今回は3日目から始まります。
2日目の夜は特にイベントはありません、書くのが面倒になったからではありません。
あ~朝か~。この合宿所にはあまり体を動かせる場所も無いし、もう少し寝てようかな。
「ん……」
そう思って寝返りを打とうとしたら、腕が動かず、横から悩ましい声が聞こえてきた。……この声は明梨の声だ。
「……すぅ……すぅ。」
なんとか首だけを動かして右の方を見てみると、規則的な寝息を立てている明梨がいた。……僕の右腕に抱きついて。なるほど、腕が動かなかったのはこのせいか。可愛い寝顔だなぁ。っと、危ない危ない、このまま見ていたら理性が崩壊してしまいそうだ。
「……すぅ……すぅ。」
明梨から視線を逸らして、左に顔を向けると……左腕に抱きついて規則的な寝息を立てている日向がいた。こっちも可愛いな。って、危ない! このままじゃ理性が崩壊してしまう。どうすればいいんだ!?
・にげる
・おそう
・アイテム
→にげる
ダメだ。両腕をホールドされているから逃げられない。……力ずくってわけにもいかないしな。
→アイテム
何も持ち物は無い。
『襲う』ってのはダメだし。……何かほかに手は無いかな?周りにあるものは……
・秀吉を抱き枕のように抱きしめている神谷さんと、少し苦しそうな秀吉
・真っ赤になりながらも康太に抱きついている工藤さんと、鼻血で真っ赤になっている康太
・首筋しか見えないが真っ赤な優子さんと、呑気に寝ている一輝
・雄二に抱きついて恍惚とした笑みを浮かべている霧島さんと、無意識なのか霧島さんを抱きしめている雄二。
なんでさ!! と叫びたい気持ちを抑えて今の状況を整理してみる。ここは僕達の部屋で男子部屋だ。彼女達の部屋は隣だったはずだ。
「……ぅん? あ……明君。おはよう。」
「ふぁあ……おはようございます、明久君。」
僕が動いたことで二人が起きてしまったみたいだ。寝起きでどこか抜けているような表情も可愛いな。
「あ、ゴメンね二人とも。起こしちゃった?」
まだ少し眠そうな二人に謝る。もしかして寝るのが遅かったのかな。
「ところで、なんで二人はここに居るの? 確か部屋は隣だったよね?」
「あ、あの、それは……」
「ちょっと言いにくいんですけど……」
二人は急にオロオロとした感じで、目を泳がせる。……いったいどんな理由なんだろう?
『し、紫織よ。苦しいから離してほしいのじゃ!』
『ん~。もうちょっと堪能したかったけど残念ね。』
『なんか騒がしいな。……って優子!? なんでお前がここに!?』
『お、おはよう。一輝君。』
『ちょっと!? 康太!? 大丈夫ナノ!?』
『…………ギリギリ。』
康太、そんな青い顔だと危険な気がするんだけど。
『……ふぁあ……ったく騒々しいな。まるで起きたら自分の彼女が添い寝していたような声を上げて……って翔子!? 訒ね◆ま○爻(何故ここに)!?』
雄二、君はエスパーなのか? そこまで正確に予測できていることに驚きだよ。
『……雄二と一緒に寝る為。』
みんなも起きたみたいだな。さて、この状況について説明してもらおうかな。
◇
「それで? なんで優子達がこの部屋で寝てたんだ?」
布団を片付けて、康太が輸血をしている状態で男女に別れて向き合っている。皆が座ったのを確認してから一輝が一番聞きたかった事を口にした。
「そ、それは愛子が『折角隣の部屋なんだしこっそり行って驚かせない?』って言いだしたのよ」
「ボクだけのせいにしないでヨ。代表や紫織だってノリノリだったじゃん。」
「……雄二が喜ぶならなんでもする。」
「秀吉君の驚く顔が見れそうだったからよ。期待通りの結果だったわ。それに、明梨や日向だって乗ってきたじゃない。」
「う~。どうしてあの時に止めなかったんだろう?」
「思い出したら恥ずかしいです。」
なんか明梨と日向が顔を真っ赤にして俯いちゃったな。それにしても……
「工藤さん! 魅力的な提案ありがとう。(なんでそんなことを言い出したの!?)」
「明久、本音と建前が逆になっているぞ。」
「お主ら余り騒がしくせんほうがいいぞい。」
「…………うるさいと教師が来る。」
ガチャ
「おい、お前ら少しうるさい……ぞ。っとスマン邪魔したな。」
ガチャ
康太が注意してきたときに、ドアが開いて照沼先生が注意してきたが、中の様子を確認するとすぐにドアを閉めてしまった。
「テル先! 待ってくれ俺達は何もしていない!」
『あ~、大丈夫だ。安心しろ。そういうことにしといてやる。』
「ちょっと待ってくれ! そう言う事にも何もオレらは何もしてねえ!」
『別に照れなくてもいいぞ。お前らぐらいの年ならそう言う事に興味もあるだろ。』
「確かに興味はありますけど、学校行事でやるって、そんなアブノーマルなことしないですよ!」
『ちゃんと、朝メシには間に合わせろよ。』
照沼先生は誤解したまま行ってしまったようだ。
「…………行ってしまった。」
「ひとまず、紫織たちは自室に戻ったらどうじゃ? この時間帯ならば朝げ前じゃし人も少なかろう。」
確かに、このままじゃ、さっきみたいに先生が来たり、いろいろと問題があるもんね。
「そうね、そうさせてもらいましょうか。じゃあ、また朝食の時にね。」
「……雄二。またね。」
「一輝君、また朝食の時にね。」
「康太、鼻血で迷惑かけないでネ。」
「またね明君。」
「お邪魔しました。」
◇
「しかし、夕飯の豪華さと比べると朝食がさびしく見えるな。」
雄二が中央のテーブルに並んだ料理を見ながら呟く。朝食は昼食や夕食と違って、A~Fが同じメニューでバイキングになっている。並んでいる料理はどれも一般的なもので、スクランブルエッグ、ソーセージ、ベーコン、パン類、ご飯、生卵、納豆など、和と洋のものが並んでいる
「でも、朝から重い料理ってのもつらいと思うよ。」
「確かにな。それに雄二の場合は朝はほとんど食わないだろ?」
朝が弱い雄二はスープ類とコーヒーだけをお盆の上に乗せている。
「儂はこっちのほうが落ち着いて食べれるのじゃ。」
「…………あんまり高級料理に舌が慣れても困る。」
確かに昼食や夕食は、初日がオマールエビや、トリュフ、フォアグラ、キャビア、などを使った高級フレンチ、二日目の昨日がフカヒレや、ツバメの巣、伊勢海老などを使った高級中華で食べたことも無い味だった。確かにどっちも美味しかったが、僕としては明梨や日向が作ってくれる手料理の方が大好きだ。
「なぁお前ら。女子風呂に興味は無いか?」
僕らが朝食をお盆に乗せて席に着こうとしたところで、元クラスメートの須川君が話しかけてきた。しかし、いきなり女子風呂に興味は無いかってどうなんだろう。
「俺らは昨日、一昨日の夜に覗きを決行したんだが、鉄人達の妨害によって出来なかったんだ。」
僕らの反応を無視して話を進めていく須川君。さっきの話と合わせて考えると、僕らの力で覗きを阻止している先生を倒してくれってことだろうか。
「お前らの召喚獣の点数と、操作技術なら鉄人達だって倒せるはずだ。鉄人さえ倒せばその先には理想郷(アガルタ)が待っているんだ!」
何故か力説し始める須川君。下心の為だけにここまで本気になれるなんて……呆れるね。
「そんなことに協力するわけないだろ。」
「それに覗きは犯罪だよ。たとえそこに人がいなくっても犯罪になるんだよ?」
軽犯罪だから罰金や懲役は無いけど、世間的な事を考えても悪い行為だ。
「くそっ! お前らは男の夢(女子風呂)に興味は無いのか! それでも男か!」
須川君の中の男の条件って何なんだろう?
「…………犯罪に手を貸すようなことはしない。」
「な!? ムッツリーニが断っただと!? 女子の裸に興味が無いのか!」
だから君たちは康太をなんだと思っているんだい?
「何度言っても無駄じゃ。さっさと立ち去るがよい。」
須川君は説得は無理だと思ったのか立ち去った。
「なんか面倒な事になりそうね。」
「ああ、多分仲間を増やせば行けると思ってるんだろうな。」
先に座っていた日向たちの近くに座ると優子さんが話しかけてきた。
「確か……更衣室の前には西村先生がいたわね。」
「西村教諭を倒さねば行けんのなら成功する事は無いじゃろうな。」
「……噂では素手で召喚獣18体を倒したらしい。」
「召喚獣を素手でだとっ!? 鉄人は人間か!?」
「えっ? でも召喚獣って触れないはずよね?」
「あ~、オレが渡した腕輪のバグでな……物理干渉とフィードバックが出ちまうんだ。」
「他の先生も8人ずつ倒したらしいね。」
「いくらFクラスの方が相手といってもすごいですね。」
「う~ん、先生たちは雑用とかのたびに召喚獣を使っているからね。それに自分の担当教科でフィールドを張るから点数も高いだろうしね。」
それからも僕たちは朝食を食べながら談笑をした。う~ん、嵐の前の静けさとでもいうんだろうか。なんか平和な事が不安になるようになってきたよ。……なにも無ければいいけど。