就活→卒研→研修 の3コンボで書く時間があっても書く気力がなかなか出ませんでした。
ブランクある上にちょくちょく書いていたのでおかしな点があるかもしれませんが、ひとまず書き上げましたので投稿します。
読んでくれる方がまだいるかわかりませんが、どうぞ
★
『明久君、突き当りを左に曲がってください。』
僕は日向の指示を頼りにして、迷路のような通気口を召喚獣に歩かせる。
『もう半分以上進んだから、もう一頑張りだよ。』
「結構歩いたのに、まだ半分か……」
かれこれ50分ほど操作しているが、暴走状態の召喚獣との戦闘などでなかなか進めない。
『無理はしないでくださいね。もう100体以上の召喚獣を倒しているんですから。』
「ありがとう。でも、まだ余裕だから心配いらないよ。一輝、そっちの調子はどう?」
日向の労いの言葉に感謝しながら、一輝の方の状況を確認する。
「システムの権限をこっちに戻そうとしてんだが、なかなか上手く行かねえな……」
「…………おそらく、ケーブルを繋がないと不可能。」
「そっか、やっぱ僕が何とかするしかないんだね。」
「一応、召喚獣の暴走をなんとかできないかやってみたんだが、一気に止めるのは無理みたいだな。アキの相手をするようになってからだいぶセキュリティがゆるくなったが。」
「…………今は個々に召喚獣の暴走を止められないか試している。」
『明君、正面に召喚獣の反応が、あ……』
明梨の声で召喚獣からの映像に意識を戻して、明梨が驚いた理由が分かった。僕の召喚獣の前に――
Aクラス 藤崎明梨 631点 VS 吉井明久 483点
久遠日向 432点
明梨と日向の召喚獣がいたからだ。
ヒュン
「危なっ!」
飛んできたメスと矢を右に飛んで避けさせる。
「これはずいぶんきつい相手だね……」
ただでさえ、高得点で厄介な相手なうえに、召喚獣とはいえ彼女と戦うなんて精神的な苦痛もある。しかも、僕の召喚獣はここまでにダメージを受けていて、僕自身も長時間の操作で集中力が切れかかっている。
「っ!」
体勢を立て直そうとした時に右脚に痛みが走ったので、カメラで召喚獣の右脚を見たら矢が刺さっていた。たぶん回避先を読んで放たれたものだろうが、今までの暴走召喚獣はこんな戦い方をしなかった。
(もしかして、召喚獣の点数で動き自体もちがうのかな?)
今までの暴走召喚獣はせいぜい100点台後半程度の点数しかなかったから、そんな仮説が浮かんだ。ゲームでもステータスの高い敵の方が動きもいいしね。
ヒュン タッ
再度、明梨の召喚獣が矢を放ったタイミングで、僕は召喚獣を走らせる。
「これでっ……!」
(……明梨を切る? いや、これは召喚獣だし、僕と違ってフィードバックは無いから痛みもない。でも、召喚獣といっても明梨は明梨だし……)
一気に間合いを詰め、召喚獣に刀を握らせた時に、カメラ越しに視界全体に明梨の召喚獣が映って、僕は迷いから動きが止まってしまった。
「痛っ!」
左腕の痛みで我に返って、召喚獣を後退させて左腕を確認する。左上腕が裂けていて、操作しても左腕はあまり動かなかった。
(かなり深く斬られたみたいだね。痛みも止まらないし。)
吉井明久 324点
召喚獣の体は人間の体の構造と似せて作られていると聞いていたので、左腕が動かないのはそれが原因だろう。実際に点数の方も100点近く減ってしまった。
『明久君! 私たちにはフィードバックは無いんですから、私たちのことは気にしないで攻撃してください!』
僕が回避に専念して攻撃していなかったからか日向の声がインカムから聞こえてきた。
「でも、戦死したら補習室に行くことになるし、それに……」
『明君。わたし達が補習室に行っても、指示は秀吉君と紫織さんに任せればいいし。何より他の人は何もできないんだから明君がやらないと。』
『それに、補習室に送られても明久君がすぐに終わらせてくれればいいんですよ。』
「うん。二人とも……ありがとう。」
二人の台詞からは何か覚悟のようなものを感じた。ここで僕が何を言っても二人の意見は変わらないと思うし、折角の覚悟を無駄にするわけにはいかない。
「はーー すーーーっ よしっ!」
一度深呼吸して再度二人の召喚獣と向き直る。もう心に迷いはない。少し補習室で我慢してもらいできるだけ早く片をつける、これが僕にできる最善手だ。
スッ
僕の心境の変化が伝わったのか、日向の召喚獣は構えてたメスを仕舞い背中の注射器を構える。
タッ
僕は召喚獣を走らせて日向の召喚獣の持つ巨大な注射器と、明梨の召喚獣の持っていた弓
「おい明久。戦死させたくねえ気持ちはわかるが、せめて邪魔されない程度に攻撃しやがれ!」
「うるさい! そのぐらい僕もわかってるよ!」
横で僕が頭につけてるディスプレイと同じ映像を見てる雄二が注意してくるが、わかっていてもできないことなんていくらでもある。
「つっても逃げられるような相手でもねえぞ! どうすんだよ!」
雄二の言う通り、僕の召喚獣は点数が300点台前半まで下がっているうえに、連戦のせいもあって満足に走れるような状態じゃない。しかも、相手は二人とも400点越えで無傷なんだからどっちの足が速いかなんて考えるまでもない。
「アキッ! 二人の召喚獣のコントロールを取り戻すから、それまでなんとかしろっ!」
「なんとかって……そんな長い時間は保たない、よっ!」
バランスを崩して転びそうになったので、なんとか体をひねらせながら前転をさせて立ち直る。
「10分、いや、5分で済ます!」
「5分か、ギリギリ……いけるかな?」
僕の視界には投擲用のメスを構える日向の召喚獣と、数本の矢を弓につがえる明梨の召喚獣の姿が映る。
ふだんの試召戦争なら召喚獣の周りを確認できるが、今回は召喚獣の頭部につけたカメラからの映像だけ。しかも、二人そろって遠距離攻撃を得意としている。
いくら召喚獣の操作に慣れてる僕でも、こんな状態で挟まれたら1分持つかどうかだろう。
ヒュン サクサクッ
飛んできた矢を伏せて躱したら、避けるのを予測したような位置にメスが飛んできたので、慌てて地面をたたくようにして横に跳ぶ。
「ここまで連携が取れてるなんて……」
行動パターンだけでなく、連携まで今までの召喚獣とは違う。
「点数だけでここまで変わるのか? いや、それとも召喚者自身の操作技術や召喚時間が影響してるのか? それにしてはFクラスは……」
横から雄二の思案するような声が聞こえてきたので、召喚獣のことを考えるのをやめて目の前の戦闘に集中するよう頭を切り替える。
「(全神経を相手の一挙手一投足を捉えることに集中させる。そうすればなんとかなるはずだ。)」
僕は今まで以上に集中して攻撃を避けることに専念する。一樹が一刻も早く二人の召喚獣を正常に戻すことを祈って。
展開的にはほぼオリジナル展開なので書くのがつらいです。
それと、ブランクのせいかサブタイトルが思い浮かばないのでしばらく(もしかしたら今後一切)サブタイトルつけないかもしれません