ガールズ&パンツァー 紅蓮の戦車乙女   作:宣伝部長

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戦車道、再開します!

普通科教室のとある席で、少女は机に突っ伏すような形で爆睡している。真っ赤な炎をイメージさせるようなショートヘアー、制服も着崩したようにしており、女の子と言うよりも男の子に見えてしまう。そんな為にクラスから少し話しかけられにくい雰囲気もあり、周囲のクラスメイトたちが学食へと急ぐ時間だというのに彼女は起こされることもなく居眠り続けているのであった。

 

 

 

「飛鳥せんぱぁぁぁい!!お昼ご飯の時間ですよぉぉぉ!!!!」

 

 

 

バンッと強引に開けられた轟音と同時に鼻に絆創膏を付けた元気そうな女の子は叫ぶように居眠り姫へとお昼を告げる言葉を放った。するとゆっくりと頭が上げられたかと思うと一緒に大きく背伸びをすれば、女性とは思えないような大きく口を開けて欠伸をすると机からゆっくりと立ち上がった。

 

 

 

立ち上がればそれは女性が欲しがるであろう高身長でバランスの整ったボディ。モデルを意識させるような体型ではあるが、当の本人はそんなことを気になどせずにボサボサになった髪をくしゃくしゃと掻き・・・日野本 飛鳥(ひのもと あすか)は元気一杯な女の子の元に歩み寄った。

 

 

 

 

「毎度毎度、ありがと」

「いえ、コレは私の日課みたいなモノですからお構いなく!」

「いやいや、こうして昼飯にありつけるのはツバサのおかげっていつも感謝してるよ」

「ふぁぁぁ~・・・飛鳥先輩にそのように思われているとはツバサは感動しております!!」

「あぁ~・・・泣かない泣かない。ほら、はやくしないと昼休憩終わるから」

「はい!!」

 

 

 

 

元気一杯な少女・・・小早川 ツバサ(こばやかわ つばさ)はなにかと飛鳥の世話を焼きたがる女の子である。飛鳥は2年、ツバサは1年と学年は違うのだが休み時間となれば必ず顔を見せに来るので周りから良く「わんこ」と呼ばれたりしているみたいだ。彼女に世話を焼く理由を尋ねたが、いつも「飛鳥先輩が好きだからです!」と笑顔で返される。

 

 

 

 

「今日のオススメはなんだっけ?」

「チーズハンバーグ定食です!!」

「うぅ~・・・チーハンか・・・・・パス」

「じゃあ・・・私がオススメするからあげ丼にしますか!?」

「でも、・・・うっ、仕方ない・・・それの大盛り」

「了解しました!!」

 

 

 

食堂前にあるメニューを睨む2人。いつものように今日のオススメメニューを頼もうとする飛鳥だが、昨日の夕飯にハンバーグを食べたことを思い出すと首を横に振った。するとここぞとばかりに目を輝かせてツバサがいつも食べているオススメメニューを推しに出た。他のメニューと思って視線を彷徨わせようとしたが、お腹が鳴ったのに顔を赤くして俯きつつもしれっと大盛りを注文する。注文を承ったツバサはカウンターの方に飛鳥は席を取る為に4人掛けのテーブルに腰を降ろした。

 

 

 

ご飯が来るまでの間は暇な時間である。なにをする訳でもなくぼけーっと外の景色を眺めているだけしかない。だが、不意に向かい側の席の前に誰かが居るのが確認出来た。ツバサにしては早過ぎると思っていてもゆっくりと視線を向かい側の方に向けてみるとそこには見慣れた女の子が両腕をワクワクとしながら立っていた。

 

 

 

 

「飛鳥殿!ご一緒してもよろしいですか?」

「・・・別に構わないぞ」

「はっ、ありがとうございます!!」

 

 

 

彼女は満面の笑みで敬礼をすると深々とお辞儀をした後に席に座ると弁当箱を取り出してすぐには食べずに飛鳥の顔をじぃーっと見てくる。彼女・・・秋山 優花里(あきやま ゆかり)はアルバイト先で知り合った仲なのだが、彼女とどう言う仲かと聞かれると・・・・・、

 

 

 

「飛鳥殿!新商品の入荷の話はありますか!?」

「商品じゃないが、センチュリオン Mk.3の実物サイズ立体模型を展示することになった」

「おぉ!あの朝鮮戦争で初めて実戦を経験して高い能力を証明し、同戦争で用いられた戦車の中で最高の評価を得たと言われている主力戦車のひとつじゃないですか~!?」

「本物じゃないにしても店の前に置くとか言われた時には驚いたよ」

「ほ、他にはなにかあるんですか?」

「う~ん・・・他には目立った情報はないな・・・。後は、アタシが1/15の74式戦車を組み立てるのくらいか」

「そ、それなら私もご一緒させて貰えないですか!」

「う~ん・・・別にいいぞ」

「うおぉぉぉ!!は、初めてです!こ、こんなに戦車の事を話し合える友が出来たことに・・・・・!!」

「そんな大袈裟な・・・・・」

 

 

 

 

そう戦車好きの仲間である。飛鳥が「せんしゃ倶楽部」の店員で、優花里はそこの常連さんである。飛鳥が何度も店内で優花里を見かけたので興味本位に話し掛けた所から意気投合して現在の仲に至る。数少ない趣味合う大切な存在である。

 

 

 

などと戦車トークで盛り上がっていると向こうから大きなどんぶりを2個持ってきょろきょろしているツバサが目に入る。飛鳥が大きく手を振って見せるとびくんっ犬の尻尾が立つようなイメージで背筋を伸ばしたように見えた彼女はすぐさま隣の席に飛び込んで来た。

 

 

 

 

「おっまたせしました!ツバサ特製のからあげ丼マヨ七味レボリューション大盛りです!!」

「勝手にトッピングすんな」

「あいたっ!?」

 

 

 

目の前に現れた食べ物とその説明に対して鋭いチョップがツバサの頭に容赦なく炸裂した。直撃を受けたツバサは大きく口を開けて涙目になっていた。

 

 

 

「あはは・・・流石は小早川殿であります」

「あっ、優花里先輩!一口どうですか?」

「え、遠慮しとくであります」

 

 

逃げるように弁当に箸を進める優花里。無言でからあげ丼を食べるがたまに表情が苦痛の色を見せる飛鳥。それに対してツバサは嬉しそうにからあげ丼を平らげている。良い子はマヨネーズと七味のかけ過ぎに注意するべし。

 

 

 

 

「日野本飛鳥だな」

 

 

 

不意にかけられた声にツバサと優花里は箸を止めて固まってしまった。逆に呼ばれた本人は動じることもなくガツガツとからあげ丼を口の中へとかき入れていた。その対応には声を掛けた人物も動じることはなく話を続ける為に口を開いた。

 

 

 

「貴様に話がある。放課後に生徒会室に来るように」

「飛鳥先輩はなにも悪いことなどしてません!!」

「いや、今回はそう言う話ではない」

「じゃ、じゃあ・・・なぜ、飛鳥殿に呼び出しが掛かったのですか?」

「あっ・・・飛鳥先輩をいじめるつもりですか!?」

「それはだな・・・・・」

「お断りします」

 

 

 

なにか勘違いをしたのか必死に事情を聞き出そうとする2人に納得出来る様に説明が始まろうとした最中食べ終えた飛鳥の口からはサラッと断わる言葉が発せられた。その言葉にキリッとしていた人物の表情は怒りに満ちた顔へと豹変し、机を叩くと前のめりになって飛鳥に詰め寄った。

 

 

 

「その態度はどう言う意味だ!」

「バイトあるから」

「・・・はぁ?」

「・・・・・それじゃあ」

 

 

 

簡単な理由だった。彼女はそれだけを告げると手を合わせて「ごちそうさま!」と言って空になったどんぶりと箸を持ってそそくさとその場から去って行った。取り残された2人も慌てたように食べ終えるとポカンと口を開けて固まっている人物に1礼してから食堂から逃げ出した。

 

 

 

 

「くうぅぅぅぅ!!日野本飛鳥ぁぁぁ!!!!」

 

 

 

1人取り残されてしまった生徒会広報・・・河嶋 桃(かわしま もも)はわなわなと握り締めた拳を震わせながら食堂に響き渡るような声で怒鳴り散らしていたのは今日の話題となってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼の授業もサラッと終わるがクラスメイトが帰り支度をする中でも1人は机に突っ伏したまま寝ている。だが、

ツバサが来るよりも先に飛鳥の席の近くにはクラスメイトが近寄っていた。ヘッドフォンを首に掛けた女の子はにやにやと笑いながら飛鳥の机の下に潜り込もうと企む。すると次の瞬間には顔面に靴の裏の跡をくっきりと付けた先程の女の子が倒れており、それと同時に飛鳥がゆっくりと上体を起こして目を覚ました。

 

 

 

 

「ふあぁぁぁ~・・・・・アルバイト行って来るか」

「コラァァァァ!!友達の顔面を足蹴にしておいてその無愛想な態度はどうなのよ!!」

「パンツを覗こうとする屑にそんな情けは必要ないだろ」

「えええええ!?そこまで言われる私って!?!?」

 

 

 

まさかの対応に必死に抗議する・・・瑞島 薫(みずしま かおる)は飛鳥に詰め寄り土下座をするモーションを見せたが、隙を突くようにまたパンツを拝む為に顔を上げた顔面にはまた飛鳥の蹴りが待ち構えていた。そんなやり取りを毎度繰り返している為に飛鳥はもう慣れた手つき・・・いや、慣れた足つきである。

 

 

 

『全校生徒に告ぐ、直ちに体育館に集合せよ!直ちに体育館に集合せよ!!』

 

 

「なんだ、なんだ?生徒会の奴らがまたなにかやんのか?」

「バイトがあるってのに・・・どいつもこいつも・・・・・」

 

 

 

いきなりの放送に戸惑うクラスメイト達。2人も何事だろうと顔を合わせて問い掛けあうも行かねばわからないと2人も体育館に向かう。アルバイト先に学校行事で遅れるともう連絡済である。

 

 

 

体育館に到着すれば、壇上には生徒会の面々が待ち構えていた。生徒もぞろぞろと集まり始まると静粛にと言う言葉に全生徒は静かになって生徒会の方に視線を向けた。

 

 

 

 

「それではこれから必修科目のオリエンテーションを開始する!!」

 

 

 

生徒会の面々が壇上を降りると「戦車道入門」と名の映像が映し出された。生徒達は食い入るように映像に夢中だ。飛鳥も腕を組みじっと映像に食い入っていた。そして、映像が終わったと同時に生徒会の面々が戦車道について語り始めたのだが、そこに食い付かずにはいられないあるワードに食い付いた人物がいた。

 

 

 

 

 

「食堂の食券100枚・・・遅刻見逃し200日・・・通常授業の3倍の単位がもらえるってなったら戦車道にするしかねぇっぺ!!」

「お前・・・なんか話し方が変になってるぞ」

 

 

オリエンテーションが終わってから薫は耳にタコが出来てしまうぐらいこの事を叫んでいる。

 

 

 

「そりゃあこんな好条件を目の前に出されたら興奮するに決まってんじゃん!!」

「馬鹿」

「ぬわぁぁぁ!寝ててもギリギリ赤点だけは免れてるアンタに言われるのが一番腹立つんですけどぉー!!!」

「はいはい・・・アタシはもう先帰ってるからな」

 

 

拗ねた子供のように地団駄を踏む薫を見捨ててアルバイトに向かおうと教室に鞄を取りに行こうとしたが、自分達のクラスの扉の前には先程壇上に居た生徒会のメンバーが誰かを待つように立っていた。飛鳥は敢えてその3人に触れずに教室に入ろうとしたが、力強くある人物に腕を引かれると気だるそうな女の子と対峙する形になってしまった。

 

 

 

「おいお~い、私自らやって来たってのに無視は悲しいよ~日野本ちゃ~ん♪」

「アルバイトがあるからお断りしたつもりなんだけど・・・生徒会長さん」

「そんな理由で避けられると思うな!!」

「ったく、・・・・・わかったよ」

 

 

 

 

ここまで自分に拘る彼女達になにを言っても無駄なのだと感じた飛鳥は諦めたように窓際の壁に寄り掛かると腕を組み先程から干し芋を食べている女の子に視線を向けた。すると彼女も干し芋を食べるのを止めて指をペロペロと舐めるとゆっくりと口を開いた。

 

 

 

「必修選択科目なんだけどさぁ~・・・戦車道取ってくんない?」

「なんでアタシにそんな話を・・・」

「お前が戦車経験者だと言うことを知ったからだ」

「・・・どこまで調べたんだ?」

「お前が中学時代の3年間戦車道の大会に出場し、数々の成績を残していることは把握済みだ」

 

 

 

彼女が言っている事は事実である。しかも、中学のメンバーと組んだチームではなく姉の誘いで集まった言わば一般やプロレベルの集まるオープンの大会での話である。飛鳥は砲手、操縦手を交互に務めて試合に取り組んでいた。だが、高校になってからはこの戦車道のなかった大洗女子学園に居た為に彼女は戦車道参加出来ない代わりに戦車に関係する今のアルバイトをしているのである。

 

 

 

「それでぇ~・・・どう、協力してくれる?」

「別にいいよ。戦車は好きだし、断わる理由は特にない」

「ホントにぃ~!?あ、ありがと~」

「じゃあ頼んだぞ!」

「期待してるからねぇ~よろしく~♪」

 

 

 

 

答えを聞くとどことなく嬉しそうに鼻歌混じりの生徒会長・・・角谷 杏(かどたに あんず)と少し目尻に涙を見せる副生徒会長・・・小山 柚子(こやま ゆず)とキリッとした表情でも口角を少し上げている生徒会広報の3人組は用件を済ませればすぐにその場からいなくなってしまった。

 

 

 

 

「・・・・・こりゃあ、アルバイトの時間帯も日数も考える必要があるな」

 

 

 

1人残された彼女はアルバイトの日程が書かれているメモ帳を取り出してポツリと呟いた。ハッと思い出したように今日のアルバイトを思い出すと彼女はすぐに鞄を取ってせんしゃ倶楽部を目指そうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで・・・話ってのはなに?」

 

 

 

翌日、生徒会室に呼び出された飛鳥は不思議そうに近くにあった椅子に腰を降ろした。

 

 

 

「少々、厄介なことが起きた。貴様にも助力を頼もうと思ってな」

「もう1人勧誘してたんだけど、その子が戦車道を選んでくれなくって・・・」

 

 

 

つまり、有力な人材の説得に協力して欲しいのだろう。昨日とは違ってムスッとした会長の表情を見れば自分のように素直に行かなかったんだと言う事は明白だ。

 

 

 

「それで、その女の子は?」

「貴様と同じくここに召集を掛けてある。まもなくすれば、ここに姿を見せる手筈だ」

 

 

 

と噂をすれば、生徒会室の扉が開かれてそこには3人の女の子達が手を繋いでこちらに歩いてくる姿が見える。

 

 

 

 

「これはどう言うことだ?」

「なんで選ばないかねぇ~・・・・・」

「勝手なこと言わないでよ!!」

「そうです、やりたくないと言っているのに無理にやらせるおつもりなのですか!?」

 

 

 

 

などと両者の討論が始まった。そんなに事情の把握も出来ていない飛鳥はずっと俯いたままの真ん中に居る女の子を眺めていた。その子は震えるように2人の手を握り締めており、見ている側とすれば可哀想に見えて来てしまう。

 

 

 

「生徒会長・・・無理にやらせるのは可哀想だと思うんだけどね」

「なにを言っている!有力な人材が居るのにそれを使わないつもりか!?」

「そりゃあ、優秀な子が居るのは助かるけどさ・・・嫌がっている子に戦車を勧めるのは・・・・・」

「こ、このままじゃ我が校が終了してしまいます!!」

「いや、それは大袈裟過ぎるでしょ」

「ええい、貴様はどちらを支持するつもりなのだ!!」

「・・・・・あのっ!!」

 

 

 

割って入るような大きな声と同時に全員の視線が先程まで俯いていた女の子に集められた。だが、飛鳥はそれとは別に見覚えのある彼女の顔に驚きを隠せずにいた。

 

 

 

 

「私・・・・・戦車道やります!!!!」

 

 

 

 

決意を決めた女の子・・・西住 みほ(にしずみ みほ)は真っ直ぐに生徒会長の方を向きそう言い放った。すると突然のことに両サイドに居た女の子は驚いたように声を荒げていた。それと同時にみほの前に飛鳥が立つと2人は目が合い、みほは驚いたように口をポカンと開いて、飛鳥はにやけたように頭を掻いた。

 

 

 

 

「やっぱり・・・みほだ」

「あ、ああ、飛鳥さん!?な、なんでこんな所に!?」

「なんでってここがアタシの母校だよ。もしかして・・・知らなかった?」

「は、はい」

 

 

 

2人のやり取りに対して柚子と桃、それにみほの両サイドに居る2人も鳩が豆鉄砲を受けたような表情を浮かべていた。

 

 

 

 

「お前達・・・面識があるのか?」

「ちょっと前に・・・ねっ」

「それなら好都合だねぇ~明日から2人共よろしくぅ~」

 

 

 

飛鳥が生徒会長に一礼してから部屋を出て行こうとするのに対して残された3人も勢い良く頭を下げると駆け足でこの場から逃げるように生徒会室から出た。

 

 

 

 

「本当に良かったんですの?」

「・・・うん」

「無理することなんてないんだからね」

「・・・大丈夫」

 

 

 

みほの事を必死に心配する2人を見ているとなんとも微笑ましい光景に笑みが零れてしまう。

 

 

 

 

 

「ふふっ・・・随分と心強い友達が出来たみたいだね」

「あっ・・・えぅ・・・・・」

「あんなに強気なみほは初めて見たかも・・・・・良かったら2人共の名前とか教えてもらっていい?」

「わ、私はみほと同じクラスメイトの武部 沙織(たけべ さおり)って言います!」

「同じく、クラスメイトの五十鈴 華(いすず はな)と申します」

「あはは・・・アタシは日野本 飛鳥。・・・ってか、そんなによそよそしくしなくていいって、同じ学年なんだしさ」

 

 

 

 

緊張してあたふたしながら自己紹介をする沙織。深々と頭を下げて自己紹介を済ませる華。そんな2人の対応に息苦しさを感じたのかひらひらと手を振って普通に接してくれるようにお願いする。すると2人はお互いに顔を合わせて頷くと「うん!」と砕けた返事が返って来た。

 

 

 

 

「みほも2人のように砕けた感じで頼むよ?今日からは同じチームの仲間になるんだからな」

「えっ・・・あっ・・・うん!」

「ねぇねぇ・・・今から名前で呼んでもいい?私達もみほみたいに名前で呼んでもらっていいから!」

「じゃあ・・・沙織に華でいいかな?」

「はい♪」

 

 

 

4人の雰囲気が少し和んだかと思った突如に沙織はガシッと飛鳥の両肩を掴んで詰め寄って来て真剣な顔でこう言い放った。

 

 

 

 

「飛鳥!飛鳥ってやっぱりモテるの!?」

「はぃ?意味がサッパリわかんないんだけど・・・・・」

「そこがかなり重要なの!っで、どうなの?」

「えっと・・・それは・・・・・」

 

 

 

チラッとみほに助け舟を頼もうと視線を向けるもみほは苦笑いを浮かべるだけで助力を求めれそうにない。と言う事はそれとなく答えれば吉であると・・・。

 

 

 

「・・・・・モテモテだね」

「やっぱり!?さっすが戦車道だねぇ~♪」

 

 

 

少し心が痛むような気がしたが彼女のこの喜びようを目の当たりにすれば、良いことをしたように思える・・・かな?

 

 

 

「じゃあ・・・明日からは飛鳥さんを起こさなきゃなりませんわね」

「えっ?」

「だって、同じクラスで同じ戦車道の仲間になるんだからそれくらい当然じゃん!」

「えっ?」

「飛鳥さん・・・ファイト!」

「・・・・・うん」

 

 

 

快適だった毎日が崩れ去るような音がしたが、やる気に満ちた3人になにを言っても無駄だと察すれば4人は教室へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

大洗女子学園の戦車道への道はこうして幕を開けたのであった。

 


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