初に撃破したら相手の指揮下がるんじゃないか?」

「それは出来ないと思います。必ず護衛も付いていると思いますし、数は向こうの方が有利です」

「もう少し考えれないのか?薫」

「し、知ってたし!!」

 

 

 

次に飛鳥はボーイッシュなベリーショートの女性の写真を手にした。

 

 

 

「コイツがファイヤフライに乗る」

「えっ?どうしてそんなことが解るのよ~」

「砲手として有名なヤツなんだよコイツ。重戦車をも仕留めるファイヤフライに乗ったら鬼に金棒になる」

「そんな凄い方がいらっしゃるんですね」

「こっちにも・・・飛鳥がいる」

「そうですよ!飛鳥殿だって凄腕スナイパーですよ!!」

「あはは・・・・・あんがと」

 

 

 

そして、最後に残った一枚の写真を手にする。

 

 

 

「・・・・・っで、残ったこの子がフラッグ車の車長になる」

「ティナさんじゃないんですか?」

「アイツは暴れるのが好きなヤツだからケイの護衛に付くかもな」

「じゃあどうしてこの方がフラッグ車の車長になられるんです?」

「消去法だ」

「適当だな、おい」

 

 

 

と説明が終わると飛鳥は資料などを優花里は潜入して得たビデオデータをみほに手渡した。

 

 

 

「これを参考に頑張って下さい!!」

「少しは力になれたか?」

「少し所じゃないよ、フラッグ車も向こうの編成も解ったんだから頑張って戦術立ててみるよ!」

「そうと決まれば明日の朝練から張り切るぜぇ~♪」

「・・・・・朝練?」

「麻子、知らなかったの?明日から朝練始まるよ」

「・・・・・えっ」

「なんで飛鳥まで驚いてんのよ」

「あの件は・・・生徒会長が決めたことだから飛鳥さんには伝わってなかったのかも・・・」

「あぁ・・・なるほど」

 

 

 

朝練と言う響きに固まってしまった2人を見て他のメンバーは引きつった笑みを浮かべる事しか出来なかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある日。

戦車倉庫内では公式戦への出場を機に作り上げた衣装をみんなが着用していた。

そして、あんなカラフルだった戦車達も反省したのか当初のカラーリングに変わっていた。

だが、その変わりに全戦車にはチームエンブレムが付けられる形になった。

と言う訳でFチームもそのエンブレムについて討論が繰り広げられていた。

 

 

 

「ねこさんチームです!」

「いや、ワニさんチームだ!!」

「笑止!!此処は血に飢えし吸血鬼チームだ」

「はいはい、コウモリさんチームな」

「飛鳥は・・・どんな名前がいいの?」

「んっ?アタシか?」

 

 

 

リーダーでもある飛鳥に話題が振られると玲那以外のメンバーは固唾を呑んで答えを待った。

熱い視線に面倒臭そうに頭をくしゃくしゃとすれば、バッと立ち上がってある人物を指差した。

 

 

 

「ねこ」

「やったぁぁぁぁ~♪」

 

 

 

指されたツバサは嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねるも落選した2人は沈み込んだように俯いていた。

 

 

 

「・・・ってか、カリエンテ、その真っ赤なマントはなんだ?」

「これは業火の炎から創製された一品だ!この煉獄の魔女に相応しい・・・」

「戦車外だけ装着を許す。だが、戦車内で付けてたら・・・・・」

「・・・・・は、はい」

 

 

 

大きな赤いマントを嬉しそうに見せびらかす斬子ではあったが、飛鳥の釘を刺すような一言にはビクッと身震いをして素直に返事を返した。

するといつの間にかカバさんチーム(元Cチーム)が斬子のマント姿を見にやって来ていた。

 

 

 

「見事な赤マントぜよ!」

「私と同じ波長を感じる!」

「武田の赤備えを感じさせる!」

「ナポレオンの生まれ変わり!」

「「「それだ!!!」」」

「ふふふっ・・・我に着いて来るがいい!!」

 

 

 

ノリノリの5人を横目に飛鳥とツバサはねこさんチームのエンブレムを描いていた。

そんな彼女達の元に沙織と優花里がやって来た。

 

 

 

「飛鳥、絵上手過ぎ!?」

「バイトの時にテロップとか作る時絵は手書きでするからな」

「可愛いじゃないですか~♪」

「飛鳥先輩!右目に眼帯付けてもらっていいですか?」

「あいよ」

「カリエンテ殿みたいですね」

「あっ、ホントだ!!」

「よしっ!これで完成」

 

 

 

と言う訳でFチーム改めねこさんチームに改名することになった。

チームエンブレムには黒猫に眼帯と言うちょっとアクティブなモノに仕上がった。

一番嬉しがっていたのは、ツバサではなく何故か斬子であったと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

公式試合当日。

両校は試合前の最終チェックに取り掛かっていた。

初めての公式試合と言う事もあり、大洗の全員が念入りに作業を進めている。

 

 

 

「こ、公式戦き、きき、緊張します」

「最初から強豪だからおっかないけどねぇ~♪」

「それに公式戦では殲滅ではなくフラッグ戦だ」

「フフフッ・・・敵御大将の首を持ち帰るのが最善の功績じゃ!!」

「・・・・・1回戦、2回戦は10輌・・・準決勝では15輌・・・決勝は20輌」

「まぁ・・・完全にあたし達は不利の状況下での戦いしかないって訳」

「おや?飛鳥様はもう諦めてらっしゃるのですかい?」

「お前に言われるほど落ちぶれてねぇよ!」

「あいたっ!?!?」

 

 

 

薫の頭を小突いた飛鳥がキューポラから顔だけを出すとそこにはサンダースの制服を着た2人が立っていた。

なにか話し合っている様だが、何食わぬ顔をして戦車から飛び降りると丁度目の前にはアヒルさんチームの河西 忍(かわにし しのぶ)と佐々木 あけび(ささき あけび)が居た。

 

 

 

「あっ、飛鳥さんココに居たんですね!!」

「んっ?八九式の最終チェックは済んだのか」

「そっちは主将と妙ちゃんに任せています」

「えっと・・・先程サンダースの方々が来て交流会とか言ってあんこうさんチームとカメさんチームの皆さんが行かれました」

「OK!報告ご苦労・・・それで?なんでお前が付いて来てんだよ」

「Oh・・・気付かれちゃいましたネー♪」

「あのこの方が飛鳥さんに会いたいって・・・・・」

「2人共、ありがと!持ち場に戻っても良いよ」

 

 

 

高身長の2人の間からひょっこりと舌を出して顔を見せたティナに飛鳥は右手で顔を覆い溜め息をついた。

2人を持ち場に帰らせると邪魔者がいなくなったとばかりに飛び付こうとそれを戦車から飛び降りてきた薫が止めた。

 

 

 

「テメェ・・・敵校のくせに私の飛鳥に手を出そうとは良い度胸じゃねぇか!!」

「Why?飛鳥はワタシのモノデース!!」

「飛鳥にはパンツ見られたから責任取って貰わなきゃいけないの!!」

「ワタシは胸を鷲掴みされました!!」

「なに!?羨ましいぃぃぃぃ!!!!」

「勝手に2人でアホみたいなことほざいてんじゃねぇよ!!」

 

 

 

ドンドンエスカレートしていく言い合いに堪忍袋の緒が切れたのか鋭い拳骨が2人の頭を捉えた。

ティナがゆっくりと見上げるとチャーフィーのキューポラに仁王立ちする子と目が合った。

そのまま視線を下に落とすとキューポラに腰を掛ける子と顔だけを出す子も確認した。

 

 

 

「Fuu~♪なんとも個性的なチームデースネ!!」

「お前もよっぽどだろうが・・・・・」

「それでも・・・ケイが率いるワタシ達が勝ちますけどネ~♪」

「汝、掲げし星条旗を我らの業火の炎にて焼きつくさん!!」

「い、意味はサッパリですが、受けて立ちマース!!」

「へんっ!!私がお前をヒィヒィ言わせてやる!!」

「ワタシだってアナタをヒィヒィ言わせてあげマース!!」

 

 

 

ビシッと人差し指を薫に向けて指し示すとにやっとした笑みを見せた後に駆け足でこの場から逃げ出したのであった。

 

 

 

「飛鳥先輩!あの方は誰なんですか?」

「昔のチームメイト」

「なに!?じゃあ本当に愛じ・・・いだっ!?」

「んな訳ないでしょ」

「あの・・・中学の時のですか?」

「そうなんだけど・・・チームメイトはチームメイトでもアイツは強襲戦車競技してた時のメンバーだよ」

「・・・・・強襲戦車競技!!」

「うわっ!?玲那のそんな大きな声初めて聞いたかも・・・・・」

 

 

 

ハッとしたようにみんなの顔色を窺うと見る見るうちに玲那の顔は真っ赤になってしまっていた。

そんな玲那の表情を見て飛鳥以外は笑っていたが、帰って来たみほの姿を目にした飛鳥は真剣な表情に変わっていた。

 


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